著者
岡本 香 村田 浩子 西山 英子 田口 素子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.154-166, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
44
被引用文献数
1

【目的】男性持久系競技者を対象とした食事記録法の栄養評価における食品重量見積もり誤差の特徴を明らかにすることである。【方法】筆者らの研究室に蓄積された食事記録法のデータベースから,競技者及び非競技者を対象とした食事記録を抽出した。これらに基づいて作成したモデル献立の写真と食事記録票を栄養評価者に配布し,食品の選択及びその食品番号と見積もり重量の記入を依頼した。その後,筆者らが栄養素等摂取量を算出し栄養評価値を得た。モデル献立の基準重量と評価者に依頼した見積もり重量との誤差及び基準値と栄養評価値との誤差を比較した。【結果】競技者モデル献立の基準値と栄養評価値との間に,10%以上の過小評価が認められたものはエネルギー及び炭水化物(それぞれ平均値で-13%,-16%),過大評価が認められたものはビタミンA及びビタミンC(それぞれ40%,10%)であった。エネルギー及び炭水化物への寄与率が高かったご飯の見積もり重量に有意差が認められ,基準重量に対し23%の過小評価が認められた。また,ビタミンAへの寄与率が高かったにんじん,ほうれん草は基準重量に対しそれぞれ48%,68%の過大評価が認められた。ビタミンCへの寄与率が高かったほうれん草は基準重量に対し68%の過大評価が認められた。【結論】男性持久系競技者を対象とした食事記録法の栄養評価においては,ご飯と緑黄色野菜の重量見積もり誤差が大きいという特徴があることが示唆された。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 村井 詩子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.183-192, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】国民の食品・栄養素等摂取状況を把握するため,日本で実施されている国民健康・栄養調査と,諸外国における同様の調査とを比較・検討することを目的とした。【方法】栄養調査に関する情報は,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フィンランド,ドイツ,日本,韓国,ロシア,イギリス,アメリカの11か国について,各国の調査担当機関のホームページ等から収集した。【結果】調査の実施機関の多くは,主に自国の機関であったが,他国と共同で実施している国もみられた。世帯を対象としている国と,個人を対象としている国が約半々であった。対象年齢は,子どもと成人の両方を設定している国がほとんどであった。日本では,厚生労働省が健康増進法に基づき,調査地区を管轄する自治体に調査を委託しているが,諸外国では実施機関の職員等が担当していた。食物摂取状況調査は,11か国中8か国が24時間思い出し法を用いており,5か国が単独の調査法のみではなく,複数の調査法を組み合わせて行っていた。実施頻度は,継続的,定期的(毎年から数年に一度)または不定期であり,時期・期間は,通年の場合と一時点の場合とがあった。調査データの二次利用に際しては,申請を要する国,一部データのみ申請を要する国,申請不要な国があった。【結論】諸外国の栄養調査は,実施体制や方法等が多様であり,今後の日本での調査の実施において,参考になると考えられた。
著者
田島 諒子 佐々木 敏
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.176-182, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
8

【目的】 食事摂取基準等を適切に策定するため,日本人の成人において習慣的な栄養素摂取量の分布を推定した。【方法】 31~49歳の男性54名,51~81歳の男性67名,31~49歳の女性58名,50~69歳の女性63名を対象に,1年にわたり各季節4日間ずつの食事を秤量式食事記録法により評価した。計16日間の食事記録データを用い,best-power法により習慣的な栄養素摂取量の分布を推定した。また16日間から個人レベルでランダムに1日を選び,1日摂取量の分布を推定した。【結果】 エネルギー,7つの主要栄養素,12のビタミン,9つのミネラルの習慣的摂取量を推定した。習慣的摂取量の中央値と1日摂取量の中央値には,5つの主要栄養素,10のビタミン,3つのミネラルで違いが見られた。【結論】 本資料により,日本人男女の習慣的な栄養素摂取量の分布が示された。本資料は科学的根拠に基づいた食事摂取基準の策定に役立つと言える。
著者
齋木 美果 新保 みさ 赤松 利恵 藤崎 香帆里
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.193-200, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
22
被引用文献数
5

【目的】東京都,神奈川県,埼玉県にある飲食店の定食が「健康な食事(通称:スマートミール)」(以降,スマートミール)の基準にどの程度適合しているか調べることを目的とした。【方法】店舗にて2食の定食の料理重量を測定し,その後栄養計算を行った。スマートミールの2段階の基準に沿って,定食を「650 kcal未満」「650 kcal以上」に分け,各々エネルギー量,食塩相当量,野菜等の重量(以降,野菜重量),エネルギー産生栄養素バランス(以降,PFC%E)の基準との適合の程度を記述統計にて検討した。【結果】25店舗の定食48食(解析対象96.0%)のうち,基準6項目全てを満たすものはなかった。「650 kcal未満」の定食(n=9,18.8%)のうち,エネルギー量の基準に適合するものは7食(77.8%),食塩相当量は6食(66.7%),野菜重量は4食(44.4%),PFC%Eのたんぱく質は4食(44.4%),脂質は1食(11.1%),炭水化物は4食(44.4%)だった。「650 kcal以上」の定食(n=39,81.3%)では,エネルギー量が12食(30.8%),食塩相当量は8食(20.5%),野菜重量は12食(30.8%),たんぱく質は22食(56.4%),脂質は9食(23.1%),炭水化物は13食(33.3%)だった。【結論】本研究で対象とした飲食店の定食でスマートミールの基準に合致するものはなかった。「650 kcal未満」の定食では,食塩相当量の基準に適合する定食が多かった。「650 kcal以上」の定食では,エネルギー量,食塩相当量に適合する定食が少なかった。いずれも,野菜重量とPFC%Eに適合する定食は少なかった。
著者
石長 孝二郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.145-153, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
29

【目的】がん治療中患者の食事苦情の訴えを考察するための予備的検討として,女子大学生を対象に,食べ物の咀嚼中に発生したニオイをレトロネーザル経路でどの程度感知しているか,また,“おいしさ”の評価との関連を検討した。【方法】食材試料はグレープフルーツ,煮魚,ヨーグルトとし,さらに各々に香味野菜パクチー液を混入した計6種類とした。ニオイ分析はにおい識別装置を用いた。観察研究は鼻栓をした摂食状態と鼻栓をしない摂食状態でパクチーの感知の評価,および鼻栓をしない摂食状態でおいしさの評価をVisual Analogue Scaleで実施した。【結果】鼻栓をしてレトロネーザル知覚を封鎖することで,すべての食材試料中でパクチーの感知評価が大きく低下した(p<0.001)。また,パクチーの感知とおいしさの評価には負の相関が認められ,パクチーを強く感知した場合にはおいしさの評価が低下した。【結論】ヒトの訴える味の感想は,味覚感知だけではなく,咀嚼・嚥下時に空気中に拡散したニオイが口腔から咽頭,そして鼻腔へと抜けた呼気によるレトロネーザル経路による嗅覚の感知もあり,味覚と混同しやすいことがわかった。また,ニオイに誘発される嫌悪は,ニオイの全体から特定の嫌悪を感じるニオイを認識した時においしさの評価が低下することが考えられた。
著者
高間 総子 斎藤 進
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.255-260, 1971 (Released:2010-10-29)
参考文献数
10

低温における野菜貯蔵の効果をみるため, 試料にピーマン, トマトおよび人参を用いて, 対象区を室温とし品質, 重量, 水分量, 硬度, 細胞組織およびアミノ態窒素量の経時的変化をみた。その結果低温に貯蔵したものは室温のものに比し重量の減少は少なく水分含有量も多く, 従って品質, 鮮度の低下が少なかった。しかし硬度測定の結果では室温貯蔵のものは数値が低く軟化の早いことを示し, さらに組織の切片を検鏡した場合, この区のものは表皮細胞に変化がみられ, 鮮度, 品質の低下が明らかであった。なおピーマン, トマトのアミノ態窒素量の経時的変化では低温のものに比し室温貯蔵のものは含有量の増加が認められ, 内容成分の変化も野菜貯蔵の温度条件で異なることを示した。以上低温で蔬菜を貯蔵する場合低温は生鮮食品としての新鮮度, 品質の保持によい影響を与えていることを水分の含有量とこれに関する消耗率, 組織の硬軟, 細胞膜の状態およびアミノ態窒素の消長より確認することができた。
著者
仲 克己 渡来 仁
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.273-279, 2006-10-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
11

We investigated the bacterial contamination of writing tools used in five facilities providing meals for school-children that were examined in 2003. Bacterial contmaination by Staphylococcus aureus (S. aureus), Campylobacter jejuni and Bacillus cereus (B. cereus) was respectively detected in the writing tools of four facilities (80.0%), one facility (20.0%) and three facilities (60.0%). The bacterial contamination of writing tools was further investigated in 12 more facilities in 2004. Escherichia coli (E. coil), S. aureus and B. cereus were respectively detected in the writing tools of six facilities (50.0%), ten facilities (83.3%) and five facilities (41.7%). Bacterial contamination of the fingers before and after writing records of the cooking process was also examined. E. coli was detected on the fingers, which had been washed with an antiseptic solution, before recording the cooking process, S. aureus was detected on the fingers after recording the cooking process, and B. cereus were detected on the fingers both before and after recording the cooking process. A questionnaire survey of basic hygiene management showed that, while both dietitians and cooking staff were uneasy about bacterial contamination of the writing tools, many of them did not disinfect these writing tools with an antiseptic solution.
著者
早渕 仁美 徳田 洋子 松永 泰子 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.128-140, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
27
被引用文献数
3

【目的】「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の考え方を食事バランスガイドに反映させ,食事バランスガイドの料理区分別サービング数(以下,「SV」と略)を算定し直し,エネルギー産生栄養素バランスの目標量に合致するか確認する。【方法】日本人の食事摂取基準(2015年版)で設定されたエネルギー産生栄養素バランスの目標量に留意し,料理区分別SVを食品構成の考え方に基づき算定する設定条件を見直した。たんぱく質のエネルギー産生栄養素バランス(以下,「たんぱく質%E」)と穀類エネルギー比率,及び5料理区分以外(菓子・嗜好飲料等)からのエネルギー(以下,「他Ene」と略)の条件を見直し,矛盾のない妥当な設定基準範囲について検討した。【結果】 設定条件の見直しによる基準エネルギー範囲の料理区分別SVの変化と,そのSVに基づき算出したエネルギー産生栄養素バランス(%E)と食塩量の分布を明らかにした。基準エネルギー 1,200~3,200 kcalに,たんぱく質%E16.5~14.5,穀類エネルギー比率38.0~45.0%,他Ene 0~100 kcalを設定して算定した料理区分別SVを用いた栄養価が,最も日本人の食事摂取基準(2015年版)に適合していた。【結論】見直し後の食事バランスガイドSVは,主食が 1 SV程度低値,主菜は 2 SV程度高値に,副菜と牛乳・乳製品,果物は現状とほぼ同値になった。
著者
斉藤 由紀子 武安 眞珠 及川 正文 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.123-132, 2019-10-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
12

【目的】東京都下で20年以上開催されてきた「男性のための料理講座」参加者の食に対する意識・行動を把握し今後の講座運営に資するため,講座終了時質問紙調査結果の分析を行った。【方法】平成19~28年に公益財団法人C福祉公社主催生きがい介護予防講座「男性のための料理講座」に参加し,講座終了時質問紙に回答した87名の結果を分析した。本講座では年5回栄養の講話と調理実習を行っている。質問紙では「参加の動機」・「家庭での調理の有無」・「講座の献立」・「食意識の変化」・「満足度」・「実施回数」に関する調査を行った。【結果】「参加の動機」では「料理技術の習得」28名,「退職後の仲間づくり」12名が上位を占めた。「講座の献立」は,「良かった」と「大変だった」と回答した献立名が共通していた。「家庭での調理の有無」では,講座の献立を作ってみた者が45名であった。参加の前後で食意識が変化したと回答した者が54名であり,それらの内容は料理への興味や調理技術,調理に対する気持ちであった。料理講座に満足していた者は63名であった。【結論】参加の動機から積極的な参加者が多く,大変だが充実感のある献立を望んでいると考えられた。また講座終了時の調査結果から,半数近くが家庭で調理をしており料理や調理技術への興味が高まったことが推察された。高齢者男性向けの料理講座は参加者にとって食事の自立へつながる可能性が示唆された。
著者
山本 亜衣 新冨 瑞生 元井 彩加 三浦 公志郎 巴 美樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.133-144, 2019-10-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【目的】Dietary Approach to Stop Hypertension(DASH)食弁当を1日1食または2食摂取させ,血圧改善への影響を検討した。栄養素等摂取量,血液生化学検査,血球検査結果を解析し,血圧改善効果の要因を検証するためのパイロット研究とした。【方法】対照群を設定しない介入研究で,対象は九州女子大学関連施設の教職員,ボランティア31名を解析対象とした。研究期間である平成26年9月~11月の12週間のうち4週間の摂取期はDASH食弁当(マルハニチロ(株))を1日1食または2食摂取させた。試験項目は身体計測,血圧測定,食事調査,血液生化学検査,血球検査であり,九州女子大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果・考察】DASH食弁当摂取期に血圧が低下する傾向はあるものの,統計学的な有意差は見られなかった。また,血中カリウム濃度の上昇がみられた。1食群,2食群ともに脂質,飽和脂肪酸摂取量は摂取期のみ「日本人の食事摂取基準(2015年版)」におけるエネルギー産生栄養素バランスの目標量の範囲内となった。両群ともにカリウム,カルシウム,マグネシウムは摂取期に増加し,2食群のみカリウムは目標量,カルシウム,マグネシウムは推奨量を満たした。【結論】DASH食弁当の血圧改善効果を検証するためには,十分なサンプルサイズで検討する必要がある。
著者
宮城 重二
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.33-45, 1998-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
30
被引用文献数
15 8

首都圏における高校, 専門学校, 短期大学, 大学の女子1,014人について, その肥満度の実態を明らかにし, また, 肥満度と食生活, 健康状態, 体型意識との関係を検討した。更に, 肥満度や健康状態に影響を与える因子についても検討を加えた。その結果は次のとおりであった。1) BMIの平均値は全体で20.4であった。やせ群 (BMI<18) は全体の10.1%, 肥満群 (BMI≧24) は全体の5.6%であった。中間の普通群 (18≦BMI<24) は84.3%であった。2) 朝食を“毎日食べる”者の割合は, 普通群に比べてやせ群では高く (p<0.05), 肥満群では低かった(p<0.01)。食事を“満腹するまで食べる”者の割合は, 普通群に比べてやせ群では低かった (p<0.05)。間食を“よく飲食する”者の割合は, 普通群に比べてやせ群では高かった (p<0.05)。清涼飲料水を“毎日飲む”者の割合は, 普通群に比べてやせ群では高かった (p<0.01)。“元気である”という主観的健康の割合は, 普通群に比べてやせ群でも肥満群でも低かった (p<0.05)。3) 現在の体型を過大評価している者が多く, しかも, 今後の体型意識も強いやせ志向がみられた。体型誤認や過激なダイエットによって健康障害に陥りやすいと考えられる者の推定値は, BMIが18未満のやせ群で約10~20%, 若年女子全体では約1~2%であった。4) 肥満度に影響を与える因子としては, 清涼飲料水が有意な関連を示し, 朝食, 食事量, 間食, 運動には関連が認められなかった。主観的健康に影響を与える因子としては, 朝食, 運動が有意な関連を示し, 肥満度, 食事量, 間食, 清涼飲料水には関連が認められなかった。
著者
今枝 奈保美 後藤 千穂 加藤 利枝子 服部 奈美 山本 和恵 小田 敦子 田中 秀吉 藤原 奈佳子 徳留 裕子 徳留 信寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.229-240, 2011 (Released:2011-10-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

【目的】地域在住高齢者のビタミン摂取量分布を観察し,摂取量評価や栄養計画がまだ十分に実践されていないビタミン群(α-カロテン,β-カロテン,β-カロテン当量,クリプトキサンチン(以下Cry),葉酸,V.B6,V.B12,V.E,パントテン酸)と,従来から評価されてきたビタミン4種(V.A, V.B1, V.B2, V.C)との相関を観察し,栄養計画の効率化を検討する。【方法】健康な地域在住高齢者242人を対象に,隔日4日間の食事を調査し,ビタミン摂取量の分布,分布を正規化する変換係数,個人内分散と個人間分散の分散比を観察した。ビタミン間の関連はデータを正規化後,エネルギーを調整した偏相関係数で評価した。【結果】不足者割合が高かったのは,V.A, V.B1, V.B2, V.B6, V.Cであった。個人内/個人間の分散比はV.D,V.B12 で男女とも高値,V.K,葉酸,V.C,は男性で低値,V.B2 は男女とも低値であった。次にV.B2 の摂取量はV.B6,葉酸,パントテン酸の摂取量と相関が高く,V.CはV.K,V.B6,葉酸との相関が高かった。V.AとCryの相関は低かった。【結語】偏相関係数の観察から,4種のビタミンを増やすよう食事計画すると,β-カロテン,レチノール,V.K, V.B6,葉酸,パントテン酸の摂取増加が期待できるが,Cry, V.D, ナイアシン,V.B12 に関しては独立した食事計画が必要であることが示唆された。
著者
會退 友美 赤松 利恵 林 芙美 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.181-187, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
16
被引用文献数
8 5

【目的】成人を対象とした食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life (SDQOL))の信頼性と妥当性を検討する。【方法】平成21年11~12月に内閣府が実施した「食育の現状と意識に関する調査」に回答した2,936名分のデータを用いた(回収率58.7%)。対象者の性別は,男性1,344名(45.8%),女性1,592名(54.2%)であった。SDQOLの項目として作成された6項目について,信頼性の検討では,内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では,構成概念妥当性と基準関連妥当性を検討した。基準関連妥当性の検討には,生活のゆとり感と生活満足度の項目を用いてSpearmanの順位相関係数(rs)を求めた。【結果】探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,4項目から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.99,AGFI=0.96,CFI=0.99,RMSEA=0.08; 90%CI: 0.06~0.10)。クロンバックα係数は,0.72であり,信頼性も確認された。また,基準関連妥当性の検討では,SDQOLと生活のゆとり感(rs=0.16,p<0.001)および生活満足度(rs=0.38,p<0.001)の間に正の相関がみられ,これらが高いと回答した者の方が,SDQOLの合計得点が高かった。【結論】本研究により,SDQOLの信頼性と構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認された。今後は,SDQOLと食生活との関連を検討する必要がある。
著者
鈴木 雅子 三谷 璋子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.69-74, 1979
被引用文献数
3

栄養摂取のあり方と, 健康状態の間にはどのような関連性があるかについて, 男女学生663名を対象にアンケート調査を行い, 次のような結果を得た。<br>1) 栄養摂取の充足度が低い時, 身体的な訴えが高いものとして, 女子の場合にのみ, 消化器と口腔と肛門があった。<br>2) 栄養摂取の充足度の高低と精神的な訴えの高低に関連性のあるものとして, 栄養摂取の充足度の高い時, 精神的訴えの低いものに, 男子では抑うつ性, 生活不規則性, 直情径行性, 女子では多愁訴, 直情径行性, 情緒不安定, 抑うつ性, 神経質, 生活不規則性があった。<br>逆に充足度の高い時, 精神的訴えの高いものに, 男子では虚構性と神経質, 女子では虚構性があった。<br>3) 栄養摂取の充足度と関連性のない訴えに, 男子にのみ多愁訴と情緒不安定があった。
著者
田村 盈之輔 松野 信郎 新関 嗣郎 岩谷 昌子 若生 宏 畠山 富而
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.259-267, 1974-11-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
39

岩手県農山村地区の発育の低下した学齢期前の幼児について, 日常摂取食物にリジン, または, リジン, スレオニンを投与し, 発育および血漿アミノ酸とくに, 分枝鎖アミノ酸, チロシン等に及ぼす影響を見た。1. リジン投与実験では, 4地区の1~5歳の男女42名を2群に分かち, 試験群に1人1日0.2gのL-lysine・HClを5~13カ月投与し, 幼児の体重, 身長増加量を対照群のそれらと比較したが, いずれも有意の差は認められなかった。しかし, 血漿アミノ酸比2.0以上のものは, リジン投与により, アミノ酸比がいずれも低下したが, 血漿遊離アミノ酸に及ぼす影響は明らかでなかった。2. リジン, スレオニン投与実験では, 3地区の2~4歳の男女36名を2群に分かち, 試験群に1人1日L-lysine・HCl 0.3g, L-threonine 0.15gを5カ月投与したのに, 体重, 身長の増加量は対照群に比して, 明らかに多かった。また, 試験群の血漿アミノ酸比2.0以上のものでは, アミノ酸投与後, アミノ酸比は明らかに低下を示した。なお, 投与前後の血漿アミノ酸パターンを比較すると, 分枝鎖アミノ酸, フェニルアラニン, チロシン, リジン等は増加の傾向を認めたが, バリン, フェニルアラニンは2%の危険率で有意の差を示した。
著者
村上 健太郎
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.263-268, 2004-10-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

Accurate assessment of the habitual dietary intake is pre-requisite to accurate studies on diet and health, but underestimation of the dietary intake has been apparent in numerous studies. If the underestimation of dietary intake was consistent, a solution to the problem would be relatively easy, because such techniques as energy adjustment should improve estimates of the food and nutrient intake. If, however, underestimation of the dietary intake was a selective phenomenon, it would be much more difficult to solve the problem. A limited number of studies in Western countries have examined whether all foods and nutrients are underestimated to the same degree or only specific foods and/or nutrients are selectively underestimated by using the observed food intake, the measured total energy expenditure with/without 24-hour urinary nitrogen excretion, and the Goldberg cut-off technique as reference methods. These investigations are summarized in the present review. The bulk of the data from these studies suggests that when the energy intakee has been underestimated, such underestimation of the food and nutrient intake is selective rather than consistent. However, little information about those foods that are selectively underestimated is available, so further research is needed to identify such foods.
著者
赤松 利恵 林 芙美 奥山 恵 松岡 幸代 西村 節子 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.225-234, 2013 (Released:2013-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

【目的】特定保健指導を受診し,減量に成功した男性勤労者を対象に,減量のために取り組んだ食行動を質的に検討した。【方法】対象者は,栃木県,埼玉県,和歌山県,及び大阪府にある5つの職域健康保険組合が委託した機関において,特定保健指導を受診し,4%以上減量した者に研究協力を依頼した。同意が得られた27名を対象に,インタビューガイドを用いた約30分間の個別半構造化面接を実施した。分析は6ヶ月評価時に実際に4%以上の体重減少があった26名を対象とした。逐語録を作成しグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行い,本研究では,概念的枠組みの大分類【取り組み方】に分類された食生活に関する内容を食行動と行動技法の観点から,カテゴリ化した。【結果】逐語録から,食行動の観点では,31のサブカテゴリと7つのカテゴリ,行動技法の観点からは,17のサブカテゴリと9つのカテゴリが抽出された。減量成功者の取り組んだ食行動は多様であり,多くの対象者が行動技法を用いて,支援時に立てた目標に取り組んでいた。【結論】減量に成功した男性勤労者は,食行動の実践において行動技法を用いており,その内容は具体的で実行しやすく,勤労者特有のものであった。
著者
力石 サダ 志賀 康造 金子 精一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.377-382, 1996-12-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
15

自然農法と慣行農法によって栽培した米の品質について, 官能検査と機器分析によって検討し, 次の結果を得た。1) 官能検査結果は, 自然農法米は香りを除き, 外観, 味, 粘りの評点が慣行農法米を上回り, おいしい米と立証できた。2) 機器分析結果では, 自然農法米はアミロース, たんぱく質の値が小さく, このことは粘りのある食味のよい米であることを示していた。