著者
佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川端 真由美 半澤 真喜子 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.264-271, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
36

【目的】高齢者筋力向上トレーニング(以下,高齢者筋トレ)後に,たんぱく質を摂取させる取り組みは広く行われているが,効果が一律とならないことは知られている。今回我々は,軟化した食材を用いた栄養介入が高齢者筋トレの効果を高めるのか検証した。【方法】仙台市在住の一般高齢者15名(平均76.3歳)を無作為に二群に分け,両群に3ヶ月間の介護予防運動教室を実施し,介入前後の数値を比較した。各回の教室の後半に,一方の群には軟化した豚肉 50 gを,もう他方の群には普通のボイル豚肉 50 gを,すみやかに摂取させた。【結果】両群ともに3ヶ月の運動教室を経験しているため介入前後で有意な改善を示した運動機能値が存在した。そこで主成分分析により総合数値を求め,介入前後の結果を比較した。その結果,第1主成分「運動機能」得点において軟化豚肉群では有意な増加が見られた。このような傾向は普通豚肉群では確認されなかった。【結論】今回の我々の結果は,高齢者筋トレ運動後に吸収性を良くした食材をすみやかに食べることが,筋トレ効果の更なる増強を導く可能性を示唆した。
著者
木林 悦子 中出 麻紀子 諸岡 歩
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.243-253, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】朝食におけるバランスの良い食事(主食・主菜・副菜の揃った食事)を推進するために,バランスの良い朝食摂取者における食習慣および健康意識の特徴を明らかにすること。【方法】平成28年度ひょうご食生活実態調査に回答した20歳~60歳代で朝食頻度が週4日以上の1,255名を対象とした。解析は性・年齢別(20~40歳代,50~60歳代)に,従属変数をバランスの良い朝食摂取の有無,独立変数を食習慣および健康意識,調整因子を年齢,家族構成,BMIとした二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】どの性・年齢階級でも,朝食でごはん(米)を週0回又は主食・主菜・副菜の揃った食事を1日2回以上食べる頻度が週5日以下を基準として,週5~7回又は週6日以上の者で,バランスの良い朝食摂取者のオッズ比が有意に高かった。また,男性では,50歳以上における健康意識に関連した項目において,ネガティブな者を基準として,現在の食事を自分で良いと思っている,食事時間が不規則ではない,生活習慣病予防の食事を実践している,適正体重を心がけている者で,バランスの良い朝食摂取者のオッズ比が有意に高かった。【結論】朝食にごはん(米)を食べていることや主食・主菜・副菜の揃った食事を1日2回以上食べていることは,性や年代を問わずバランスの良い朝食摂取と関連していた。また,男性の50歳代~60歳代では高い健康意識にも関連がみられた。
著者
須藤 紀子 佐藤 加代子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.291-299, 2005-10-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
71
被引用文献数
2 1

市町村保健センターの栄養指導担当者においで, 妊娠中の飲酒が生まれてくる子どもに悪影響を及ぼすことは漠然と認識されているが, 具体的にどのような障害が生じるのかについてはあまり知られていない実態を受け, (1)これまでに前向きコホート研究において観察された, 妊娠中の飲酒が子どもに及ぼす影響にはどのようなものがあるかを整理し, 情報提供することを目的とした。また, 少量飲酒であれば容認する意見もあったことから, (2)飲酒量のレベルを純アルコール14g以下の少量飲酒に限定した場合でも, 障害が認められるかどうかを明らかにすることを目的とした。系統的レビューの結果, 妊娠中の母親の飲酒の影響は, 成長遅滞, 先天奇形, 脳の形成異常, 睡眠障害, 神経学的機能障害, 認知力低下, IQ・学習能力の低下, 言語発達遅滞, 注意欠陥, 問題行動と多岐にわたることが分かった。少量飲酒が子どもの身体発育に及ぼす影響については研究結果間で不一致がみられ, 一定の見解は得られなかった。今後はこれら一つひとつの障害について絞り込んだ文献検索を行い, メタアナリシスを用いて研究結果を統合することで, 科学的根拠に基づいた飲酒指導を行うためのエビデンスを蓄積していく必要があると考える。指導の現場においては, 妊娠中の少量飲酒が子どもに及ぼす影響について研究結果が不十分である現時点では, 少量飲酒を容認することは避けたほうがよいと考えられた。
著者
水元 芳 徳永 亜紀子 片桐 義範 樋口 善之 渡辺 啓子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.170-181, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

【目的】病院に勤務する管理栄養士の職務満足度の現状を把握し,職務満足度に影響している要因を明らかにすることを目的とした。【方法】福岡県の病院に勤務する管理栄養士を対象として,2011年10月に郵送法による自記式質問紙調査を実施した。自由記載欄を設けて質的データの収集も行った。「職務満足度」に影響を与える要因は重回帰分析等によって検討した。質的データはテーマ的コード化による分析を行った。【結果】「職務満足度」の中央値(25~75パーセンタイル値)は62.0(50~76)/100点であった。単変量解析で「職務満足度」との有意な関連性が認められた項目は「年齢」(p=0.008),「患者とのコミュニケーション自己評価」(p=0.001),「他職種とのコミュニケーション自己評価」,「同職種との業務上のコミュニケーション自己評価」,「栄養補給法に関する業務の自己評価」,「栄養指導業務の自己評価」,「チーム医療に関する業務の自己評価」(いずれもp<0.001)であり,これらの変数を投入して行った重回帰分析において,最も影響力の大きい項目は「同職種との業務上のコミュニケーション自己評価」であった(β=0.247,p<0.001)。質的データ分析からは,同職種との良好なコミュニケーションが他職種,および患者とのコミュニケーションをサポートしていることが示唆された。【結論】本研究では複数の項目が管理栄養士の職務満足度に関連しており,職務満足度に最も影響を与えていた項目は同職種との業務上のコミュニケーション自己評価であった。
著者
笠松 隆洋 吉村 典子 森岡 聖次 橋本 勉
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-26, 1996-02-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

和歌山県民栄養調査に参加した世帯の調理担当者769人について, 1日の摂取食品数を調査し, 摂取食品数と栄養素等摂取状況及び肥満との関連性について検討した結果, 以下のことが明らかになった。1) 1日の摂取食品数を12食品未満, 12~17食品, 18~23食品, 24~29食品, 30食品以上の5群に分けたところ, 18~23食品群が最も多く41%を占めていた。平均摂取食品数は, 20.2食品であった。2) 摂取食品数の増加に伴い, 栄養素等充足率は高くなる傾向を認めた。摂取食品数が18~23食品群ではカルシウムと鉄のみが不足し, 24~29食品群ではすべての栄養素が充足された。一方, 30食品以上群では, たんぱく質の充足率は142%, 脂質の充足率は125%にも達していた。脂肪エネルギー比は25%を超えていた。3) 摂取食品数の増加に伴い, いも類, 菓子類, 油脂類, 豆類, 果実類, 野菜類, 海草類, 魚介類, 肉類, 卵類, 乳・乳製品の摂取量は増加していた。4) 摂取食品数の増加に伴い, たんぱく質, 脂質, ビタミンB1, ビタミンB2は, 肉類, 卵類, 乳・乳製品といった動物性食品からの摂取割合が増加していた。5) 肥満者の割合は, 摂取食品数が24~29食品群で最も低かった。以上, 和歌山県民栄養調査の結果から, カルシウム所要量を充足させることに重点を置いた栄養指導を行うことを前提にすれば, 1日の摂取食品数は25食品程度を目標に摂取するとよいことが推察された。
著者
山口 節子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-28, 2007-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

Studies on the weight rebound were studied with 60 women who had taken a 6-month course of a weightreduction program. These women were within 0.5 to 5.0 years after successfully participating in the program. The women participating in the program did not show any symptoms of serious diseases, except for those with simple obesity and a BMI score of higher than 25. Some of them experienced a significant weight rebound after completing the program. The present results indicate that those who gained weight failed to restrict their energy intake at meals, and also that their eating behavior tended to be greatly affected by outside stimuli. A further investigation randomly assigned the 60 women to 4 groups to find an effective way to prevent them from regaining weight. The first group was those subjects who did not make any effort at all during 6-month intervention period. The second group was regularly provided with intervention by telephone, the third group was provided with only information regarding diet and health through newsletters, and the fourth group was given the intervention by both telephone and newsletters. The treatment, which consisted of psychological support by oral communication as well as the constant offer of current news related to diet and health, seemed to be the most effective approach to control the weight of obese women.
著者
外山 未來 安部 景奈 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.350-356, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
6 2

【目的】中学校給食の食べ残しに関連する要因を検討すること。【方法】2009年12月,東京都A区の公立中学校33校に通う2年生,142クラスの残菜調査,担任142名を対象にクラスの給食時間の状況に関する調査,生徒4,634名を対象に給食の食べ残しに関する自己記入式質問紙調査を行った。クラスごとの残菜率を中央値で2群に分け,喫食時間,給食時間中の取り組み,食べ残しに関する8項目との関連を検討した。【結果】残菜調査は142クラス中,134クラスから回答を得た(回収率94.4%)。134クラス全体の残菜率の中央値(25%,75%タイル値)は9.3(4.6,16.0)%であり,残菜率の低いクラスは71クラス(53.0%)であった。134クラス全体の喫食時間の中央値(25%,75%タイル値)は15(13,15)分であり,残菜率の低いクラスは,喫食時間が長いクラスの割合が高く(p=0.015),給食に関する取り組みの数の多いクラスの割合が高かった(p=0.040)。また,残菜率には食べ残しに関する8項目で関連が見られ,特に残菜率の低いクラスは,「きらいな食べ物がなかった」,「おいしかった」と回答した生徒の割合が高かった。【結論】中学校給食の残菜率が低いクラスは,喫食時間が長く,給食に関する取り組みの数が多かった。また,残菜率が低いクラスでは,「きらいな食べ物がなかった」,「おいしかった」と回答した生徒の割合が高かった。
著者
柄澤 美季 玉浦 有紀 藤原 恵子 西村 一弘 酒井 雅司 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.179-187, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
32

【目的】地域活動参加頻度,参加する活動の種類数を用いた地域活動参加状況と主観的健康感の組合せを用い,介護予防事業参加高齢者の特徴を把握すること。【方法】2018年6~12月,東京都東村山市の介護予防事業参加者に自記式質問紙調査を実施した。解析対象は153人であった。質問紙では,地域活動参加状況,主観的健康感,ソーシャルサポート種類数・満足度,属性,地域活動に関するセルフ・エフィカシーをたずねた。地域活動参加状況と主観的健康感の組合せごとに,参加者の特徴をχ2 検定,Kruskal-Wallis検定で比較した。【結果】頻度・種類数の少なくとも一方が高い者を参加高群,いずれも低い者を参加低群としたとき,参加高・健康群は106人(69.3%)が該当した。参加低・健康群(28人,18.3%)は,一人暮らしが多く(p=0.024),参加高・健康群に比べ,ソーシャルサポート種類数は少ないが(p<0.001),その満足度には差はなかった。参加高・不健康群(9人,5.9%)は,参加高・健康群に比べ,地域活動に関するセルフ・エフィカシー得点が低かった(p=0.001)。【結論】地域活動への参加が多い者は,参加が少ない者に比べ,主観的健康感が高い者が多かったが,地域活動への参加が少ない者でも健康だと感じる者が存在し,地域活動参加状況と主観的健康感の組合せで特徴が異なった。
著者
長幡 友実 中村 美詠子 三浦 綾子 上田 規江 岡田 栄作 柴田 陽介 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.188-197, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
31

【目的】勤労者を対象とし,食費に関わる指標として等価食費とエネルギーコストを用い,これらの指標と栄養素等摂取量,食品群別摂取量,調理形態別料理摂取頻度との関連を検討した。【方法】静岡県西部にある事業所の従業員3,083名に自記式質問調査票および食物摂取頻度調査票を配布し,2,382名から回答が得られた(回収率77.3%)。性・年齢および食物摂取頻度調査票が有効であった2,160名を解析対象とした。等価食費(円/月)とエネルギーコスト(円/1,000 kcal)を三分位で分け,栄養素等摂取量との関連を共分散分析,食品群別摂取量との関連をKruskal-Wallis検定,調理形態別料理摂取頻度との関連をχ2 検定を用いて検討した。【結果】等価食費低群と比較して高群では,たんぱく質やビタミン,ミネラル類,食物繊維摂取量が多かった。また,穀類摂取量は少なく,野菜類,魚介類等の摂取量は多かった。エネルギーコスト低群と比較して高群では,炭水化物摂取量が少なく,一方,銅以外の栄養素等摂取量は多かった。また,穀類摂取量は,高群ほど少なく,その他すべての食品群別摂取量は,高群で多かった。また,両指標とも,白飯摂取頻度は高群で少なかった。【結論】勤労者において等価食費やエネルギーコストが高い者は,穀類摂取量や白飯摂取頻度が少なく,野菜類や魚介類摂取量が多いことが示唆された。
著者
鈴木 麻希 宮田 采実 和田 有史 武藤 孝子 小谷 和彦 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.223-231, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
26

【目的】食品に付したエネルギー情報の違いが,摂食者の心理・生理的応答に与える影響を若年女性において検討すること。【方法】ランダム化クロスオーバー試験として実施した。試験食は,466 kcalのフレンチトーストに,500 kcal表示または 1,000 kcal表示のカードを付した2種類とした。異なる2日間の9時前後に,前夜から絶食した若年女性12名にランダムな順序でいずれかを負荷した。官能評価と摂食への抵抗感,唾液中のα–アミラーゼ濃度を摂食前後に測定した。食欲感覚と呼気ガス(エネルギー消費量)は摂食前と摂食90分後まで測定した。呼気ガス測定値より食事誘発性熱産生を算出した。【結果】心理的指標では,甘さ,脂っぽさ,摂食への後ろめたさは,摂食前後ともに 1,000 kcal表示が 500 kcal表示よりも有意に高かったが,美味しさ,摂食への嬉しさ,食欲感覚(空腹感,満腹感)は,摂食前後ともに試験食による差はなかった。生理的指標では,唾液α–アミラーゼ濃度は,1,000 kcal表示のみ食後に有意に上昇したが,食事誘発性熱産生は,両試行で有意な差はなかった。【結論】本結果より,食品に付した高エネルギー情報は,若年女性摂食者の満腹感や食事誘発性熱産生を高めなかったが,甘さと脂っぽさを強く感じさせるとともに,摂食への抵抗感とストレスを高めることが示唆された。
著者
信田 幸大 前田 泰宏 曽根 智子 衛藤 久美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.210-222, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
38
被引用文献数
1

【目的】勤労者に対し,管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,野菜摂取量及び野菜摂取に関する行動変容ステージに及ぼす影響を検証した。【方法】勤労者男女を研究対象者とし,層別化無作為比較試験を実施した。解析対象者は194名(介入群100名,対照群94名,平均年齢43歳)であった。栄養教育プログラムは介入群のみに実施した。主評価項目は,行動変容ステージ及び野菜摂取量とし,副次評価項目として野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因とした。【結果】野菜摂取量の変化量については,プログラム終了直後では対照群に対して介入群で有意に高かったが,終了6週間後の調査では有意な差は認められなかった。一方,行動変容ステージの事前から終了直後の変化量は,対照群に対して介入群で有意に高く,終了6週間後でも同様に群間差が見られた。また,本プログラムは,野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因のうち,健康に対する利益や関心,セルフエフィカシー,所属する組織や地域からの環境サポートといった因子に対して働きかけていたことが示唆された。【結論】管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートとを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,勤労者の野菜摂取に関する意識や行動が変化し,野菜摂取量が増加することが示唆された。
著者
南 夏代 平井 和子 武副 礼子 岡本 佳子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.307-314, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

大阪府下の高校1年生 (男子399人, 女子509人) を対象に, 排便回数及び食生活や食物摂取量に関する意識についてアンケート調査を行った。なお, 排便回数が週に3回以下のものを“便秘傾向”とみなして集計した。1) 毎日排便のある割合は, 男子 (54%) よりも女子 (27%) のほうが低く, 排便回数が3回以下の“便秘傾向”の割合は男子 (16%) より女子 (19%) が高かった。また“不規則”と答えた割合も男子 (11%) より女子 (23%) が高く, 排便回数に性差がみられた (p<0.001)。男子の68%, 女子の83%が“便秘と健康は関連性がある”と答え, 排便は“毎日するもの”と答えた生徒は男子68%, 女子60%であった。特に, 排便が“不規則”と答えた生徒の場合に排便への認識が低かった (男女ともに, p<0.001)。排便時刻は,“起床~朝食直後”が最も多く, 排便回数が“不規則”と答えた生徒では, 排便時刻も“不規則”と答えた割合が高かった (男女ともに, p<0.001)。2) 健康を保つのに適した食生活を,“している”あるいは“だいたいしている”と答えた生徒は男子55%, 女子61%であった。望ましい1日の摂取食品量を,“知っている”あるいは“だいたい知っている”と答えた生徒は, 男子26%, 女子27%であった。女子では両認識と排便回数との間に関連性がみられた (各々, p<0.001, p<0.05)。3) 食品群別摂取量への意識は, 男子では“多量”と“わからない”が多く, 女子では“普通量”が多く, 性差がみられた (p<0.05)。食品群別摂取量への意識と排便回数との関連性は, 女子よりも男子に高くみられ, 排便が“便秘傾向”の男子では, 穀類・いも類・野菜類の摂取量が“わからない”が多く, 女子では野菜類・乳類の摂取量が“少量”と答えた割合が高かった。
著者
丸山 智美
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.57-66, 2005-04-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
82

Leptin is a 16kD protein that is produced by adipocytes and regulates fat stores and body weight by affecting the appetite and thermogenesis. It is known that a correlation exists between the circulating leptin level and body mass index. It is also known that the plasma leptin level is higher in women than men, particularly in pregnant women, and rises with the onset of puberty. Leptin has been shown in vitro to affect the hypothalamic-pituitary release of gonadotropin and ovarian steroidogenesis, suggesting that leptin may be associated with normal reproductive events. This paper reports the relationship among the plasma leptin level, sex hormones, nutritional intake and eating behavior for ovulatory functions.The serum leptin concentration was correlated with the serum estradiol concentration, and changed during the menstrual cycle. The serum leptin concentration in the group with an ovulatory dysfunction was lower than that in the group with regular ovulation. The fat intake, irregularity of eating behavior and smoking habits in the group with the ovulatory dysfunction were more prominent than in the group with regular ovulation. The lower leptin level may have reflected nutritional abnormalities and eating behavior.Leptin should therefore be considered a key factor for indicating regular ovulation or an ovulatory dysfunction.
著者
馬路 泰蔵
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.129-138, 1988 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

下宿している大学生男女各13人の3週間の食生活について, 自炊の仕方を中心に調査し, 以下の結果を得た。1) 男性は女性より自炊回数が少なく, 欠食・外食回数が多かった。この食事方法の男女差は, 主として朝食における差によるもので, 欠食はそのほとんどが朝食に現れた。また, 2/3以上の食事が自炊される時は, 欠食がほとんど現れなかった。したがって, 欠食の解消には自炊が必要なことが示された。2) 自炊を多く行うには, 調理能力が高く, 多種類の食品を用いて料理を自分で作れることが必要であると示唆された。3) 自炊回数は, 1食当たりの食品数との相関が強かったが, 食品組み合わせが良好になることとの関係はやや弱かった。4) 自炊回数の少ない対象者は, 非調理の料理または炒め物のような調理の簡便な料理に頼りがちであった。5) 基本調味料および混合・変形器具の所有数は自炊回数との関係が強いことから, 自炊の頻度が調味料や器具の所有に影響することが示された。6) 自炊が少なく, 欠食・外食が多い場合には, 嗜好飲料器具の所有数が多かった。この結果は, 自炊の少ない下宿学生は嗜好飲料で満足を得ようとする意向が強いことを示唆するものである。
著者
小松 美穂乃 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.171-178, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
29

【目的】栄養成分表示の正しい活用を目指し,数値計算が必要な栄養成分表示の読み取り問題を用い,表示理解も含めて栄養成分表示の活用状況を分類し,その特徴を検討する。【方法】2014年2月に消費者庁が実施した「栄養成分表示に関する消費者庁読み取り等調査」に回答した20歳以上の男女6,000人のデータを用いた。栄養成分表示の参考状況等の回答に不備がなかった者4,623人を解析対象者とし,活用状況を3群(「参考・理解群」「参考・非理解群」「非参考群」)に分類した。3群の属性をχ2 検定,食物選択動機を多項ロジスティック回帰分析(属性で調整)により比較した。【結果】「参考・理解群」は1,889人(40.9%),「参考・非理解群」は1,105人(23.9%),「非参考群」は1,629人(35.2%)であった。表示を参考にしているが,正しく読み取れなかった「参考・非理解群」には,女性,60歳以上,低学歴の者が多く,食物選択動機では「参考・理解群」と比べて,低カロリー(オッズ比(95%信頼区間):1.33(1.14~1.56))を重視し,おいしさ(0.47(0.32~0.68))を重視していなかった。【結論】数的思考力が高い日本でも,栄養成分表示の読み取りは課題であった。今後,栄養成分表示の理解度の詳細を把握すると共に,表示を読み取るスキルの向上やおいしさ等,食の全体的な価値への関心を高める教育が必要であると示唆された。
著者
湯面(山本) 百希奈 是兼 有葵 高木 絢加 新屋 奈美 落合 なるみ 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.152-162, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
13

【目的】フィリピン共和国では,2016年の教育改革でカリキュラムに健康(栄養の内容を含む)が追加されたが,指導案や教材に乏しく栄養の授業は十分に行われていない。そこで同国の栄養の授業推進に資することを目的として,日本の栄養教諭課程学生3名が中心となり同国内関係者と協力して現地小学校で栄養の授業を実践した。【方法】PDCAサイクルに基づき実施した。①Plan:アセスメントで文献調査とフィリピン共和国ボホール州タグビララン市現地調査を行い,栄養課題抽出後「栄養バランスの是正」を優先課題に決定し,学習指導案と教材を英語で作成した。関係者と現地で協議し修正とスタッフ研修を行った。②Do:同市立A小学校2年生1クラス(32名)で,3G FOODS(3食品群)でバランスを学ぶ栄養の授業を単回実施した。③Check(経過・影響評価):授業終了時に,児童の授業満足度と理解度を質問紙とワークシートで調べた。同時に,授業参観者(現地教師・JICA隊員等)による授業評価(現地のカリキュラムや児童への適合度)を実施した。④Act:評価結果を関係者と共有した。【結果】児童の授業満足度(楽しかった)は100%,理解度(ワークシートの問題への正答率)は91%と高かった。授業参観者による授業評価では,授業,内容ともに同国の教育カリキュラムや児童の理解度等のレベルに適していると評価され,今後活用したいとの意見も得られた。【結論】結果より,フィリピン共和国の栄養の授業推進につながる実践ができたと考えられる。
著者
駿藤 晶子 山本 妙子 吉岡 有紀子 硲野 佐也香 石田 裕美 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.143-151, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
17

【目的】本研究は,日本において,世帯収入と小学生の子を持つ保護者の食料品へのアクセスも含めた食生活状況との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】東日本4県の4地域(6市村)の19小学校に在籍する小学5年生(10~11歳)の保護者のうち,同意が得られた1,231名を対象に質問紙調査を実施し,そのうち920名を解析の対象者とした。世帯収入が貧困基準以下の群(低収入群)とそれ以外の群(低収入以外群)に分け,朝食を食べる頻度,家庭での食品の使用頻度,子どもの食事に関する項目,食料品の入手や買い物に関する項目,時間的なゆとりの実感,地域での子育てに関する項目と世帯収入との関連について,χ2 検定またはFisherの正確確率検定を用いて検討し,その後,各項目を目的変数とし,説明変数は世帯収入として二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】多変量解析の結果,低収入群は低収入以外群に比べて,子どもの健康維持に適した食事の量とバランスがわからないといった食知識がない者,経済的な理由もしくは買い物が不便であるという理由で生鮮食品や必要とする食物の入手が困難になる者,時間的なゆとりを感じていない者が多かった。【結論】小学生の子を持つ保護者は,世帯収入が貧困基準以下であると,子どもの健康維持に関する食知識がない者,経済的な理由もしくは買い物が不便なために食料品の入手が困難である者,時間的ゆとり感がない者が多いことが明らかになった。
著者
布川 美穂 佐藤 靖子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.163-170, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的】中学生を対象に牛乳に関する短時間教育を実施し,知識理解と牛乳飲用意志向上を含む意識変容を検討した。【方法】2017年8月から9月,中学1年生561名を対象に学校給食の牛乳に関する3分間の短時間教育(以降 3分教育)を実施した。3分教育は給食の時間等に誰でも簡単にできる口頭伝授の方法を用いた。その後,自記式質問紙にて学校給食牛乳に関する知識と意識調査を行い,7項目の質問項目では男女別のデータをχ2 検定,自由記述ではKJ法を用いて検討した。【結果】3分教育を受け,男子89.3%,女子93.5%の生徒が学校給食の牛乳に対して新しい知識を得ることができ,男子90.4%,女子93.8%の生徒が今後の教育を希望すると回答した。今後も毎日飲用したいと回答した生徒は,男子85.6%,女子73.5%であった。【結論】中学1年生に実施した3分教育においては,給食の牛乳に対する新たな知識を伝えることが可能であったが,今後も毎日飲用したいという意志向上の効果は把握できなかった。しかし,3分教育の継続希望が多かった結果より,継続的な教育の実施と,牛乳飲用意志向上を含む意識変容との関係性を検討していく必要が考えられた。
著者
石田 裕美 菊池 正一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.139-145, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

成人女子8人 (21~25歳) を対象に, 強制選択3滴法と一対比較強制選択全口腔法を用いて, 塩化ナトリウム水溶液の検知閾値と認知閾値の測定を行い, 測定方法間の比較及び閾値の時刻による変動を検討した。1) 滴下法による測定の幾何平均値 (標準偏差) は, 検知閾値10.3(2.8)mmol/l, 認知閾値28.6(1.9)mmol/l, 全口腔法によるものは, 検知閾値4.9(2.5)mmol/l, 認知閾値16.0(1.7)mmol/lとなり, 両閾値とも全口腔法のほうが有意に低値を示した。2) 滴下法, 全口腔法ともに閾値の時刻による変動は認められなかった。3) 閾値の個人差が認められ, 測定方法間の Spearman の順位相関係数は, 検知閾値rs=0.92(p<0.01), 認知閾値rs=0.90(p<0.01)と有意であった。また測定方法間に, 検知閾値, 認知閾値共通の回帰式y=1.0x-0.3が得られた (x, 滴下法; y, 全口腔法, ともに対数変換値)。4) 方法別にみた両閾値の変動係数に有意差は認められなかった。