- 著者
-
石井 康之
長平 彰夫
- 出版者
- 研究・イノベーション学会
- 雑誌
- 研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2_3, pp.185-199, 2014-09-30 (Released:2017-10-21)
特許データを用いた経済分析では,これまで特許出願された発明の価値を反映させるために被引用数が多用されてきた。被引用数で加重した発明の数と,企業価値や企業の生産性との関係を見る分析が多く存在してきた。同時に,被引用数以外にも発明の価値を表す属性について示唆した先行研究が存在する。たとえば特許出願された個々の発明が受けた異議申立や無効審判の数,IPC分類数,発明者数,外国出願の有無といった属性が,その価値の高さを示す属性である可能性が示唆されてきた。また,これら複数の属性を用いて単一の価値指標を算出する方法が先行研究によって示されてきたところでもある。しかし,これまで,こうした複数の属性を用いた属性統合指標が特許の価値を示すものとして経済分析で活用されるケースは,被引用数と比較するとほとんど存在しなかったといってもよい。そこで本稿では,6つの産業に属する企業62社の特許出願データを用いて,被引用数によって示される価値指標と,複数の属性を統合した価値指標(属性統合指標)とのどちらが,より適切に発明の価値を表しているかを比較分析することとした。コブ・ダグラス型生産関数に双方のストックを付加し,それぞれの付加価値に対する説明力を比較した。分析の結果,属性統合指標の方が被引用数よりも,産業界の共通認識に適合すると同時に,企業の生産性に対してより高い説明力を有していることが確認された。