著者
西田拓実 宮崎浩一 岩井邦紘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.1-6, 2013-05-16

本研究では,株式市場において取引のしやすさに関連する指標となるAmihudの非流動性やモデルから推定したBid Ask Spreadの各々が日本における代表的な景気指標である日銀短観を予測する力を有するかについて検証する.回帰モデルの説明変数に流動性指標以外の景気に対して予測力を有すると考えられている指標も加えて予測力が高いモデルの構築を試みる.その際には,流動性指標の回帰係数が状態に応じて異なる値をとるレジームスイッチング回帰モデルも採用し,流動性指標が日銀短観の予測に与える影響度と経済状態との関連性も議論する.This research addresses the forecasting powers of liquidity measure expressing smoothness of equity trading (Amihud illiquidity ratio or Bid Ask Spread) for Tankan short-term economic survey of enterprises, which is the representative indicator of business cycle in Japan. The other factors thought to have the forecasting power are also included in the explanatory variables of the model to make its forecasting power improved. The regime-switching regression coefficients for the liquidity measure are also incorporated in the model and the relation between the influence of the liquidity measure on the forecast and the economic regime is discussed.
著者
伊東 賢二 宮崎 浩一 回渕 純治
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MPS-86, no.6, pp.1-6, 2011-11-24

本研究では,小型株と大型株のポートフォリオリターンを対象に,株式売買のしやすさを表現する流動性指標 (流動性リスクの代用変数) と株価リターンの関係をレジームスイッチングモデルに基づき考察する.特にマーケットファクターに関する回帰係数もレジームに応じて異なる値をとることができるように既存モデルを拡張したモデルを用いて検証を行う.また,いくつかの仮定を置くことになるが,決定係数や回帰係数のt統計量の考え方を導入したうえで検証を行う.
著者
Urano Sachi
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MPS-84, no.11, pp.1-6, 2011-07-11

We present a new method to evaluate the impression of paintings, in terms of a mathematical modeling and quantitative assessments of impression in western painting. The present method is based on a detailed modeling of various factors and elements that consist of the composition of the painting. Impressions of 20 subject-people for 50 paintings are measured using the semantic differential method, which are compared to the impressions calculated with the present method. Their correlation is analyzed with Akaike's Information Criterion (AIC) standard. A strong correlation is obtained.
著者
田中 侑希 田中 美栄子
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MPS-88, no.14, pp.1-6, 2012-05-10

人が生成した乱数列のことを人間乱数と呼び,被験者の体調や生成方法によって数列の特徴が変化することが知られている.人間乱数を個人で識別するためには乱数列に個人の癖(特徴)が反映される生成方法を考える必要がある.本研究では乱数列に個人の癖が反映される生成方法として,乱数生成時の思考度合が異なる2種類のデータを採取し比較を行うことで両者の特徴を捉えることを目的とした.採取したデータを用いて様々な指標を計算した結果,直感的に生成した場合と熟考して生成した場合とで明確に差が現れず,どちらもある程度個人の癖が反映されることがわかった.そこで8種類の特徴量となる指標を用いてSOMによる個人分類実験を行ったところ,熟考データに比べて直感データの方が個人を分類する上で,より適していると思われる結果となった.また,特徴量のうち,データ採取時の被験者の行動パターンを反映するものが重要であったことから,データ列の解析だけでなく被験者の行動を指標として取り入れることによって個人分類の可能性が高まることがわかった.
著者
下久保 弘樹 北 栄輔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-2, 2014-12-02

本研究では Kinect センサーを用いて歩行動作から個人認証を行う方法について述べる.提案手法では,Kinect センサーを用いて人体の身体特徴量,人体歩行時の関節の角度,座標の変位などを取得して特徴量とする.サポートベクタマシンとニューラルネットワークを用いて,これらの特徴量から個人認証するアルゴリズムを定義する.解析例では,被験者 10 人に対して個人認証実験を行った結果,平均適合率はサポートベクタマシンで 99.0%,ニューラルネットワークで 99.8%となった.
著者
黒岩 将 安本 慶一 村田 佳弘 伊藤 実
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MPS-87, no.7, pp.1-6, 2012-02-23

合コン (お見合いパーティ) では,できるだけ多くのカップルを成立させたいという要求が発生する.本論文では,合コン結果から,カップルが成立しやすい男女の属性情報の組 (好相性と呼ぶ) を,対話型進化計算を用いて求めることで,理想的な合コンメンバー (合コン参加者名簿) を決定するシステムを提案する.提案システムでは,男女の属性情報の組を進化計算の解候補集合としてシステムに持たせ,合コンでのカップル成否を解候補の評価値としてフィードバックしながら,好相性を表現する解集合の獲得を目指す.提案システムを評価するため,比較手法として一般的に考え得る単純なグリーディ手法を用意し,実施した計算機シミュレーションの結果を報告する.
著者
廣安知之 福島亜梨花 山本詩子 横内久猛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.18, pp.1-6, 2014-02-24

2 つの異なる fNIRS 装置の脳血流時系列データから類似部分を抽出するアルゴリズム "Multipleanalogy Parts extracting algorithm (MaPea)" を提案する.MaPea では,完全一致部分だけではなく微小な差異を考慮した類似部分も抽出する.また,サンプル数の異なる類似部分を抽出することも可能にしている.脳血流時系列データが様々な要因に影響されていると報告されており,実際のデータは脳血流の活性化モデルと異なることが考えられるからである.また,時間軸上で時間差を持った類似部分の組み合わせも抽出できる.MaPea では,異なる時系列データ毎にベクトル化を行い,それらのコサイン類似度により評価する.2 つのデータセットから類似部分を動的計画法の概念を使い抽出する.MaPea の有効性を fNIRS 時系列データを使った実験により検証した.実際の fNIRS 時系列データを用いて脳機能の検定を t 検定を用いた解析手法と MaPea を用いた解析手法で行い,結果を比較した.MaPea による解析手法のほうが神経血管カップリングの理論にそって脳活動を探索できていた.以上より,MaPea が脳血流時系列データに対して有用であることが示唆された.
著者
但馬 康宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.18, pp.1-6, 2013-09-19

Twitter や Facebook に代表される他のウェブサービスとの関連が手軽にできる API を備えたソーシャルコミュニケーションツールによって,ウェブページに対する利用者からのコメントを容易に収集できるようになった.これらのコメントは短いが,その人の感覚的な意見であることが多いため,その分類,分析手法はテキストマイニングにおいて重要である.本研究では,ウェブのニュース記事に対して付けられた読者のコメントについて,その書き手がどのような感情を持って書き込んでいるかを自動分類する手法を提案し,その性能評価を行う.第一の手法は,単純なナイーブベイズによる分類であり,分類対象を形態素に分けた後に感情を表す確率変数の分布を求めることにより推定を行う.第二に,推定先の感情を 「悲しみ」 と 「喜び」 など対を成すものに分類し,その対の出現率で重みを付けた手法で推定を行う.第三に,そのような対となる感情の出現率で一度推定を行い,その後,対となっている感情のどちらであるかを推定する二段階の推定を行う.その結果,単純なナイーブベイズの適用よりも,対となる感情をもとに重み付けを行った後に分類を行う手法が高性能であることが明らかとなった.We propose emotion estimation methods for multilabeled short comments of web news sites. Our methods can be applied to sentiment analysis and opinion mining. At first, we show the perfomance evaluation of a Naive Bayes classifier. Then, we propose two improved methods which forcused on opposite emotions. The first improved method classifies each emotion label into two opposite emotions and uses their weights. We call this the weighting method. The second method consists of two stages of classifiers. The first stage distinguishes these oppositely classes, and the second stage selects one emotion from the opposite emotions. From our evaluation, we conclude that the weighting method is better than the simple Naive Bayes method.
著者
中村宏 小野智司 中山茂
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.22, pp.1-2, 2013-02-20

本研究では対話的な進化計算を用いて利用者の嗜好を反映した映像のダイジェスト生成手法を提案する.ダイジェストの適切さは質的評価と量的評価の 2 つの指標から評価する.質的評価はユーザの嗜好の反映度である.量的評価は再生時間の適切さと冗長性の少なさである.冗長性の評価やユーザ評価の推定に,Bag of Visual Words を使用した.提案手法ではユーザ評価の推定に特定のジャンルの映像に依存した特徴量を用いないため,ホームビデオ等の映像にも適用可能である.This paper proposes a video digest generation method based on interactive evolutionary computation. The proposed method evaluates solution candidates from the viewpoints of qualitative and quantitative criteria. As a qualitative evaluation, the proposed method maximizes user preference, and as quantitative evaluation, the method minimizes the redundancy and the inappropriateness of video length. The method uses features based on Bag of Visual Words, which are not depend on video categories and users, enabling even to summarize home videos.
著者
古川園 智樹 井庭 崇
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.20, pp.1-6, 2013-02-20

国家をネットワークのノード,同盟をネットワークのエッジとして捉えると,国際政治システムをネットワークとして分析することができる.我々は,この同盟ネットワークを,"the World Alliance Web (WAW)" と呼ぶことにする.本論文の目的は,WAW のトポロジー特性とその変化を分析することで,国際政治システムの特徴を明らかにすることにある.本論文では,1816 年から2000 年までのデータを一日毎に分析する.その結果,WAW は冷戦開始を境にノードとエッジが急激に増加し,米国を中心とするネットワークとソ連を中心とするネットワークが出現していることが明らかになった.また,それぞれのネットワークのトポロジー特性の変化から,米国とソ連の安全保障戦略が明らかになった.By defining nations as nodes, and alliances as edges, it becomes possible to look at international political system as undirected networks, which we call "the World Alliance Web (WAW)". In this paper, we explore the characteristics of international political system by analyzing topological properties of WAW. We analyze day-to-day data of alliances from 1816 to 2000. The results show that the number of nodes and edges rapidly increased after the beginning of the Cold War and a conneced component with USA as center and a connected component with USSR as center have emerged. In addition, we can observe security strategies of USA and USSR from topological properties of WAW.
著者
丸尾 亜希 横田 山都 横内 久猛 廣安 知之
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.31, pp.1-3, 2012-02-23

本研究では,問診票の電子化として,タブレット型携帯端末を利用し,Linked Data を用いた問診票アプリケーションを構築した.従来,紙媒体の問診票では,一度作成した問診票の変更は容易ではない.これに対して,提案するアプリケーションでは,医師が問診項目を自由に作成でき,変更が簡単にできる.これは,問診票アプリケーションが持つ質問項目は Linked Data 形式で表現されているからである.Linked Data は Web 上に蓄積されたデータを,利用することを可能にする形式である.つまり,Linked Data を利用している本システムでは,将来的に,Web 上の蓄積されたデータを使用できる可能性があると考えられる.In this research, electric medical query system on mobile tablet devices is developed. The query contents of the proposed data are constructed using Linked Data. In the conventional system, users such as medical doctors or home patients cannot change the queries freely. In the proposed system, users can change and add their queries smoothly. In this research, it is assumed that the medical data is stored with Linked Data format on the Web and this is expected in the future. Thus, this prototype system suggests the future style of the medical system where the linked data can help medical doctors and patients change the contents of medical system effectively.
著者
村上 直至 伊東 栄典
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.17, pp.1-6, 2010-12-09

国内で人気の高い動画投稿閲覧サービスに YouTube とニコニコ動画が有る.これらのサービスでは膨大な動画が蓄積されており,利用者が好みの動画を探すのは容易ではない.サービス運営側は検索語と並び替えによる動画検索を提示しているものの,細やかな動画検索は実現できていない.そこで,多数の視聴者が動画に付与するタグを用いた動画分類を考える.本研究ではニコニコ動画を対象とし,動画分類や類似動画提示のために,タグの出現頻度および共起出現を用いたタグの階層化を行った.階層化には ISR (Inter section ratio) 手法を用いた.It is very difficult to find favorite movie from recent poplar movie uploading and streaming service such as YouTube and Nicovideo, because there are a lot of movies in those sites. Movies are given not only metadata such as title, creator, upload date and movie length by the creator, but also annotations such as tags and comments by viewers. Those annotations may be used as folksonomy based data mining, because viewer may present his/her sympathy in annotation. In this paper, we analyzed hierarchy of tags using frequency of tag.
著者
湯浅 友幸 白山 晋
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.29, pp.1-7, 2010-12-09

ネットワーク上の現象は大局的構造から説明されることが多く,局所的な見地から分析されることは少ない.本稿ではノードの性質に注目した新たな分析手法を提案する.提案手法では自己組織化マップ (SOM) を用いたノード分類に基づくシミュレーションの可視化と分析を行う.そして,2 つのシミュレーションモデルを用いた実験により提案手法の有効性を示す.Most researches concerning the influence of network strucuture on phenomena on the network are carried out based on relationships between global statistics of the network structure and characteristic properties of those phenomena, even though the local structure has a significant effect on dynamics of some pheomenon. In this paper, we propose a new analysis method for some phenomena on networks based on the categorization of nodes. First, local statistics such as the average path length, the clustering coefficient for a node are calculated and are given to each node. Secondly, the nodes are categorized by Self-Organizing Map (SOM) and are grouped. Characteristic properties of some phenomenon are visualized into the grouped nodes. From some numerical results using two simulation models, the validity of our method is examined.
著者
芦田 尚美 高田 雅美 木目沢 司 城 和貴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.19, pp.205-208, 2009-02-26

国立国会図書館は,所蔵する明治から大正期にかけての近代書籍を近代デジタルライブラリーとしてWeb上で一般に公開している.公開されている書籍は全て画像としてデータ化されており,全文検索を用いて書籍内容の検索を行うことができないため,早急なテキストデータ化が求められている.しかし,旧字体を多く含み活字の種類が特定できない近代書籍はOCRソフトウェアによるテキスト化を適用できない.そこで,本研究では近代書籍に特化した活字認識の手法を提案する.National Diet Library has a public web site as Early-Modern Digital Library for books in Meiji and Taisho periods. Since the archive is digitalized as images, text search for the books is not applicable and, therefore, required. Conventional OCR systems are not a good tool for such modern books because they have various font sets and most of them are very noizy. In this paper, we propose a character recognition method for early-modern printed books.
著者
隅田 大勇 竹川 高志
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2022-MPS-138, no.23, pp.1-6, 2022-06-20

機械学習モデルの精度を向上させるためには,使用するモデルの特徴,およびデータのドメイン知識を踏まえたうえで特徴量エンジニアリングを行うことが重要である.機械学習モデルを構築する者がデータのドメイン知識を深く理解していない場合は,関連する知見の調査が必要である.そもそも得られたデータの変数間の因果関係が不明である場合は,詳細な探索的データ分析を行う必要がある.本研究ではデータからそのデータの変数間の因果グラフを推定する統計的因果探索の手法である LiNGAM を用いた特徴量選択と交互作用項の生成を組み合わせることによって,予測モデルの精度を向上させることができた.
著者
松田 真治 伊東 栄介
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2020-MPS-130, no.4, pp.1-6, 2020-09-22

本研究では麻雀における他家の待ち牌予測を,機械学習手法の Neural Network を用いて行う.先行研究では,他のプレイヤーの待ち牌を予測する場合,時系列情報を省いている.そのため,手順や局面の状況を利用できない予測となっていた.手順や局面の状況を予測に使うため,本研究では牌の切られた順序情報を学習に用いる手法を提案する.具体的に,麻雀ゲーム「天鳳」の牌譜データを対象に,先行研究の手法と本研究の提案手法とを適用し,待牌を予測した.その結果,先行研究と比較して F1 score を 4.16 % 向上させることができた.
著者
左 毅 北 栄輔
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2010-MPS-78, no.14, pp.1-4, 2010-05-14

株価予測のために,過去データを用いた時系列分析に基づくモデルがしばしば用いられる.これらのモデルでは,予測したい株価を過去の株価等と残差の線形和で近似し,分布には正規分布が仮定される.しかし,実データに関するいくつかの知見によれば,株価収益率の頻度分布は必ずしも正規分布しないことが示されている.そうであれば,ホワイトノイズに基づくモデルでは精度良く予測できない可能性がある.そこで,本研究では,ベイジアンネットワークを用いる方法を示す.ところでベイジアンネットワークは離散的な値だけしか扱うことができないので,クラスタリング手法を用いて株価を離散値に変換する.解析例では,日経平均株価をとる.解析結果より,収益率を適切に離散化すれば,一般的な時系列分析モデルよりも精度良く予測できることがわった.
著者
小泉 大城
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2017-MPS-114, no.3, pp.1-4, 2017-07-10

本研究では,形状および尺度パラメータをもつワイブル分布のパラメータの最尤推定に基づくハードディスクドライブ (Hard Disk Drive, HDD) の寿命時間の推定問題を扱った.2013 年から約 4 年間,総計約 9 万件の完全データとランダム打ち切りデータを対象とし,2 つのパラメータの最尤推定値を数値計算により求めて考察したところ,次の (1) - (3) の 3 点が明らかになった.(1) ワイブル分布の形状パラメータのほとんどは 1 より大きな値となり,これは Increasing Failure Rate (IFR) を強く示唆する.(2) 完全データにより推定された平均故障時間 (Mean Time to Failure, MTTF) は,それぞれのハードディスクドライブの MTTF の経験的下界を意味する.(3) 完全データとランダム打ち切りデータのそれぞれから推定される MTTF の比により,(2) の経験的下界の効率を定量化することができる.
著者
上水流 歩望 佐藤 裕二
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2016-MPS-107, no.4, pp.1-6, 2016-03-01

パズルゲームの一種であるピクロスの大規模な問題を解くための遺伝的操作の提案と,効率的に GA を実行するための決定的アルゴリズムを併用する手法の提案を行う.ランダムに生成した 20×20 のピクロス問題を 50 種類使用した評価実験から,提案するマスの確定法を行う GA が,単純にマスの確定法を行う GA より探索精度を大きく向上できる可能性を示す.
著者
山口 悟史 金 多仁
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2020-MPS-131, no.4, pp.1-6, 2020-12-10

ダムの放流計画を自動作成するための数理最適化手法「プログレッシブ動的計画法」を提案する.近年の水害の頻発を受け,従来にない放流計画が求められている.ダム放流量を急激に変化させない「放流の原則」を満たしつつ,大雨に先立ってダムの容量を空けておく「事前放流」,下流の河川流量を小さく抑えるために複数のダムからタイミングをずらして放流する「ダム群連携操作」を実現するために,提案手法は離散微分動的計画法を繰り返すことで段階的に解像度を向上させる.これにより提案手法は放流量を高い解像度(1m3/s)で探索する.N 川ダム群を対象にシミュレーション実験を行った結果,現在のダム操作規則では 3 ダムとも緊急放流に至るケースであっても,提案手法では緊急放流を避け,かつ下流河川のピーク流量を 41% 下げる解を見つけた.対象期間 1.5 日の最適化に要した時間は 191 秒であった.提案手法がダムの放流計画の自動作成に有用であると結論する.