著者
兼光 直樹 山本 晴彦 渡邉 祐香 村上 ひとみ
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.S07, pp.13-31, 2020 (Released:2021-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2018年7月豪雨において岡山県でも特に浸水被害が甚大であった真備町の箭田地区を対象に,アンケート調査を実施した。夜間の急激な水位上昇により避難の判断が困難で,避難率は高かったが住民は切迫した状況下にあり,非避難者では判断の遅れや誤りがあった。また,ハザードマップの理解や防災活動は,実際の避難行動には結びつかず効果があったとは言えない。浸水想定区域であったにも関わらず多数の犠牲者が発生した要因として,80歳代以上の高齢者の避難率の低さが挙げられ,特に同居家族1~2人の80歳代以上の高齢者では,身体的・精神的にも避難が困難であり避難率が低かった。被害拡大防止のため,地域内でのつながりを強め,高齢者への避難時の支援体制をつくることが重要である。
著者
本間 基寛 牛山 素行
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.40, no.S08, pp.157-174, 2021 (Released:2022-03-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

台風等の豪雨災害において,予想される雨量の規模から災害対応の必要性を呼び掛けるにあたり,降雨規模と想定される人的被害規模の関係性を明らかにしておくことは重要である。本研究では,平成30年7 月豪雨,令和元年台風19号,令和2 年7 月豪雨における犠牲者の位置データと1 km メッシュでの降雨観測データを分析することにより,降雨に関する各種指標から「推計犠牲者発生数」を算出する可能性について検討を行った。3 , 6 ,12,24,48,72時間の降雨継続時間雨量や土壌雨量指数といった7 つの降雨指標について,犠牲者発生数との関係性を分析した結果,降雨指標そのものではなく過去の観測最大値との比である「既往最大比」が犠牲者発生との関係性が高いことがわかった。豪雨事例によって災害犠牲者発生との対応がよい降雨指標が異なることから, 7 指標の既往最大比最大値を算出することで,豪雨災害における犠牲者の発生数を大局的に推計できる可能性があることを示した。一方で,球磨川での氾濫のような極めて局所的な豪雨による大規模洪水での犠牲者に関しては,犠牲者発生地点の降雨指標だけではなく,上流域も考慮した雨量指標による評価関数へと改良する必要がある。
著者
山本 晴彦 山崎 俊成 坂本 京子 山下 奈央
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.381-397, 2018

2017年台風18号が 9月17日11時半頃に鹿児島県薩摩半島を通過し,12時頃に鹿児島県垂水市付近に上陸した。その後は宮崎県を通過して日向灘に抜け,17日16時半頃に高知県西部に再上陸した。その後,台風は兵庫県,北海道に再上陸して,18日21時にサハリンで温帯低気圧となった。台風や活発な前線の影響で豪雨となり,大分県と宮崎県の県境の祖母山系を中心に17日の日降水量が500 mmを超える豪雨域が北西-南東方向に約20 km,北東-南西方向に約10 km の楕円形状の豪雨域が形成されていた。津久見市では17日の 9 時前後に第 1のピーク,11時過ぎに20 mm/10分間を超える豪雨に見舞われ,台風接近時の13~16時には東寄りの風が卓越して約 10 mm/10分間の強雨が継続し,日積算降水量427 mm を記録した。本豪雨により津久見川や支流の彦の内川が氾濫し,標高が低い場所や両河川の合流点付近では最大150 cm前後の浸水痕跡が確認され,住家の半壊,浸水被害が相次いで発生した。本災害による大分県内での住家被害は3,359棟に達し,洪水災害としては近年では甚大な被害であった。
著者
大矢 雅彦
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-17, 1990
被引用文献数
2

A Geomorphological Land Classification Map Indicating Areas Subject to Flooding is intended to enable us to estimate the nature and extent of floods, not only in the past, but also in the future. The reason why such survey maps indicate the features of floods is that the relief features of a plain and its sand and gravel deposits have been formed by repeated floods over the affected areas. Consequently, the micro-topography of the plain and state of sand and gravel accumulation can tell us the history of floods. With this proposal in mind I prepared "A Geomorphological Land Classification Map of the R. Brahmaputra-Jamuna and R. Ganges Plain" (Fig. 2) utilizing the LANDSAT images and the "Geomorphologic Map of the Brahmaputra-Jamuna River Basin (Fig. 3) by aerial photographs. Utilizing these maps I conducted research on the influence of the crustal movement and eustatic movement on the geomorphologic evolution of the plain. I have also researched the changes of the river course. I conducted the research on the features of the flooding caused by overflowing banks utilizing the LANDSAT images which was taken during the flood in 1987. Furthermore I prepared land use map related with inundation and water table utilizing the LANDSAT images of 1983. Comparing the above mentioned three maps I propose policies of the mitigation of flooding in the area.
著者
佐藤 翔輔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-174, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
17

1967年羽越水害に由来する新潟県関川村「たいしたもん蛇まつり」を対象に,インタビュー調査や資料調査にもとづいて,どのようにしてはじまったのか,どのようにして継続できているのか,災害伝承として機能しているのか,を明らかにすることを試みた。その結果,1 )「大したもん蛇まつり」は,祭を通した人材,特にリーダーの育成がもともとのモチベーションであり,災害伝承ありきではなかったこと,2 )大蛇をモチーフにしたのは,村に伝わる大里峠伝説では大蛇を退治するというストーリーと,大蛇が水害・土石流の象徴する神であることとが,羽越水害の犠牲者を供養するという位置付けと整合していたこと ,3 )竹と藁で作る大蛇という,「こわれるもの」「くちるもの」を媒体にすることで,更新の際に世代間をつなぐ役割が果たされていること,4 )村民に対しては強制をしないように,また,外部の人材資源を積極的に活用していること,5 )祭の由来を学習する学校教育を媒介することで,伝承の機能が果たされていること,などが明らかになった。
著者
山本 晴彦 早川 誠而 岩谷 潔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.31-44, 1998-05-30
被引用文献数
9

Meteorological disaster was caused by heavy rainfall during typhoon 9709 in northern part of Yamaguchi Prefecture and western part of Shimane Prefecture. At Fukuga area in Abu town, the amount of preciptation from July 26 to 28 was 922 mm, and amount of preciptation on July 27 was 606 mm. The farmland was flooded because of the flood of the Ohi and the Zoumeki rivers by increased water. A farm pond collapsed four places at Mutsumi village. At Aso and Era Farm ponds, rice plants were buried by earth and sand because of bank collapse. The loss of money in the agriculture of Yamaguchi Prefecture due to heavy rainfall with typhoon 9709 exceeded 6.6 billion yen.
著者
藤井 弘章 難波 明代 西村 伸一
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.283-335, 2021

本研究では,淡路島北部のため池の,地震被害・無被害を分けた要因とメカニズムを明らかにしょうと試みた。多変量解析(10ないし11アイテム)を,野島領域395(被害:112,無被害:283)個, 5 町領域1562(同じく348,1214)個につて行った。主なアイテムのカテゴリースコア(CS)のピークは,震央角度が6 個(野島領域:CS の大きさ順に,10,150,30,70,100,130度。5町領域:同じく,100,160,140,70,40,10度),断層角度が7 個(野島:同じく,100,80,20,160,40,140,120度),震央距離 が1 個(野島・5 町領域共10 km),断層距離2個(野島:-150,600m)あった。これらの結果は放射パターンから説明できた。CSのピーク角度と強調された地震波の放射角(理論値:P 波・SV 波:45度と135度,SH 波: 0 度と90度)との関係から,震央付近の第1 の強震点As と共に,第2の強震点As'があると言えた。
著者
山本 晴彦 川元 絵里佳 渡邉 祐香 那須 万理 坂本 京子 岩谷 潔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.185-205, 2019 (Released:2019-12-23)
参考文献数
23

2018年7月5日から8日にかけて,広島県中部では梅雨前線に伴い豪雨が発生した。安芸と天応の観測所では,48時間降水量が412mm,388mmを観測した。広島市の安芸区,坂町,呉市,熊野町,東広島市などでは豪雨により土砂災害が発生した。広島県では土砂洪水災害による死者は108人,全壊住家は1,029棟に達した。安芸区矢野地区の矢野川,呉市天応地区の大屋大川と支流の背戸の川では上流で土石流が発生し,住宅の全壊,住宅への土砂の流入や浸水被害が相次いだ。
著者
佐藤 翔輔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-174, 2020

1967年羽越水害に由来する新潟県関川村「たいしたもん蛇まつり」を対象に,インタビュー調査や資料調査にもとづいて,どのようにしてはじまったのか,どのようにして継続できているのか,災害伝承として機能しているのか,を明らかにすることを試みた。その結果,1 )「大したもん蛇まつり」は,祭を通した人材,特にリーダーの育成がもともとのモチベーションであり,災害伝承ありきではなかったこと,2 )大蛇をモチーフにしたのは,村に伝わる大里峠伝説では大蛇を退治するというストーリーと,大蛇が水害・土石流の象徴する神であることとが,羽越水害の犠牲者を供養するという位置付けと整合していたこと ,3 )竹と藁で作る大蛇という,「こわれるもの」「くちるもの」を媒体にすることで,更新の際に世代間をつなぐ役割が果たされていること,4 )村民に対しては強制をしないように,また,外部の人材資源を積極的に活用していること,5 )祭の由来を学習する学校教育を媒介することで,伝承の機能が果たされていること,などが明らかになった。
著者
水谷,伸治郎
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, 1990-12-31
著者
塚越 勝宏 西宮 仁史
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.477-485, 2006-02-28
参考文献数
1
著者
斎藤 徳美 山本 英和 佐野 剛 土井 宣夫
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.59-74, 2003-05-30
被引用文献数
1

岩手山では,火山性地震の頻発や表面現象の活発化に伴い, 1998年7月1日以降人山の規制が行われた。その後,噴火は発生していないものの,沈静化にも至らない状況で経過した。この間,経済環境の悪化が背景にあるものの,風評被害による観先客の落ち込みなど,地域経済への影響も考慮せざるを得ない状況となった。そのため,噴火の可能性が否定しきれないなかで,火山活動の監視や登山者の安全確保体制の整備をもとに,山頂まで入山規制の緩和を図るという,わが国では例のない「火山との共生」の試みが模索された。火山活動の監視や検討体制を整備し,研究者,防災関連機関,報道機関が連携する「減災の正四面体構造」(岡田・宇井, 1997) の実践のなかで,規制緩和のために必要かつ実効可能な安全対策の検討が行われた。そして,関係機関の連帯責任と連携を背景に,「気象台からの火山情報の適切な発表」,「登山者への緊急連絡システムの整備」,「自己責任の登山者への啓発」を三本柱とする安全対策が構築され. 2001年7月1日から10月8日まで岩手山東側登山道での入山規制の一時緩和が実施された。安全確保のためには,活動が活発化した火山には近づかないことが最善である。しかし,火山が有力な観光や地域振興の源である以上,有効な安全対策を構築し,地域社会と共生する取り組みが求められる。火山活動次第で規制や緩和を繰り返すいわば受け身の姿勢から,監視,評価,対策などの充実を図り,積極的な安全確保の対応に基づき入山を認めるといった岩手山での取り組みは,噴火周期の長い我が国の多くの火山にとって,先駆的な指針となりうると考えられる。本論文では,岩手山の入山規制の緩和に向けての登山者の安全対策の理念と具体的対策および今後の課題について論じることとする。
著者
牛山,素行
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, 2009-08-31

Community based workshop for disaster prevention has been held actively in recent Japan. However, there are not few uniformity workshops. We have applied a trial-and-error method about the workshop based on knowledge of natural disaster science. In this study, I would like to explain the method of workshop. First of all, a preliminary survey about primary cause of natural disaster is important. Various sources of disaster information are already released. For example, hazard map, landform classification map, estimation of damage, local plan for disaster prevention. A facilitator gives participant concrete explanation about the disaster of that area based on this preliminary survey. Next, participants read landform (altitude) of the area by detailed map. Moreover, participants discuss about problems of the area with engineer or public official. A result of discussion summarized in a problems list and a location map. There is an example to which residents started solution of the problems after a workshop. However, the effect of workshop has not been shown clearly yet. Effect verification of workshop is future subject.
著者
小坂,丈予
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, 1998-08-31

Volcanic gas disasters around active volcanoes all over Japan have occurred 27 times and 45 people have been killed since 1950. Configuration of the ground near fumarolic areas and weather conditions are the principal factors in gas accidents. Making gas-hazard maps, setting of restricted zones and installation of automatic alarm system with continuous monitoring are effective measures to prevent volcanic gas disasters. Knowledge of toxicity of volcanic gases and first aid are also helpful in reducing volcanic gas disasters.
著者
早川 哲史 今村 文彦
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.51-66, 2002-05-31
参考文献数
19
被引用文献数
3
著者
鈴木,介
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, 2005-02-28

The purpose of the present study is to develop and improve the simulation model of tsunami attack evacuation by including the experience, recognition, and knowledge of the people in each area affected by tsunamis. Firstly, we carried out two field surveys to clarify various factors that influence selection of evacuation routes for making a synthetic judgment model. We determined regional knowledge, altitude, road information, road signs, following process, and functions on the route to be major factors in the route selection. A comparison with results of a field survey in the case of a tsunami evacuation drill at the coastal village in Sendai city shows that with the improved model, we obtained more than 80% agreement on selection of evacuation routes and time to the safety area. Secondly, we designed a questionnaire to be distributed at the time of the drill, which provided us with information to determine route selection process, parameters and initial conditions of the evacuations. Furthermore, the improved model, including means of evacuation, such as by foot or in vehicles, is developed and applied to this area. In the case assuming that all residents evacuate at the almost same time in the night, it is suggested that most traffic congestion occurs on the major roads, which long time it takes people to complete the evacuation.