著者
岡田 将範 氏原 岳人 牛尾 亜紀子 大畑 友紀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.213-219, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

本研究では,岡山市居住者を対象としてマズローの欲求段階説に基づき中心市街地の訪問動機から来訪者の特性を明らかにした.分析の結果,1)中心市街地の訪問動機には,「非精神的欲求」,「精神・物質的欲求」等のタイプが存在することを確認できた.2)各欲求タイプは,年齢や性別に加えて交通手段選択も影響する.具体的には,「精神・物質的欲求」タイプは公共交通を,「非精神的欲求」タイプは非・公共交通の傾向にある.3)精神的欲求に関する訪問動機の中で,「人との交流」では,公共交通利用の傾向は相対的に弱く,「自己向上動機」や「精神的充足動機」で強い.さらに,各欲求タイプと「自由に使える自家用車があるかどうか」には関係性は見られず,自動車保有に依存しない傾向にある.4)自動車のアクセス性を高めるまちづくりは,高次の精神的欲求の充足にはつながりにくい可能性がある.
著者
加納 亮介 真野 洋介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.220-227, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9

本研究は、コンパクト・プラス・ネットワークの都市構造に基づいた持続可能な居住地を目指し、間口狭小地のスポンジ化が進む旧市街から住宅地開発が進む新市街までを含む富山県高岡市の中学校区を対象に、若年世代の居住動向と敷地活用の特徴を分析することで今後の居住誘導のあり方について考察を行った。その結果、中学校区という地縁を単位として学区外から流入する居住者と学区内で循環する居住者がおり、その割合は市街地の形成過程によって異なることが明らかになった。特に、学区内で循環する居住者が多い旧市街では、親世帯と同居や近居を求め、若年世代が主体的に複数敷地を活用することで、実家の居住継承や住み替えを行う住み継ぎの動きが見られた。こうした低未利用な複数敷地を活用することは土地利用方法や暮らし方の選択肢を広げ、若年世代が流入しやすく、次の世代への居住地の継承を促す役割を担っていることが明らかになった。高齢化や空洞化が進む今後、このような居住動向を活かしながら学区外から流入する居住者をどのように誘導するかが求められる。
著者
舘林 史子 緒方 稔泰 斉藤 潮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.439-444, 1999
被引用文献数
1

Our representations of landscapes change though both land development and psychological changes. During Taisho periods Ena-kyo had an experience that both physical and psychological changes happened simultaneously. This study focuses on the influence of these physical and psychological changes on our representations of Ena-kyo and the relationship between them. The results show that naming elements of landscapes is able to change our representations of landscape. This could be one of the adequate methods to remain the landscapes in our mind despite that the physical change of land actually occurs. Furthermore seeing artificial objects in natural landscapes and vice versa refer to our expectation of friendships between human and nature.
著者
籔谷 祐介 阿久井 康平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.772-779, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
18

本研究では、高校生の通学時における地域風土との接触が地域愛着の醸成に与える影響を実証的に検証することで、どのような接触機会が地域愛着形成に有効であるかを明らかにした。具体的には、富山県小矢部市内の高校に通学する高校生380人を対象にアンケート調査を実施した結果、自然や人との接触が地域愛着(選好)や地域愛着(感情)に影響を与えることを統計的に明らかにした。さらには、子どもの頃の地域愛着醸成がUターン意識や地域における活動への参加意識の向上につながる可能性が示唆されたことから、Uターン施策として、地域愛着を醸成する通学路の計画や地域の人や自然との接触機会を増やす施策が有効である可能性を示した。
著者
太田 裕通 神吉 紀世子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1208-1215, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
13

本研究はジャカルタのカンポン・アクアリウム(Kampung Akuarium)を対象としては居住者による「個人」が捉えるカンポンの姿から「集団」がつくり上げる空間や秩序と自己組織化との関係を明らかにするものである。このカンポンは2016年4月、州政府によって強制立ち退き・住宅撤去が行われたが、その後居住者復帰と再建の運びとなり今まさに一からカンポンの物理的環境を構築しようとしている。物理的環境の再建に向けて、既に開発されている「都市認識」へアプローチするダイアログ手法を導入し、居住者らが抱く「カンポン」の姿へ迫った。結果12名の居住者「個人」が捉える自地域の姿と成り立ちを明らかにし、その中での価値付けに基づく空間的関与が撤去後に仮設されたシェルターの住環境にも反映され、実現している空間があることを確認した。さらに、撤去により物理的環境が失われても自律的に残っている「集団」がTempat Nyamanの存在や、漁村、密集市街地ならではの空間性を共有していることを明らかにした。以上から「個人」の多様な捉え方と関与の実現を許容しつつ、同時に異なるレベルで「集団」によって自律的に生まれる秩序とその実現が住環境をつくり上げていくというある種の自己組織化が明らかになった。
著者
佐野 浩祥 渡辺 貴介 羽生 冬佳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1093-1098, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
14

This paper aims to clarify characteristics of Local Mt. Fuji in Japan, and also to clarify the relation Local Mt. Fuji and local-government policy. Some of findings are as follows; 1) 357 Local Mt. Fuji are classified into 5 groups from the characteristics, and classified into 3groups from the landscape. 2) The factor to characterize Local Mt. Fuji are flat summit and being visible from a central city area. 3) We suggested 'The degree of Mt. Fuji' and 'The degree of Local Mt. Fuji' as the measures which measure Local Mt. Fuji in a certain meaning to try overall positioning of Local Mt. Fuji. 4) The existence of Local Mt. Fuji has effectively influenced for loal government administration to some extent.
著者
秦 瑞希 浅野 純一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.197-204, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9

本研究は、地方都市の公立小中学校の再編実態を都市計画的観点から明らかにするとともに、非市街地部に存在する学校の拠点設定や拠点性の実態を示し、両者の関係性を明らかにすることを目的とする。調査結果から、1)地方都市の公立小中学校の再編の70%が非市街地部で起こっていたこと、2)公立小中学校へ都市マス上の拠点設定がされている事例は、休閉校が40校、存続・新設校が55校であり、非市街地部に立地するものが最も多いこと、3)学校再編と拠点設定の関係には、生活維持を担う施設を中心とした拠点エリアの併設施設群の一部に再編された学校が追加されてまちの中心に一体的な拠点を形成している「他中心施設併合拠点型」と学校の拠点性をつかって小さいレベルで拠点を形成している「学校中心小拠点型」の2型があること、4)市役所の支所があることで一体として学校に拠点性をもたせることができ、市役所の支所がない場合でも一定の生活利便施設の集積があることで学校に拠点性をもたせることができると考えられること等を明らかにした。
著者
村上 善明 秋田 典子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.191-196, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
6

本研究は静岡県伊豆市を対象に特定用途制限地域制度の導入による市街地開発への影響を検証するものである。本研究の狙いは、線引きの対象とならない小規模な地方自治体における土地利用コントロール手法としての同制度の検証により、人口減少化における土地利用コントロール手法に関する示唆を得ることにある。伊豆市ではコンパクトシティ政策の実現のために同制度を導入され、検証の結果住居や店舗が拠点に集積していることが確認できた。その一方で、歩行空間など住環境に関する課題があることもまた明らかとなった。
著者
堀籠 悠河 窪田 亜矢 益邑 明伸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.189-200, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は、特定の区域における最寄り品アクセス環境の把握において、特定の距離圏を徒歩圏として想定する従来の手法に不足する視点を考慮することで、より精緻な把握が可能となることを示している。本研究で提案する「包含率線」は、個々人の移動能力を考慮に入れた任意の距離圏とこれに含まれる区域内人口割合の関係を図示したもので、居住者ごとの移動可能距離の差異を考慮に入れた分析が可能となる。区域内の最寄り品アクセス環境は、「包含率線」全体のふるまいで把握できるが、市街化区域・ DID ・立地適正化計画の誘導区域の三区域の差異もそれぞれの「包含率線」を比較により明らかにできる。また、同一地区における高齢者・非高齢者の「包含率線」は一致し、高齢化率の高い地区は偏在する一方で、全体的には高齢・非高齢者は同程度に包含されていた。そして、既存手法の有効性も一定程度確認された。
著者
青戸 良宏 嘉名 光市 藤本 和男 赤? 弘平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.7, 2007

最近、都市計画分野において、「際」への関心が高まってきている。この空間は、性質の異なる都市空間に関係性を構築し、空間の質を高める可能性をもつ。そこで、本研究は、大阪の代表的な都市公園と市街地の境界部に存在する「際」において、その形成過程や、空間利用、空間構成といったつながりについて分析した。<BR>その結果、靭公園の公園際は、建築物敷地と公園が直接接する空間や公園へつきあたる区画道路など、市街地と多様な関係をもつ場所が確認された。そして、その公園際は、近年、飲食店が立地する傾向もみられた。今後の都市計画および公園計画においては、建築物敷地と公園が直接接する空間を意図的に生み出すといった公園際の計画手法を採り入れる可能性がありうる。また、その実現には、相互の良好な関係を保証する管理ガイドラインといったルールの整備も必要となるが、そのためにはより多くの公園際の調査や管理運営上の課題解決等について検討を深める必要がある。
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1245-1252, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,近代地方都市における界隈形成のメカニズム解明に向けて,土地所有形態選択問題として統計的モデルを用いた全く新たな都市形成史分析手法の提案を試みた.モデル構築において,所有筆=土地とその所有形態の同時選択確率を記述可能なCNL型の離散選択モデルを提案し,所有形態の選択に関して地主の態度の異質性を仮定した潜在クラスモデルを導入した.パラメータ推定には,隠れ変数を含む選択確率の対数尤度関数最大化問題の求解に適していることから、機械学習の代表的な手法の一つであるEMアルゴリズムを用いた.道後温泉本館周辺を対象に,旧土地台帳と付属図という近代史料をモデル推定可能な形式に変換する方法提案を行い,集積や継承,撤退といった近代地方都市の土地所有の変容の実態解析が可能なデータベース構築に成功した.さらに,非集計分析と提案したモデルを用いてパラメータ推定を行うことで,近代地方都市の地主の土地所有形態の選択に異質性があり,時間の経過とともに地租や立地条件といった要因が土地所有形態の選択に及ぼす影響が大きく変容していることを統計的に示すことができた.
著者
浅野 純一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.178-188, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
15

本研究は、集落地域整備法制定から30年が過ぎ、依然活用が低調に留まる現状を踏まえ、調整区域の開発管理の観点から集落地区計画を捉え、集落地区計画導入地区の現在の状況や他の緩和手法との関係性から調整区域の開発許可制度運用に与えた影響を明らかにすることを目的とする。適用した当該自治体では、圃場整備等営農環境が改善されたことを根拠に概ね当初の目標は達成したと評価しているものの、既存集落の環境改善や新規住宅供給等を個別に見ると、集落地区施設の整備は低調であり、地方都市を中心に宅地整備地区の充足がなされない地区も見られる。集落地区計画の後、市街化調整区域の開発許可制度緩和手法が充実する中で、集落法適用事例においても後続の制度の活用の仕方に格差があることを示した。以上の分析を踏まえ、調整区域の土地利用管理のあり方や集落法適用の今後のあり方を考察した。
著者
原田 陽子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.122-130, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本研究を通して主に以下の点が明らかになった。1)X団地では、未利用地が74%であり、その内の約76%が雑草や樹木が繁茂している。2)居住者の多くは雑草等が生い茂った空き地が多いことや車がないと移動しにくいことに困っている。3)不在地主の多くは高齢者で県外の人も多く、所有地への訪問頻度の少ない人も多い。不在地主の土地入手の動機では、資産として購入などが多く、今すぐにでも売却したいと思っているが売れないため所有地を持ち続けている人が多い。4)X市は土地の寄付を受け入れてきたが、維持管理費がかかるため事実上X団地の土地は対象外となり、集約化も頓挫した。5)雑草等管理事業に対して、不在地主に一定のニーズがあることが明らかになったが、一方で無関心な不在地主や連絡先の分からない不在地主も多い。
著者
谷口 守 戸田 常一 松本 竜也
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.97-102, 1988

This paper aims at clarifying the process of generating housing demand, in order to support effective planning for improvement of dwelling or housing conditions by occupiers. This study is composed of two parts: 1) The diversity of housing evaluation is analysed. and various types of housing are classified into several groups by using factor analysis. 2) Research concerning relations among ① Assessment of physical condition of the dwelling, ② Formation of ideas by occupiers to improve their housing condition. ③ The achievement or otherwise of those idea. The data are adopted from "Fact-Finding of Housing Demand", a survey carried out in Keihanshin Metropolitan Area.
著者
中川 真紀子 嘉名 光市 蕭 閎偉 Supagtra Suthasupa
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.105-112, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
14

グローバルツーリズムの時代において、観光地化は、経済の発展や雇用機会を創出する一方、外部資本の流入や雑多な事業の介入を招きかねない。そこで、既存の生業や地域空間を保全活用することは持続可能な観光開発にとって重要であると考える。タイ・バンコクは近年の観光地化が著しく、特に、Rattanakosin島は、政府による歴史的建造物の保全や観光開発が行われ、バンコクの主要な観光地として位置づけられている。本研究は、Rattanakosin島の歴史ある2つのコミュニティに着目し、地価や土地利用などの空間的側面と、住民や政府、コミュニティ組織、事業者といった地域関係者の意識と関係性から観光地化の実態を解明した。
著者
松中 亮治 大庭 哲治 井手 秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-72, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
20

近年、日本の地方都市では公共交通の利便性低下や中心市街地の空洞化といった問題に直面している。そのような状況下で、「コンパクト+ネットワーク」は都市を持続可能なものとする方策のひとつとして注目されている。本研究では、日本の36地方都市を対象として現地調査により賑わいを定量化し、その要因について人口規模別に分析した。その結果、人口規模によらず賑わいは自動車密度とほとんど相関がみられないこと、自動車到達圏人口は賑わいにほとんど影響をしないのに対し公共交通到達圏人口は強く影響することを明らかにした。
著者
山内 自希 阪本 一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.975-980, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
5 2

2011年3月11日の東日本大震災で被災した自治会へのアンケート調査を用いて分析し、実際に活動した実績を基に、(1)自治会が実際の災害時に有効に機能したかの実証 (2)日常の活動が災害時に実際に機能したかの実証 (3)さらに日常活動による交流が災害時に有効に機能したかの実証 を行った。さらに日常活動を通じて「人を知る」を深めることが、災害時の自治会活動を円滑にしたことを明らかにした。
著者
雨宮 護 齊藤 知範 島田 貴仁 原田 豊
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.7, 2008

わが国における「子どもの防犯」は,その必要性が主張される一方で,取り組みの基盤となる実証的な知見に乏しい状況にある.そこで本研究では,兵庫県神戸市の5つの小学校を事例に,小学生の日常行動と犯罪被害の実態を把握し,さらに既存の子どもの防犯を目的とした施策の評価を試みた.2396名の児童と1875名の保護者を対象とした調査の結果,以下の3点が明らかとなった.a)児童の放課後の単独歩行行動は,児童の歩行行動全体の約四分の一を占め,時間的には下校後の外出先への行き帰りに,空間的には通学路など少数の領域に集中する傾向がある.b)児童の単独歩行の集中する時間・空間に,犯罪被害も集中する傾向がある.c)既存の防犯対策は,児童の単独歩行が集中する領域を有効にカバーできていない可能性がある.以上の結果は,既存の子どもの防犯を目的としたまちづくりに,子どもの行動特性を反映させることの必要性を示唆するものと考えられた.今後は,例えば,子どもの単独歩行の集中する領域で,具体的な場所の改善を図るなど,場所だけに特化しない取り組みが必要と考えられた.
著者
鎌田 佑太郎 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.43-53, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究は外出先別に加齢に伴う訪問頻度の変化を定量的に把握したうえで,訪問頻度の変化が1日平均歩数に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,2016年と2018年の2時点の1日平均歩数と都市公園や商業地区といった外出先別の訪問頻度の変化を把握し,これら訪問頻度の経年的な変化が1日平均歩数に及ぼす影響を分析した.その結果,徒歩のみの外出中における中心市街地,運動施設・都市公園,商業地区への訪問の頻度の増減,自転車および公共交通による外出中における中心市街地への訪問の頻度の増減が1日平均歩数の増減に影響を及ぼすことを明らかにした.