著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.917-922, 2006

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
田中 晃代
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.482-489, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

兵庫県の特別指定区域制度を活用している13自治体の区域指定の状況と開発許可や建築許可の実態から,市街化調整区域における土地利用規制緩和にともなう区域指定制度の評価について明らかにした。その結果,1)特別指定区域制度ができる以前は,市街化調整区域内の土地の所有者のみ住宅を建築できるとされていたが,制度ができてから,区域内への転入者が増加した,2)特別指定区域制度は,地縁者の住宅区域や新規居住者の住宅区域などUターンのみならず,IJターンも視野に入れた幅広いメニューの制度であるといえるが,実際の建築許可の件数は,圧倒的に「地縁者の住宅区域」が多く,「新規居住者の住宅区域」の建築許可件数はきわめて少ない,3)立地適正化計画を策定することによって,市街化調整区域に居住するための環境改善の必要性が再認識されたといえる,4)地縁者の住宅区域の建築許可件数は増加したといえるが,「区画形質の変更」や「田畑の宅地化」など開発許可の件数は限られており,大きな農村集落景観の変化には至っていない,などがわかった。
著者
丹野 一輝 田中 健一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.467-474, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本稿では,ネットワーク上の移動者が経路途中で施設に立ち寄る行動に着目し,集客数が最大になるように施設を配置する問題を提案する.施設における利用者数が増加することによる混雑コストを考慮する点がモデルの大きな特徴である.提案モデルでは,移動者が (1)施設までの移動時間と施設の利用時間の和が最小となる施設を利用する,(2)総所要時間がすべての施設において一定以上となる場合にはどの施設も利用しない,と仮定する.提案モデルは,ある所与の施設配置における施設の総利用者数の算出に最適化問題を解く必要が生じるため,最適化問題を内包した最適化問題 (二段階最適化問題) として定式化される.そのため,局所最適解を求めるヒューリスティックな解法も併せて提案する.提案モデルを実際の道路網に適用したところ,施設で発生する混雑の度合いにより施設配置が大きく変化する様子が確認できた.
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.727-732, 2012

戦前の公園緑地計画における軍用地の位置づけを整理したうえで、戦災復興緑地計画において、旧軍用地にどのような位置づけが与えられたのかについて、戦前の公園緑地計画での位置づけとの関連も含めて考察するとともに、その後の見直し状況にも触れ、戦災復興期における東京の公園緑地計画に対する旧軍用地の影響を明らかにすることを目的とする。戦前は、使用中の軍用地も公園緑地系統の中に組み込もうとしていた点、戦災復興緑地計画では旧軍用地が積極的に緑地として決定されたが、戦前計画の影響が大きい点、1度の見直しを経てもなお、戦前計画を継承したものは大規模な公園としての位置づけが保持された点が指摘できる。
著者
田端 祥太 新井 崇俊 本間 健太郎 今井 公太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.459-466, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

本研究は重み付きシュタイナー問題の発見的解法を開発する.重み付きシュタイナー問題は平面上の与点を連結するグラフの辺の総コストを最小化する問題である.本研究で構築する解法は,ランダムドロネー網を用いて連続平面を離散化し,与点のボロノイ図の双対グラフに含まれる全域木を探索する.木の辺は,ランダムドロネー網上の重み付き最短路で与えられる.近似解の形状と解の総コストの観点から,本手法が既往の重み付きシュタイナー木の発見的解法より厳密解に近い解が得られることを示す.さらに,重みの変化に対する木の形状の不連続な変化を把握する.最後に本手法を,新たな旅客,貨物輸送手段として期待されている大型ドローンの航空路網に適用し,本手法の実用性を検証する.
著者
鳥海 重喜 大森 紘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.443-450, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年,生鮮食料品店にアクセスすることが難しい買い物弱者が増えている.この問題はフードデザート問題と呼ばれている.フードデザート問題を解決する方法の一つに移動スーパーがある.本研究では,まず茨城県日立市で実施されている移動スーパーの実施調査を行う.次に,道路勾配を考慮した代謝的換算距離を用いてフードデザート地域を分析する.そして,移動スーパーの効率的な巡回経路を数理モデルによって求める.計算した結果,1週間で総移動距離を30km弱短縮できることが明らかになった.本研究の成果は,移動スーパー事業継続への施策や,営業場所を検討する際に活用することができ,高齢者にとっての豊かな生活環境の構築に貢献できると考える.
著者
山田 育穂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.435-442, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
16

本研究では、空間解析において標本調査により収集された空間データを用いることが及ぼす影響を明らかにすることを目的として、統計的シミュレーションに基づく検証を行った。分析対象地域内に他より高い属性値を持つ空間単位のクラスターが存在する様々な空間パターンを確率的に発生させて、そのクラスターを検出する空間解析を、母集団全体を用いて行った場合と特定の抽出率で得た標本に基づき行った場合とで、結果がどのように変化するかを分析した。空間解析に使用したのは、空間的自己相関の分析に広く用いられるローカルMoran統計量である。分析の結果、第一種の過誤については、その発生回数・空間分布共に母集団に基づく解析と標本に基づく解析の間に大きな差はないことが分かった。一方、クラスターの検出力は、標本の抽出率が低下すると共に低下すること、その傾向は特にクラスターの辺縁部で顕著であることなどが明らかとなった。今後は、一定の検出力を保つために必要な抽出率あるいは標本数などについて、他の空間解析手法も含めた包括的な検証が望まれる。
著者
吉武 俊一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.415-421, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

都市縮減時代における、地域特性を反映した都市・地域再生の方向性・プランを検討する上で、小地域単位の将来人口推計手法をその根拠を構築するために活用することが考えられる。代表的な手法であるコーホート要因法・コーホート変化率法による小地域単位での推計は、国土交通省国土技術政策総合研究所が作成したプログラムで行うことができる。しかし、小地域単位での推計にはパラメータの不安定さという問題がある。本研究では首都圏1都3県と縮減が進んでいる郊外都市での分析を通して、将来人口推計の信頼性を確保するためには、人口規模・増減と住宅 所有関係・建て方から、対象とする小地域を絞ることが有効であるということを抽出した。また、人口減少・高齢化の進む地域において、今後の空き家・空き地の増加を予測し、対応を検討する上で将来世帯数推計が重要であるが、各小地域における世帯数の動向と住宅ストックの特性に関連性があり、従来のパラメータをあてはめる推計方法を小地域で適用することは難しい。本研究では、将来人口推計による人口減少と高齢化進行をもとにした、世帯人員・世帯数減少の推計による、空き家・空き地増加を予測する手法を提示した。
著者
下津 大輔 石井 儀光 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.400-406, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

物流分野における労働力不足が懸念される中,ドローン配送は離島や山間部などの過疎地を中心に有効な輸送手段として期待されている.ドローン配送普及のためには,民法により土地所有者の権利が及ぶ個人敷地上の空域における通行許可が不可欠であり,土地所有者に支払われる上空利用料に焦点を当てている.本研究の目的は,ドローンが個人の敷地上空を通過する回数と距離に着目し,ドローン配送のための上空利用料の基本システムを確立することである.積分幾何学のランダムラインの知見を用い,ドローンの飛行ルートが格子状敷地を通過する回数及び通過長の予測に,対象敷地の面積比と敷地形状が与える影響を調べた.特に,通過数と通過長間の相関係数の解析解を求めることで,都心部・地方部における固定料金と可変料金の使い分けの有用性を提案した.
著者
岡村 祐 中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.941-946, 2006

我が国の国会議事堂は永田町の高台に位置し、遠くは桜田門外から正面の広幅員直線道路を介したヴィスタが形成されている。このヴィスタは、お雇い外国人ベックマンによって1886(明治19)年によって初めて見出されたものである。それ以後、1936(昭和11)年の議事堂という眺望対象の出現を経て、1964(昭和39)年の正面道路の整備をもって完成に至る。そこで、本研究はこの約80年間にわたるヴィスタの構想と形成の過程、そして構想・計画図に描かれたヴィスタの具体的デザインを明らかにすることを目的とする。その結果、以下のことが明らかになった。1)ヴィスタの構想と形成の過程は4つの時代に区分される。2)その背景には、国会議事堂の建設という一つの揺るぎない軸と、明治期や東京五輪直前期にみられる首都東京としての顔づくり、または震災や戦災からの復興都市づくりというものが存在した。3)現在のヴィスタに較べて、道路の概形や視点場としての広場など、はるかに壮大で華麗なヴィスタが構想されていた。
著者
渡司 悠人 佐野 雅人 鈴木 勉 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.393-399, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

オフグリッド(独立電源)を導入するにあたり,配電網維持管理コストと,切り離された住民へ電力を供給する独立電源コストとの間にトレードオフが生じる.ここでのオフグリッドとは,電力会社の配電網から完全に分離した電力システムを意味している.本研究の目的は,このトレードオフを二目的最適化問題として定式化し,配電網の電源位置の影響も含めオフグリッド政策を分析することである.第一に,単純な地理条件を想定し,直線モデルを用いて,電源と建物の位置関係からオフグリッドの基本的構造を分析した.第二に,ネットワークモデルを用いて,高速処理の算法を提案するとともに,最適なオフグリッド領域は入れ子構造になることを明らかにした.さらに,現実の電柱と建物データを使用し,この算法をつくば市へ適用して,モデルで得られた知見を解釈した.
著者
山根 万由子 雨宮 護 白川 真裕 大山 智也 島田 貴仁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.385-392, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

都道府県警察が公開する犯罪発生マップでは,カーネル密度地図(KD図)の活用が推奨されている.KD図においては,その配色パターンと階級区分の組み合わせで地図の印象は異なるが,適切な組み合わせは明らかになっていない.本研究では,犯罪発生マップの地図表現の実態調査と,2つの実験により,KD図の配色・分類手法(階級区分)が犯罪多発地域の位置推定と犯罪発生頻度の見積もりに与える影響を明らかにした.実験の結果,等量分類が犯罪多発地域の位置推定を不正確にし,また犯罪発生頻度を多く見積もらせることなどが明らかになった.結果に基づき,犯罪発生マップをKD図で表現する際に留意すべき事項などについて議論した.
著者
柴田 立 室町 泰徳 曹 雪慧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.377-384, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本研究では,撮影対象までの距離が20m以下という限界はあるものの,写真撮影の際に,撮影者の位置,撮影方向と共に,撮影対象までの距離,すなわち撮影対象の位置情報が得られるスマートフォンカメラアプリを開発し,アプリを使用した写真投影法による調査を実施して,機能の確認を行った.また,撮影された写真の撮影者の位置,撮影対象の位置,撮影方向をArcGIS上にプロットし,アプリで得られた情報が地図上に容易に表現できることを示した.最後に,撮影対象の位置情報とモデルの活用により,実測を伴わなくても,異なる撮影対象に対する評価が混在することをある程度避けることが可能となり,撮影対象とその評価データをより良く関係付けられ,撮影対象の位置情報が得られるアプリの有用性の一部が示された.
著者
片山 茜 菊池 雅彦 岡野 圭吾 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.370-376, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

2000年代から「目標管理型事後評価システム」が日本の公共部門に導入された。ここには都市計画分野も含まれている。この評価システムは短期的なものであるが、他分野の研究では、この評価システムの長期的な問題を示しているものもある。本研究では、都市計画分野における目標管理型事後評価システムの問題を明らかにするために、過去の評価を題材として、長期的な観点から再評価することにより問題を検討する。そこで、ケーススタディとしてまちづくり交付金の過去の評価を用いて、長期的な観点から評価指標の計測を実施した。その結果、長期的な評価の結果は短期的な評価システムと同様の傾向を示さず、長期的な計画マネジメントが必要であることを明らかにした。
著者
松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.362-369, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
7

本研究では、地域未来投資促進法による特例措置に着目し、特例扱いによる土地利用調整の実態と課題を明らかにしている。同法は、工場や流通施設に限らず大規模商業施設を含めた幅広い施設誘致のために活用されており、8年縛り農地での農振除外など農村活性化土地利用構想と同じ理屈で同法の特例措置が求められていた。また、上位計画の土地利用方針と即地的に整合しない特例措置の活用も見られ、上位計画の方が同法の特例措置による開発に追認して策定されている。さらに、同法の特例措置による開発は、立地適正化計画制度の運用にも影響を与えている。
著者
宮脇 勝 唐 圻亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.25-32, 2014

本研究は、上海のイギリス人居留地を取り上げ、道路、街区、建造物の形成年代を、歴史的景観キャラクタライゼーションを用いて特定している。結論で、1)道路について、1855年以前に形成された歴史的道路が約44%を占め、1917年までに形成された道路が全体の約98%残されていることがわかった。2)街区について、最も古い1855年以前に形成された街区は15街区あり、戦前の1932年以前に形成された歴史的街区は、151街区中134街区と、極めて高い割合で歴史的街区が残っていることがわかった。3)1932年以前に形成された道路と街区の総計は、約90%を占め、イギリス人居留地は、歴史的価値が高いエリアと言える。4)建造物について、現地調査した130棟のうち、1900年以前に形成された最も古い建造物は10棟あった。また、最も多く残っている年代は1921年~1930年の40棟であることがわかった。
著者
山口 邦雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.354-361, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

本研究は,立適計画策定後の運用初動期での実効性の検証の第一歩として,届出・勧告制の運用実績と成果,課題を明らかにすることを目的として行った。全国の都市へのアンケート調査とケーススタディ都市における詳細分析を行った結果,以下のことが明らかになった。①届出制により立地誘導すべき開発・建築行為の動向把握の実績が積み重なりつつあるが,協議等による成果は少ない。②誘導すべき施設が,本来誘導すべき誘導区域「内」の立地より,誘導区域「外」の立地に多い都市が過半を占めている。③届出・勧告制の導入によるアナウンス効果を認める都市があるが,届出・勧告制自体の評価は低い。④ケーススタディを行った鹿児島市は,積極的に立地変更,計画変更の要請を行っているが,その時点で既に計画が固まっているなどタイミングを逸して成果があげられていない。また,非線引き都市計画区域内の白地部分での居住誘導に関する届出が多く,10戸以上の届出が半数以上と多い。⑤以上のことから,今後は立地誘導の実効性強化が求められ,事前相談制の導入や独自条例での対応の体系化など,法定外の独自の取組みによる実効性強化が検討課題となる。
著者
鈴木 凱 丸岡 陽 松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.346-353, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
4

本研究は、都市計画法施行令第8条1項2号イを根拠に、これまで指定されてきた市街化区域に対して公共交通がどの程度担保されてきたのかを把握し、今後の市街化区域内の公共交通の在り方に示唆を与えることを目的とする。対象都市に対して、市街化区域の拡大状況、公共交通網の変遷を再現し、公共交通が担保されていない箇所がなぜ市街化区域として指定されているのかをヒアリングで把握した。その結果、各都市ともにこれまでの市街化区域の指定は公共交通網の状況のみを以て区域を画定していないことが明らかとなった。郊外部の人口増加や都市機能の集積の変化に対応するため、適切にバスターミナルなどの交通結節点を設けるべきである。
著者
常泉 佑太 伊藤 香織 高柳 誠也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.665-672, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
21

公共空間の多様性を考える上で、個人の表現活動であるアートと公共空間の公共性はどのように両立するのだろうか。近年のアートプロジェクトの増加によって、アートと地域をつなぐ中間組織の役割が期待される。本研究の目的は、公共空間を利用してアートプロジェクトが行われる際に中間組織にどのような役割が求められるのかを明らかにし、中間組織が関与することによる公共空間でのアートの可能性について考察することである。東京アートポイント計画TERATOTERAを事例とした資料調査、インタビュー調査によって、中間組織の役割を明らかにする。結果として、公共空間を利用する際には、中間組織のアートマネジメントの専門性によるアーティストの作品の本質をできるだけ担保する調整、空間の管理者毎に文化的意義の共有を図る交渉、中間組織による責任の所在の明確化がアーティストの表現の創造性を担保することがわかった。さらに、ギャラリーとは異なりアートに対する基礎知識や前提についての知識を有していない市民の目にも触れる公共空間の環境がアートによる新たなコミュニケーションの可能性を広げていることがわかった。
著者
岡田 智秀 横内 憲久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.919-924, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

今回の東日本大震災を経験したわが国では、従来のような海岸空間のみで海の猛威を抑えるのではなく、海岸空間とその背後の市街地を一体的に捉えた広域的かつ複合的な新たな海岸まちづくりの視点が重要になると考える。この点につき、米国ハワイ州では、海岸地域を高波等から守るために住宅地を海岸背後へと誘導するとともに、海岸景観や海岸環境にも配慮するために、海岸部には海岸構造物を極力設置しない「海岸線セットバックルール(Shoreline Setback)」という制度を実施している。この制度は、海岸整備と背後のまちづくりを一体的に捉えるという意味において、わが国よりも進んだ取り組みといえ、さらに土地利用コントロールにより海岸構造物を極力設置しないことで海岸景観・環境にも貢献できるという利点ももつ。海岸地域のまちづくりのあり方の大転換が求められるわが国において十分に参考とすべき事例といえる。そこで本稿では、上述した要件を満たすわが国の新たな海岸まちづくり方策の一助とすべく、米国ハワイ州の「海岸線セットバックルール」の取り組みについて報告を行う。