著者
小野寺 聡 川又 政征 樋口 龍雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.95, no.299, pp.71-78, 1995-10-20

アナログ回路網では,フラクタルに基づいた回路網を構成することで,遷移域においてω^α(0<α<1,ωは角周波数)に比例する振幅特性を実現できることが示されている.本稿では,ディジタル回路網でこの振幅特性を設計する方法と,設計したディジタル回路網の構造について考察する.まず,アナログ回路網の伝達関数をs-z変換してディジタル伝達関数を求める.次に,アナログ回路網の伝達関数の構造を求めて,その構造を基にしてディジタル回路網の構造を導く.その結果,遷移域でω^αに比例する傾きを持つディジタル伝達関数を得られることと,設計したディジタル回路網が再帰的な構造を持っていることを示す.
著者
石橋 孝昭 金田 圭市 古屋 武志 五反田 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.146, pp.7-12, 2003-06-19
参考文献数
12
被引用文献数
2

本論文では,周波数領域ICAの成分置換問題について分割スペクトルのパワーと位相に基づく解決法を提案する.具体的には,2音源2マイクの場合を考え,音源の一つは第1マイク側に,もう一つは第2マイク側にあるという仮定の下で,分割スペクトルのパワー差と位相差を用いた成分置換の判定則を導出する.そして,この判定則に基づいて成分置換を修正する方法を提案する.この修正則は,通常のように音源が話者音声と雑音の組み合わせのときだけでなく,雨音源とも話者音声のときでも成分置換を高精度で解決し,しかも音源を順序通り正しく推定する特徴を持っている.そのため,目的音声のみを簡単に抽出することができる.提案法の有効性は実環境下での分離抽出実験によって確認した.この実験から,同時に,マイク間隔が広い場合にはパワーに基づく成分置換の解決法が有効であり,マイク間隔が狭い場合には位相に基づく成分置換の解決法が有効であることが分かった.
著者
早坂 昇 和田 直哉 宮永 喜一 畑岡 信夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.146, pp.31-36, 2003-06-19
被引用文献数
1

実環境で音声認識を使用する際,雑音が大きな問題となる.本報告では,ランニングスペクトルにフィルタリングを施し雑音の影響を低減する手法を提案する.ランニングスペクトルとは短時間スペクトルの時間軌跡のことで,音声認識において重要な特徴であることが知られている.提案手法は,パワースペクトルの時間軌跡にローパスフィルタを,対数パワースペクトルの時間軌跡にバンドパスフィルタをかけるというものである.4種類の雑音を人工的に付加した孤立単語認識実験の結果,特に低SNRにおいて現在広く用いられているRASTA法, CMS法に比べ高い認識率を得た.
著者
山口 博幸 小桐 康博 大矢 智之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.41, pp.69-72, 2002-05-02
被引用文献数
2

IMT-2000のマルチメディア通信サービスの中核のひとつである,ビジュアルフォン,および,映像クリップ配信について,標準化技術を解説する.3G-324M,MP4ファイルフォーマットとして3GPPにて標準化検討されたものである.さらに,それぞれの高機能化として,マルチリンク技術,Timed Text技術をとりあげ,設計指針を示す.
著者
大森 博雄 浅井 孝浩 浅井 孝浩 松本 正 冨里 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.537, pp.37-44, 2002-01-02

移動通信において, 数十Mbpsの高速伝送を実現するためにはマルチパスフェージングによって生じる符号間干渉の影響を軽減する必要がある.筆者らは少ない演算量で良好な特性を達成する繰返し等化を用いた整合フィルタ近似型SC/MMSE等化器を提案してきた.本報告では遅延分散の大きな伝搬路において整合フィルタ近似型SC/MMSE等化器を用いた繰返し等化の有効性を確認するために様々な条件で計算機シミュレーションによる特性評価を行った.また, 遅延分散の大きな伝搬路において整合フィルタ近似型SC/MMSE等化器を用いた場合の効率的な等化手法について示し, 計算機シミュレーションによる特性評価を行い有効性を確認したので報告する.
著者
高橋 正樹 三須 俊彦 合志 清一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.379, pp.1-6, 2003-10-16

放送コンテンツの中でもスポーツ中継は視聴率が高い.スポーツ中継は完成の域に達しているように見えるが,新たな映像表現を用いればより多くの視聴者へさらにわかりやすい映像を供給できる可能性がある.映像内の個々の物体(オブジェクト)の抽出・追跡技術を利用することにより,オブジェクトの特微量を利用した様々な映像表現の生成が可能となる.本稿では検出処理と幾何変換・作画処理を組み合わせた,スポーツシーンにおける新たな映像表現生成手法について述べる.また高速に移動するオブジェクトに対応したオブジェクト抽出・追跡法について述べる.さらに,上記手法を利用したスポーツコーダシステムを構築し,これを実験した結果仕様通りの映像が生成されることが確認できたのでこれを報告する.
著者
森 幸男 相川 直幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.95, no.227, pp.15-20, 1995-09-12

本研究では、主成分分析技法を用いて日本語単母音の特徴を抽出し、不特定話者の母音の認識を試みた。本方法は、音声の短時間スペクトル包絡を用いて主成分分析を行い、各主成分ごとの主成分得点の分布を得る。この分布の幾つかは、母音ごとに集中する傾向がある。そのような主成分で任意の音声の主成分得点を求め、あらかじめ求められた分布と比較し、候補母音を決定する。本研究では、40話者の5母音を用いて分析し、任意の14話者の5母音を認識させたところ、91.4%という比較的高い認識率が得られた。
著者
田宮 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.111, pp.37-44, 1999-06-11

大規模回路の遅延を改善する新しい手法を提案する。これは、回路に"paddingノード"をクリティカルでないエッジに挿入する。そして、ネットワークフローアルゴリズムで分離集合を求め、回路に適用すべき局所変換の最良の集合を見つける。この手法は、メモリ使用量と計算時間が、それぞれ、回路サイズに対して線形、多項式オーダになるため、大規模回路の遅延最適化に適している。 本手法と"選択関数"を用いるK. J. Singh法との比較実験を行った。本手法は適用した全ての回路について最適化できたのに対し、Singh法は3つの回路についてメモリ不足で最適化できなかった。また、遅延改善能力は両手法で同じ程度であった。
著者
関口 知弘 山田 功 坂庭 好一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.695, pp.19-24, 2000-03-16

非線形フィルタ、特に多項式フィルタの非線形システム同定問題・逆問題への応用が数多く報告されている。中でもボルテラフィルタは、高次統計量を利用して実現される"最小の2乗平均誤差(MSE)を達成する多項式フィルタ"として定義され、通信路の等化問題、エコーキャンセラ・音響システムの設計問題、画像処理問題等に頻出する上記問題群に極めて有効であることが知られている。しかしながら、多項式フィルタの演算量は次数に対して指数関数的に増加するため、単純な構造による近似構成が多項式フィルタの中心的な課題となっている。また、ガウス雑音の乗算が招く分散の増大はロバストな多項式フィルタの実現を本質的に困難にしている。小文では、まず、"低階数-ベクトル値-多項式フィルタ(RRPF : Reduced Rank vector valued Polynomial Filter)"を"最高次の係数行列(Dominant kernel)が低階数行列で与えられるベクトル値-多項式フィルタ"として定義する。次に、RRPFが"高次雑音の影響を低次元部分空間内に閉じ込めるロバスト性"と"演算量の大幅な削減"を同時に実現する理想的な構造を備えていることを明らかにしている。さらに、高次統計量が利用できる状況を想定し、"低階数ボルテラフィルタ(RRVF)"をあらゆる"低階数-ベクトル値-多項式フィルタ(RRPF)"の中で最小の2乗平均誤差を達成するものとして定義する。小文の主定理は、低階数ボルテラフィルタの(最適)係数行列が高次統計量から再帰的に決定されることを明らかにしており、RRVFの存在性を保証するとともに具体的な実現法を与えている。
著者
中山 彰 陸 金林 中村 哲 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.262, pp.57-62, 1998-09-11
被引用文献数
3

近年、ディジタル著作物の著作権を守る手段として電子透かし技術が開発されてきている。電子透かしは聴覚的には聴こえないということが重要であり、それを考慮した透かしアルゴリズムのひとつとしてLaurenceらの提案するMPEG心理音響モデルを用いた電子透かし法がある。ただこの方法は同時マスキングのみを考慮したものである。そこで本稿では心理音響実験の知見を用いて継時マスキングの定式化を行ない、それをLaurenceらの方法に導入し、もともとの方法との比較を行なった。その結果、両手法とも透かしの入った音楽でも高い品質を保っていることが明らかになった。また継時マスキングを組み込んだ場合の透かしの強度では、MPEGの符号化に対してLaurenceらの提案手法より、若干の改善が見られた。
著者
松尾 剛 山口 満 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.719, pp.1-6, 2004-03-09

本稿では,実際に演奏された実楽器音を対象とした,楽器音のスペクトル構造に基づいた楽器推定法を提案する.その原理は,和音の楽器音をくし形フィルタで単音に分離する.そして,このくし形フィルタの特性を考慮して,くし形フィルタの出力スペクトル構造と各楽器音ごとに用意されたテンプレートのスペクトル構造とのマッチングをとることで楽器を推定する.実際の演奏楽器音に対応するため,音の立ち上がり付近(音長の短い音に対応)のスペクトル構造を使用する.また,ある程度の周波数変動にも対応できるように,二重くし形フィルタ(H^d(z) = (1-z^<-N>)^2:零点付近の減衰大)を使用した.さらに,音源分離に使用したくし形フィルタの影響を補正するとき,くし形フィルタの出力スペクトルでなくテンプレートのスペクトルに二重くし形フィルタの利得を乗ずることで,二重くし形フィルタの零点付近の誤差の増大を抑えた.計算機シミュレーションは,ビオラ,バイオリン,ホルン,クラリネット,アルトサックスの5楽器を使用し,音域3-5オクターブの2和音すべての組合せ(重複音は除く)について行なった.その結果,平均推定誤り率10%以下で推定できた.
著者
密山 幸男 Andales Zaldy 尾上 孝雄 白川 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.146, pp.89-94, 2001-06-22

AES(Advanced Encryption Standard)をはじめとする次世代128ビットブロック暗号の高性能化を実現する"burstモード"と呼ばれる新しい暗号モードが提案されている. burstモードは, ストリーム暗号型の暗号モードであり, 16回のブロック暗号処理によって64ブロックの平文に対して暗号処理を行うため, 従来の暗号モードと比較して, 処理速度を大きく向上させることができる. 本稿では, ブロック暗号アルゴリズムにAESを用い, burstモードをソフトウェアおよびハードウェアによって実装し, それぞれの実装結果について比較評価を行う. burstモードのすべてをソフトウェアで実装する場合には, 従来の暗号モードと比較して約2倍の処理速度が達成できることがわかった. 一方, ハードウェアで実装する場合, すなわち, ソフトウェアで実装したAESとburstモードのアクセラレータコアを併用する場合には, 処理速度が4倍まで向上でき, 最大1.3Gbpsの処理速度が達成できることがわかった.