著者
石寺 永記 荒井 祐之 土屋 雅彦 宮内 裕子 高橋 信一 栗田 正一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.873-880, 1993-04-25
被引用文献数
16

我々人間の視覚系は,点パターンのように離散的な対象でも仮想線を知覚でき,色や明るさの段差がなくてもそこに明りょうな主観的輪郭を知覚することがある.これは補間問題と考えることができる.そこで,本論文では生理学的データに基礎をおく階層的視覚情報処理モデルを提案し,仮想線と主観的輪郭の知覚といった補間問題に応用する.主観的輪郭を形成するためには,実際の輪郭,主観的輪郭の通る点,そしてその輪郭の伸びていく方向を決定することが重要であり,本モデルではこれらの処理を並列処理で実現する.このモデルは2種類のSimpleセル(S typeとL type)の出力から,大域的処理により輪郭の検出と点パターンの補間を行うComplexセルと,主観的輪郭が通ると考えられるエッジの端点や曲率の高い点を検出するHypercomplexセルをモデル化する.この処理はすべて並列処理で行われる.またこれらの情報が伝達されるときに重み付けをすることによって主観的輪郭の伸びる方向を決定する.こうした階層的な処理によって得られた情報を統合することによって実際のエッジと主観的輪郭が同様に検出されるようなモデルを構成した.
著者
岡 一博 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1186-1191, 1997-05-25
被引用文献数
23 5

画像データの著作権保護の一手段として署名情報を画像内に密かに埋め込んでおく方法がある. 本論文では, その埋込み位置の決定に関数を導入し, ブロックごとに埋込みを施すことを提案する. まず, 署名したい原画像と埋め込みたい署名データを準備する. 埋め込む署名データはサイズが原画像の縦横各1/3である2値または多値画像とする. ここで原画像を3×3画素のブロックに分割し, 署名データ1画素に対し原画像の1ブロックを対応させる. 更に, 埋込み関数を用いて埋込み位置を一意に決定する. 次に, 選択されたビットプレーン上の画像情報に依存して埋込みを施す. このとき, 画質維持と署名の強度保持のため, 画素値の補正を行う. その結果, 画質の劣化が少なく攻撃にも強い署名法となることを示す.
著者
西川 俊 高橋 秀知 小林 正幸 石原 保志 柴田 邦博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1589-1597, 1995-11-25
被引用文献数
31

講演,講義などにおいて,健常者の話をリアルタイムで(即時に)ほとんど正確かつ忠実に文字に変換,表示し,聴覚障害者に伝える新しい音声情報の伝達手段として,リアルタイム字幕表示システム(RSVシステム)の研究開発に成功した.従来,聴覚障害者への音声情報の伝達手段は,口語(読唇術)と手話通訳と要約筆記しかなく,どの方法も大きな欠陥を持っていた.最近,コンピュータを利用したリアルタイム文字化システムの開発が試みられているが,多くの問題がある.RSVシステムでは,1991年に我々の1人(柴田)が開発した日本語高速入力用ステノワードキーボードを大幅に改良し,パソコンに接続する.そして,話者の話を高速入力,かな漢字変換し,高速字幕合成装置に送る.これを字幕として話者などを映したビデオ映像に合成し,リアルタイムで表示できる.このシステムの大きな特徴は,先にすべての読みを表示し,その後でかな漢字混じり文を表示することにより,聴覚障害者の中でも特に言語力の低い者に対する情報伝達を配慮したことである.そして,視聴実験により,この読みの効果を検証し,報告する.
著者
小杉 信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.672-681, 1994-04-25
被引用文献数
51

顔画像認識の全自動化のためには,画面内の顔の検出から認識まで一貫した処理が必要である.しかし,従来のように,形状特徴を用いた検出や認識を,柔物体の典型である顔に適用することは非常に困難である.そこで,本論文では顔画像による個人識別への適用を前提とし,濃淡情報のみを用いてCoarse-to-fine処理により画面内の顔画像を探索し,これを認識に適用する.まず人間の頭部を連続的な多重解像度モザイクを用いて画面内から見つけ出す.更にモザイクにより頭部領域内から顔の中心部を検出し,目や鼻部分のヒストグラムにより正確な位置を決定する.この探索アルゴリズムを動画から得た100人に適用した結果,髪により目が隠されているものなどを除く97%の探索・位置決めに成功した.更に,探索成功後の結果を認識に適用した結果,99%の認識率を得た.また,本手法は,画面内の任意の位置にある大きさの顔画像を探し出すことが可能であり,加えて,背景は不均一でもよいこと,カラーは不要であることなど,従来の入力画像に対する制約を大きく低減し得たものである.
著者
志久 修 三嶋 博文 姉川 正紀 中村 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2452-2455, 1993-11-25

本論文では平行線分の線幅に応じた直径をもつ円形テンプレートと画像との適合度(黒画素密度)を特徴量とした,平行線分の中心線抽出法を提案する.また,この方法を国土地理院発行の1/25,000地形図からの平行線分の抽出に適用した結果について述べる.
著者
中村 善一 豊田 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.510-518, 1994-03-25
被引用文献数
12

筆跡から個人性を機械的,客観的に抽出することは,筆者認識をコンピュータで自動的に行うための基礎的な課題である.本論文では,オンラインで入力された筆跡に現れる個人性を.書写技能に基づく特性により抽出することを提案する.筆跡に個人性が現れるのは,各個人が習得している書写技能に個人差があるためと考え,書写技能に基づいて機械的に抽出可能な特性値を定義した.これら特性値が個人性を表すかどうかを評価するために,4人の筆者が「チキュウ」という文字をタブレット上の一定枠内に筆記としたサンプル各々50個に対して特性値を抽出し,各特性値ごとに筆者4水準の一元配置分散分析を行った.その結果,230個の特性値のうち223個が有意水準5%で有意となり,個人性を表すことが確認できた.更に,特性値の個人内でのばらつき,特性値間の相関関係を変異係数(標準偏差/平均)と相関係数を求めることにより明らかにした.また,定義した特性値を用いた筆者認識の可能性を検討するために,同じサンプルについて識別実験と照合実験を行った.その結果,識別率100%,誤棄却率,誤照合率はともに0%であった.
著者
尾形 利文 牧野 秀夫 石井 郁夫 中静 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.3101-3107, 1997-11-25
被引用文献数
13

視覚障害者が屋内を単独歩行するための位置検出・案内方法について検討し, 実際に位置案内装置を開発して動作実験を行った. 具体的には, 屋内位置情報提供手段としてバーコードに着目し, 更に公共の建物内で利用することを考慮して, 通常我々の目には見えない非可視型バーコードを用いた. 位置検出・案内装置としてはCCDカメラ, パーソナルコンピュータおよび音声合成装置を用いて, 画像処理によるバーコード標識の検出と音声による案内を行った. 建物内での目的地誘導実験では, 作成した位置データファイルから目的地までの経路を自動探索し, 経路移動中に検出された誘導情報を音声により案内した. 大学内廊下で行った動作実験では, 移動速度3km/hの場合, 検出距離0.2〜1m, バーコード長240mm以上の条件下で位置情報を正確に取得し, 音声案内可能であることを確認した. 更に, 誘導実験では, 移動中にバーコード標識を検出し誘導情報の音声案内を行いながら目的地までの誘導が可能であった.
著者
牧野 秀夫 森下 文仁 阿部 好夫 山宮 士郎 長谷川 勝 石井 郁夫 中静 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.3094-3100, 1997-11-25
被引用文献数
12

3次元物体の実時間音声案内を目的に, 同一形状でも種類の異なる物体の識別が可能な音声案内方法を検討した. 具体的には, 従来開発してきたテレビカメラによる図形情報案内システムを基本とし, 更に物体識別には従来の画像処理による方法に代わり, バーコードを用いることとした. しかし, 物体に通常のバーコードを貼付する方法では, 視覚障害者用教材を他の障害者教育に応用する場合問題があり, また日用品等に応用した場合はプライバシー保護の点からも適切ではない. そこで, 通常の可視光領域では検出されず赤外線にのみ優れた反射特性をもつ顔料を用いたバーコードを作成し, これを物体識別用に用いる方法を考案した. 実験では, 識別用の積み木表面に貼付した見かけ上同一色のバーコードから個々の情報が自動的に読み取られ, 更にパーソナルコンピュータに接続された音声合成装置から3秒以内に物体案内情報が出力されることを確認した. 本論文ではリ非可視型バーコードの具体的な検出方法と音声案内結果について報告する.
著者
河田 佳樹 仁木 登 隈崎 達夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.1134-1145, 1996-06-25
被引用文献数
55

血管障害は, 心臓病や脳卒中に関連して死亡数の大きな疾病である. この診断や治療のためには微妙な動脈瘤や狭窄の位置, 形態, 大きさなどの定量的な血管の解剖学的情報が求められる. 本論文では, コーンビームCTで計測した高精度な3次元血管画像を用いて血管の診断や治療を支援する3次元血管像処理アルゴリズムについて述べる. コーンビームCTはX線源と2次元検出器からなる高速回転撮影装置で撮影したコーンビーム血管造影画像からショートスキャンのコーンビーム画像再構成法を用いて3次元血管再構成画像を得るものである. 3次元血管像処理アルゴリズムはこの3次元血管再構成画像から血管走行方向の抽出, 血管断面積の計測, 血管経路の選択や経路の距離計測, 病変形態の表示や容積の計測を可能にするものである. これらは3次元2値血管画像の細線化や血管芯線のグラフ表現抽出に基づいている. これらを患者の3次元血管再構成画像に適用し, 血管の診断や治療計画を支援することに有効であることを示す.
著者
黒柳 奨 岩田 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.267-276, 1996-02-25
被引用文献数
32

人間は, 両耳間の信号の時間差(ITD:Inter-aural Time Difference)と音圧差(ILD:Inter-aural Level Difference)を用いて, 音源の方向を知ることができる. 我々は神経細胞の機能を模倣したパルスニューロンモデルを用い, 2信号間からITDとILDを独立に抽出する聴覚神経系モデルを提案している. 今回, この聴覚神経系モデルの上層に新たなパルスニューラルネットワークを追加し, 入力信号間の特定のITD,ILDにそれぞれ特異的に反応するマッピングニューロン群を構築した. この新たな聴覚神経系モデルに対して, 計算機上でシミュレーションを行った結果, 入力信号間のITD,ILDの変化によってマッピングモデル内での発火ニューロンの位置が変化することが確認され, 本モデルが単純なパルスニューロンモデルの組合せのみでITD,ILDをマッピング可能であることが示された.
著者
浅野 三恵子 下辻 成佳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.131-138, 1997-01-25
被引用文献数
8

入力された帳票が既登録帳票のどのフォーマットに最も類似しているかを識別するシステムにおいて, セル (枠) に記入された文字や, コピーによって起こるかすれやつぶれ, スキャナ入力による傾きやゆがみなどに影響されずに, 帳票種別を識別する手法を提案する. 帳票文書は一般に, 水平・垂直線分に囲まれたセルで表現できる. セルの中心点をそのセルの代表点とした場合に, 帳票識別は入力画像から得られる点と登録されている帳票上の点とのマッチングの問題として考えることができる. 本論文では, この点マッチングを2次元ハッシュテーブルを用いて実現する手法を提案する. これにより入力画像上の点の揺らぎに対してロバストな帳票識別処理が実現でき, 登録帳票数が増加しても識別に要する時間はある程度一定に抑えることができる. また, 帳票文書同士の類似度によりシステムに登録されている帳票相互の類似性を数値化することができ, 登録帳票が指定された際にシステムの識別能力を予測できる.
著者
大平 栄二 阿部 正博 小松 昭男 市川 熹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.586-595, 1993-03-25
被引用文献数
5

本論文では,自然言語によるデータベース検索を主なタスクとするシステムを対象として,制限の少ない柔軟なユーザインタフェースを実現するための対話制御の枠組みについて述べている.ここでは,(1)まず対話管理の有効な方式の一つである発話対に基づいた対話管理法を,発話と発話対との間の結合関係をも統一的に扱うことが可能な枠組みに拡張するこにより,利用者とシステム間の対話の主導権を柔軟に制御することを可能とした.(2)更に,ATMSをベースとした非単調推論を適用することにより,利用者からの入力の解釈を誤った場合にも,その修復が可能な対話制御の枠組みを示した.これにより,効率的で,対話性の優れた検索システムを実現可能である.
著者
林 純一郎 村上 和人 輿水 大和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2102-2109, 1997-08-25
被引用文献数
10

横顔似顔絵生成では, 顔部品の輪郭認識が最も重要である. 特に, 平均顔と中割り法を用いて個人性特徴の抽出と誇張を行う場合には, 二つの顔の輪郭点の対応付けの自動化が似顔絵生成上, 重要かつ最も大きい課題となる. 筆者らは, 顔画像からの簡易な輪郭抽出法, 輪郭の階層的再標本化法, および中割り法と部分領域のアフィン変換の組合せによる輪郭と顔の内部部品デフォルメ法を組み合わせることにより横顔似顔絵生成法を構築した. そして, 正規化のための2点の手入力を除いて自動生成を実現した. 本論文では横顔似顔絵生成の完全自動化のための諸課題および改善手法について整理・検討する.
著者
池田 浩二 長岡 浩司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2109-2115, 1993-09-25
被引用文献数
2

本論文では,隠れ素子なしのボルツマンマシンを用いた学習における結合パターンの決定という問題を扱う.これは,統計的モデル選択問題の一種である.モデルの良さを表す規範のとり方としては多くの方法が提案されているが、ここではMDL(minimum description length)を用いた選択法を考える.ボルツマンマシンにおける結合パターンの総数は素子数と共に爆発的に増加するので,すべてのモデルの中からMDL最小となるモデルを探索する従来の方法では,計算量的に膨大な負担を強いられる.また,MDLを求める際の対数ゆう度の計算では,あらゆる状態に関するエネルギー値をすべて求めるという手続きが必要であり,これはボルツマンマシンの分散並列性を大きく損なう.そこで,MDLを用いたモデル選択において計算量を軽減するための方策として,「隣接モデル探索」および「対称化ゆう度差SLD」という二つのアイデアを導入する.簡単な場合について計算機シミュレーションを行い,これらの方法の有効性を検証する.
著者
久米 徹 新田 義彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.959-969, 1994-05-25
被引用文献数
6

日本語解析の基礎である形態素解析においては,考え得る多数の解の中から何らかのゆう度基準に従って適切な解を選択する必要があり,多くの研究がなされてきた.しかし,これらの研究知見の蓄積を統合的に分析し,更に高度なゆう度基準を発見・構築するためには,次の2者が必要と考えられる.すなわち,(1)ゆう度基準を記述するための見通しよい枠組みと,個々のゆう度基準から独立した汎用アルゴリズム,(2)ゆう度基準の性質を比較できるデータ.これに対応すべく,我々は(1)「最ゆう解=最小コスト解」の対応による一般的なゆう度基準記述法と動的計画法に基づく汎用解析アルゴリズムを構築し,これらに基づき(2)4種のゆう度基準の比較データを得た.(1)のアルゴリズムは最小からN位のコストまでに対応する解を導出でき,計算効率はO(nNlog_2(1+N))のオーダである.また,このアルゴリズムが通常のビームサーチ法よりも優位である点も示した.ゆう度基準の比較は,このアルゴリズムを利用し6種類の指標を導入して行ったが.その結果,文節数最小法を若千群細化するだけで,簡易かつ高精度のゆう度基準が得られることを示せた.
著者
栗田 多喜夫 麻生 英樹 梅山 伸二 赤穂 昭太郎 細美 章隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.257-266, 1996-02-25
被引用文献数
9

本論文では, 多層パーセプトロンの中間層の各ユニットに独立なノイズを加えたとき, 学習結果がどんな影響を受けるかについて考察し, ノイズを付加することによりネットワークが構造化されることを示す. 具体的には, 中間層が1層のみで, 出力層の入出力関数が線形のネットワークの中間層の各ユニットに独立なノイズを加えた場合の誤差逆伝搬学習アルゴリズムの平均的な振舞いを解析し, 中間層から出力層への結合荷重はより小さな値をとるようになり, 逆に, 入力層から出力層への結合荷重は中間層の出力が0か1に近づくようになることを示す. これは, 中間層の各ユニットにノイズを付加することにより, ネットワークが自動的に構造化されることを意味している. その結果として間接的に汎化能力の高いネットワークが構成されることが期待でき, 学習におけるノイズの役割として非常に興味深い. 更に, パターン識別問題と論理関数の学習問題に対して, ノイズを加えて学習した場合とノイズを加えないで学習した場合を比較し, ノイズを加えることによりネットワークが構造化されることを実験的に確かめた.
著者
金山 知俊 阪田 省二郎 増山 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1362-1373, 1996-08-25
被引用文献数
14

本論文では, さまざまな樹種に共通の分枝規則を再現し, 光, ホルモンの影響も考慮した樹木の生長モデルについて述べる. この生長モデルは, 光環境の影響による枝の枯死と屈曲, 植物ホルモンによる頂芽優勢, 休眠芽の休眠打破, 枝の短枝化, 屈光性, 屈地性などの樹木のさまざまな性質の再現, 節, 葉序などの樹木の分枝規則の正確な再現を, それぞれ光環境モデル, ホルモンモデル, 分枝モデルという三つのサブモデルを用いて実現している. これらサブモデルに与えるパラメータを変更することで, 環境の変化, 樹種の変更への対応を可能としている.