著者
畠 直志 岩井 儀雄 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.1983-1992, 1998-09-25
参考文献数
25
被引用文献数
28

本研究では, 接触型センサやマーカなどを装着することなく, また背景や人物が異なった場合などの環境の変化にもよらない人物のジェスチャを認識するロバストなシステムを提案する.本手法は, カメラから得られる動画像において人物の動き情報に注目し, 画像上の各点の動き(オプティカルフロー)を抽出する.そして, 得られた動き情報をKL展開(Karhunen-Loeve Expansion)することでジェスチャ空間を作成する.入力された動き情報は, そのジェスチャ空間に投影して次元圧縮し, 1次元のシンボルに変換する.得られたシンボル系列を解析する方法としてHMM(隠れマルコフモデル)を用いる.シンボルの時系列をHMMで学習させ, 各HMM内でのゆう度を計算し, 最大となるHMMのモデルを選択することで認識を行う.このシステムを評価するために, 楽器を演奏するジェスチャをサンプル画像として用い, 異なる環境のもとで学習者以外の人物によるジェスチャ認識の実験や, 主成分数を変えたときの認識率の実験を行った.
著者
石井 宏幸 山本 将生 鈴木 聡 神山 斉己 臼井 支朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2370-2378, 1994-12-25
被引用文献数
3

網膜水平細胞間を結合するギャップジャンクションは,視覚情報処理の基本である中心-周辺拮抗型受容野の形成に重要な役割を担っている.従来,こうした水平細胞間のギャップコンダクタンスが非線形特性をもつことや順応状態により動的に変化することが示唆されているが,そうした特性を生理実験によって直接測定することは著しく困難であった.本論文では,筆者らが先に提案したイオン電流モデルを用いた入力電流推定法に特定の信号伝達経路を制御する生理実験技術を適用し,水平細胞の膜電位応答からギャップコンダクタンスの動的変化を推定する手法を提案する.提案手法の有効性は,視細胞-水平細胞ネットワークモデルから求めた水平細胞モデル応答を擬似実験データとして用い,モデルのギャップコンダクタンス値が精度良く推定されることにより確認した.更に,コイ網膜L型水平細胞より記録した膜電位応答に提案手法を適用したところ,従来報告されている知見に近いギャップコンダクタンス値が推定された.
著者
納富 幹人 小澤 史朗 全 炳東
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.872-879, 1998-05-25
参考文献数
12
被引用文献数
25

多様かつ広域にわたる実世界空間から情報を獲得するためには, 移動体観測による柔軟な観測機構が必須である.我々は, 車両・航空機などの移動体からの観測によって, 広域実世界情報を獲得する技術の開発を目指している.ここではその一環として, 車両からの画像観測による都市空間構築に関して報告する.都市空間モデルは, 都市工学, 交通工学, 教育, アミューズメントなどの広い分野で活用され得る重要な情報基盤であるが, その獲得にはばく大なコストが必要であり, 手入力に依存する部分が多く, 用途や対象物を限定せざるを得ないのが現状である.この研究では, 道路を走行する車両からの動画像解析による, 都市景観のモデル化手法を提案する.この手法は動きステレオによる奥行計測を基本とする.建築物などの対象物体は, 観測経路である道路からの奥行と表面模様(テクスチャ)によって表現され, 帯状の距離画像として構造化される.合成されたアニメーション画像に対する実験では, 奥行の誤差は4.4%から8.13%であった.また走行車両から得た実画像に対する実験も行い, この手法に対する評価を行った.
著者
藤田 昌彦 雨海 明博 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1897-1905, 1996-11-25
被引用文献数
12

サッカード(Saccade,跳躍性眼球運動)最中の視標の系統的なステップバックによって適応が生じて,数百回の試行でゲインが変化する.本論文では,これまで試みられてきた視覚依存性サッカード以外に,記憶依存性サッカードにおいても適応が生じること,適応によって1種類のサッカードのゲインを変化させても,適応を施さなかった他の種類のサッカードのゲイン変化はわずかであり,同時に逆向きのゲイン変化も可能であるという適応の独立性を報告する.適応過程での修正サッカードは両者共通に,ステップバックした視標に導かれた視覚依存性サッカードであった.このことは修正サッカード中の信号のみで適応が進むという可能性を否定する.サッカードの誤差知覚がさかのほって第1サッカードを生成した信号に干渉を与えて学習が進むという可能性,あるいは,誤動作が記憶され,次回以降の同種同サイズのサッカードに働きかけて,学習が生じる可能性の2通りが考えられる.そこで視標の修正ステップに数百ミリ秒の遅延を与えたときの適応の有無を調べた.これらをもとにして,サッカードならびにバリスティックな随意運動一般における学習様式を考察する.
著者
澤井 秀文 木津 左千夫 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.450-452, 1998-02-25
被引用文献数
8

遺伝的アルゴリズムにおいて, 初期集団数, 交叉率, 突然変異率などの遺伝的パラメータの設定をする必要がない新しいアルゴリズム(PfGA)を提案し, いくつかの関数最適化ベンチマーク問題に対して単純遺伝的アルゴリズムとの比較から種々の優れた性能を示す.
著者
今川 和幸 呂 山 猪木 誠二 松尾 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.1787-1795, 1998-08-25
被引用文献数
22

手話動画像から両手を追跡するシステムにおいて, 手袋やマーカーを用いずに手を追跡する手法について述べる.素手の追跡の場合, 顔や首といった肌色領域の前では, 手が隠れて見えるという問題がある.そこで, 手話の場合, 手に比べ顔や首の動きが少ないことに着目し, 手話動画像から肌色領域(手・顔領域)を抜き出した画像と, その時間差分画像から求められる領域(ブロブ)をもとに, カルマンフィルタを用いて両手の位置を追跡する.更に, 肌色領域を抜き出す際に, 顔の前の手の動きが差分画像として安定的に得られることを目的とした色領域抽出手法を提案する.聴覚障害者の実際の手話動作による動画像に対して本手法を適用し, 肌色領域の前で動作する手の追跡に対して有効性を示し, その限界を明らかにする.
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.94-104, 1995-01-25
被引用文献数
14

本論文では,確率的スキーマ貧欲法(Stochastic Schemata Exploiter,SSE)と呼ぶ新しい集団型探索アルゴリズムを提案する.SSEは遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms,GA)と同様に,スキーマと呼ばれる超平面表現の処理により解空間の探索を進めるが,GAと比較して局所的探索処理を重視している点が特徴である.従来,GAに関しては,その適応的な大域的探索能力が長所として強調されてきた.これに対してSSEでは,現実の最適化問題への適用ではGAの大域的探索能力が必ずしも有効な形で反映されないという観点から,GAの大域的探索処理を,集団型探索の特徴を生かしつつ簡単化して,制御パラメータの数が少なく単純な探索法を実現している.論文中では,GAにおけるスキーマ処理を概観した後にスキーマ貧欲と呼ぶ性質を定義し,これに基づきスキーマ貧欲な探索アルゴリズムを構成,簡単なGA容易/困難テスト問題を用いて単純GAと比較・評価を行っている.
著者
渡辺 賢 岩井 儀雄 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.2713-2722, 1997-10-25
被引用文献数
21

本論文では, 単眼カメラから手を撮像し, 得られた画像特徴量から指文字を認識するシステムの構築を目的とする. 手のような関節物体は自由度が多く多彩な変形をするため, その形状を認識する際には, 対応付け問題, オクルージョン問題などのさまざまな問題が発生する. そこで, 本研究では撮像の際にカラーグローブを装着することにより, 手の特定領域の検出を正確かつ容易にし, オクルージョンにも対処できる方法を提案する. また, 実画像データをもとに計算機で生成したCAD理想モデルを用いた決定木の学習結果と, 実画像を用いた学習結果の検証についても併せて紹介する.
著者
石淵 耕一 岩崎 圭介 竹村 治雄 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.1218-1229, 1996-07-25
被引用文献数
19

本論文では, ユーザインタフェースのための画像処理を用いた実時間手振り推定手法について述べる. まず, 手形状が非剛体であることを考慮し, 画像処理を用いた手振り推定手順を定式化する. 次に, 実時間処理を達成するために, パイプライン方式並列処理を用いた実時間手振り推定手法を提案する. 特に提案手法では, 安定した手振り推定を行うため, 手の大局的特徴を用いて指先の誤検出点を除去する. その後, オクルージョンが手振り推定に与える影響について調べると共に, その解決策を複数カメラの配置問題に帰着させる. 更に, 提案手法を実際に装置化し, この装置を用いたユーザインタフェース環境の構築を通じて, 本手法の有効性を示す. その際, オクルージョン問題や手の姿勢問題が完全に解決されずとも十分なインタフェース環境が構築可能であることも併せて示す.
著者
加藤 敏洋 平田 富夫 斉藤 豊文 吉瀬 謙二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.1750-1757, 1995-12-25
被引用文献数
11

本論文では,サイズがN×Nの2値画像のユークリッド距離変換をO(N^2)時間で実行するアルゴリズムを与える.距離変換とは,入力として与えられた2値画像の各画素についてそこから最も近い0画素への距離を求める処理で,ディジタル画像処理における基本的な処理である.このアルゴリズムは,4近傍距離や8近傍距離などユークリッド距離以外の他の距離についてもアルゴリズム中の距離関数を置き換えるだけで距離変換が実行でき,その意味で一般的な距離変換アルゴリズムとなっている.また,p(1≦p≦N)台のプロセッサを用意すればO(N^2/p)時間の並列アルゴリズムが得られ,これまでの並列アルゴリズムより効率が良い.
著者
小林 稔 志和 新一 北川 愛子 市川 忠嗣 一之瀬 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.933-943, 1998-05-25
被引用文献数
21

映像や音声を統合することで, サイバースペースはより豊かなコミュニケーションが可能な空間になってきている.これまでのサイバースペースの移動インタフェースには, 手による操作や視線方向を利用したものが多かった.しかしコミュニケーションにおいて豊かな表現力をもつ手や視線を, 移動のためのインタフェースに利用するのは適当ではない.本論文は, HMDを用いたサイバースペースでの使用を前提に, 足による移動インタフェースを提案する.本論文のインタフェースでは, ユーザは円盤に乗り, 進みたい方向に体重を移動することでサイバースペース内を自由に移動できる.本論文では, まずサイバースペース内を移動するためのインタフェース技術を整理し, それをもとに新しいインタフェースの設計を明らかにする.最後に本インタフェースを使用したユーザの移動軌跡と使用感に関する報告をまとめ, 本インタフェースの効果を整理すると同時に, 身体の向きを変えるときの足の踏み換え動作によるノイズなど特有の課題を示す.
著者
小松 邦紀 瀬崎 薫 安田 靖彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.429-436, 1995-03-25
被引用文献数
51

従来の濃淡静止画像の可逆的なサブバンド符号化に用いられる1次元フィルタバンクにおいては,高域信号が,予測のために両側の画素のうち片側の画素しか用いられていない外挿予測誤差信号,あるいは両側の画素が用いられてはいてもレベル数が入力信号の4倍である内挿予測誤差信号であった.そこで,本論文では,高域信号のエントロピーを小さくして圧縮効率を高くするために,レベル数が入力信号の2倍である内挿予測誤差信号を高域信号とする1次元フィルタバンクを用いる可逆的なサブバンド符号化を提案する.更に,予測を上下左右の4画素により行う非可分型方式の設計も行う.複数の実画像を用いた圧縮効率の比較では,提案方式は従来の可逆的なサブバンド符号化よりエントロピーが0.1〜0.5bits/pel小さいこと,提案方式のうちのいくつかは可逆的な予測符号化より圧縮効率が高いこと,可分型の提案方式は非可分型の提案方式より圧縮効率の高い場合が多いことが示される.また,可分型の提案方式を用いた縮小画像の品質の評価では,低域フィルタのタップ数を大きくすることにより折返しひずみが抑制されることが示される.
著者
松岡 達雄 大附 克年 森 岳至 古井 貞煕 白井 克彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2125-2131, 1996-12-25
被引用文献数
39

近年,大語い連続音声認識の研究がアメリカ英語,イギリス英語,フランス語,ドイツ語,イタリア語などを対象に新聞記事を用いて盛んに行われている.しかしながら,日本語を対象とした,これに類する研究については報告がない.これは,主に,日本語が単語間にスペースなどのデリミタをおくことなく書かれるため,大語い連続音声認識において重要な役割を果たす単語N-gramなどの言語モデルの導入が容易でないためと考えられる.我々は,日本語新聞記事を対象として大語い連続音声認識の研究を進めている.単語N-gramを言語モデルとして用いるため,テキストを形態素解析することにより形態素(単語)にセグメンテーションした.形態素を単語と定義し,約5年分の新聞記事を用いて単語N-gram言語モデルを推定した.認識システムを評価するため,音声データベースを設計し,54名の話者の各100文ずつの音声データを収録した.この音声データベースの最初の10名の音声を用いて大語い連続音声認識の実験を行った.7 kの語いサイズに対して,no-grammar言語モデル,音素文脈独立音響モデルを用いた場合には単語誤り率が82.8%であった.単語bigram言語モデルと音素文脈依存音響モデルを用いることにより単語誤り率が20.0%に改善された.
著者
安藤 剛寿 関谷 好之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.2366-2375, 1998-10-25
被引用文献数
11

上級者と対等に勝負ができるコンピュータブリッジを開発するには, 不完全情報ゲームに特有なさまざまな課題を解決する必要がある.我々は, これに挑戦することにより新しい問題解決手法の研究を進めている.ブリッジにおけるオークションの過程では, 限られたビッドを通してパートナと情報を交換しつつ, 互いに協力して良いコントラクトに到達する努力がなされる.本論文では, 従来のプログラムより人間的(柔軟)なビッドができることを目指して立案した枠組みについて報告する.まず, ビッドにおけるパートナシップを共通の知識と仮説推論機構をもつ二つのエージェント間のコミュニケーションとしてモデル化した.その知識は専門知識と常識に分け, 前者から外れた相手のビッドに対しても, 後者を用いて対応できるようにした.また, パートナのハンドを推論する際には, パートナがこちらのハンドについてどのようなイメージをもっているかも推論し, より妥当な仮説の生成に努めた.その結果, 相手に応じた柔軟なビッドをするプログラムをつくることができた.
著者
越智 洋司 川崎 桂司 矢野 米雄 林 敏浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.3210-3219, 1997-12-25
被引用文献数
1

本論文では, 外国人の擬態語・擬音語学習を支援する辞書システム JAMIOS (Japanese Mimesis and Onomatopoeia Dictionary System) について述べる. 日本人は擬態語や擬音語を頻繁に用いる. しかしこれらは, 日本語独特の表現であり感覚的な語のため, 日本語を学習する外国人にとり理解が困難である. そこで, 我々は状況・発音・意味・使い方・感覚などに着目し, 擬態語・擬音語知識を表現した. JAMIOSは, (1)使用する状況をマルチメディア情報により提示し, その状況や発音形態を変化させることで関連語の検索できる, (2)擬態語・擬音語の特徴に沿ったさまざまな知識や関連語を検索できるなどの特徴をもつ.
著者
阿部 正博 酒匂 裕 佐川 浩彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2023-2030, 1993-09-25
被引用文献数
17

手話は音声に基づく自然言語とは異なる独自の表現形式をもつボディランゲージである.本論文では,手話通訳者の機能代行を目指す手話通訳システムにおいて,手話が認識された後の手話単語列を自然な文章に変換する言語処理方式について提案する.本手法は,意味主導型の格フレーム照合により手話単語列の意味構造を解析し,ルールベースの手法を用いて,省略されている格助詞や助動詞等を補充し,日本語として自然な表現に変換することを特徴とする.本方式をインプリメントし,手話入門テキストの123の手話例文を用いて実験を行った結果,76%の文に対して期待された正しい変換結果が得られた.また,データグロブ入力による実際の手話認識データを用いて変換実験を行った結果,手話の認識結果にはあいまいさが多く,非文を含めて多くの単語列候補が得られること,従って,正しい単語列候補の変換精度向上と並んで,誤った候補をリジェクトする機能が非常に重要であることがわかった.そのためには,今後,単語間の意味的関係だけでなく,表情や空間表現などの末使用情報の利用や,文脈処理が必要となる.
著者
内田 誠一 迫江 博昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1251-1258, 1998-06-25
被引用文献数
35

2画像間の最大一致を実現する画素間のマッピングとして定義される2次元ワープは, パターンに生じる変形に適応可能なテンプレートマッチング法とみなすことができる.本論文では新しい2次元ワープ法の枠組みを提案し, 基礎的な考察を行う.本手法の第一の特徴は, 2次元的な自由度をもちながら, パターンの位相を保存するワープを構成できることである.この性質はワープに対する単調性および連続性制約により実現される.第2の特徴は, 画像全体での最適性が保証されるように構成された動的計画法(DP)を, 最大一致の探索法として用いる点である.DPの利用により, 評価関数に対する微分可能性の制約がないなどの特長も生じる.実験により, 提案した手法の基本的特性を確認した.
著者
永田 明徳 岡崎 透 崔 昌石 原島 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.1230-1235, 1996-07-25
被引用文献数
41

顔は個人の特徴を表す多くの情報を含んでいる. 顔面像をパラメータで表現することができれば, さまざまな応用を考えることが可能となる. 本論文では, 顔画像にワイヤフレームモデルをあてはめ, 顔画像における形状情報と, 濃淡情報を分離し, 主成分分析の手法を用いて, 直交した顔基底を求めた. この顔基底を用いることで顔画像の効率的な空間パラメータ記述が可能となる. また, 本論文に示す手法は顔画像の分析のみではなく, 得られたパラメータからの顔画像の再合成が可能である.
著者
川戸 慎二郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2334-2341, 1994-12-25
被引用文献数
22

本論文では,多数の視点からの画像を用いて,画像間の対応点探索を必要としない3次元情報抽出法を提案する.画像に現れた特徴点とレンズ中心を結ぶ直線(逆投影直線)を3次元空間中に引くと,その直線は物体上の特徴点を通過する.そこで,対象空間をボクセルに分割し,逆投影直線がその交差するボクセルに1票ずつ投票するものと考えて,視点の異なる多数の画像から投票し,得票値に対してしきい値処理すれば特徴点を含むボクセルが共通ボクセルとして抽出できると予想される.しかし実際には,(1)ボクセルサイズの問題,(2)近接点干渉の問題,(3)遮へいの有無による得票差の問題などがあり,単純ではない.我々は,各逆投影直線ではなく各画像がボクセルを支持するという考え方を取り入れて(1)の問題を解決し,1回目の得票結果に基づいて2回目の投票を行うという2段階投票により(2),(3)の問題を解決することを提案する.この投票方法はボクセルの大きさに影響されないので粗いボクセルから始めて順次必要なボクセルのみを再分割していくアルゴリズムの構成が可能である.合成画像と実画像を用いて実験を行い,対象物の3次元情報が抽出できることを確認した.
著者
平子 賢一 藤田 広志 原 武史 遠藤 登喜子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.1334-1345, 1995-09-25
被引用文献数
52

乳房X線写真上で,乳癌との相関が非常に高い微小石灰化陰影を検出するための「3重リングフィルタ」を用いた新しい手法を提案する.微小石灰化像周辺は,その濃度値が中心に向かってほぼ一定に落ち込むような「円すい形」構造のパターンをもつものと近似できる.よって,3重リングフィルタは,自動抽出された乳房領域における濃度こう配情報を特徴量に変換し,微小石灰化像と類似したパターンをもつ領域を抽出(検出)するものである.本論文では,3重リングフィルタの原理を説明すると共に,その効果を検証するために,人工的に作成した模擬パターンを使用したシミュレーションを行った.その結果,悪性石灰化像のように形状が不整である検出対象にも適応できることを確認した.また,臨床データ102例を対象として解析実験を行った結果,その診断性能は真陽性率が90.3%であり,このとき画像1枚当りの偽陽性数は0.83個であった.更に本検出法が,従来法で問題となっていた背景トレンドの影響を受けにくく,検出性能が向上している点を確認した.以上の総合的な検討結果より,新しく提案した手法が微小石灰化検出のために有効であることが明らかとなった.