著者
松田 憲幸 柏原 昭博 平嶋 宗 豊田 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.326-335, 1997-01-25
被引用文献数
13

プログラミングを行うためには, プログラマは少なくとも, プログラムの動作について明確に理解しておく必要がある. しかしながら初心者の場合プログラムの個々の命令の振舞いを理解できても, プログラム全体の動作を正しく理解できなかったり, プログラム仕様から動作を想定できない場合がよく見られる. このような初心者を対象とする場合, 動作とプログラムコード動作とプログラム仕様の対応関係について説明することが重要となる. 本論文では動作の理解が特に難しい再帰プログラムを対象に, プログラムの動作を介したプログラミングを支援する知的教育システムについて述べる. 筆者らは再帰プログラミングのモデルを想定した上で, 学習者にとって理解が容易となるようにプログラムの動作を表現し, これをプログラムの振舞いと呼んでいる. 本論文ではこの振舞い表現を用いて, 再帰プログラムの設計過程および理解過程を支援する方法について論じる. 特に, 雛形を用いた解法による設計過程の支援ならびに, 振舞い表現の可視化による理解過程の支援について述べる. 更に振舞い表現の評価実験についても述べる.
著者
内藤 貴志 塚田 敏彦 山田 啓一 山本 新
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.2019-2026, 1998-09-25
被引用文献数
16

車両を対象とした認識には, 車両の検出と車種の認識および車両の同定がある.車両の同定は車両そのものを特定することで, その代表的なものは車両のナンバープレート認識である.ナンバープレート認識は, これまでの交通流計測から, これからは有料道路における課金のための車両同定, 駐車場における契約車両の判定, 更に特定車両の到着監視などへの応用展開が期待されている.筆者らは, これらへの適用を考え, 直射光のあたる昼間から低照度の夜間まで環境の明るさが広く変化する条件下で, 走行中の車両に対してもぶれが少なく, かつハレーション部のない画像を得るための撮影方式を開発した.本方式は, 入射光をビームスプリッタにより光強度が異なるように透過光と反射光の2方向に分光し, それをそれぞれのCCD素子で撮影した2枚の画像を合成して, 移動物体でも画像のぶれなく, かつ広いダイナミックレンジの画像を得るものである.試作した撮像装置では, 1.5×10^4のダイナミックレンジをもつシーンをシヤッタースピード1/1000秒で高速に撮像することができる.併せてナンバープレート認識手法を開発し, 試作した撮像装置を用いたナンバープレート認識のプロトシステムも開発した.このシステムは466枚の走行車両画像に対して98.7%の認識率を達成し, ナンバープレート認識システムとしても有効であることが示された.
著者
村本 健一郎 松浦 弘毅 椎名 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2353-2360, 1994-12-25
被引用文献数
13

落下中の降雪粒子の雪質を測定することは,降雪時における電波減衰を解析するために重要である.雪質は降雪粒子の密度(含水量)に大きく依存しているので,雪質は密度により表すことができる.本研究では,落下中の粒子の密度を長時間にわたって自動的に測定することを目的として,まず,画像処理による降雪観測法を用いて,落下中の個々の降雪粒子の粒径と落下速度を測定した.このとき同時に地上に落下したすべての粒子の重量を電子天びんを用いて測定した.粒子の粒径と落下速度のデータより得られる単位空間を通過するすべての粒子の体積の値とそれらの粒子の重量のデータより,落下中の粒子の密度の計算をした.更に,粒子の密度に影響を与える因子について考察することにより,画像処理データだけを使って,降雪強度を推定する手法を提案し,実際に適用した結果,実測値との良い相関が得られた.
著者
麻生 武彦 江尻 全機 宮岡 宏 小野 高幸 薮 哲郎 六車 和彦 橋本 岳 安陪 稔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.69-78, 1994-01-25
被引用文献数
4

我々は,これまで過去2度にわたり行われた南極昭和基地におけるオーロラの単色光両眼ステレオ観測データをもとに,オーロラ発光の3次元構造を推定するオーロラトモグラフィの研究を行ってきた.基本的な手法は代数的方法の範ちゅうに属し,オーロラの特性を考慮した発光モデル関数のパラメータを,非線形最小2乗法により推定するものである.従来,データ解析ならびに再構成の信頼性,望ましい観測点配置等についての数値シミュレーションにより検討を行ってきた.これらの知見をもとに,地球磁気子午面に沿った比較的長い基線長でのオーロラ観測が1991年11月から12月にかけて,アイスランドにおいて行われた.ここでは,観測の概要,オーロラトモグラフィ解析のアルゴリズム,ならびに得られた解析結果について述べる.
著者
柳沼 良知 和泉 直樹 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.547-558, 1996-04-25
被引用文献数
27

本論文では, ドラマの映像情報とそれに対応する文書情報であるシナリオとを結合することによって映像編集を行う方式を提案する. すなわち, 意味的内容を反映したシナリオ文書を従来のテキストエディタにより編集し, あらかじめ行っておいた映像, 音声, シナリオ文書間の時間的対応付け(同期)結果を用いて, 編集されたシナリオ文書に対応する映像, 音声の部分を選び出し, 並べ直すことで, 映像, 音声の編集を行う. これにより, 映像情報に比べて抽象度が高くデータ量の少ないテキスト情報を用いて映像の編集ができると共に, シナリオ文書に記述されている意味的内容に従って, より高次な映像の編集ができるという利点が得られる. 本論文では, 更に, 複数のドラマ映像を用いて行った実験および評価について議論し, 本手法がドラマ映像の編集, 加工に有効であることを示す.
著者
土井 美和子 福井 美佳 山口 浩司 竹林 洋一 岩井 勇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2042-2052, 1993-09-25
被引用文献数
9

文書の構造化作業の負担を軽減することを目的に,文書構造の抽出技術を開発した.技術文書では全国大会の予稿集12,000件,ビジネス文書では例文集,社内事務文書約500件を調査し,構造抽出規則を導き出した.開発した文書構造抽出技術は,技術文書であれば,章,節などの階層構造と,図表への参照構造を抽出する.ビジネス文書であれば,手紙文,記事文などの階層構造を抽出する.技術文書とビジネス文書の区別も文字列の解析により行う.誤り率は,規則化に用いたのと別の予稿集や社内文書で評価した結果,技術文書で10.0%,ビジネス文書で23.0%であった.また,参照構造の抽出誤り率は8%であった.文章中に埋め込まれた式や図表などを扱えるように改良を行った後のフィールドテスとでは,技術文書で5.4%,ビジネス文書で15.4%であった.また手作業よりかなり短い時間で構造化を行えることも事例により確認した.開発した文書構造抽出技術はレイアウト属性と結合することにより自動レイアウトシステムとして商品化した.本抽出技術はレイアウト以外にも,既存文書のハイパテキスト化などに今後非常に有効である.
著者
横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1667-1675, 1993-08-25
被引用文献数
34

3次元シーンの理解には距離情報が不可欠であり,さまざまな距離測定法が考えられているが,最も汎用的で対象に何ら影響を与えない受動的手法に両眼ステレオ法がある.両眼ステレオでは対応点探索が問題であり,一般に画像上での明るさの変化点等の特徴点でしか距離が求まらない.このため,密な距離マップを得るためには後処理として曲面再構成処理が必要で,その場合にはオクルージョンや不連続部の検出が問題となる.本論文では,ステレオ画像から不連続を保存しながら直接,対象の密な距離マップを生成する手法について述べている.対応点間での特徴の類以度を評価する項と画像内での視差の区分的連続性を表す制約条件から,ステレオ対応問題を視差に関するエネルギー汎関数の最小化問題として定式化し,弛緩法によって,不連続部を保存しながら反復的に密な視差マップを計算する.視差推定過程でエネルギーの局所最小点に陥るのを回避するための簡易的な手法として,ピラミッド型ステレオ画像を用いた接続法を採用している.
著者
斎藤 豊文 森 健策 鳥脇 純一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1675-1685, 1996-10-25
被引用文献数
70

本論文では,ユークリッド距離変換を用いた3次元ディジタル2値画像に対する薄面化および細線化手法を提案し,その性質について述べる.本論文の手法は従来提案されていた手法に対して,特に図形の回転依存性が大幅に改善されている.3次元画像の薄面化/細線化は2次元画像における細線化に対応する基本的な処理であり,図形の構造解析などに利用される.しかし,従来提案されていた手法は図形を主に6方向から順に削っていくというものであり,入力図形が回転した場合,薄面化/細線化結果が大きく変化していた.本手法ではユークリッド距離変換の結果を用いることにより,図形の回転依存性を改善した.
著者
鵜沼 宗利 武内 良三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1822-1831, 1993-08-25
被引用文献数
30

コンピュータグラフィックスの表現能力が飛躍的に伸び,さまざまな分野でリアルな物体表現,リアルな動作表現が求められている.コンピュータグラフィックスで扱う物体の中でも人間は非常に身近な存在であり,非常に多くの用途が考えられるが,いまだに十分な表現がなされていない.本論文では,人間の歩行動作を簡単な手続きでリアルに表現する手法を提案している.まず,実測した人間の歩行動作を周波数解析し歩行動作の基準となる基準歩行動作と動作の特徴を表す特徴量成分に分離し,それぞれをデータベースに登録する.歩行動作の生成は基準歩行動作と特徴量成分を足し合わせることにより行う.歩行動作の変更は特徴量成分を差し替えるだけでできる.また,特徴量成分の重みを変えることによる特徴量成分の内挿・外挿表現ができる.例えば二つの成分の中間の歩行表現あるいは特徴量成分を強調した歩行表現などである.重みを変化させると歩行動作は滑らかに変化する.更に,特徴量成分を複数足し合わせることにより新たな歩行動作の生成といった実測データ以外の歩行表現もできる.
著者
唐 力 大矢 宗樹 佐藤 嘉伸 田村 進一 内藤 博昭 原田 貢士 小塚 隆弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.1009-1017, 1994-05-25
被引用文献数
1

標準MRI撮影中の体動により画像上に生じるアーチファクト(偽像)の除去手法について述べる.臨床診断においてしばしば問題となる呼吸に伴う頭部の上下移動を想定して位相エンコード軸(Y方向)のみの剛体平行移動を扱う.従来の発見的な繰返し処理による除去法と異なり,本論文では,MRI撮像過程と画像の特性の解析に基づき,MRI信号中の体動成分と画像成分を単純な代数演算により分離できる新しい拘束条件を導出する.MRI信号に対して読出し方向(X方向)の1次元フーリエ変換を行った後のY方向スペクトルの位相値は,画像自身の成分と体動の成分の和になっている.一方,頭部などの断層像において周囲の皮下脂肪部分の密度はほぼ均一であることが知られており,その上のY方向の1ラインの密度分布は対称とみなせる.密度関数が対称の場合には,スペクトルの位相は位置に対して,線形的に変化する.従って,その線形関数からずれた成分を体動として分離できる.この拘束条件に基づき,根拠の明確なアーチファクト除去手法を提案する.更に,体動の変動が激しい場合や,対称性がくずれる場合における影響を解析し,それに対する対応策も検討する.シミュレーションにより,本手法の有効性を明らかにする.
著者
阿部 敏彦 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1771-1781, 1996-11-25
参考文献数
18
被引用文献数
27

本論文では,音声信号の瞬時周波数(IF)に基づき,雑音環境下においてロバスト性の高いピッチ推定を行う一手法を提案する.音声信号のピッチ推定において重要な要素は周期的成分であり,特に雑音が加えられている場合に,非周期的成分の存在はピッチ推定に悪影響をもたらす.まず,瞬時周波数に関する振幅スペクトルを定義し,そこでは周期的成分と非周期的成分の分布には明らかな違いがあることを示し,瞬時周波数の局所的分布(モーメント)に基づき音声信号の非周期的成分を抑圧する手法を提案する.次に,瞬時周波数に関する振幅スペクトルからピッチを求めるための評価関数を提案し,それに基づきDP(dynamic programming)を用いて連続的なピッチを求める手法を提案する.
著者
今水 寛 宇野 洋二 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.932-941, 1996-05-25
被引用文献数
14

計算論的なアプローチでは, 生体が外部座標(視覚の作業座標など)と身体座標(関節角や運動指令など)との間の座標変換に対応する内部モデルを獲得し, 速く正確な運動制御を可能にしていると考えられている. 本研究では身体座標を含む座標変換の内部モデルが適応的に変化するかどうかを調べるため, 位置計測装置とCRT画面を用いて, 肘と肩の関節角をそれぞれ0.5倍, 1.25倍するように視覚環境を変換した条件下で, 被験者に繰り返し到達運動の訓練を行わせた. 到達運動の正確さは次第に向上し, 学習が起きていたことを示していた. 更に, 実際に使っている腕とは反対側の腕の関節角変換を学習させたところ, 実際に使っている腕の関節角変換よりも難しかった. また, 実際に使っている腕の関節角変換を両腕で交互に学習するときには, 学習効果の両手間転移があることがわかった. 以上の結果は, 被験者が上記のような変換を身体座標での線形変換として学習していたこと, 中枢神経には身体座標を含む座標変換の内部モデルが存在し, 外部環境や筋骨格系の変化に応じて, 比較的短時間で適応的に変化することを示唆している.
著者
秋山 勝彦 中川 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.651-659, 1998-04-25
被引用文献数
48

本論文では, オンライン手書き日本語文字認識を対象に, 二つの特徴点列の長さの和に比例した処理の手間で済む伸縮パターンマッチング手法を提示する.この手法は, 決定論的な特徴点列対応付けと限定的な場合に起動する浅いバックトラックからなる.また, 本マッチング手法によって生じる重複した対応を除去して特徴点列を1対1に対応づける処理, それぞれの対応間の局所類似度からパターン間全体の類似度を算出する処理についても述べる.本手法を大分類, 文脈後処理, そして漢字の部首パターンを共有する構造化字体表現辞書と組み合わせ, 筆順違いや略字などに統一的に対処でき, 筆画の続けに対応したオンライン手書き日本語文字認識システムを構成した.JIS第1水準の漢字と平仮名, 片仮名, 大小英文字, 数字, 記号などからなる文章を筆記制限なしで収集したオンライン手書き文字パターンデータベース, TUAT Nakagawa Lab.HANDS-kuchibue_d-96-02のデータ80セットに対して, 認識率88.0%, 平均認識速度0.21秒をPentium 100MHz上で達成した.本手法による文字認識は, 特徴点列長の積に比例した処理の手間が掛かるビーム付きDPマッチングを用いた場合と比較して, 同程度の認識率を保持しながら6倍以上高速であることが確認できた.
著者
谷口 行信 阿久津 明人 外村 佳伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.390-398, 1999-03-25
被引用文献数
22

映像の効率的な把握とアクセスを支援するためのブラウジングインタフェースは, 映像ライブラリーなどの映像を扱うアプリケーションにとって重要な構成要素である. 本論文は2種類のアイコン-パノラマアイコンと代表フレームアイコン-を一覧表示する映像ブラウジングインタフェースPanoramaExcerptsを提案する. パノラマアイコンはカメラ操作としてパン, チルト, 又はズームを含む区間から画像列を合成することによって生成される. 代表フレームアイコンはカット, ディゾルブ等のショット切換えを検出することによって各ショットごとに1枚ずつ選び出される. パノラマ画像を代表画像として用いることにより, 代表フレームだけでは表現しきれなかったパン, チルト区間の全体像が表現できるようになる. 更に, カメラの移動方向, 速度などを可視化するアイコン表示方法についても提案する. PanoramaExcerptsを自動生成するために以下の処理を統合するアプローチを提案する: (i)ショット切換え検出方法, (ii)安定なカメラ操作区間を抽出する方法, (iii)アイコンレイアウト方法. 本論文では主に(ii), (iii)の処理について実験結果を含めて述べる.
著者
小川 祐紀雄 角本 繁 岩村 一昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1242-1250, 1998-06-25
被引用文献数
6

本論文では, 斜めから撮影された航空写真画像に3次元座標列からなる地図(立体地図)を射影変換して照合することにより, 広い地域にわたって対象とする建物の特徴を抽出する方式を提案する.提案方式の特徴は, 照合した立体地図の図形の形状および属性情報を対象物のモデルとすることにより, 画像における対象物を認識し, その特徴を理解できる点にある.本方式により, 2次元的な情報しかもたない地図の利用では抽出が困難であった建物の屋根と壁など, 3次元空間上の情報を抽出することが可能になる.阪神大震災後の画像を用いた実験において屋根の破損した家屋および壁の焼けた家屋を抽出した結果, 本方式が地域の情報取得に有効であることを確認した.
著者
大場 光太郎 池内 克史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.3147-3154, 1997-12-25
被引用文献数
10

ビジュアルラーニング手法の一つである固有空間手法は, 隠れを含まない単一物体の認識には非常に有効な手法である. しかしながら従来の方法では, 物体認識前に画像内で物体位置を検出し, 単一物体を一杯に含むように画像のトリミングを行う必要がある.本論文では, 工場内のビンピッキング作業に代表される重なり合っている複数の金属物体を各々認識することを目標とし, 物体の部分的な見え方を用いた"局所固有空間手法"を提案する. また効率的な局所ウィンドウを選択するために, 特徴点評価, 類似度評価, 信頼度評価という三つの評価指標を設け, 複数の隠れを各々含んだ金属物体の安定な認識を実現した.
著者
蚊野 浩 金出 武雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1810-1818, 1996-11-25
被引用文献数
36

ステレオ視における重要な問題にステレオ画像対からの対応点探索とステレオカメラ校正がある.対応点探索はエピポーラ線と呼ばれる直線上を探索することにより実行されるが,カメラの視点を任意の位置・方向に置くことを許した場合,その幾何学的条件が複雑になる.本論文では対応点候補の抽出が,3次元空間に仮想的に配した一連の平面による基準カメラ画像から検査カメラ画像への射影変換を用いることで簡単に記述できることを示す.またこの性質を利用したステレオカメラの校正法として,シーン中に存在する二つの平面をステレオカメラに観察させ,一連の射影変換行列を内挿および外挿する方法を提案する.本ステレオカメラ校正法は特別な校正パターンを必要とせず,カメラパラメータを明示的に求める必要もないため非常に簡便である.しかも,ピンホールカメラモデルに基づく従来のステレオカメラ校正法に比較して精度が優れている.
著者
長山 格 赤松 則男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.3127-3138, 1997-12-25

文字認識において, 文字輪郭はしばしば用いられる重要な特徴であり, その抽出には輪郭の追跡処理や微分オペレータ等の n×n マスクによるフィルタ処埋が用いられる. しかし, これらの処理には多くの演算が必要であり, 特に大容量画像や大量の画像を処理する場合は処理時間が長くなる要因となる. これに対して本論文では, フィルタ演算を用いることなく高速に文字画像の輪郭を抽出する手法 (DTB; Double-Threshold Binarization) を提案する. すなわち, 濃淡画像として得られる文字画像の濃度こう配に注目し, 異なる二つのしきい値による2値化処埋と XOR 演算により文字輪郭を簡単に抽出することができる. 二つのしきい値を決定する方法としてニューラルネットワークを応用する. DTBの実際的な評価を行うため, ノイズが混在する手書き郵便番号画像に適用し, 輪郭追跡法および微分オペレータ, Sobel オペレータ等の従来用いられている輪郭抽出フィルタと比較検討した. その結果, 処理の高速性, ノイズに対する頑健性, および抽出された文字輪郭の品質などの点において DTB の特長が明らかになった. 更に, より高速な処理を実現するために提案手法の高速化アルゴリズムを示し, 従来手法と比較して最大1/20以下の処理時間で文字輪郭の抽出が可能であることを示す.
著者
中前 栄八郎 西田 友是 金田 和文 多田村 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1515-1527, 1993-08-25
被引用文献数
5

コンピュータグラフィックスは,その誕生から30年を過ぎ,その適用範囲は極めて多岐にわたり,90年代,完全に応用の時代に入った.ここでは,ホトリアリズムの中でも大気や水など,3次元空間に分布した気体や液体およびその中の漂遊微粒子(ちり,煙,霞,混濁微粒子等)の光学現象のモデル化によるホトリアリスティックな画像生成手法について議論する.すなわち,光源として,強い方向性を与えることのできる点光源,太陽直射光,大気の散乱による2次光源としての天空光を対象とし,被照体としては,一般の固体のほかに,上述の空気分子,エーロゾル,水分子,混濁粒子による光の散乱,吸収および水面における反射,屈折を考慮した光学モデルを考える.このモデルによって,スポットライト下の煙や,ヘッドライトによる光束,晴天,曇天下の風景,霧の効果,水質による水の色の変化,水中照明,宇宙から見た地球など,ホトリアリスティックな画像生成が可能になることを示す.
著者
佐賀 聡人 牧野 宏美 佐々木 淳一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1620-1629, 1994-08-25
被引用文献数
23

本論文では,ペン入力システムにおいて手書きによる直接的な図形入力ヒューマンインタフェースを実現することを目的として,ファジー理論を応用したオンライン手書き曲線同定法「ファジースプライン曲線同定法(Fuzzy Spline Curve Identifier,FSCI)」を提案している.FSCIは,手書きされた曲線の形状のみならずその書かれ方の丁寧さ加減をもファジー情報として利用することにより,その曲線が「線分」,「円」,「円孤」,「だ円」,「だ円孤」,「閉自由曲線」,「開自由曲線」の7種類の基本的な曲線プリミティブのいずれを意図して書かれたものかを推論し,かつその形状パラメータを同定する.書き手が本手法の性質を利用することにより,7種類の基本曲線プリミティブの中から自分の意図する曲線を自然な描画動作表現によって選択し,同時にその形状パラメータを直接的にシステムへ入力することが可能となる.FSCIは通常の線図形の構成要素として必要最少限の曲線プリミティブの同定を実現しており,その意味でペン入力による直接的な図形入力ヒューマンインタフェースの汎用的な要素技術と位置づけられる.