著者
大塚 尚宏 大谷 淳 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2129-2137, 1997-08-25
被引用文献数
17

表情認識は, マン・マシンインタフェースの高度化, 画像通信における伝送量の削減等を実現するためには重要な技術である. 本論文では, 連続出力確率密度分布をもつ隠れマルコフモデル(HMM)を用いて不特定多数の人物の顔動画像から表情を認識する手法を提案する. 本手法では, まず動画像中の連続する2枚の画像から得られるオプティカルフローを積算して顔の各位置の移動ベクトルを求め, そのフーリエ変換の低周波成分を認識のための特徴ベクトルとして抽出する. 次に, 連続出力確率密度分布をもつHMMを使って基本表情ごとに特徴ベクトルの時間変化のパターンを学習させて認識のためのモデルを作成する. HMMの出力を連続的な特徴ベクトルとすることにより, 離散的なシンボルを用いる場合に問題となる量子化誤差のない高精度なモデル化が実現できた. また, 出力確率分布を多次元正規分布の荷重平均として近似することにより, 人物ごとに異なる表情の特徴をモデル化することができた. 4人の被験者(男性3人, 女性1人)からの顔動画像を用いて実験したところ高い認識率が得られた.
著者
横井 博一 吉野 慶一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.698-708, 1993-03-25

ニューラルコンピュータのハードウェア化における問題点の一つは,配線が複雑になるこである.筆者の1人が提案したFolthretは,神経細胞の離散時間学習しきい素子モデルをフーリエ級数信号により実現したニューラルコンピュータ用基本素子で,配線の複雑化の問題をかなり解決できる.本論文は,このFolthretの学習能力を調べることを目的としている.そのためまず,Folthretをアナログ回路とディジタル回路両方が混在した形で電子回路化した.その結果,基板サイズが15cm×15cm,ICの数が26個の回路規模となった.基板面積の半分は結合荷重用メモリ部が占めた.次に,電子回路化したFolthretを用いて,10個の数字および26個の英文字のパターン認識に関する学習実験を行った.これと同時に,離散時間-離散情報学習しきい素子による計算機シミュレーションも行った.その結果,電子回路化したFolthretは,離散時間-離散情報学習しきい素子と同様,実験で用いたどのパターンの認識も学習できることが示された.また,学習完了までの学習サイクル数と出力を調べたところ,離散時間-離散情報学習しきい素子に大体近い動作をしていることが確認できた.
著者
阿川 雄資 岡田 英史 関塚 永一 大塩 力 南谷 晴之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.397-405, 1993-02-25
被引用文献数
8

微小循環系は生体組織における物質交換という重要な役割を担っており,その血管内における赤血球動態を解析することは,極めて重要である.従来,点計測が主流であった微小循環計測において,顕微鏡と超高速VTRシステムを用いて記録されたラット腸間膜の血流画像を動画像処理することにより,2次元の速度情報を得ることが可能となる.しかし,従来用いられていた濃度こう配法に基づく動画像処理法は,その性質方速度の速い対象に適用できず,またノイズに弱いという欠点をもっていた.そこで本研究では,動画像処理法として局所相関法を採用し,更に速度ベクトルの推定に階層画像を用いることによって,流速の速い細動脈などにも適用できるだけでなく,高速でかつ安定した測定の行える処理アルゴリズムを開発した.このシステムを用いて,ラット腸間膜上の細動脈・細静脈などの微小血管(管径約20〜50μm)の血流速度計測を行い,本システムの有効性を示すと共に,血流分布に関するいくつかの新しい知見が得られた.
著者
池田 成宏 萩原 将文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1328-1335, 1998-06-25
被引用文献数
7

本論文では新しい知識表現方法(領域表現)とそれに基づく新しいニューラルネットワークを提案する.知的なシステム構築のためには, 知識表現は根本的かつ重要な問題である.局所表現と分散表現がその代表例であるが, それぞれ一長一短ある.領域表現はいわば局所表現と分散表現の中間的な知識表現方法であり, 両者の長所を有する.提案する領域表現に基づく新しいニューラルネットワークでは上位概念は下位概念を含むという包含関係などを用いることにより, 階層構造をもつ知識の表現が可能となっている.ネットワークは複数のKohonen特徴マップ層からなり, それらは近傍Hebb学習という新しい学習アルゴリズムに基づいて結合され, 全体として多方向連想メモリを構成している.計算機シミュレーションにより上位概念からの知識の継承や不完全な知識からの想起などについて調べ, 領域表現とそれを実現するニューラルネットワークの有効性を確認した.
著者
劉 軼 榎本 圭孝 加藤 伸隆 馬目 知徳 伊丹 誠 伊藤 紘二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.985-994, 1997-04-25
被引用文献数
8

本論文では, 学習者に状況と機能に応じた日本語表現を広く体系的に学習させるために, 編集者の用意する状況・機能手掛りが学習者と誤り診断パーザの双方に制約として用いられるシステムを提案し, 試作結果を報告している. このシステムは, 対話例のデータベースをもち, その各々について, 状況・機能的に重要な部分を空白部として, その部分の状況と機能を手掛りインデックスとして編集しておき, 学習者にはそれ (一般にはその一部) を伝えた上で, 作文を行わせる. 学習者は, 自立語については与えられた語いを用い, 活用と機能的語いを考えて補い, 入力文を作成する. システムは, 作成された入力文を, 誤り診断機能をつけた汎用のパーザによって解析し, 構文・意味的に誤りがあったり, そのときの状況にそぐわなかったりした場合には, 誤答部分の表層表現をもつ例文あるいは正解に対応する手掛りインデックスをもつ例文を対話例データベースから検索して学習者に提示しその手掛りを空白部の手掛りと比較させ,学習者の答と対話例の表現とを比較させた上で, 学習者に改めて作文させる. これらのガイダンスにもかかわらず正解に至らない場合は, 誤答に最も近い正解とのずれについてバグ仮説に基づいたコメントを提示する.
著者
緒方 広明 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.874-883, 1997-04-25
被引用文献数
40

本論文では, ネットワークを利用した開放型グループ学習支援システムにおいて, 協調学習の誘発を支援する Knowledge Awareness (KA) を提案し, その試作システムであるSharlok (<Shar>_____-ing, L__-inking, and Lo__-oking-for K__-nowledge) について述べる. Sharlokは, ネットワークで結ばれた各学習者が, 知識を蓄積しあい, それに関して討論が行えるオープンな学習環境である. KAは, "知識に気づく" という意味であり, 共有データベースにおける学習者の行動履歴を利用して, 討論のきっかけとなる知識の存在や学習者の存在に気づかせる. KAを提供し, 討論を誘発することにより, 学習者は, 意欲的に学習し, 共有データベースは洗練化され, 成長していく最後に, 本論文では, 試作システムの評価を通じて, KAの有効性を示す.
著者
大辻 清太 外村 佳伸 大庭 有二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.519-528, 1994-03-25
被引用文献数
20

本論文では,映像ハンドリングの基本処理単位を決定する上で重要なカット点の自動検出方法について述べる.映像のつなぎ目であるカット点を検出する問題は,目的条件に対しある程度の結果を出す手法は従来検討されているが,体系的かつ定量的には議論されていない.我々はこの課題を映像変化量の頻度分布と言う観点からとらえ,カット点およびカット点で囲まれるショットの映像変化量分布を分離する問題に帰着した.映像変化量は定義方法より,動きに敏感な場合はショット内分散が大きく,動きに影響されにくい場合は逆にカット点で分散が大きく分離が悪化する.被写体の動き等に伴う影響だけならば,映像変化量の連続性に着目し時間徴分で改善できるがテレシネ変換された映像等では,時間的に不連続な変動が重畳される.そこで本論文では,カット点近傍で映像変化量が示す変動の形態的な特徴抽出に基づく突出検出フィルタを用いた手法を提案し,実験により手法の効果を確認した.課題はまだ残しているものの,提案手法により検出手法改善は,映像ハンドリングにおいてさまざまな利用が期待される.
著者
服部 進 関 章良 行司 菅男 岡本 厚 長谷川 博幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.1484-1491, 1996-09-25
被引用文献数
6

現在筆者らはディジタル画像処理で空中写真画像から地形図を図化する図化機「ごくう」を開発中である.相互標定点の計測精度は図化の精度を規定するが,実用上画素の大きさに限界があるので,画像本来の精度を出すには標定点座標をサブピクセルまでとるのが望ましい.しかも作業を軽減するため画像処理を援用した標定が強く望まれている.本論文では相互標定点の座標を半自動の計測法で,高精度かつ安定して計測する手続きを提案した.標定点計測には従来から通常の相関法および最小2乗相関法が提案されているが,後者は恣意的に使うと不安定である.前者も精度についてはあまり報告されていない.本論文では,これらを実験的に比較し,後者が優れていることを示すと共にパラメータ(相関窓の大きさ,自由度)と計測の精度および安定性の関係を調べた.最小2乗相関法は収束域が狭いので,実用性を高めるためこれを広げる工夫を加えた.得られた画像座標の精度の期待値は1/3画素であった.
著者
尾崎 正弦 足達 義則 石井 直宏 小谷津 孝明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.1554-1561, 1996-09-25
被引用文献数
4

小学校教育における手書き文字学習能力の向上や中・高・大学生の"まんが文字"などの癖字の修正を目指したCAIシステムを提案する.書字能力に合わせて初級,中級および上級の3段階を設け,書家により書かれた標準文字から類似度関数(メンバシップ関数)を作成し,それぞれの階級について評価した.また,初級段階では,"なぞり"と"視写"学習を採用した.昇級は最終3回の総合的な類似度からファジー推論を用いて自動的に決定した.更に,中級および上級段階では各文字のストロークごとにストローク評価関数を設定し,学習者に対して細かな指導ができるようにした.一般的に文字のバランスは個々のストロークのみで画一的に決定するものではなく,文字全体の視覚的バランスが大変重要である.個々のストローク評価関数は,そのような感性的要因を考慮して決定した.このシステムで,「あ」,「い」,「う」,「え」,「お」の5文字について実験を行った結果,学習効率の向上が見られたので報告する.
著者
宋 欣光 李 七雨 徐 剛 辻 三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1601-1609, 1994-08-25
被引用文献数
52

本論文では,顔器官の一部分を表す部分特徴テンプレートPFT(Partial Feature Template)を用いて顔器官部分特徴の抽出について述べる.PFTは顔器官のコーナー部分の特徴を一般化されたエッジ形状として再構成したものである.このモデルは器官の全体形状を特徴として扱うモデルより,エッジパターンの変形と照明条件の変動の影響を受けず,容易に顔の各器官を抽出することができる.PFTは局所的な特徴を取り出すのみに用い,全体の形状を推定するため,顔の各器官の間に成り立つ幾何学的制約を記述したGFM(Global FacialModel)を導入する.GFMは顔の回転と拡大縮小に対して不変性をもつため,PFTを用いたマッチングの結果から顔器官の部分特徴の正確な位置を定めることができる.顔器官の探索実験の結果,11人の50枚の顔画像に対して80%の成功率が得られた.また100フレームの連続動画像を用いた顔器官の探索実験では,99フレームの画像から正しい結果が得られた.
著者
清水 英弘 太原 育夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.615-623, 1993-03-25

ラティス構造は,概念や属性あるいは条件や事実などの組合せ的関係構造を表現する方法として知識表現や探索空間の表現によく用いられており,このようなラティス構造を用いた情報処理においては,ラティス構造内の特定の元や領域を求めることがしばしば必要となる.本論文では,ラティス構造内の領域についてその有効な表現形式と演算規則を定めることにより,集合族間の計算がその元である集合間の計算に還元できることを示し,それに基づいたラティス構造内の領域探索法を提案している.そしてその特別な場合として,ラティス構造によって表現された制約充足問題の解法について述べている.提案したいくつかの方法は,全体集合の要素数に束縛されないような探索法であり,また探索の順序に依存しないので探索の確実性が保証されるという利点ももっている.
著者
寺島 幹彦 白谷 文行 山本 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.1280-1290, 1996-07-25
被引用文献数
28

Kohonenの自己組織化特徴マップを用いて教師なしクラスタ分類を行う従来の方法の多くは, 既知のクラスタ数にSOMの素子数を一致させる限定方法であるため, クラスタ数が未知の分類には適用できない. また, それと既存のクラスタ分類法との比較が不十分であり, 自己組織化特徴マップを用いることの優位性が明確にされていない. 本論文ではクラスタ数が未知のデータにも適用できるクラスタ分類法を提案している. まずクラスタ数より多い素子数を有する自己組織化特徴マップから, クラスタの集積度を表すヒストグラムを作成する. 次にその山と谷を分割することによってクラスタ数を推定し, かつデータを分類する. いくつかのデータに適用し, k-means法とも比較しながら本手法の有効性を立証している.
著者
関口 博之 佐野 耕一 横山 哲夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.350-358, 1993-02-25
被引用文献数
35

X線CTやMRIの発達によって,体内の3次元データが容易に得られるようになってきた.3次元データから構成される体内臓器の3次元像は,臓器の3次元形状やその位置関係を把握するのに有用であり,次世代の診断用画像としての期待が高い,しかしその実用化には,3次元像表示速度の向上や3次元インタフェースの実現など,解決すべき問題がなお多く残されている.特にMRIにおいては,表示対象の抽出処理の困難さがMRI3次元像の実用化を妨げる大きな要因となっている.本論文では,3次元像を介した対話型修正操作を3次元領域拡張に組み入れた実用的な抽出処理手法を提案する.本手法を実現するため,抽出過程の3次元モニタリング機能,拡張過程で生ずるはみ出しの自動除去機能を開発した.本手法をいくつかの3次元頭部MRIデータへ適用し,その有効性を確認した.
著者
小池 康晴 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.193-203, 1994-01-25
被引用文献数
19

従来人腕のモデルとして,関節トルクだけを考慮したモデルがよく用いられてきたが,実際は筋肉の発生する張力により関節トルクが生じる.筋肉が関節トルクを生じて運動が起きるモデルを構築するためには,筋肉の非線型な性質(長さ-張力曲線,短縮速度-張力曲線)や,腕のキネマティクス・ダイナミックスなどを考慮に入れなければならない.本論文では,これらの性質を考慮に入れて表面筋電信号から関節角加速度を推定する神経回路モデルを学習により獲得した結果とそのモデルをリカレント接続することにより平面内運動軌道を生成した結果について報告する.特に異なる運動では,運動指令の生成のされ方,筋肉の使われ方が異なるという仮説にのっとりモジュラ学習を取り入れた.
著者
市村 直幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1184-1195, 1995-08-25
被引用文献数
5

パターン認識などにおいて収集されるパターン集合には,主たるクラスタがいくつあるかわからず,更に,はずれ値(outlier)を含むようなものがある.本論文の目的は,そのようなパターン集合から,適切なクラスタ数を推定することである.パターンの分布を記述するモデルを設定すると,それに含まれるパラメータの最ゆう推定と, Akaike Information Criterion (AIC)やMinimum Description Length (MDL)を用いたパラメータ数の最適化からクラスタ数を推定できる. しかし,パターン集合にはずれ値が含まれる場合には,それらがパラメータ推定に影響を与え, よって,クラスタ数の推定にも影響を及ぼす.本論文では,はずれ値の影響を軽減するために,多変数混合正規分布モデルを用いた,最ゆう法に基づく二つのロバストクラスタリング(MARC1およびMARC2)を提案する.そして,そのクラスタリングの結果得られるパラメータを用いて, AICおよびMDLによるクラスタ数の推定を試みた.実験を通じ,各クラスタの45%のパターンがはずれ値に置き換えられても,それらがパラメータ推定に与える影響を小さくでき,適切なクラスタ数の推定が行えることを確認した. また,提案手法の適用限界についても考察した.更に,画像の領域分割への適用結果を示した.
著者
河原 達也 松本 真治 堂下 修司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-8, 1994-01-25
被引用文献数
25

会話音声認識のための文脈自由(LR)パージングにおいて,単語対制約によるヒューリスティックを用いたA^*探索アルゴリズムを実現し,その評価を行った.本アルゴリズムは,全仮説に共通な単語対制約により求められる未探索部分の推定スコア(ヒューリスティック)を各仮説の評価値に加えながら,best-firstに探索を進めるものである.単語対制約は,計算量もそれほど大きくなく,A^*実行可能性条件を満たし,言語的にも強い制約であるので,優れたヒューリスティックとなる.種々の条件のビームサーチと比較した結果,本アルゴリズムは,最適解が得られることが保証され,認識精度が高く,またむだな仮説の展開が少なく,処理効率の点からも優れていることが示された.また,ビームサーチにおいても,このヒューリスティックを導入することが有効であると明らかになった.更に,A^*アルゴリズムの確率的文法への拡張も行い,その効果を確認した.
著者
金山 知俊 増山 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1843-1851, 1997-07-25
参考文献数
9
被引用文献数
11

自然物のCGシミュレーションを行う場合, 形状のみならず, 動きの再現も重要である. CGによる樹木の画像生成の研究はさまざまな研究者によってなされてきたが, それらの多くは樹形を生成する生長モデルや, テクスチャの生成に関するものが大部分であり, 風などの外力による樹木の揺れの表現については従来あまり行われていない. 本研究では, 樹木を質量をもった節点とそれらの隣接関係で近似し, 節点の動きのシミュレーションを行うことで樹木の揺れのアニメーションを実現している.
著者
伴野 明 岸野 文郎 小林 幸雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.636-646, 1993-03-25
参考文献数
12
被引用文献数
52

本論文では,画像処理を用いた視線検出手法をインタフェースの環境で実現することをねらいとして,特徴点である瞳孔を安定に抽出するための照明条件について明らかにし,また,アクティブステレオカメラを用いて特徴点の空間位置を求め,視線を検出する装置の試作について述べる.瞳孔の抽出では,照明の波長と瞳孔像の輝度の関係,瞳孔の2値化に必要な照明強度などについて求めた.また,パイプライン画像処理装置を用いて特徴点を実時間で抽出した.視線の検出では,瞳孔と顔の3点を特徴点として用い.これらの動きを追跡するようにカメラを駆動制御し,検出範囲の拡大と高精度化を図った.試作システムを用いて,指標ボードを注視したときの注視点を実験により求め性能を評価したところ,頭部の動きを許容して,視角誤差1度程度で,毎秒10回の検出が可能であった.また,瞼などによって瞳孔像が欠落すると,注視点の検出精度が低下するため,瞳孔をだ円近似する手法を提案し,精度の低下防止に有効であることを示した.
著者
境田 慎一 鹿喰 善明 田中 豊 湯山 一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.311-322, 1998-02-25
参考文献数
18
被引用文献数
31

画像のオブジェクトベース符号化を行うためには, 前処理として領域分割が必要である.本論文では領域の統合処理を伴う実用的な手法を提案する.画像の領域分割法として広く利用されているK平均アルゴリズムによるクラスタリングは, 画像を小さな領域に過分括する傾向がある.また, 最初に与えるクラスタの形状に影響され本来の領域の境界以外の部分で分割される, あるいは初期クラスタ数の増加に応じて得られる領域の数が増大するという初期値依存性を有する.これらの問題点に対処するために, 本論文ではK平均アルゴリズムをベースとして, 多数決フィルタリング, ラベリングによる統合, 複数の分割結果の統合の3段階の処理手法を導入する.この手法を数種類の自然画像に適用し, 同一の領域分割処理のパラメータを用いても, 異なる画像中の物体の輪郭を抽出できることを確認した.また, 初期に与えるクラスタの数を変化させても領域を同様に抽出できることも確認した.更に複数の画像を用いたシミュレーション実験によりその有効性を検証した.本手法は少ない演算量で良好な領域分割結果が得られるだけでなく, 初期クラスタや画像に影響されないロバストな処理であるため, オブジェクトベース符号化の要素技術として有効である.
著者
田中 章 今井 英幸 宮腰 政明 伊達 惇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.819-825, 1996-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
40

Mallatにより提案された多重解像度解析は, 関数空間を解像度の異なる部分空間列により表現する. 各部分空間は一つ解像度の低い部分空間と, その補空間の直和として表現される. Mallatはこれを直交ウェーブレットとスケール関数を用いて記述した. 本論文は, 離散化された自然画像を拡大する手法として, その画像の多重解像度解析を考え, その各解像度の成分の間に同程度の相関があることを利用して, 本来もとの画像には含まれていない高解像度の成分を推定し, その成分ともとの画像の情報から拡大画像を得る手法を提案する. また, 信号の内挿手法として広く用いられている, 共1次内挿法(bi-linear interpolation)や3次畳込み内挿法(cubic convolution interpolation)と比較を行い, 本手法の有効性を検証する.