著者
荒木 健治 高橋 祐治 桃内 佳雄 栃内 香次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.391-402, 1996-03-25
被引用文献数
19

我々は, 人間の言語および知識獲得能力の解明とその実現を目的として研究を行っている. このような研究はこれまでいくつか存在するが, 工学的に有効なシステムを完成するまでに至っていないのが現状である. また, 心理学の立場からの研究も存在するが, これらの研究は工学的にどう実現するかという問題は対象としていない. そこで, 本論文では, この言語および知識獲得能力を工学的に実現する一つの試みとして, 入力べた書き文とその漢字かな交じり文より帰納的に語の読みと表記を獲得し, その獲得状況および変換精度に基づく確実性の高い語より順に変換するという帰納的学習によるべた書き文のかな漢字変換手法を提案する. 本手法は辞書が空の状態からでも学習機能により語を獲得することができるので, 辞書を個人ごとに自動的に作成することが可能, 個人用辞書とすることにより辞書容量を少なくできる, 未登録語の自動登録が可能, 初期辞書作成の労力を回避できるという利点がある. 本論文では, 更に本手法に基づく実験システムを作成し, 異なる4分野の論文40編を用いて本手法の学習機能による適応性能を確認するための実験を行った. 実験の結果, 4分野すべてにおいて90%以上の精度が得られ, べた書き文のかな漢字変換における本手法の有効性が確認された.
著者
木村 彰男 渡辺 孝志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.726-734, 1998-04-25
被引用文献数
16

入力画像からある特定の図形を相似変換不変な形で検出する問題は, 画像認識における基本的な研究課題である.Ballardによって提案された一般化ハフ変換(GHT)は, この種の問題に対処するためのプロトタイプとして知られており, その耐ノイズ性, 処理の柔軟さ, アルゴリズムの簡明さ, といった点で優れた手法である.しかしGHTには, 輪郭点ごとに正確なこう配情報を必要とする, 処理時間がかかる, といった問題点もある.そこで本論文では, これらの問題点に対処可能な新しい手法として, 高速一般化ハフ変換(FGHT:Fast Generalized Hough Transform)を提案する.FGHTでは, チェック点の導入で投票そのものの信頼性を高め, より高精度な図形の検出を実現している.更に, 線分近似を併用することで, 従来手法に比べて大幅な処理速度の向上を実現している.提案手法の有効性を検証するために行った評価実験では, 良好な検出結果が得られた.
著者
太田 健一 中田 昌 宮脇 冨士夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1196-1204, 1995-08-25
被引用文献数
1

最近, 日本の夜空が明るすぎ,「光害」と呼ばれる公害が存在することが知られてきた.夜空の光量の絶対値を測定することは, この新たな公害のレベルを知る上で重要であり,特に簡単で高精度の計測手法の開発に対する要求が大きい.本論文では,冷却CCDにカメラレンズを結合して夜空の光学画像を得て,夜空の明るさを計測する手法を提案する. この方法では,観測画像に映る個々の星の除去が必要であるが,基本星表との照合は行わない.一般的に「周囲より明るい微小像が星である」と視覚が認識することを星像モデルに置き換え,この星像モデルと合致する部分を探す. これは,星像中心となる画素を検出し,星像の裾野を検索して,星像成分の存在する画素を決定して除去するものである. この手法を実際に撮影した夜空の画像に適用し,都市夜光の量の測定について,その有効性の確認を行った. また,フィールド調査で得た画像を処理して,等光度線図作成や離れた地点の絶対値比較ができた.従来の写真濃度を測微光度計で測光する方法と比べて,本法では背景光の平均値と標準偏差などが,短時間で正確に得られた.
著者
益子 貴史 徳田 恵一 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2184-2190, 1996-12-25
被引用文献数
100

隠れマルコフモデル(HMM)からの動的特徴を用いた音声スペクトルパラメータ生成アルゴリズムに基づく規則音声合成システムの新たな枠組みを提案している.本システムで用いるパラメータ生成アルゴリズムでは,HMMで学習した静的,動的特徴の統計情報に従って連続的に遷移するスペクトル系列を生成することができる.規則音声合成にこのアルゴリズムを適用することにより,滑らかで自然性の高い音声を合成できると考えられる.本論文ではこのHMMに基づく規則音声合成システムの枠組みを示し,韻律生成部を除く合成システムを構築した.生成されたスペクトルパラメータを用いて合成した音声の主観評価実験により動的特徴の有効性を示すと共に,合成単位である音素HMMの構成について,音素環境依存性など,いくつかの検討を行っている.
著者
坂口 貴司 岡林 孝志 金森 務 井口 征士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.2385-2393, 1998-10-25
被引用文献数
7

人間の身体ジェスチャには豊かな情報が含まれており, マン・マシンインタフェース, マン・マンインタフェースの有力な手段と考えられる.本論文ではオクルージョンの心配がなく外部磁界環境の影響も受けないという特長を有する運動覚センサ(ジャイロセンサ, 加速度センサ)に筋電位センサを組み合わせて, ニューラルネットワークで統合化するジェスチャ計測および認識手法を提案する.これらのセンサはジェスチャが表現している意味の強さ(例「とても」, 「やや」など, ここではバリュー情報と呼ぶ)を加速度, 角速度, 筋力情報という形でうまく検出してくれる.14種類のジェスチャ(手話動作)について認識実験を行い, 筋電位情報がバリュー情報認識に有効であること, 本手法により多様なジェスチャに関してシンボル情報だけでなくバリュー情報が認識できることを確認した.
著者
小松 隆 岩間 徹 齊藤 隆弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.1912-1919, 1998-08-25
被引用文献数
14

古い映像フィルムの画質劣化の要因の一つであるブロッチの検出とその修復を行う方式を提案する.ブロッチにより損傷を受けた画像に対しても適用可能な動き解析法を提案する.更に, 動き解析の結果得られた動き量で動き補正画像を複数作成し, 着目画像とこれらの画像との最小差分からブロッチの検出と修復とを行う方式を提案する.人工的にブロッチを付加した画像を用いたシミュレーションにより, 提案する動き解析法がブロッチに対してロバストであることを示す.また, 提案する修復方式の性能評価実験の結果を示す.
著者
馬場口 登 堀江 政彦 上田 俊弘 淡 誠一郎 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.791-800, 1997-03-25
被引用文献数
41

本論文では, ユーザが現在地から目的地までの経路を理解するための支援システムとして, 略地図とその案内文を生成するシステムSKETISTを提案する. SKETISTは, データベース部, インタフェース部, および処理モジュール部からなる. データベース部には, 原地図画像を表すベクトル地図画像ベースと構造化データである道路ネットワークの二つがある. 処理モジュール部は, 道路ネットワーク抽出, 経路探索, 略地図生成, 案内文生成から構成される. 経路理解に主たる役割を果たす略地図とその案内文は, ベクトル地図画像ペースから自動的に生成される道路ネットワークを基礎データとして作成される. SKETISTの特徴は, 種々の処理段階でユーザの要求を反映できる設計となっていること, および相対する情報伝達特性を有する画像・図形メディアと言語メディアの統合システムとなっていることである. 提案システムを実装して動作検証を行った結果, ユーザの要求を反映した経路を探索し, 図形情報, 記号情報の双方を操作することにより任意の複雑さの略地図と案内文が良好に生成されることを確認した.
著者
尾上 博和 塩野 充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.483-492, 1994-03-25
被引用文献数
14

自動車ナンバープレートは,その自動車に固有のものであり,その中に書かれている文字すべてを認識することで,全国で登録されているすべての自動車の中から1台の車両の特定を行うことができる.しかし従来の研究の多くはナンバープレート中の大きな数字4けた(一連指定番号)だけを認識するにとどまっており,犯罪捜査や盗難車の発見などの全国規模における完全な車両特定には不十分である.そこで本論文では,車両の前方から撮影した画像からナンバープレートを抽出して,その中に書かれている文字すべてを認識する手法を提案する.本手法はハフ変換とナンバープレートの形状特徴を用いてナンバープレート領域の抽出を行い,またナンバープレート内の文字の存在位置の特徴を用いて各文字を切り出して,認識を行っている.認識結果は,160枚のサンプル画像を用いて,ナンバープレートの抽出と文字切出しの成功をも含めた総合認識率87.5%という結果を得た.
著者
高木 秀彦 水野 政司 郷原 一寿
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.422-430, 1994-02-25
被引用文献数
11

リカレントニューラルネットワークに複数の時系列入出力パターンが連続的に提示される場合に適用可能な,時間前向き計算による教師あり学習法を提案し,計算機実験によってその有効性を示す.更に,学習過程および学習結果の解析を行い,提案する学習法により所望の時系列入出力パターンの変換を満たすアトラクタが状態空間に形成されることを示す.そして,リカレントニューラルネットワークにより時系列パターンの変換を行うためには,時系列入出力パターンに対応したアトラクタを考慮することが重要であることを指摘する.
著者
柳沼 良知 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.747-755, 1996-05-25
被引用文献数
42

動画像という一つのメディアを用いただけでは, その自動認識, キーワード抽出や構造化には限界があるのが現状である. 一方, ドラマ映像には映像だけではなくそれに付随する音声やシナリオ文書といった複数のメディアが存在する. そして, これらは比較的容易に利用できることが多い. このため, これら複数のメディアの認識を協調し助け合うことで, ドラマ映像のより高次な構造化・データベース化を行える可能性がある. 本論文ではドラマ映像を対象とし, 映像, 音声, シナリオ文書のDPマッチングを用いた対応付け手法の提案を行う. また, その結果を用いたドラマ映像の意味的な分解, 特定人物の検索といったドラマ映像のデータベース化手法の提案を行う. 更に, 本手法の有効性を示すため実際に複数のドラマ映像を用いて行った実験および評価について議論し, 本手法がドラマ映像の構造化, データベース化に十分有効であることを示す.
著者
増田 一 大堀 隆文 渡辺 一央
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.397-404, 1994-02-25
被引用文献数
5

KL(Karhunen-Loeve)変換を可能とする3層構造ニューラルネットを提案した.このニューラルネットは次の構造的特徴を有する.(1)入力層N(=入力次元数)個,中間層R(≦N)個,出力層N行×R列個の線形ユニットをもつ.(2)出力層第r(=1,2,…,R)列ユニット群は,中間層第rユニットと係数ベクトルW_r={W_<nr>;n=1,2,…,N}を介して結合し,かつ出力層内で同行前列ユニットから係数1の加算的結合を受ける.(3)中間層第rユニットは,入力層全ユニットと従属的係数W_r/∥W_r∥^2(∥・∥はノルム)を介して結合する.この並列出力形ニューラルネットの入力層-出力層各列間で恒等写像学習を行わせると,大局最適解に心ず収束し,収束後中間層第rユニットから入力標本の第r次KL変換成分が直接得られることを理論的に示した.また,高速な収束が期待できる簡単な学習則を示した.更に,(1)入力標本群の共分散行列Cが正則,(2)Cが非正則,(3)Cが多重の固有値をもつ,三つの場合についてシミュレーションを行い,理論の妥当性と学習の高速性を検証・確認した.
著者
川端 豪
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.1967-1972, 1994-10-25
被引用文献数
14

音声による会話は,人間と機械の情報交換の手段として最も快適なインタフェースと考えられ,その実現には,効率的な自然言語処理の技術が必要となる.本論文では,自然音声言語の複雑性を軽減する一手法として,統計的手法に基づく新しい話題制御の機構を提案する.入力音声は予測型CFGを用いて解析されるが,このとき生成される文法規則の系列を用いてHMMを駆動し,その状態分布の偏りとして話題を同定する.逆に,この分布の偏りを動的に文法規則の確率に反映させることによって認識探索空間を絞り込む.大規模対話テキストデータベースを用いて,テキストデータ入力に対するパープレキシティの削減効果を評価し,提案する手法が強力な探索空間の絞込み能力をもつことを確認した.
著者
大場 敏文 金子 正秀 原島 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2254-2258, 1997-08-25
被引用文献数
2

福笑いモジュールによって作成された合成顔画像を検索キーとして用い, 検索者の意図を反映した類似尺度に基づき, 顔画像をインタラクティブに検索する方法について述べる. 特徴量空間において, 特徴量ベクトルが互いになす角度が小さいものほど類似評価が高いとする類似尺度を用いることにより, 強調表現された合成顔画像を介して, 検索者の意図を反映した顔画像検索が行えるようになった.
著者
熊本 忠彦 伊藤 昭 海老名 毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1114-1123, 1994-06-25
被引用文献数
16

筆者らは,自然言語を用いた対話によってユーザ(computer user)の計算機利用を支援する対話型ヘルプシステムの構築を行っている.ユーザは,通常は計算機上でタスク(task)を進めるが,何らかの障害/問題が生じたとき,ヘルプシステムに音声で支援を求めることができる.ヘルプシステムは,ユーザの音声発話を理解し,その時々の状況に合わせて適当な応答を生成する.ヘルプシステムにユーザ発話を理解させるためには,音声処理技術だけでなく,話し言葉の特性に対応した言語処理技術も要求される.我々は,ヘルプシステムの代わりに人間アドバイザが支援するという擬似的な「対話による支援」実験を行い,ユーザの音声発話を収録し,ユーザ発話データベース(書き起こしテキスト)を作成した.また,その書き起こし文を解析し,支援要請発話(アドバイザに支援を要請するための発話)の特徴を調べた.本論文では,その解析結果に基づいて,ユーザ発話意図の記述形式を定義し,発話文から発話意図を認識する手法(発話意図記述を生成する手法)を提案する.
著者
古宮 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.992-1004, 1998-05-25
被引用文献数
1

ソフトウェアの障害対策作業は, 解散により散らばった旧プロジェクトのメンバが互いに協力して作業を行わなければならない.しかし, 障害対策作業を分担すべき彼らは, 今はそれぞれ新しい作業に従事しており, 新しい作業場所から離れられない.このため, 障害対策作業は, 解散した旧プロジェクトのメンバが, それぞれの新しい作業場所を離れることなく, 互いに協力して障害対策作業を進められることが望ましい.このため, この論文では, そのようなことを可能にするソフトウェア分散開発環境をWWWの上に構築することを提案している.そこでは, ソフトウェアの修正によるディグレードを防ぐために, 対策案の検討過程において, さまざまな視点からのレビューと議論を徹底的に行う必要があるとして, グループワークの利点を生かしてそれらを徹底的に行う, ソフトウェア設計プロセスのモデルを提案し, このプロセスにのっとって対策案の検討作業を行うことを提案している.そして, 協調的に進められる障害対策作業を強力に支援するために, この設計プロセスの中でも特に, 発生した障害の真の原因を同定する過程と, 障害対策のための最適な対策案を複数の中から選出する過程に焦点を当て, これらの過程を支援する方法としてKT法(ケプナー・トリゴー法)の導入を提案し, 具体例を挙げてその適用プロセスを明らかにしている.また, 適用実験により得られたKT法の問題点を列挙すると共に, その対策案を具体的に明らかにしている.これにより, 改良されたKT法による思考手順とその支援環境が, 障害対策作業のための強力な設計方法論とその支援環境となり得ることを示している.
著者
山之上 裕一 永山 克 尾藤 峯夫 棚田 詢 元木 紀雄 三橋 哲雄 羽鳥 光俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.2522-2531, 1997-09-25
被引用文献数
21

立体番組の撮像においては, 左右カメラの空間的配置やレンズの焦点距離の違いによって, 左右画像間で垂直のずれや傾きのずれあるいはサイズのずれといった幾何学的ひずみが生じる. 本論文ではまず, 最近の立体ハイビジョン番組中の種々の画像を対象に, 幾何学的ひずみがそれぞれ独自に生じた場合の検知限, 許容限を求める. 同時に, その結果に関して, 一般画像間では有意な差が認められなかったことを示す. 次に, 実際の番組収録に照らし合わせて, 幾何学的ひずみが複合して生じた場合についての検討を, 一般画像を対象に行う. そして, 実際に加えた幾何学的ひずみ量から直接その検知限, 許容限を推定する重回帰モデルよりも, 加えた幾何学的ひずみにより生じる対応点のスクリーン上での垂直および水平方向のずれ量から, 検知限, 許容限を推定する重回帰モデルの方が, より汎用性があると同時に分析精度が高いことを示す. 更に, 画像ごとに得られた重回帰式をより一般化することを目的に, 平行性および位置の検定を行い, これらの重回帰式が一つの重回帰式にまとめられることを示す. 最後に, 得られた重回帰式に基づき, 番組収録時の左右カメラの配置・調整のガイドラインについて報告する.
著者
若林 哲史 鶴岡 信治 木村 文隆 三宅 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.2046-2053, 1994-10-25
被引用文献数
39

文字輪郭線の局所方向ヒストグラムを特徴量とする統計的手書き数字認識において,種々の方向量子化数と領域分割数の組合せに対して,大量の手書き数字データを用いた認識実験を行い,認識率および正規性との関係を調べた.また,より高い精度で方向量子化を行うために,濃度値こう配を利用する方向量子化の有効性を検討した.その結果,(1)特徴量の次元数を増加する場合,領域分割数は,4×4あるいは5×5程度とし,あとは方向量子化数を増加させるとよいこと,(2)同じ次元数では,正規性が良いほど認識率が高い傾向があること,(3)濃度値こう配を用いる方向量子化が,特徴量の正規性を保つのに有効であること,(4)量子化レべル数削減におけるフィルタ処理には,正規性を改善する効果があり,認識率の向上に有効であることなどがわかった.また,実際の郵便物から収集した郵便番号の手書き数字に対して,濃度値こう配の局所方向ヒストグラム(400次元)を用いた場合に,平均で正読率99.18%の良好な結果が得られた.
著者
五十嵐 治一 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1104-1113, 1994-06-25
被引用文献数
5

視覚情報処理における光学の逆問題の解法として,標準正則化理論によるアプローチが有名である.しかし標準正則化理論ではエネルギー関数が2次形式に制限されており,正則化パラメータも経験的に定めているのが実情である.本論文では,こうした視覚情報処理における逆問題のみならず,一般的な逆問題の解法として2層確率場モデルを用いた一つの方法を提案する.2層確率場モデルでは,二つの確率場が階層構造をなしており,下層の確率場の状態が与えられたときに上層の確率場の状態の起こりやすさを表した条件付き確率によって緩やからに結合されている.本方法では,シミュレーテッドアニーリングによりエネルギー関数の最小状態を求めると共に,正則化パラメータなどのエネルギー関数中の重み係数の値を適切な値に自動調節することが可能である.例題として,原画像に関する正確なエッジ情報を用いて観測画像から原画像を復元する.2次元濃淡画像の修復問題を取り上げた.アニーリングによるエネルギー最小状態の探索処理と,エネルギー関数中の重み係数の調整アルゴリズムは,ともに並列化されており,SIMD型の並列計算機であるコネクションマシン(CM-2)を用いて大きな画像(128×64)を対象にすることが可能となった.計算機実験により,本論文で提案する逆問題の解法の正当性を検証することができた.
著者
関口 芳廣 重永 実
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1522-1530, 1994-08-25
被引用文献数
4

連続音声は「なまけて」はっきり発声しない部分が随所にあり,文法的に重要な助詞などの認識も必ずしも正確にはできてないので,連続音声の認識には構文,意味等の言語情報に加え,人間と同様に,より直感的な情報,つまり連想情報の利用も必要である.この論文では,まず連続音声ではあいまいに発声される部分があり,その部分の音響処理が難しいことを示す.次に,人間がもっている単語間の連想関係を調査,検討して,音声認識で使用できる連想単語辞書を構築する.この連想単語辞書を利用して,単語間の連想の強さを求め,後続単語の予測を行う.また,句単位の認識の際,音響的な情報だけでなく,連想情報も加味している.実験の結果,筆者らの音声認識システムで75%以上の文認識率を得るためには,連想情報を利用しないと約90%以上の音素識別率が必要であったが,連想情報の利用により約80%の音素識別率で文認識率が75%以上になっている.また,筆者らの構築したシステムでは,認識のための得点付けには,音響情報と連想情報をほぼ3:1の割合で利用すればよいこともわかった.
著者
谷口 行信 外村 佳伸 浜田 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.538-546, 1996-04-25
被引用文献数
79

本論文では, 映像をリアルタイムに解析することにより, ショットの切換わりを自動的に検出する新しい方法を提案する. ショットは映像の基本的な単位であり, 映像に対するアクセス, 編集, 検索などのインタフェースを実現する際に有用な情報である. 提案法は, 瞬時にショットを切り換えるカットだけでなく, フェードやワイプといったゆっくりとしたショット切換えも検出でき, 瞬間的なノイズや, 被写体の動きに対してもロバストであるという特徴をもつ. 提案法は, "隣り合う" フレームの間だけではなく, より間隔をおいた2枚のフレームの間で非類似度を計算し, それらを総合的に評価してショット切換えの判定を行う点が従来の方法とは異なる. 更に, 検出されたショット切換え情報に基づいて実現される映像アクセスインタフェースとしてPaperVideoとTVRamの二つを提案することによって, 本手法の有効性を示す.