著者
清水 裕晶 獨協医科大学内科学(内分泌代謝)
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.T11-T17, 2010-03-25

横紋筋細胞におけるピオグリタゾンとメトホルミンの単独,及び併用投与時の遺伝子変化について解析した.最初に,ヒト横紋筋由来のA673細胞に対して,1 mMのメトホルミンと10 m Mのピオグリタゾンの単独投与群と両剤併用群を作成し一日培養後,各群にマイクロアレイを施行した.対照と比較し,単独及び,併用投与時には1000個を超える遺伝子で2倍以上の発現を認めた.単独投与で発現が増加し,併用で更に増加した遺伝子群を抽出して階層型クラスター解析と優位機能Pathway解析を施行したところ,階層型クラスター解析では,単独時と比較して,併用時で有意なミトコンドリアb 酸化回路の活性化を認めた(p<0.05).また優位機能Pathway解析では,CPT-1A を含むb 酸化関連遺伝子の活性化を認めた.本研究において,両剤の併用は横紋筋細胞のb 酸化回路を賦活化して,より脂肪燃焼・抗肥満的に作用する可能性が示唆された.
著者
内園 まり子 島田 忠人 Mariko Uchizono Tadahito Shimada 獨協医科大学内科学(消化器) 獨協医科大学内科学(消化器) Department of Gastroenterology Dokkyo Medical University Department of Gastroenterology Dokkyo Medical University
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-29, 2010-03-25

All-trans retinoic acid(ATRA)は核内受容体であるretinoic acid receptor(RAR)のリガンドであり,消化管を含む多くの組織で重要な生理作用を有している.最近,臨床的なレチノイン酸の使用と炎症性腸疾患との関連が注目されているが,この問題に関する基礎的な検討は行われていない.今回我々は,大腸癌由来細胞株を用いて,炎症・免疫応答において中心的な役割を果たしているnuclear factor- k B(NF-k B)シグナリングに対するATRA の影響について,レポーター遺伝子解析法,リアルタイム定量的 RT-PCR法にて検討を行った.ATRA および他のレチノイド化合物(9-cis retinoic acid,13-cis retinoic acid,AM580,retinol)は,大腸癌由来細胞株において用量依存性に NF-k B を活性化した.また,ATRA はNF-k B の代表的な標的遺伝子であるIL-8の発現を誘導した.RAR の活性化と比較するとNF-k B 活性化に要するATRA の濃度域は高かった.TNF-a によるNF-k B の活性化,IL-8発現誘導は,ATRA をプレインキュベーションすることにより著明に増大し,相乗的な効果が認められた.ATRA はNF-k B サブユニット(RelA,p50)の発現を増大させ,TNF受容体(TNFR1)の発現レベルも上昇させていた.これらの結果より,レチノイン酸は大腸上皮細胞においてNF-k B シグナリングを活性化し,TNF-a に対する感受性を増大させている可能性が示唆された.All-trans retinoic acid(ATRA)is a ligand for the retinoicacid receptor(RAR), a member of the nuclear receptorsuperfamily, and it is well established that RARs play acritical role in the development and differentiation of variousorgans including gastrointestinal tract. Recently, severalcase reports suggested a possible association between theclinical use of retinoic acid and inflammatory bowel diseases.However, it is not known whether ATRA affects the inflammatoryresponse of colonic epithelial cells. In this study,we examined the effect of ATRA on NF-k B activity andIL-8 expression in colonic epithelial cells in vitro. NF-k Bactivation and RAR activation were assessed by the reportergene assay and IL-8 mRNA expression was assessed bythe real-time quantitative RT-PCR. ATRA and other retinoidcompounds(9-cis retinoic acid, 13-cis retinoic acid,AM580 and retinol)activated NF-k B in a dose- and timedependentmanner in colonic cell lines(HCT116, Caco2,SW480, DLD-1, and LS174T). However, compared to RARactivation, much higher concentrations of ATRA wereneeded to activate NF-k B. ATRA also up-regulated theexpression of IL-8, a target gene of NF-k B. ATRA-inducedNF-k B activation was repressed by a MEK inhibitorand a p38 MAP kinase inhibitor. Preincubation with ATRAsignificantly potentiated TNF-a -induced activation of NFkB and TNF-a -induced expression of IL-8. ATRA wasfound to up-regulate the expression of NF-k B subunits(RelA and p50)and TNF-a receptor 1. These results suggestthat ATRA and other retinoid compounds can activateNF-k B signaling and potentiate the inflammatory responseto TNF-a in colonic epithelial cells.
著者
百目木 希実 門傳 剛 松村 美穂子 清水 裕晶 池田 志織 助川 敦子 柳 一徳 青木 千枝 川越 宣明 加瀬 浩之 笠井 貴久男 Nozomi Domeki Tsuyoshi Monden Mihoko Matsumura Hiroaki Shimizu Shiori Ikeda Atsuko Sukegawa Kazunori Yanagi Chie Aoki Yoshiaki Kawahoe Hiroyuki Kase Kikuo Kasai 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) 獨協医科大学内科学(内分泌代謝) Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine Department of Endocrinology and Metabolism Dokkyo Medical University School of Medicine
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.181-186, 2010-10-25

日本甲状腺学会から甲状腺クリーゼの診断基準が2008 年に発表された.2004 年4 月から2009 年3月に当院で臨床的に甲状腺クリーゼと診断,治療した20 症例を,その診断基準にあてはめ,治療と予後等について解析した.基礎疾患は全例バセドウ病だった.誘因として服用不規則や中断が9 例,感染症6 例,糖尿病性ケトアシドーシス3 例,情動ストレス2 例,脳血管障害1 例,外傷1 例だった.診断基準で確定診断例が15例,疑い例が1 例,除外症例が4 例だった.症状では中枢神経症状が疑い・確定診断例では11 例,脈拍130/分以上は12 例認められたが,除外例では認められなかった.治療としてはチアマゾールが全症例に使用されていた.ヨードは13 例,b ブロッカーは17 例,ステロイドは12 例の症例で使用されており全例救命できた.服用不規則や中断,感染症が誘引となりやすく,症状では中枢神経症状・脈拍が特にクリーゼの診断には重要と考えられた.後遺症を残す重症例は6 例で全て新診断基準によって確定診断された症例であり,新診断基準は予後への有用性も期待できると考えられた.
著者
秋山 一文 斉藤 淳 Kazufumi Akiyama Atsushi Saito 獨協医科大学精神神経医学教室 獨協医科大学精神神経医学教室
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.207-212, 2006-10-25

脳には視床下部-下垂体-副腎皮質系(hypothalamiic-pituitary-adrenocortical axis, HPA系)とノルアドレナリン系というストレス反応を担う2つの系が存在する.急性のストレス反応を終焉させるためにHPA系全体に負のフィードバックが作動する.しかしストレス反応は長期化すればいわば「両刃の刃」としての性質をもつようになる.その引き金になるのがストレスの反復による海馬神経細胞への障害で,これにはbrain derived neurotrophic factor(BDNF)の減少が関与しているかもしれない.またストレスの反復によって脳内ノルアドレナリンの放出は感作される.精神障害は何らかの意味でストレスの影響を被るが,特にストレス反応を担うHPAの制御の障害が示唆される精神障害としてうつ病.外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder, PTSD),摂食障害を取り上げた.いずれも遺伝的要因を含む脆弱性を有する個人に何らかのストレス負荷が加わり発症するという図式に共通点がある.しかしデキサメサゾン抑制試験で評価したHPAの制御障害の方向性はうつ病では非抑制,PTSDでは過剰抑制と相反している.MRIによるうつ病の画像研究では海馬の萎縮を認めた報告が多い.これがいつから始まるかという問題はストレスによる海馬神経細胞への障害の時間的経過という点で興味深いが更に今後の検討が必要と考えられる.近年,児童虐待が社会問題化しているが,被虐待児が後年になってうつ病,あるいはPTSDなど深刻な精神障害を高率に発症することが見いだされている.このようにストレスと精神障害との関係は大きな広がりを見せつつある.
著者
林田 志峯 獨協医科大学産科婦人科学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.T49-T56, 2010-03-25
被引用文献数
1

わが国におけるB 型肝炎ウイルス(HBV)母子感染予防法として厚生省方式(HB ワクチン生後二ヶ月開始,HBIG2回投与)が広く実施されてきた.同時期に開発された千葉大方式(HB ワクチン生後24時間内開始,HBIG1回投与)の多施設共同臨床治験により,同方式と厚生省方式間で児の能動免疫獲得率・キャリア化率,有害事象発生率に関して有意差が無く,省力化・安全性・経済性の観点から千葉大方式の優位性が報告されている.今回,HBV 母子感染予防対策を児のHBV キャリア化阻止と対策漏れにエンドポイントを絞り,千葉大方式を更に簡略化し,全ての処置を生後1 ヶ月健診時に完了する獨協医大方式(HB ワクチン生後24時間以内開始,HBIG1回投与)の臨床治験を日本および中国大連市において実施した.両方式群間で,児の能動免疫獲得率,生後6 ヶ月時獲得HBs 抗体価,キャリア化率,有害事象発生率の全てにおいて有意差を認めず,一方,省力化・経済性と対策漏れに関しては獨協医大方式の優位性が判明した.獨協医大方式はその経済性,簡便性より,わが国はもとよりHBV 侵淫地域であるアフリカ,東南アジア諸国等においても積極的採用が期待され得る選択肢である.
著者
三須 俊宏 Toshihiro Misu 獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科 Department of Otorhinolaryngorogy Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.57-63, 2004-03-25

好酸球類粒蛋白の一つであるECPは,気道上皮障害を引き起こす事が知られている.血清ECPは,喘息や鼻アレルギー症状の重篤度を,反映していると報告されているが,血漿ECPは,血清ECPに比べ,常に低値となる.その値の違いが生じる理由を解明するため,アレルギー性鼻炎の症例を対象にして,検討した.患者血液を3種類の試験管に採血した.血液凝固剤入り,抗血液凝固剤入り,無添加の3種類である.その結果,血清ECPは,血漿ECPに比べ,常に高値を示した.しかも凝固剤を入れた血清ECPの方が無添加の血清ECPより高値であった.血清採取後の血餅中に存在する好酸球は,細胞膜が破綻し,顆粒の空胞化も顕著であった.一方,血漿採取時に生じたbuffy coat中の好酸球は,正常な形態を示すものが,大部分であった. ECP値は,好酸球細胞膜の破綻程度と有意な相関を示した.空胞化した顆粒を待った好酸球の細胞膜が破綻した時は,更なるECP高値を示した.以上の結果よりECPは,採血後に好酸球が,血餅という物理的な圧迫を受け,細胞崩壊をきたし,放出されるものと思われた.従って血清ECPは,好酸球の崩壊しやすさを,測定しているものであると思われた.ECP is one of the basic proteins in eosinophil granules. It is known that the serum ECP reflects well the seriousness of asthma and nasal allergy. But ECP does not exist in the blood stream. It is detected in the blood serum preserved in the test tube for one hour, especially with blood coagulant. Only a small amount of ECP is detected in the blood plasma. One hour after blood collection, the blood was centrifuged and ECP in serum and blood plasma was measured by radioimmunoassay. The eosinophils in cruor and buffy coat were observed by electron microscope. Ten to fifteen eosinophils in each test tube were observed. The value multiplied the factor of the destruction of the cell membrane by the factor of the vacuole change of the granules was defined as destruction index. The highest ECP value was detected in serum with blood coagulant, the lowest ECP value was in blood plasma and middle value was in serum with additive free (p = 0.0063). Most eosinophils in buffy coat had intact cell membrane, but many eosinophils in cruor were destroyed. The degree of the destruction of the cell membrane and the destruction index showed the significant difference in 3 groups. The ECP value (ECP/Eosinos) showed the significant correlation both with the degree of destruction of the cell membrane (p = 0.0030) and the destruction index (p = 0.0021). It is concluded that ECP in serum was released from destroyed eosinophils in test tube during clot formation after the blood collection. It is considered that the eosinophils compressed in clot formation cause destruction. Therefore, the level of serum ECP indicates the easiness of eosinophil destruction.
著者
和氣 晃司
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.225-229, 2012-10-25

「災害はいつ起こるかわからない」,よく耳にする言葉であるが,2011 年3 月11 日の東日本大震災も前ぶれなく突然に発生した.三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 の地震 (観測史上国内最大規模) とそれに続く大津波によって多数の尊い生命が犠牲となった.またそれに続く福島原発事故も発生し,今なお多くの方々が辛い生活を強いられている.従来,わが国では首都直下型地震,東海地震,東海・東南海地震など大規模な災害を想定して様々な対策を講じてきた.しかし,先の東日本大震災は全くの想定外だったという.阪神・淡路大震災など今までの大地震では,局地的な家屋の倒壊とそれに続く大規模な火災が問題であった.しかし,東日本大震災では東北地方から北関東にかけて大規模な津波が到来し,死者・行方不明者合わせて約2 万人という極めて多数の犠牲者が発生した.さらに福島原発からの放射能汚染を合併する甚大広域災害となってしまった.規模の大小にかかわらず,災害が発生すると当該地域は大混乱となり,近隣周辺地域も少なからず影響を受けることになる.そのような状況に遭遇した時,われわれはどのようなことに留意して医療活動を行うべきであろうか.本稿では,救急医学の立場から行うべき災害急性期の活動やそのための組織体制の紹介,さらには獨協医科大学病院として災害医療に臨むための準備,特にマニュアルの作成と効果的な訓練の必要性について述べる.
著者
一杉 正仁 菅谷 仁 平林 秀樹 妹尾 正 下田 和孝 田所 望 古田 裕明
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.175-178, 2008-10-25
被引用文献数
1

マークミスが生じやすい試験問題を明らかにするために,同一受験生を対象に,問題の種類や解答肢数の違いといった質的な変化あるいは問題数の変化がマークミスの発生頻度におよぼす影響を検討した.医学部6年生が4パターンの試験(530問,複択問題6.8 %;1130問,複択問題2.0 %;530問,複択問題11.8%;530問,複択問題57.2%)を受験し,それぞれにおけるマークミスの発生頻度を調査した.問題数が約2倍になっても,複択問題のしめる割合が低下するとともに,1人当たりのマークミス発生率は有意に低下した.問題形式および問題数が同じ場合,複択問題のしめる割合が4.8倍に増加すると,1人あたりのマークミス発生率は2倍に増加した.問題数を増加させるより,複択問題のしめる割合を増加させた方が,マークミスを誘発しやすいことがわかった.したがって,今後は複択問題のしめる割合を増加させた試験問題を利用して,マークミスの予防対策を講じることが有効と考える.
著者
大出 茂典 Shigenori Ode 獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科 Department of Otolaryngology Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.69-76, 2010-07-25

突発性難聴は原因不明の疾患である.近年活性酸素はさまざまな疾患や老化と関係があることがわかってきている.活性酸素そのものは短い寿命と高い反応性のために生体内の状態を測定するのは極めて困難であったがFree Radical Analytical System 4は活性酸素より生じた血中ヒドロペルオキシド濃度(d-ROMstest)を簡便に測定することができ,同時に抗酸化力(活性酸素・フリーラジカル除去能,BAP test)も測定できる.突発性難聴患者群は対照群に比較して血清の酸化ストレス度が上昇または抗酸化力が低下しているか検索した.さらにステロイドとPGE1 点滴治療1週間後の値(d-ROMs 値,BAP値)から突発性難聴の予後が推測できるか検証した.初診時結果,突発性難聴群は対照群と比較してd-ROMs値が高値(p<0.05)でBAP 値が低値を示した(p< 0.01).d-ROMs値はステロイドとPGE1の点滴治療1週間後に初診時と比べ有意に低下した(p<0.01).治療1週間後の血液状態の改善は最終的な聴力治癒と有意な相関が認められた(p<0.05).突発性難聴患者は活性酸素と関連があり,ステロイドとPGE1の点滴治療1週間後のスコア改善度は予後推測に有用であると考えられた.
著者
糸岐 一茂
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.T25-T32, 2012-03-25

背景:薬物治療中の高血圧症患者が,頸椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy, CSM)の術後,その高血圧が改善する例を時に経験する.特に降圧薬治療に反応しない難治性高血圧群で改善が見られることが多い.本研究ではCSM 術後の血圧及び副交感神経機能の推移について検討し,報告する.方法:2009 年1 月1 日から2009 年12 月31 日まで我々の施設内でCSM に対する椎弓形成術を施行した68例に対し,検討を行なった.術前の平均血圧が100 mmHg を超えていた術前高血圧群は17 例あった.うち12例は術前降圧薬を内服していたにもかかわらず,入院時高血圧を呈していた(難治性高血圧群).全症例で頸椎C3 からC6 にかけての筋層構築的棘突起椎弓形成術(myoarchitectonic spinolaminoplasty)が施行されている.血圧は術前,術後1 ヶ月,3 ヶ月,6 ヶ月の時点では外来で測定された.術後1 週間のみ入院中の病棟で計測された.全対象症例中47 例で術前,術後1 週間,1 ヶ月,3 ヶ月,6 ヶ月の測定をすべて遂行しえた.測定した血圧は術前の血圧との比例で表し,平均血圧比,収縮期血圧比,拡張期血圧比として比較検討している.また,副交感機能の指標として心電図上RR 間隔変動係数(coefficient variance of RR intervals, CVRR)を同時に測定し,比較検討している.結果:術前高血圧群(n=17)と正常血圧群(n=29)の間で術前後の血圧変化において有意差を認め,そのうち術前高血圧群において術後1 週間,6 ヶ月の平均血圧比,収縮期血圧比,拡張期血圧比の有意な低下を認めた.術前降圧薬内服群と術前降圧薬非内服群の間での血圧変化においても有意差を認め,そのうち術前降圧薬内服群において術後1 週間の平均血圧比,収縮期血圧比,拡張期血圧比の優位な低下を認め,さらに収縮期血圧比のみ術後6 ヶ月の時点で優位な低下を示した.さらに術前降圧薬を内服していたにもかかわらず,入院時高血圧を呈していた難治性高血圧群(n=12)とその他の症例群(n=37)との間で術前後の血圧変化に有意差を認め,難治性高血圧群では術後1 週間と6 ヶ月で有意な血圧低下効果をみた.術前正常血圧群(n=29)においては術後有意な血圧変化はみられなかった.その他高齢者群(65 歳以上,n=13)と若年者群(60 歳以下,n=23)及び術前MRI で脊髄実質内にT2 高信号を示した群(n=19)とそれ以外の群(n=27)との間では血圧変化に有意差は検出されなかった.全ての群で,CVRR は有意な変化を示さなかった.結論:頸椎症性脊髄症に対する外科的減圧術は,高血圧の改善をもたらす.その機構には副交感神経系の関与は否定的である.
著者
秋谷 かおり
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.149-158, 2004-07-25

左室駆出動態が末梢動脈血流に及ぼす影響を明らかにする目的で,弁膜症例について頸動脈血流と左室駆出血流速度波形との関係を検討した.対象は弁膜症患者104例(平均年齢62±13歳),内訳は,大動脈弁閉鎖不全症37例,大動脈弁狭窄症17例,僧帽弁閉鎖不全症31例,僧帽弁狭窄症19例である.対照は,拡張型心筋症32例,肥大型非閉塞性心筋症12例とした.計測は,心エコー図検査と頸動脈エコー図検査を行い,左室駆出分画,心係数,1回抽出係数,平均左室円周方向心筋線維短縮速度,総頸動脈径,左室流出路ピーク駆出血流速度(LV Flow),総頸動脈ピーク収縮期血流速度(Car Flow)を計測した.大動脈弁狭窄症を除く全ての患者はLV Flowが速くなるほどCar Flowも速く,両者に正相関がみられた.大動脈弁狭窄症はLV Flowは速いほどCar Flowは遅く,両者は負の相関関係がみられた.また,大動脈弁狭窄症では弁狭窄が重症例ほどCar Flowは低下していた. Car Flowに弁膜症における左室駆出血行動態を反映した.
著者
江幡 敦子 竹川 英宏 大門 康寿 小林 祥泰
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.105-110, 2006-03-25

脳梗塞の早期治療は重要だが,超急性期のtissue plasminogen activator (t-PA)の他に,早期治療の有効性は証明されていない.われわれは,t-PA適応のないアテローム血栓性梗塞の早期治療の有効性について検討した.対象はJSSRS脳卒中急性期患者データベースに登録された127例のアテローム血栓性梗塞で,発症から当院到着までを発症一来院時間とし,発症3〜6時間の早期来院,6時間以降の非早期来院に分類し,退院時のmodified Rankin Scale (mRS)およびNIHSS改善度を求めた.退院時mRSに差はなかったが,NIHSS改善度はそれぞれ1.9±3.5,1.6±6.4であり,早期来院で有意に改善した.近年,"Brain Attack"の重要性が唱えられているが,t-PA適応に外れた場合でも早期に来院,治療をすることの重要性の一部を裏付けたものと考えられた.
著者
一杉 正仁 菅谷 仁 平林 秀樹 妹尾 正 上田 秀一 下田 和孝 田所 望 古田 裕明 Masahito Hitotsugi Hitoshi Sugaya Hideki Hirabayashi Tadashi Seno Shuichi Ueda Kazutaka Shimoda Nozomu Tadokoro Hiroaki Furuta 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター 獨協医科大学国試教育センター Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine Medical Education Center for National Examination Dokkyo Medical University School of Medicine
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.77-81, 2010-07-25

試験におけるヒューマンエラーの実態を明らかにし,予防教育の効果を検証するために,医師国家試験模擬試験を利用して受験生がおかすヒューマンエラーを包括的に調査解析した.医学部6年生が2回の医師国家試験模擬試験を受験し,自己採点結果と,マークシートによる機械的採点結果を対比した.2回の試験を通じて,受験生1人が1回の試験で平均1.4個のエラーをおかしていた.エラーの分類別頻度では,2肢選択すべきところを1肢しか選択しなかったエラーが49.1%,1肢選択すべきところを2肢以上選択したエラーが31.6%,選択したものと異なる記号をマークしたエラーが10.5%と続いた.全ての受験者(全受験者)と,2回の試験に参加した受験者(2回受験者)に大別してエラーの発生頻度,エラーの内容について比較した.2 回受験者は,1人当たりがおかすエラー数および2問以上のエラーをおかす人の割合ともに2回目の試験で有意に減少していた. これは,受験者自らがエラーの実態に気付き,そして適切な助言のもとに注意を払って試験に臨んだ結果と思われる.試験におけるヒューマンエラーの実態を明らかにし,それを最小限にくい止める対策は,単に医師国家試験における失点防止だけでなく,ミスをおかしてもそれに気付き,問題解決ができるようなerror tolerantの考え方を養う上でも重要と思われる.We analyzed inadvertent human errors made by 6thgrade medical students during two trial examinations madeup of 500 multiple-choice questions where either one or twocorrect answers were required. Forty and 39 students, respectively,took the two examinations. Students averaged1.4 errors each during the examinations. Most errors( 80.7%) involved selecting the wrong number among the answeroptions( i.e. when a two option selection was required,only one option was selected). The students who had takenboth examinations made significantly less errors in the latterexamination than the former. Furthermore, the prevalenceof students who had made more than one inadvertenterror was significantly lower among students who tookboth examinations. We showed the effectiveness of interventionregarding inadvertent errors during 500 multiplechoicequestion examinations and of educating the studentsabout preventive measures. These results might have auseful application to improved safety promotions based onerror-tolerant theories.