著者
萩田 賢司 森 健二 横関 俊也 矢野 伸裕
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_22-B_27, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
7

飲酒運転取締りによる飲酒運転事故抑止効果を明らかにするために、GIS による飲酒運転取締り・飲酒運転事故の統合分析ツールを活用した分析を行った。東京都と岡山県のデータを活用して、飲酒運転取締り地点の近接空間の飲酒運転事故件数を、飲酒運転取締り前後で比較したところ、岡山県は事後に飲酒運転事故が大きく減少していたが、東京都はそのような傾向がみられなかった。この原因としては、飲酒運転厳罰化により、東京都では 15 年間で飲酒運転事故が約 95%も減少し、加えて代替交通機関も発達しており、飲酒運転取締りによる飲酒運転抑止効果が表れにくい悪質運転者による飲酒運転が多く残されているためと推察される。岡山県の減少率は約 65%であり、飲酒運転取締りによる飲酒運転事故抑止効果が出現する余地があるのではないかと考えられた。
著者
大谷 眞弘 多田 昌裕 岡田 昌也
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.A_294-A_301, 2018

<p><tt>日本では,特に地方部において乗合バスが重要な公共交通インフラとなっており,</tt>1 <tt>件のバス事故が日常生活に大きな影響を及ぼす.しかしながら乗合バス事故の件数は依然として多い.本研究では,新人バス運転手 </tt>16 <tt>名と指導運転手 </tt>7 <tt>名の,バス停留所への停車・発車,右左折など,バス乗務中に起きる様々な交通場面を含む公道上での運転行動を計測し,計測データを比較することで,どのような場面においてバス運転手がリスクの高い運転をする傾向にあるのかを調査した.その結果,バス停留所発車時や狭路直進時における,同時に複数の項目を確認しなければならない状況下において,新人運転手群は車内事故や対人事故を防止するために確認すべき項目の確認回数が指導運転手群と比較して有意に少ないことが明らかとなった.</tt></p>
著者
村井 宏徳 加藤 明里 神戸 信人 高瀬 達夫 鈴木 弘司 森田 綽之
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_67-B75, 2017

<p>宮崎県児湯郡川南町の一般国道 10 号には,沿道商業施設の往来等から,乱横断する歩行者・自転車が多く,死亡事故が発生する単路区間が存在していた.このため,交通安全対策として,我が国で初めて信号機を設置せず,横断歩道を食い違いに配置した無信号の食い違い二段階横断施設が導入された.本研究は,我が国で初めて導入された,この二段階横断施設の導入効果を明らかにするために,導入前後に実施した各種調査の結果を用いて,二段階横断施設の安全性,円滑性の評価と,横断特性の変化を分析した.分析の結果,二段階横断施設の利用者が増加して乱横断が減少し,車両と接近した横断の減少や横断待ち時間の短縮等の安全・円滑面の効果が確認できた.また,歩道部より横断待ち時間が短縮する等の食い違い二段階横断の特性が確認できた.</p>
著者
谷田 英駿 奥嶋 政嗣
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.A_311-A_318, 2019-02-01 (Released:2019-02-06)
参考文献数
10

道路橋梁の長期補修計画においては、補修費用だけでなく、補修工事によって生じる道路利用者負担についても考慮する必要がある。本研究では、道路利用者負担を考慮した複数橋梁における長期補修計画案の評価方法を提案する。具体的には、複数橋梁における補修シナリオを対象として、橋梁劣化モデルと交通量配分モデルを組み合わせ推計した LCC により比較評価した。この結果、道路利用者負担は補修費用の半数程度もあり、その重要性が明確となった。また、橋梁劣化の進行が遅い場合を除いては、予防保全型シナリオが優位であることを検証した。さらに、事後保全型シナリオと比較して、予防保全型シナリオは初期では費用負担が大きくなるが、長期補修計画としては適切であることを実証した。
著者
川崎 智也 安倍 智紀 西内 裕晶 轟 朝幸
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.A_25-A_32, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)
参考文献数
14

都市鉄道では、朝ラッシュ時の混雑により、ホーム上の出口に通じる階段付近において歩行者の滞留が生じている。本研究では、階段付近の滞留を緩和するための一策として、混雑車両への課金を提案する。分析では、生存分析により混雑課金に対する乗客の支払意志額を把握し、適切な混雑課金額を検討した。次に、混雑課金を実施した場合を想定し、乗客を混雑車両から非混雑車両へシフトさせた。その後、シミュレーションソフト Viswalk を用いてホーム上の混雑緩和効果を計測した。分析の結果、混雑課金が 20 円と 100 円の場合、船橋日大前駅西口階段付近におけるピーク時の歩行者数は、それぞれ 27 人と 25 人減少し、一人当たり遅れ時間はそれぞれ 12.25 秒と16.81 秒短縮され、混雑車両への課金がホ ーム上における歩行者の滞留緩和効果が示された。
著者
成嶋 晋一 葛西 誠 邢 健 後藤 秀典 辻 光弘
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_125-A_134, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
14

本稿は,高速道路の暫定 2 車線区間の交通機能低下箇所への効果的な付加車線設置に関する検討の一環として行った暫定 2 車線区間の速度変動の交通実態の分析結果をまとめたものである.具体的には,暫定 2 車線の代表的な区間において,トラカン交通量と紐付けた ETC2.0 データを用いて交通量ランク別の速度プロファイル図を作成し,各区間での速度変動状況や要因について分析を行った.その結果,暫定 2 車線区間では,サグや上り坂といった幾何構造の影響を受ける箇所で速度低下が断続的に発生しながら,区間を進行するにつれ徐々に速度低下していくこと,付加車線区間で回復した速度は長く持続せず,付加車線の終端部直後の短い区間内で速度低下すること,また,これらは交通量レベルが高いほどより顕著に現れることが判った.
著者
元田 良孝 宇佐美 誠史 湯田 直人
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.B_40-B_46, 2015-02-06 (Released:2015-02-06)
参考文献数
8

東日本大震災で被災した JR 気仙沼線、大船渡線、山田線では鉄道事業者から臨時的な措置として鉄道敷を利用した BRT(高速バス輸送システム) が提案され、山田線を除き運行が開始されている。しかし鉄道の復旧を望む地元自治体の意向も大きく、BRT の是非について大きな論点となっているが、住民の意見は明らかになっていない。ここでは最も早く BRT の運行が開始された気仙沼線の BRT について気仙沼市民の意識調査を行い、BRT の評価と鉄道復旧意識等について調査を行った。その結果震災前と比べ利用者は減少したが、気仙沼線離れは運転免許保有者と自宅が駅から遠い者が多かった。鉄道復旧意識は高く、最も関係がある要因は、あったものを復旧させるのは当然との考えであった。BRT の評価も影響を与えており、評価が低い程復旧意識が高くなることも明らかとなった。
著者
岩柳 智之 中村 文彦 田中 伸治 三浦 詩乃 有吉 亮
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_223-A_229, 2017

<p>2011 年 3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震により、千葉県浦安市では液状化現象が発生し、交通障害や断水の被害が生じ、応急給水活動が行われた。本研究では浦安市での応急給水活動に着目し、最短経路探索を用いて水の運搬による身体的負担について評価し、また給水支援が不足した場合の備えを給水の待ち行列計算から推定した。その結果、前者について現況では全体として運搬時間 6 分以上の無理な負担が存在し、対策として耐震化した受水槽等の整備により運搬時間 10 分以上の過大な負担が大きく減少することが明らかになった。後者について 8000 人程度の断水人口を受け持つ応急給水拠点では給水車が不在となる時間や給水所開設時間内に水を受け取れない人が発生し、これを避けるには 1L/人・日の備蓄が必要であることが明らかになった。</p>
著者
前田 紘弥 関本 義秀 瀬戸 寿一 樫山 武浩 小俣 博司
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.A_1-A_8, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
15

課題先進国と言われる日本のインフラ維持管理は、財源・専門家不足が深刻な問題となっている。一方で、ここ数年の深層学習等の技術発展により高度な画像認識が可能になっており、さらに世界中広く普及しているスマートフォンのカメラ機能は高精細化している。そこで本研究では、7 つの自治体の道路管理者と連携し、深層学習により路面損傷のリアルタイム検出を行うとともに、ランダムフォレスト法により自治体ごとの修繕対応決定における各特徴量の重要度比較を試みた。その結果、一般的なスマートフォンのみを用い、路面損傷を検出率(真陽性率)87%で検出することができ、自治体ごとの維持対応基準の違いを定量化することができた。この成果により、安価で簡易なインフラ点検が可能となり、財源・専門家不足に悩む諸地域においてブレークスルーとなる可能性がある。
著者
西元 崇 植木 宗司郎 松本 修一 平岡 敏洋
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_29-A_35, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
14

ETC の普及に伴って国内の高速道路における料金所渋滞は大幅に減少し,現在の都市間高速道路における渋滞はサグ部で 60 %程度発生すると言われている.すなわち,高速道路の更なる渋滞削減を達成するには,サグ部における渋滞解消法の検討が急務である.渋滞対策には,ハード面とソフト面双方において多種多様なものが提案されているが,本研究では,比較的低コストかつ即応性が期待されるサグ部における渋滞抑制対策として,サグ部上りに設置間隔が広がるようにポールを設置することでドライバに減速感の錯視を生じさせる手法を提案する.ドライビングシミュレータ実験を行い,提案手法によって,サグ部における速度低下を抑制し,円滑な交通流の実現に有効であることを示唆する結果が得られた.
著者
井ノ口 弘昭 秋山 孝正
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_22-A_28, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
13

近年、コンパクトな車両として超小型モビリティ(Ultra Light-weight Vehicle: ULV)の開発・実用化が進められている。一般的な超小型モビリティは、電気モーターを動力としており、出力は通常車両と比較して低い。このため、最高速度が低く設定されている。本研究では、超小型モビリティと通常車両の走行特性の相違点を明らかにするとともに、超小型モビリティが混在した道路での交通流特性を分析する。走行調査の結果、超小型モビリティの発進時の加速度は、走行速度が 40km/h 程度以下では通常車両と比較して高く、それ以上では通常車両と比較して低くなることがわかった。また、交通シミュレーションによる検討の結果、交通密度が比較的低い場合に、超小型モビリティの比率が高いと平均走行速度が若干低く、交通密度が高い場合に平均走行速度が若干高くなることがわかった。
著者
土屋 哲 谷本 圭志
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_280-A_286, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
6

過疎地域における持続可能な社会のしくみを考える際、サービスの供給者が専業ではなく兼業によって、限られた労力で多くの機能を担い、地域を支えていくことが必要である。本研究では、地方のタクシー業者に注目し、タクシー運転手が本業の傍らに集落を巡回して何らかの生活支援サービスを行うことを想定して、本業に付随した生活支援サービスがどの程度供給可能であるのかを簡易的に分析するための方法論を時空間プリズムの概念を援用して構築する。その上で、実際のタクシーの賃走履歴データを用いた分析を通して、付随的なサービスの供給可能性を明らかにしうることを実証的に示す。
著者
山中 英生 原澤 拓也 西本 拓弥
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_15-A_21, 2017

国・警察による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」では,自転車専用通行帯や車道混在を中心とした自転車ネットワーク形成方針を示している.一方,自転車利用者の多くは車道通行に不安を感じており,車道部の自転車通行空間の普及には &ldquo;安全感&rdquo; 確保のための街路交通条件を明らかにすることが肝要と言える.本研究は、自転車の車道走行時の安全感に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている.そのため,東京都内の街路交通特性の異なる街路 </tt>22 <tt>区間についてビデオクリップ・アンケートを用いて、サイクリストの安全感とその要因への意識を調査し、安全感に影響を与える要因及び街路交通特性との関係を分析した.その結果,「追い越され」の要因が高く,レーン設置,通行帯幅確保が安全感向上に寄与することが明らかになった.
著者
大山 雄己 羽藤 英二
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.1-10, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
21

既存の経路選択モデルは,ドライバーが直接的な経験を通じてネットワークに対する空間的知識を獲得していることを前提とし,大域的な経路の評価・選択をモデル化する.しかし災害時のネットワークにおいては,ドライバーは経験や情報を持たず,先読みを伴う近視眼的な判断が重要となる.こうした意思決 定の動学性を記述するため,空間割引率の概念を導入した一般化 RL(Recursive Logit) モデルを提案し た.数値計算では,空間割引率が経路選択行動の評価に与える影響だけでなく,本モデルが特殊ケースとして既存モデルの結果を含むことを示した.さらに,東日本大震災時の首都圏のデータを用いたパラメータ推定を行い,日常時のデータと比較した.結果として,災害時には近視眼的な意思決定が重視され,また経路選択メカニズムが動的に変化したことを明らかにした.
著者
伊勢 昇
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.A_26-A_31, 2015-02-06 (Released:2015-02-06)
参考文献数
10

近年、我が国の地方部を中心に深刻化しつつある買い物弱者問題は、地域レベルでの対応が求められる非常に重要な課題である。それゆえ、これまでに地域レベルでの買い物弱者人口推計手法の確立のための基礎的研究が進められてきた。しかしながら、地域に合った買い物支援策を検討する上では、買い物弱者数に加えて、買い物弱者の種々の買い物支援策に対する需要量とそれによって得られる利益の推計が必要であると考えられる。そこで、本研究では、個人属性と地域特性を考慮した買い物弱者の買い物支援策(買い物行動様式)の利用頻度及び支払意思額に関する要因分析を行うことで、種々の買い物支援策の需要量とそれに伴う利益に関する推計手法確立のための基礎的知見を得ることを主たる目的とした。