著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.55-58, 2020 (Released:2020-06-19)

その国の研究力を測る手段として、研究論文数が取り上げられることが多いが、その国の学会を中心とした研究者コミュニティが主体的に編集に携わるジャーナル(自国ジャーナル)の数やそれらの質も、研究力を測る一つの指標となりうる。今回、クラリベイトアナリティクス社のジャーナルインデックスの中で、分野別のインパクトファクター上位25%(Q1ジャーナル)の雑誌群をその分野のトップジャーナルとみなし、その数と内容を国別に分析することで、その国の研究力や特徴に関する示唆を得ることができると考え、2000年以降のQ1ジャーナル数の推移を日本と中国に絞って調査・比較した。その結果Q1ジャーナル数において2010年代に日中の逆転が起こり、また、2018年には3倍以上の差が生まれていることが分かった。また、中国のQ1ジャーナルは、2000年代後半より戦略的な創刊、ないしはプラットフォーム移行がなされていることが示唆され、欧米の商業出版社との提携が多いことなどがわかった。
著者
安藤 俊幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2020 (Released:2020-06-19)

特許調査の上流工程である予備検索課程に特許調査と機械学習の観点から着目して自分でできる調査の効率化の基礎検討を行うものである。ブラックボックス化を避ける為にも特許調査は、最近のAIシステムに丸投げという方向性は目指さず、「人」が行うべきところと機械学習で行った方が良いところを仕分けする。性能評価方法の考え方は商用のシステムの性能評価にも応用可能である。特許調査の観点からは予備検索は調査範囲の確定と検索キー(特許分類、特徴キーワード)の抽出が重要である。検討対象としては過去にも検討を行い正解が分かっているガスバリア性フィルムの分野の問題を対象とした。機械学習の観点からは、文書のベクトル化手法としてBag of Word(BoW)モデル、TF・IDFモデル、分散表現ベクトルのモデルとしてAve-word2vec、doc2vec、Ave-fastTextを検討した。文書ベクトルのソースとして大別してテキスト(タイトル、要約、請求項)と特許分類(特にFターム)による文書ベクトルを作成・比較した。機械学習による文書分類の手法としてはXGBoost(eXtreme Gradient Boosting)パッケージを利用した。XGBoostの他に7種類の文書分類アルゴリズムを検討した。文書のベクトル化手法と文書分類モデルの性能は交差検証した。結果は概ねTF・IDF文書ベクトルを用いてXGBoostによる文書分類モデルが良い傾向を示した。
著者
井本 美子 今井 雅子 前田 耕一 三沢 岳志 矢部 悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.1-6, 2020 (Released:2020-06-19)

グローバルに活躍する企業は競合企業と戦うために、事業方針に沿った知的財産戦略を持っていると思われる。本研究は、経済産業省が独自の分野で世界のトップを走る企業をまとめた「グローバルニッチトップ企業100選」の中から自転車部品業界で世界トップのS社を選び、その知的財産戦略を明らかにすることを目的にした。S社は自転車部品業界で世界的に圧倒的なシェア(約85%)を持つことと、自転車部品の組み合わせであるコンポーネントは独自でありながら、その外部インターフェースが公開されていることから「自転車界のインテル」と言われている。しかし調査をするとビジネスモデルも知財戦略もインテルとは異なる。また、ヨーロッパを中心に自転車業界がEバイクに急速に移行する中、S社は後発でありながら、Eバイクのコンポーネントでも一定のシェアを確保している。そこでS社の自転車部品におけるトップシェア獲得と、Eバイク市場への参入における知財戦略を一部でも読み解くべく研究を行った。
著者
平尾 啓
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.349-354, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

アイ・ピー・ファイン株式会社は2017年に「R&D知財AIシステム Deskbee」を発売したが,知財情報調査の効率化にはAIの性能だけでなく,他ツールとの連携やそれ自体の使い勝手が重要ファクターであると考えられた。そのため,利用者とともに研究する知財AI活用研究会を開催した。本年で2期2年が経過したが,研究会成果からのDeskbee機能改善事例と日本化薬株式会社奥村公人氏の報告(SDI調査のノイズ落とし作業の検証)を利用しての研究事例の紹介をする。
著者
廣田 とし子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.35-41, 1994-01-01 (Released:2017-05-26)
参考文献数
4
被引用文献数
4

世界中にはりめぐらされたネットワークの複合体であるインターネット上には様々な情報資源が蓄積されている。ここでは大学図書館のレファレンス業務に従事する著者の経験をもとに,次のようなフェーズに分け,インターネットの活用事例を紹介した。(1)OPACを使う(2)記事索引を使う(3)原文を入手する(4)人物情報を探す(5)図書館案内をみる。また,画面例を盛り込み,インターネットを利用したことのない人にもそのイメージが湧くような説明を心掛けた。さらに,その事例を通して,大学図書館のレファレンス業務におけるインターネットの利用可能性についてまとめてみた。

2 0 0 0 OA 協会だより

出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.610-611, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
著者
井上 大介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.244-248, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

人間社会の歴史において犯罪行為が途絶えたことがないのと同様に,サイバー空間における攻撃行為(以下,サイバー攻撃)もまた途絶える気配はなく,むしろ攻撃対象の拡大や攻撃に用いられる技術の高度化が進んでいる。本稿では,ここ数年のサイバー攻撃全般の動向を概観するとともに,サイバー攻撃大規模観測・分析システムNICTER(ニクター)の観測に基づく無差別型サイバー攻撃の動向について詳説し,感染IoT機器の現状とその対策の一つであるNOTICEの取り組みについて紹介する。
著者
松原 恵 小宮山 史 山本 和明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.285-290, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)

国文学研究資料館(国文研)が進める歴史的典籍NW事業では,画像公開している古典籍をもっと自由に活用してもらう活動にも取り組んでいる。そのなかでも特に反響の大きかったのが「江戸料理」に関する事業で,人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)などの研究機関や企業等とのコラボレーションに進展し,多くのメディアにも取り上げられた。そのあらましを述べたうえで,企業と連携していくなかで見えてきた可能性と,課題について考える。
著者
高久 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.192-196, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

本稿では図書館業務に関連するプログラムツールの開発事例を紹介し,それらのツール開発にかかわる要素を解説する。これまで筆者が開発してきたツールの事例として,PDFチェックツール「pdf-checker」,junii2メタデータ検証ツール「JuNii2 Validator」,Linked Open Data(RDF/Turtle)公開用ツール「ttl2html」などを取り上げ,それらのツールが内在する業務ニーズや開発動機,問題解決のために設定した業務フローの設計,ツールの入出力形式やユーザインタフェース,作業環境や代替ツールや代替手段といった関連する諸要素について解説する。
著者
佐藤 卓己
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.230-235, 2012-06-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
11

デジタル・テクストとして物理的存在を欠いた電子ブックの普及は,「書物」の再定義をせまっている。しかし,電子ブック登場以前から,書物はすでに大きな変容を遂げてきている。本稿では比較メディア論の視点から,書物の変容を1920年代のラジオ放送開始,1930年代のペーパーバック革命において検討した。それは「書物のラジオ化/雑誌化」,すなわち「書物の広告媒体(メディア)化」の系譜である。こうした「書物のメディア化」の最終段階として,広告料収入で運営されるメディア企業,Googleによるライブラリープロジェクトが登場する。ウェブ2.0時代のコミュニケーション状況において「書物のデジタル化」がもたらす問題点を整理した上で,電子ブックを既存の書物のリテラシーに接合する必要性を指摘した。
著者
井上 能行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-26, 2015-01-01 (Released:2017-04-13)

東日本大震災から4年近くが経つ。岩手,宮城の津波被災地では復興が進む一方,福島第一原発事故を抱える福島県では未だに12万人を超える人が避難を余儀なくされている。福島県内では政治不信,科学者不信に加えて,マスコミへの不信感も強い。不信の理由は,福島県の現状が伝わっていない,というものだ。象徴的な出来事がマンガ「美味しんぼ」騒動だ。作者の意図はどうであれ,マスコミが大騒ぎし,残ったのは風評被害だけだった。マスコミが伝えていることと,住民が伝えてほしいと考えることのギャップはどこから生まれるのか。解消法はないのか。福島市に住んでいる記者の視点から考察する。
著者
今井 雅子 高橋 礼恵 戸田 智美 三沢 岳志 源栄 克則
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.34-40, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

本研究では,投資ファンドとして先端技術を持つ投資先を選定するという設定のもと,社会課題を解決するための先端技術の中から,技術革新や市場拡大が期待される家庭用サービスロボットに着目し,技術動向分析および技術動向予測を行った。これらの情報と研究メンバーの想像する将来の生活から,ニーズはあるが,現在製品が普及していない家庭用調理ロボットを2030年製品化のターゲットとして選択した。この家庭用調理ロボットについて,理想とする将来像と現状の技術とのギャップから,把持技術,安全技術,味のデジタル化技術をキー技術として特定し,これらの技術において先端技術をもつベンチャーを探索し,最終的に2社を投資先として選定した。
著者
松田 真美 黒沢 俊典 林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.41-46, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

2010年から,3年に一度,10年にわたりMEDLINE収録 国内医学雑誌の採録数,電子化状況,インパクトファクターなどについて定点観測を行い経時変化を分析した。この間に,英文誌の割合の増加,海外プラットフォームの割合の増加,国内プラットフォームのJ-STAGEへの集約,インパクトファクターの上昇などの傾向が見られた。2017年に採録数が急減したが,多くはMEDLINEの収録ポリシーの変更に対応できなかったジャーナルであり,電子データの重要性が明らかとなった。
著者
岸田 和明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.62-67, 2007-02-01 (Released:2017-05-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では,シソーラスや件名標目表をはじめとする統制語彙に関して,その基本的な機能や限界を整理した上で,インターネットが高度に発達し,サーチエンジンが広く普及した現在における統制語彙の意義と役割について議論する。具体的には,再現率向上および精度向上のための装置としての統制語彙の機能を確認した上で,検索実験や種々の実証研究等で明らかになっている,その限界について述べる。次に,その点を踏まえ,専門的データベースの検索におけるその意義,ウェブなどの全文検索におけるその意義,複数根拠を提供するための表現としての意義について議論する。さらに,今後の可能性として,シソーラスの自動構築や索引語の自動付与,オントロジやフォークソノミーとの関連についても触れる。