4 0 0 0 OA 1.補体

著者
西川 和裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.948-954, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

IgA腎症や膜性腎症では腎組織に補体が沈着し局所での補体活性化を示すが,血中の補体は低下しない.より強力な補体活性化が持続するループス腎炎や膜性増殖性糸球体腎炎では低補体血症がみられる.低補体血症を呈する疾患・病態は限られている.血中補体価,C3,C4測定結果から補体欠損症が発見でき,補体活性化を伴う疾患では補体活性化経路判別による病態の解析が可能となる.ここでは,補体の概説,腎疾患との係わり,血中補体の見方を解説する.
著者
飯村 洋平 本告 成淳 今中 景子 吉田 知彦 竹本 稔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.784-790, 2019-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
10

72歳,男性.肛門腺癌の術後リンパ節転移に対して化学療法を開始.化学療法27コース目施行後,突然の眩暈,ふらつきならびに意識障害が出現し,A病院に救急搬送され,低血糖と診断された.当院の内分泌学的検査より,インスリン自己免疫症候群(insulin autoimmune syndrome:IAS)と診断.チオール基を有するベバシズマブを中止したところ,低血糖発作の頻度は低下した.ベバシズマブ使用時の低血糖発作では,IASの発症を考慮する必要がある.
著者
石田 直
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2990-2997, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
14

現在,日本では,高齢者における肺炎の罹病率,死亡率が増加しており,これを背景として医療・介護関連肺炎という新しい疾患概念も生まれている.高齢者の肺炎は,非典型的な症状や所見を呈することが多く,また,誤嚥が大きな要素となっている.高齢者肺炎の原因微生物は,若年者に比して多様であり,薬剤耐性菌の頻度が高くなるが,検出菌が真の原因菌であるかを検討しなければいけない.高齢者肺炎の治療は,患者の医学的および社会的背景ならびに薬剤耐性菌のリスクを考慮して原因微生物を想定し抗菌薬を選択するが,過剰な治療にならぬよう,用量や薬剤併用に留意する必要がある.また,補液,栄養管理,呼吸管理等,抗菌薬治療以外の治療にも留意する必要がある.高齢者肺炎の中には,末期肺炎,老衰としての肺炎,嚥下機能廃絶例も含まれ,これらに対してどのように対処していくか,社会的なコンセンサス作りも必要である.
著者
辻 貞俊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1400-1406, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9

てんかん発作に起因する交通死傷事故の発生により,運転免許制度が改正され,「道路交通法の一部を改正する法律」および「自動車運転死傷行為処罰法」が施行された.改正点は,一定の症状を呈する病気等に該当するかの判断に必要な質問票の虚偽の報告者に対する罰則および医師による届出に関する規定の整備である.さらに,特定の病気等の影響で正常な運転に支障を来たし,交通死傷事故を起こした場合の罰則(新類型)が強化された.医師にも患者にも法律の遵守が求められている.
著者
Hiroe Sato Yoko Wada Eriko Hasegawa Yukiko Nozawa Takeshi Nakatsue Tomoyuki Ito Takeshi Kuroda Takako Saeki Hajime Umezu Yoshiki Suzuki Masaaki Nakano Ichiei Narita
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.8473-16, (Released:2017-08-10)
参考文献数
27
被引用文献数
25

Chronic recurrent multifocal osteomyelitis (CRMO) is an autoinflammatory bone disorder that generally occurs in children and predominantly affects the long bones with marginal sclerosis. We herein report two cases of adult-onset CRMO involving the tibial diaphysis bilaterally, accompanied by polyarthritis. Magnetic resonance imaging (MRI) showed both tibial osteomyelitis and high intensity of the extensive lower leg muscles. Anti-interleukin-6 therapy with tocilizumab (TCZ) effectively controlled symptoms and inflammatory markers in both patients. High intensity of the lower leg muscles detected by MRI also improved. These cases demonstrate that CRMO should be included in the differential diagnosis of adult patients with bone pain, inflammation, and high intensity of the muscles detected by MRI. TCZ may therefore be an effective therapy for muscle inflammation of CRMO.
著者
葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2602-2607, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
9 4

サルコペニア,フレイルは,超高齢社会の日本では要介護状態に至る重要な要因として位置づけられ,健康寿命の延伸を目指すうえでも大切な病態である.これらは地域高齢者の10~30%程度の有病(症)率と考えられており,身近に存在する老年症候群であり,高齢者診療にあたる場合は,この存在に注意を払い,基準に合わせて診断する必要がある.サルコペニア,フレイルは予防が可能であることと,早期に発見することにより介入効果が期待できることもあり,一般診療で早期に発見し適切に介入することが重要である.
著者
富沢 雄二 横山 和正 服部 信孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.2242-2248, 2012 (Released:2013-08-10)
参考文献数
11

膠原病は全身性自己免疫疾患と呼ばれ,1942年にクレンペラーらによって提唱された病理組織学的概念である.脳神経障害を来す代表的な膠原病および膠原病関連疾患として,SLE,Sjögren症候群,MCTD,Behçet病,サルコイドーシス,抗リン脂質抗体症候群などがある.これらの疾患による脳神経障害のパターンおよび診断・治療につき考察する.
著者
沖 祐美子 小池 春樹 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1591-1597, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5

薬物による末梢神経障害は,薬剤の用量規制因子となり,原疾患の治療に影響を与えるという点で重大な副作用である.早期発見による投与薬剤の減量,中止が唯一の対症療法となる場合がほとんどで,なんらかの神経症状が残る場合も多い.日常診療においては,末梢神経障害を引き起こす薬剤について幅広く理解し,症状の出現を早期に発見し迅速に処置を行うことが最も重要であると考えられる.
著者
八板 謙一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2326-2332, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
14

院内・術後の発熱は,感染症内科医が多く相談を受ける事象である.患者背景(術式,併存疾患等)を鑑みつつ,臓器毎(肺,尿路等)に考えていけば不明熱化することは多くない.このカテゴリーにはカテーテル関連菌血症・尿路感染症・院内肺炎といったよくみられるものから,デバイス感染や薬剤熱等,詳細な診察・カルテレビュー,画像検索を必要とするものまで存在する.また,診療に関わる主治医との交渉も重要な技術である.
著者
井上 真奈美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.3-10, 2005-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
15

わが国の胃癌は,罹患率,死亡率とも,諸外国と同様に一貫した低下傾向にあるが,低下の開始時期が欧米先進国と比較して遅く,現在なお高率である.それでも最近は,トップだった罹患や死亡順位が他癌と入れ替わるなど,様相が変貌しつつある.今後,急速な高齢化に伴いしばらく患者数自体は低下しないが,長期的にみれば,わが国の胃癌は大きく減少していくと予想される.

4 0 0 0 OA ライム病

著者
川端 眞人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1206-1211, 1994-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ライム病は野山に生息する大型のダニ(マダニ)によって媒介され,病原体はBorrelia burgdorferiである.本症は全身性感染症で,第I期症状はマダニ刺咬傷部の丘疹が遠心性に拡大し遊走性紅斑を形成する.第II期にはボレリアが血行性に全身拡散して,神経・循環器・関節などに多彩な病変を生じ,神経症状・関節炎など一部の病変は慢性化し第III期へと移行する.ライム病は1970年代にアメリカ合衆国で最初に確認された.ヨーロッパ諸国でもマダニ刺咬傷に続発する(慢性)遊走性紅斑や髄膜炎の出現は今世紀初頭から記載されており,アメリカ合衆国とヨーロッパ諸国が世界のライム病二大流行地である.東アジアも流行地のひとつで,日本にも流行が確認されている.これまでの調査から日本のライム病は臨床的および疫学的特色が次第に解明され,アメリカ合衆国やヨーロッパとの違いが指摘されている.
著者
成瀬 光栄 立木 美香 田辺 晶代
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.716-723, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2

原発性副腎皮質機能低下症は倦怠感などの非特異的症状,色素沈着,低ナトリウム血症,高カリウム血症などに注目し,本疾患を疑った場合,コルチゾール,ACTHを測定する.典型例ではコルチゾール低値,ACTH高値から原発性と診断可能であるが,コルチゾールの低値域はキット間でばらつきがあるので評価に注意する.必ずACTHと合わせて評価すると共に,適宜,迅速ACTH試験を実施し副腎皮質機能の予備能低下を確認する.基礎疾患診断のため胸部X線,抗副腎抗体,副腎CTなどを実施する.続発性との鑑別が困難な場合にはCRH試験,下垂体MRIなど視床下部・下垂体系の評価を行う.
著者
澤田 康文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1570-1579, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8

薬物相互作用には,薬物の血液中濃度などの変化を伴う場合と,変化を伴わない場合に分けられる.前者の例としては,ビンクリスチンとイトラコナゾールによる末梢神経障害,チザニジンとフルボキサミンによる眠気,トリアゾラムとイトラコナゾールによる覚醒遅延,オランザピンと禁煙による錐体外路症状などがあげられる.また,後者の例としては,シプロフロキサシンとケトプロフェンによる中枢性けいれん,スルピリドとチアプリドなどによる薬剤性パーキンソニズム,トリアゾラムとアルコールによる記憶障害・意識障害・ふらつきなどを挙げることができる.本稿では,その中の幾つかの例を解説する.

4 0 0 0 OA 8.高脂血症

著者
曽根 博仁 山田 信博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.1202-1207, 2002-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
30
著者
Takao Munemoto Yuji Soejima Akinori Masuda Yoshiaki Nakabeppu Chuwa Tei
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.56, no.14, pp.1817-1824, 2017-07-15 (Released:2017-07-15)
参考文献数
36
被引用文献数
6

Objective Chronic fatigue syndrome (CFS) is a complex disorder, with no consensus on therapeutic options. However, Waon therapy has been reported to be an effective treatment. The purpose of this study was to evaluate changes in the cerebral blood flow (CBF) before and after Waon therapy in CFS patients and to investigate the correlation between such changes and the therapeutic efficacy of Waon therapy. Methods Eleven patients (2 men and 9 women, mean age 27 years old) diagnosed with CFS participated in the study. The disease duration was 8-129 months, and the performance status was 5-8 (on a scale of 0-9). All patients underwent CBF scintigraphy using brain single-photon emission computed tomography (SPECT) with technetium-99m ethyl cysteinate dimer (99mTc-ECD) before and after Waon therapy. CBF changes after Waon therapy were evaluated using a statistical analysis of imaging data, which was performed with a statistical parametric mapping software program (SPM5). Results Waon therapy reduced symptoms in all 11 patients. We also observed an increase in the CBF within the prefrontal region, orbitofrontal region, and right temporal lobe. These results indicated that an improvement in clinical symptoms was linked to an increase in the CBF. Conclusion The results indicated abnormalities of the cerebral function in the prefrontal region, orbitofrontal region, and right temporal lobe in CFS patients and that Waon therapy improved the cerebral function and symptoms in CFS patients by increasing the regional CBF. To our knowledge, this is the first report to clarify the CBF changes in CFS patients before and after Waon therapy.
著者
Akio Kawabe Shizuyo Tsujimura Kazuyoshi Saito Yoshiya Tanaka
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1575-1580, 2017-06-15 (Released:2017-06-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

True renal lupus vasculitis (TRLV), a vascular lesion usually associated with proliferative lupus nephritis (LN), is resistant to conventional treatments. The expression of P-glycoprotein (P-gp) on activated lymphocytes causes drug resistance. We herein report a patient with TRLV, minimal change LN, overexpression of P-gp on peripheral B cells, and accumulation of P-gp+ B cells at the site of TRLV. High-dose corticosteroids combined with intravenous cyclophosphamide pulse therapy resulted in clinical remission and the long-term normal renal function.
著者
浅井 一久 渡辺 徹也 栩野 吉弘 鴨井 博 平田 一人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1082-1088, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
8

喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の頻度は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~50%程度にみられる.ACOSの喘息がコントロール不良で喘息発作を繰り返す場合,呼吸機能の悪化が早く,予後不良となる.禁煙,気管支拡張剤を中心とする薬物治療に加えて,吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)を基本薬として長時間作用性気管支拡張薬の併用が有用である.本稿では,ACOSの病態や治療方法につき述べる.
著者
芦澤 潔人 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.972-976, 1995-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

放射線は広く活用される半面人体に及ぼす影響がいろいろと懸念されている.放射線の影響を知る上で甲状腺は最適臓器の一つであり,本稿では被爆者の甲状腺疾患および放射線の甲状腺細胞に対する影響について述べる.我々は長崎の原爆被爆者を対象にして甲状線の被爆量(DS86)と甲状腺疾患の相関について最新の診断法を使用して調査したところ従来の甲状腺癌に加えて自己免疫性甲状腺機能低下症も被爆者に有意に多いことが判明した.さらに長崎の経験に基づいたチェルノブイリ周辺地区の実態調査では甲状腺癌が急増していることは認められているにしても未だに放射線との関連は明確ではなく,他の環境因子も考慮する必要があるというのが現状のまとめである.又放射線の甲状腺に及ぼす作用は遺伝子,分子,個体レベルでもさかんに研究が進んでいる.ヒト甲状腺癌ではras, ret遺伝子が特に注目を集めている.