著者
鈴木 律朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.979-985, 2013 (Released:2014-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2

EBウイルス関連リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)は,EBウイルスが感染したリンパ球が体内で増殖する疾患の総称である.慢性活動性(CAEBV),劇症型,進行性成人発症型(PAEBV),移植後(PT-LPD)という4つの型が知られている.発症年齢や伸展様式が異なるものの,自然経過では最終的にはEBウイルス関連の血液腫瘍,白血病またはリンパ腫に移行して不帰の転帰を取る.適切な早期診断と,化学療法や造血幹細胞移植によって白血病・リンパ腫への移行を食い止めることが必要である.これらEBV-LPDは欧米では頻度が極めて低く,本邦からのエビデンスと情報発信が重要である.末梢血中EBV-DNAコピー数が診断・病勢の変化・治療反応性の判断・予後予測・再発の判断に有用であり,一日も早い保険収載が望まれる.
著者
大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.2355-2360, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
21

SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)による感染では他のウイルス感染症と同様にまずは自然免疫が応答するが,I型インターフェロン応答が阻害されるために一部の患者では感染が抑制されずに進行し,NLRP3インフラマソームの活性化が持続する.そこに獲得免疫系の応答が強く起こり,さらにI型インターフェロン応答が遅発性に強く起こるために重症化すると考えられている.

3 0 0 0 OA 3.Sjögren症候群

著者
森 恵子 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.8, pp.1764-1772, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

Sjögren症候群に伴う神経・筋障害についてニューロパチー,中枢病変,筋炎について解説した.神経・筋障害がSjögren症候群に先行する場合や,乾燥症状が明らかでない潜在的なSjögren症候群が多いため,診断に注意が必要である.治療として副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン静注大量療法などの免疫療法が行われ,一定の有効性が認められる.
著者
安田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.943-949, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

コレステロール塞栓症は動脈硬化病変のプラークが破綻しコレステロール結晶が末梢の細い動脈に詰まることにより生じる疾患である.発症には血管内操作などの誘因のあることが多い.Blue toe syndromeやlivedo reticularisと呼ばれる皮膚症状と腎機能障害がみられることが多いが,見逃されていることも多い疾患である.確立した治療法はなく,予防,支持療法,再発防止が重要である.
著者
大森 慶太郎 大毛 宏喜
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2291-2296, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

低栄養状態になると,免疫機能の低下がみられ,易感染状態となる.開発途上国では,低栄養を背景とした感染症が小児の最大の死亡原因であり,腸管感染症,下気道感染,マラリア等による死亡を増加させる.一方,先進国においても,低栄養は稀ではなく,種々の基礎疾患,侵襲性疾患,高齢ならびに食生活の偏りにより,低栄養状態となり得る.栄養,免疫,感染症はそれぞれ関連しており,栄養状態の改善が感染症の発症予防や死亡リスクの軽減につながる.
著者
藤森 勝也 菊地 利明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.2109-2115, 2020-10-10 (Released:2021-10-10)
参考文献数
10

感染(かぜ症候群)後咳嗽は,ウイルスあるいは細菌によるかぜ症候群後あるいは気道感染後,3週以上続く,自然軽快傾向のある咳嗽である.遷延性・慢性咳嗽の原因である,咳喘息,アトピー咳嗽,胃食道逆流による咳嗽,喉頭アレルギー,副鼻腔気管支症候群,ACE(angiotensin-converting enzyme)阻害薬による咳嗽ならびに喫煙による咳嗽等を鑑別する.非特異的咳嗽治療薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬,麦門冬湯,吸入抗コリン薬ならびに中枢性鎮咳薬)により,咳嗽は改善する.
著者
高野 幸路
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.841-848, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

プロラクチン産生腫瘍は,性周期のある女性の場合は無月経,乳汁漏で,男性の場合はリビドーの低下や下垂体機能低下症の症状,視機能障害をきっかけに診断に至る場合が多い.プロラクチン産生腫瘍をふくむ多くの間脳,下垂体疾患において女性では月経周期の異常や無月経が起こるので,月経についての問診は重要である.高プロラクチン血症の原因として最も多いのは薬剤性高プロラクチン血症である.また,妊娠による高プロラクチン血症など,鑑別診断は重要である.鑑別診断をよく理解するためには,生理的なプロラクチン分泌の調節機構の知識が必須である.本稿ではこれを略述したのちに高プロラクチン血症の鑑別診断を述べ,最後にプロラクチン産生腫瘍の治療について解説する.
著者
堀川 玲子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.965-974, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

ヒトを含む多くの動物が雌雄異体で,各々特徴的な身体構造を有し,生殖において役割分担している.このような性腺と身体構造の分化を性分化といい,この過程に異常があり,性腺・内性器・外性器の分化が非典型的であるものを性分化疾患という.近年分子生物学の進歩により,多くの性分化疾患の原因が同定されてきた.性分化疾患では,生化学的・分子生物学的アプローチによる的確な診断と共に,社会的性や性自認の問題など,社会医学的側面も重要である.
著者
植木 幸孝 荒牧 俊幸 辻 良香 來留島 章太 小島 加奈子 川内 奈津美 寺田 馨 江口 勝美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.2118-2124, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
13

高齢者関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,若年発症RA(younger-onset rheumatoid arthritis:YORA)が高齢化したRAと,60歳以上で発症したEORA(elderly-onset rheumatoid arthritis)に分類される.EORAでは,YORA同様,T2T(treat to target)に準じた治療を行い,低疾患活動性を目標にコントロールするのが現実となっている.しかし,高齢者は多彩な合併症を有しており,高齢化RAと同様,治療にあたり合併症の増悪や薬物による有害事象を定期的にモニタリングすることが重要である.
著者
浅海 智之 柳田 紀之 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.1966-1974, 2016-10-10 (Released:2017-10-10)
参考文献数
25

食物アレルギーは,特定の食物摂取時に症状が誘発されることと,それが特異的IgEなどによる免疫学的機序を介する可能性の確認によって診断される.食物アレルギーの最も確実な診断法は,食物経口負荷試験である.一般内科医が遭遇する可能性のある症例において専門医にコンサルトするタイミングは,①小児期発症の食物アレルギーの診断の見直しが必要な場合,②耐性獲得確認のための食物経口負荷試験が必要な場合,③患者,家族が経口免疫療法を希望する場合,④原因不明のアナフィラキシーを繰り返す場合などである.
著者
賴 晋也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1441-1446, 2021-07-10 (Released:2022-07-10)
参考文献数
10

免疫不全関連リンパ増殖性疾患は,一過性のリンパ節腫脹から悪性リンパ腫までを含む包括的な概念であり,WHO(World Health Organization)分類(改訂第4版)においては,免疫不全の原因に基づいた分類が提唱されている.EBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)が発症に関与することが多く,悪性度は組織型により大きく異なる.臓器移植や自己免疫疾患に対する免疫抑制薬の使用頻度の増加,HIV(human immunodeficiency virus)感染者の増加,加齢に伴う免疫能の低下に伴い,臨床現場では本疾患の重要性が増している.
著者
福本 誠二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3649-3654, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

FGF23は,骨により産生され,Klotho-FGF受容体複合体に作用することにより,腎近位尿細管でのリン再吸収と,血中1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介する腸管リン吸収の抑制により,血中リン濃度を低下させるホルモンである.このためFGF23作用障害により,リン再吸収の亢進を伴う高リン血症を特徴とする,家族性高リン血症性腫瘍状石灰沈着症が惹起される.逆に過剰なFGF23活性が,いくつかの低リン血症性くる病/骨軟化症の原因となることも明らかとなった.さらにFGF23は,慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の発現にも関与することが示されている.臨床的には,血中FGF23濃度の測定が低リン血症性疾患の鑑別に有用であることが提唱されている.またFGF23過剰産生モデル動物では,FGF23活性の抑制が病態を改善させることが報告されている.従ってFGF23作用を調節する方法が,今後リン代謝異常症の新たな治療法となる可能性がある.
著者
柏原 健一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.1565-1571, 2015-08-10 (Released:2016-08-10)
参考文献数
10

Parkinson病(Parkinson's disease:PD)に伴う認知症の治療には,抗認知症薬のいずれも有効との報告がある.ドネペジル,リバスチグミンのエビデンスレベルが高い.幻覚・妄想は抗PD薬の減量,中止や抗認知症薬の併用により,改善が期待できる.改善しない場合は非定型抗精神病薬を試用するが,運動障害の悪化や過鎮静に注意する.運動や知的刺激による認知機能障害への効果はエビデンスに乏しいが,障害改善と進行予防が期待できる.
著者
新実 彰男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1565-1577, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

3 0 0 0 OA 1.治療の変遷

著者
田中 明彦 足立 満
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.1327-1332, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

喘息に対する薬物療法の歴史は,吸入ステロイド(ICS:inhaled corticoteroids)出現前と出現後に大きく2つに分けられる.ICS出現前は,β2受容体刺激薬や抗コリン薬やテオフィリン薬などの気管支拡張薬が薬物療法の中心であった.その後,1978年に初めてICSが上市され,徐々にその有効性と安全性が認められ,ヨーロッパに続いて北米においては1980年代,我が国においては1990年代に薬物療法の中心として位置づけられ現在に至っている.本稿では喘息の病態概念と,これらの薬剤を中心に薬物療法の歴史的変遷について述べる.
著者
安井 昌之 向山 昌邦 横井 風児 足立 皓岑 若山 育郎 三谷 和男 八瀬 善郎 吉田 博信 吉益 文夫 大田 喜一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.85-86, 1989-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

孤発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)6例,神経学的に正常な対照5例の中枢神経組織(CNS)26部位について放射化分析法でアルミニウム(A1)を測定し, 2例のALSで高Al含有量を認めた.症例Iで136.5±99.3μg/g dry weight (Mean±SD),症例IIは88.3±52.0μg/g,他のALS4例で28.0±14.3μg/g,対照群は25.8±8.1μg/gであった.孤発性ALSのCNS内に高Alが沈着した2例を報告した.
著者
高木 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.2892-2896, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

臨床検査値は,検査時ばかりでなく,検体サンプリング(1)検体採取のタイミング,(2)検体採取時の条件,(3)検体保存,などにより大きく変動する.検査値の些細な変動を観察する特定診断ばかりでなく,日常診療でも診断を左右する場合も少なくない.感染症診断での偽陰性は患者の予後を左右することもある.臨床検査の検査前変動を正しく理解することが,誤診を防ぐ上で重要である.
著者
阿南 英明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.168-173, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1