著者
忽那 賢志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.2276-2281, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
14

近年,エボラウイルス病や中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)等の新興・再興感染症が次々と現れている.医療従事者は感染のハイリスク群であり,疾患の特徴や感染経路について十分な知識を持ち,適切な感染対策を行うことが自身を守ることにつながる.
著者
今井 圓裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1454-1458, 1999-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

電解質異常に起因する間質性腎障害は低K血症と高Ca血症が重要である.低K血症は尿細管でアンモニア産生が増加し,尿細管間質で補体が活性化されることおよび嚢胞形成が促進されることにより腎障害が進展する.高Ca血症ではCaにより細動脈収縮がおこり糸球体濾過量が減少する.また,高Ca血症による多尿は尿細管のCaセンサーを介したシグナルによるNaCl再吸収低下とADH作用抑制により浸透圧勾配が不全になるためにおこる.
著者
溝渕 雅広 濵内 朗子 佐光 一也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1388-1394, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
15

妊娠適齢期の女性に対する抗てんかん薬治療で注意することは,1)結婚以前から催奇性を含めた情報を伝える,2)挙児希望するときは早期から投薬の調整を行う,3)安全な妊娠の継続・出産ができるよう発作の抑制に留意し,産科医と連携する,4)母乳の授乳は可能である,5)催奇性,低IQ(intelligence quotient)児・自閉症スペクトラム障害の頻度が増加するため,できる限りバルプロ酸は避ける,6)産後うつに注意し,周囲の協力を助言する.
著者
田中 廣壽 吉川 賢忠 山崎 広貴 上原 昌晃 小田 彩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1373-1384, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

骨格筋は,運動や姿勢保持のみならず,全身のエネルギー代謝調節においても基幹的役割を担っている.近年,骨格筋によるエネルギー代謝調節は,栄養状態のみならず,筋が受ける機械的刺激(張力等),酸素濃度,性ホルモン,時計遺伝子産物等の多彩な因子によって精緻な調節を受けることが明らかになってきた.また,骨格筋由来の代謝産物やサイトカイン様物質が他臓器機能を異所性に制御することも注目されている.今回,筆者らは,ステロイドによって誘発される筋萎縮(ステロイド筋症)の克服に向けて,骨格筋量制御におけるステロイドとその受容体の役割とともに,骨格筋―肝臓―脂肪シグナル軸を発見し,骨格筋による遠隔臓器の代謝,特に脂肪組織制御の分子機構の一端を解明した.本研究は,骨格筋と個体レベルのエネルギー代謝との連関―メカノ―メタボ カップリング―を医療に応用・展開する新しいパラダイムの構築に貢献するのみならず,多数の臓器システムの連関から生体を理解することの重要性を示している.

3 0 0 0 OA 5.診断病理学

著者
真鍋 俊明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.3185-3189, 2002-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
著者
大門 雅夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.245-252, 2016-02-10 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9

感染性心内膜炎は,高齢化社会や心臓デバイス治療などの発展に伴い,高齢者での罹患例が増えている.罹患例では死亡率も高く,迅速な診断と適切な抗菌薬治療が重要である.また,引き続く心不全や塞栓症は重要な死因であり,リスクの高い例では早急な外科手術が必要になる.治療方針決定には,血液培養による原因菌の同定が最重要である.また,ハイリスク患者には,あらかじめ予防の重要性を説明しておく必要がある.
著者
近藤 光子 玉置 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.3525-3532, 2012 (Released:2013-12-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

気道分泌は,粘液線毛輸送系の構成成分として肺における生体防御機構の維持に重要である反面,気道分泌の増加や喀出困難は日常生活の障害,気道感染の助長,換気障害をもたらす.気管支喘息ではムチン分泌亢進,アルブミンの漏出,好酸球による気道上皮障害から粘調な痰となり喘息死とも関連する.COPDでは過分泌はその増悪に関わり予後に影響を与える.近年,ムチン分泌の亢進や杯細胞化生の制御には上皮増殖因子受容体やインターロイキン13が関わっていることが明らかになった.気道分泌の治療には粘液産生の低下,分泌反応の抑制,分泌物の排除の促進の3つの方法がある.病態に応じた治療法の選択を行うことが基本であり,好酸球性炎症による過分泌には吸入ステロイド,抗ロイコトリエン薬などが,好中球性炎症による過分泌にはマクロライド,抗コリン薬などが用いられる.分泌物の排除の促進にはβ刺激薬や去痰薬,理学療法が用いられる.
著者
照屋 勝治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.3244-3252, 2013-12-10 (Released:2014-12-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

HIV(human immunodeficiency virus)感染症は単なる「細胞性免疫不全を来す疾患」ではなく,慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」であり,それに伴い虚血性心疾患のリスク増加を含む,多様な病原性を示すことが明らかになってきている.治療開始時期は次第に早期化へ向かっており,米国では2011年にHIV感染者全員を治療の適応とする推奨がなされた.二次感染者を減少させるという予防戦略としての“treatment as prevention”という概念や,非HIV感染者に曝露前予防として抗HIV薬を用いることにより二次感染を予防しようとする試み(PrEP)も始まっている.かつては致死的疾患であったHIV感染症は,治療薬の進歩により患者の生命予後は著明に改善した.しかしながら,長期服薬に関連する既知および未知の副作用の懸念や,薬剤耐性ウイルスの蔓延リスクなどの懸念もあり,決して予断を許す状況ではない.一方,予後の改善に伴う患者の高年齢化により,これまでにはなかったさまざまな問題に対する対策の必要性も出てきている.
著者
高平 好美 安川 貢 門名 嘉則
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.2446-2452, 2003-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12

平成12年からインフルエンザ流行の観測定点として浜松市保健所予防課および市保健環境研究所と連携し,インフルエンザ対策の診療所として診断および治療についての検討を分担してきた.平成12年には,迅速診断キットによるA型インフルエンザの診断が可能となり,抗インフルエンザ薬による治療として, A型インフルエンザに対するアマンタジンの著明な解熱効果と全身症状の改善が印象的であった.平成13年の秋から, A, B両型の診断可能な迅速キットが登場,更に抗インフルエンザ薬もアマンタジンについでノイラミニダーゼ阻害薬も登場したが, A型インフルエンザに対するアマンタジンと,オセルタミビルとの間に臨床効果に差を認めなかった.平成14年はインフルエンザに対する抗ウイルス薬とマクロライド併用の臨床効果を検討したが,その結果,平熱に至るまでの時間に対する併用効果は認められなかったが,咳には減少効果を認めた.アマンタジンおよびオセルタミビルの併用では著明な臨床症状の改善を認めたが,罹患者でのウイルスの消長とは一致しなかった.平成15年, A香港, B型インフルエンザの抗インフルエンザ薬の効果と抗体産生に及ぼす影響を検討したが,抗体上昇の程度は低い傾向にあると考えられた.典型的なインフルエンザと抗インフルエンザ薬の症例を提示した.
著者
加藤 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.1562-1568, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
4
被引用文献数
4

出血傾向は血小板・血管壁,凝固・線溶系,または両方の異常により生じるが,迅速な診断,対応が必要である.スクリーニング検査としては,血小板数,プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間でほぼ十分であるが,これらに異常がない場合は出血時間,XIII因子,α2-プラスミンインヒビター,プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1活性,またDICが疑われる場合はフィブリノゲン,FDPを測定する.
著者
頼高 朝子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1854-1860, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

Parkinson病は運動症状発症前より睡眠障害,うつ,嗅覚障害,痛み,便秘等の自律神経障害が伴っていることが多くのコホート研究から判明し,早期診断の助けになっている.一方で非専門医への受診につながり,より診断が遅れやすい.便秘は約18年前から,REM睡眠行動異常症は約10年前から,嗅覚障害は2~7年前から,過眠は数年前から3大運動症状である振戦,歯車様固縮,無動に先行する.

3 0 0 0 OA 1.脳動脈解離

著者
後藤 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1311-1318, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1

脳動脈解離は,脳梗塞や解離性動脈瘤破綻によるくも膜下出血など,虚血性・出血性脳卒中のいずれの原因にもなる注意すべき脳血管障害である.画像診断の進歩や認識の高まりから診断される機会が増えている.近年,本邦では複数の多施設共同研究で,頭蓋内椎骨動脈解離が多い実態が明らかにされつつある.頭痛や頸部痛を伴う虚血性脳卒中では必ず本疾患を疑い,慎重な問診,診察とともに血管壁を経時的に評価する画像検査が重要である.
著者
鷲田 和夫 加藤 有希子 川又 純 高橋 良輔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.147-149, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7

症例は58歳,男性.パーキンソン病発症14年目に寡動が増悪したため,非麦角系ドーパミンアゴニストであるプラミペキソールの投与を開始したところ深刻な病的賭博症状が出現した.薬剤変更により病的賭博行為は可逆的かつ速やかに消失したが,社会経済的に不可逆的な損害が生じた.病的賭博の発症理由として大脳辺縁系に位置するドーパミンD3受容体へのドーパミンアゴニストによる特異的刺激が関与していると考えられている.
著者
川辺 美穂 前川 理沙 土屋 一洋 日出山 拓人 椎尾 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.2193-2200, 2015-10-10 (Released:2016-10-10)
参考文献数
10

症例は19歳,男性.聴力障害,左下肢失調および両下肢痙縮による歩行障害で発症した.頭部造影MRIでは脳幹を中心に増強効果を伴う点状の異常信号域が散在性にみられた.ステロイドパルス療法の効果は乏しく,CLIPPERS(chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids)症候群を疑い,経口ステロイド内服を開始したところ,下肢痙縮・画像所見ともに改善を認めた.特徴的な画像所見から本疾患を疑い,他疾患を除外したうえで早期に治療を行うことが重要と考えられた.
著者
寺田 清人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1375-1380, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
8

てんかん診療における薬剤選択の基本は各種ガイドラインに示されており,まず部分発作にはカルバマゼピン,全般発作にはバルプロ酸を十分量,単剤で用いる.これらの薬剤を使用できない,もしくはこれらの薬剤が無効の場合に第二選択薬を用いる.第二選択薬も無効な場合はてんかんの専門医の受診が推奨される.てんかん診療は包括診療であり,副作用や合併症,治療目標,社会的背景など様々な要因に配慮する必要がある.
著者
谷口 正実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.148-157, 2006-01-10 (Released:2008-12-12)
参考文献数
33
被引用文献数
3 4 2

NSAID不耐症は, 気道型と皮膚型に分かれる. 前者は, いわゆるアスピリン喘息 (NSAID過敏喘息) であり, プロスタグランディン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ (COX) 阻害作用を持つNSAIDsにより, 強い喘息発作と鼻症状をきたし, 成人喘息の約10%を占める. 一方, 皮膚型は, 慢性蕁麻疹患者に合併しやすい. NSAID過敏喘息の典型的臨床像は, 成人後に発症する非アトピー型重症喘息で, 好酸球性鼻茸副鼻腔炎を合併し, 嗅覚低下を伴うことである. また好酸球浸潤性の中耳炎や胃腸炎を合併することもある. その特徴的病態として, システイニルロイコトリエンの過剰産生があり, 鼻茸副鼻腔がその産生源として重要である. またCOX2阻害薬は安全に使用できることが多くの報告で確認され, 本症の本態は, COX1阻害薬過敏と考えられつつある. 臨床上注意すべき点として, 問診にてもNSAIDs誘発歴の無い症例が少なくないこと, 発作増悪しうるNSAIDsは, あらゆる剤型 (内服や坐薬だけでなく, 貼付, 塗布薬など) が含まれること, 静注用ステロイドの急速静注で発作が増悪しやすいこと, などが挙げられる.
著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.586-592, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10

2009年,血糖値を連続して測定するCGM(continuous glucose monitoring)機器が我が国において承認された.現在,測定したデータをダウンロードして結果を閲覧するCGM機器については,2機種が承認されている.一方,直近の測定値が画面に表示されるリアルタイムCGM機器に関しても,2017年9月に保険点数が確定した.持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII,通称:インスリンポンプ)機器に,リアルタイムCGM機能を追加したsensor augmented pump(SAP)については,2014年から国内での使用が可能となった.さらに,人工知能を活用し,両者を連動させる機器の開発も進行しており,アメリカでは実用化されている.これらの機器の導入により,糖尿病患者における療養指導及び血糖コントロールは,新時代に突入することになるであろう.我が国の糖尿病患者におけるさまざまな負担を少しでも軽減してくれるように,本稿で触れた機器がそのポテンシャルを十分に発揮できる環境が整えられることを強く望む.
著者
荒川 哲男 藤原 靖弘 富永 和作 渡辺 俊雄 谷川 徹也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3655-3663, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
48

消化管傷害を来たす薬物として,もっとも頻度の高いものは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアスピリンである.これらの薬剤は,整形外科領域やリウマチ内科で消炎鎮痛を目的とし,あるいは循環器や脳神経領域,ならびに代謝内分泌領域で血管イベントの一次,二次予防の目的で頻用されている.しかし,これらの薬剤による有害事象でもっとも多いのが,消化管イベント(出血,穿孔など)であり,消化器内科医とのクロストークがますます重要になってきた.胃酸分泌領域である上部消化管が病変発生の首座を占めるが,最近,小腸が可視化できるようになり,NSAIDs/アスピリンによる小腸粘膜傷害・出血がトピックスになっている.予防・治療に関しては,消化管全体を視野に入れた新しい考え方が必要になってきた.COX-2選択的阻害薬など,NSAIDs側の工夫も重要である.消化管傷害をきたす他の薬剤としては,抗生物質などがあるが,それらについても少し触れたい.