著者
遠藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.160-163, 2009 (Released:2019-06-17)
参考文献数
4

核兵器廃絶論は,古くから唯一の被爆国である日本,非同盟諸国,北欧,カナダ,豪,ニュージーランド等の非核兵器国から主張されてきたが,近年,米国から,それもかつて米国の核戦略に直接関与した元政府高官から主張されるようになったことは注目に値する。その議論は以前の核廃絶論が,一般的,情緒的であったのに比べ,冷戦終えん,9.11事件後の安全保障環境の変化を踏まえた核戦略論に基づくもので,かつ廃絶に至る具体的な道筋を提案している。それとともに,廃絶への過程に横たわる多くの政治的,技術的困難を指摘している。世界が核廃絶の途に踏み出すには,まずは米国の決断が必要なこと,核なき世界が米国にとっても世界の安全保障にとっても望ましいことを強論している。この軍縮会議はそういった議論の流れの一つである。
著者
木村 謙仁 柴田 智文 松尾 雄司 村上 朋子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-26, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
20

In this study, we perform model analyses assuming the Japanese power supply portfolio in 2050 to evaluate the economic efficiency of nuclear power generation under mass introduction of variable renewable energy (VRE) ― such as solar PV and wind ― and of hydrogen power generation in 2050. As a result, this study shows that even if the unit cost of VRE falls significantly by 2050, not only existing nuclear power plants, but also new construction, will have economic efficiency. Its benefit would become much larger when 100% carbon-free generation is mandated, but in that case, the role of nuclear energy as the base load power generation would be changed. On the other hand, in the case where hydrogen power generation will be deployed, the nuclear energy would be smaller than those in other 100% carbon-free cases, but its base load operation would be maintained.
著者
森泉 純 山澤 弘実 飯田 孝夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.960, 2008

航空機による冬期の日本海上空のラドン222濃度鉛直分布の観測により、アジア大陸から北西太平洋へのラドン222の長距離大気輸送現象の鉛直構造の解析を試みた。加えて、大陸-海洋間長距離大気輸送の数値計算モデルの検証を行った。
著者
吉田 正 羽倉 尚人
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.61, 2007

全吸収ガンマ線分光法による崩壊データにはパンデモニウム問題とよばれる高励起レベルの欠落が生じにくい。これまでに行われたこの種の実験データを利用し,FP崩壊データの理論予測精度を向上させる。さらに最近得られた同種データを総和計算に導入することで,報告者らが指摘していた,崩壊熱ガンマ線成分の冷却時間300-3000秒での,FP崩壊熱積分測定値との系統的不一致がほぼ解決した。
著者
吉田 昌弘 遠藤 章 佐藤 滋朗 大畑 勉 渡辺 正敏 大山 柳太郎 古屋 廣高
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.213-218, 2005-09-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

A number of consumer's goods which contain natural uranium and thorium are circulated in the familiar living environment. Based on various kinds of information sources, 20 kinds of these consumer's goods were collected and their radioactive concentrations were measured by using ICP-MS and Ge semiconductor detector. As this result, it was found that the concentrations of uranium and thorium in the consumer's goods used at home and industries were below 34Bq/g and below 270Bq/g, respectively. Next, the concentrations of daughter nuclides were not so different from the ones of uranium or thorium, which showed that the secular radioactive equilibrium held between both concentrations.In addition, the radiation exposures for public consumer were evaluated when four kinds of typical consumer's goods frequently used in daily life are utilized. The results computed by MCNP-4C code were below 250μSv/y.
著者
山路 哲史
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.284-288, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8

超臨界圧軽水冷却炉はプラントシステムの大幅な簡素化・小型化と発電効率の向上により,現行軽水炉の改良では到達できない高い経済性を達成する第四世代の軽水炉である。同一のプラントシステムで熱中性子炉から高速炉まで柔軟な設計対応が可能であり,小型炉の設計も可能である。これまでの国内外の研究開発により,プラント概念,炉心伝熱流動基礎データ,燃料被覆管や断熱材の高温腐食データ,水化学と腐食生成物移行データ等が整備されており,熱流動設計の妥当性と材料面での成立性も見通せるようになった。これらにより研究開発上の不確かさが低減し,今後の開発に伴うリスクが大幅に低減した。
著者
大竹 秀明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.84-88, 2020 (Released:2020-08-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

気象・気候分野では気候モデルといった物理モデルを用いた2050年から2100年程度先までの将来予測の研究が進んでおり,データがアーカイブされている。気候モデルは仮想の地球全体の大気・海洋を模擬したシミュレーションツールであり,日射量や気温,風向風速などの気象要素の予測情報がある。太陽光発電,風力発電資源量の予測に加えて電力需要量についても研究が行われている。発電資源量の地域変化,季節性,変動の要因などについて最近の研究事例を紹介する。将来気候下での地球の自然の変化,注意すべき点についても述べる。
著者
上野 馨
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.67-72, 1960-02-29 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

The gamma-ray spectrum emitted by present-day pine leaves reveals the presence of several peaks which do not belong to any naturally occurring nuclide. These peaks come from radioactive fission produts produced from nuclear weapon tests.The gamma-ray spectra of pine leaves collected in 1958 and 1959 show two remarkable peaks. 0.13 MeV peak is actually a combination of peaks of 131Ce and 144Ce-144Pr, while 0.76 MeV peak is assigned as a peak of 95Zr-95Nb.The decay curves of the gamma activity at 0.76 MeV correspond to curves of 95Zr-95Nb with half-life of 65 days. One gram pine leaves ash contains 26 mμc 95Zr-95Nb.
著者
吉田 一雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.810-814, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
8

集光型太陽熱発電(CSP)は,反射鏡で集光した太陽光をレシーバで熱へと変換し,一般には蒸気タービンを回して発電する技術である。本システムでは,蓄熱システムやボイラを組み合わせることにより,太陽が照っていない時間帯にも比較的低コストの発電が可能である。したがって,CSPは,電力需要曲線に合わせた電力供給が可能であり,ディスパッチャビリティが高い発電システムである。CSPでは太陽から直接地表に到達する直達光のみ利用できることから,中東・北アフリカ,米国南西部などサンベルトと呼ばれる地域で高効率の発電が可能であり,発電ポテンシャルも膨大である。CSPで得た電力を離れた地域で利用するため,北アフリカで発電した電力を高圧直流送電でEU諸国に送るデザーテック計画も進行している。
著者
浜崎 学 堀元 俊明 嶋田 昭一郎 石丸 正之
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.503-508, 2011-07-01
参考文献数
8

<p> 我が国の原子力第一船「むつ」は,初の実験航海での放射線漏れが社会的に大きく取り上げられ,我が国の原子力界にとって永く記憶されるべき教訓を与えた。一方,その後の実験航海が成功をおさめ,外洋を8万キロにも渡って原子動力で全速航海し,貴重なデータを後世に残したことは余り知られていない。また,「むつ」の炉心,燃料は,米国からの導入技術が発電炉のものに限られ,舶用炉技術を導入できないという条件の下で確立した我が国国産技術である。</p>
著者
田中 隆則
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.382-386, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

近年,海外において小型モジュール炉(SMR)の開発に向けての様々な取り組みが行われている。特に,米国,英国,カナダにおいては,政府も積極的に開発を支援する動きがみられており,IAEAやOECD/NEAなどの国際機関においても,SMRに関連する報告書が取りまとめられるなど,国際的にSMRへの関心が高まっている。このようなSMRの特性を分析し,今後,世界のエネルギー需給に与える影響を考察する。
著者
上野 馨 矢部 明 弦巻 一郎 張 昭鼎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.3, no.9, pp.688-690, 1961-09-30 (Released:2009-03-26)
参考文献数
12

尿中に水の型で含まれているトリチウムを,液体シンチレーション法で定量した。尿中に含まれる無機,有機塩類による消光作用を少なくするために1:2陽陰両イオン交換樹脂混合樹脂柱(ダイヤイオン, 100~200メッシュ, HおよびOH型, φ1cm, h10cm)を通して脱イオン化し,純化された尿1mlにつき60mlの液体シンチレータ(4gのPPOと15mgのPOPOPを230mlのエタノール, 770mlのトルエンの混合溶液に溶解したもの)を加え,室温で放射能を測定する。この方法により0.01μc/ml尿のトリチウムを室温で±10%の誤差で定量できる。さらにこの方法は放射性廃液中のトリチウムの定量にも利用できる。