著者
和田 章
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.347-352, 2013 (Released:2019-10-31)

東日本大震災は,この被災地に建築・インフラ・まち・都市を構築してきた土木分野・建築分野だけでなく,人々の生活を豊かにしようと努力してきた各種の工学分野の研究者や技術者に大きな衝撃を与えた。自然の猛威は非常に大きく抜けがないから,完璧とはいえない人間の作るものはこれに耐えられず破壊されることがある。これに対処するためには,学問分野を超えた総合的な議論と実行が必要であり,最大級の自然の猛威とこれを受ける人工構造物のあらゆる挙動を俎上に載せて真剣に議論する必要がある。
著者
岩井 敏 石田 健二 仙波 毅 高木 俊治 猪狩 貴史 福地 命 BAATARKHUU Undarmaa
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.664-668, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
20

小児および未成年期に放射線被ばくによって甲状腺がんが誘発されることは,広島・長崎の原爆被爆者,X線を用いた白癬治療,胸腺肥大治療などの医療被ばく者,ならびにチェルノブイリ原子力発電所事故からの131I取込による内部被ばく者の疫学データから知られている。本稿では,甲状腺がんの種類と特徴ならびに,これまでに知られていた未成年者の甲状腺がん疫学情報の知見を中心に記述する。
著者
石川 迪夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.276-283, 1970-05-30 (Released:2010-04-19)
参考文献数
36

The report discuss research activities objected to nuclear reactivity accidents and examines a program for increasing nuclear safety.Destructive test results are described to afford an general concept of reactivity accidents. The SPERT-CDC experiments are cited as a new form of research program to gain a more detailed and clear insight into the accident behavior. The relaionship between excursion power, fuel rupture and destructive energy is also discussed.Attenion is drawn to the increasing importance of reactivity accident analyses for advanced type reactors, such as large light water power reactors. The report presents reactivity accident programs by pulse reactors such as CDC, PBF, TREAT and NSRR (Japan). Finally an outline of the NSRR program is given.
著者
佐藤 志彦
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.446-448, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中に放出したが,チェルノブイリ原発事故のような炉心が直に大気と触れるような事象は発生しなかったため,核燃料を主とした放射性粒子の放出はないものと考えられていた。しかし2013年以降,放射性セシウム(Cs)を取込んだケイ素が主成分の微粒子が報告され,Cs-bearing particle,不溶性セシウム粒子などの名称で放射性粒子の存在が認知されるようになった。この想定になかった未知の放射性粒子に対し,さまざまなバックグラウンドを持つ研究者が,日夜,発生原因の解明を試みている。本稿では不溶性セシウム粒子がなぜ不思議な存在であるか,そしてどうして福島第一原発の廃炉で重要かを紹介する。
著者
小川 徹 中島 清 日野 竜太郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.340-345, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
12

福島第一原子力発電所事故では,少なくとも3つの原子炉建屋で水素爆発が発生した。号機ごとの事故の推移や事象の詳細を解明することは今後の課題として残されているが,軽水炉の事故時水素をめぐる様々な事象の連鎖について,異分野の専門家が共通の理解を持ち,共同でその知識を更新していくことが求められる。われわれは多くの専門家の協力により「原子力における水素対策安全高度化ハンドブック」を作成する作業を進めている。本稿ではハンドブック作成活動の方針,内容について簡単に紹介する。
著者
吉田 正
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.711-715, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
6

ニュートリノは基本粒子の中で最も捉えどころのない粒子である。その存在は比較的早く1930年代初頭にはほぼ受け入れられたが,存在が確証されるまでは四半世紀を要した。ニュートリノが質量を持つか否かと言う基本の基本が確定したのは更に40年後。その一方でこの謎の多い粒子は,素粒子論や天体核物理学のあらゆる局面に顔を出し,その発展の狂言回しの役割を演じて存在感を増し続けてきた。ニュートリノを遮るには鉛板にして数光年の厚さが必要だが,この物質との関わり(相互作用)が超絶的に弱いという性質が逆に原子炉運転遠隔監視への応用の道も開く。現在も謎の多いこの粒子を追って十指に余る大型実験が進行中であるが,それぞれ奇抜とも言えるユニークなアイデアが光る。
著者
藤井 勲
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.304-324, 1985-04-30 (Released:2010-01-08)
参考文献数
25
著者
谷村 嘉彦 平山 英夫 近藤 健次郎 永田 寛 岩永 宏平 鈴木 征四郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.129-132, 2016 (Released:2016-08-15)
参考文献数
6

Photon energy spectra were measured above the operating floor of unit 3 reactor at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station by using a CdZnTe semiconductor spectrometer. The spectrometer was installed in a lead collimator to measure the photons from the area directly below the detector. The collimator and spectrometer were lifted up by a huge crane and set above the operating floor. The photon spectra were derived by unfolding the pulse height spectra measured using the spectrometer. The response function of the spectrometer was calculated with the MCNP-4C code and was used as an input parameter of the unfolding code MAXED. It was found from the photon energy spectra that low-energy photons with energy below 0.4 MeV were dominant above the operating floor. These spectra are fundamental data for evaluating the dose reduction effect by setting up shields on the operating floor.
著者
横谷 明徳 高須 昌子 石川 顕一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.81-85, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
10

放射線は,今や医療現場においては治療や診断など国民の健康生活に不可分な要素である一方,福島における低線量被ばくに対するリスク評価など,放射線に関わる研究者が取組まなくてはならない課題は数多くある。複雑な階層構造を持つ生物システムが放射線ストレスに対してどのように応答するかについては,分子,細胞あるいは個体など様々なレベルでの実験が行われている。一方,これらの実験により得られた知見から法則性を抽出し,放射線応答の一般化したモデルを構築することが求められる。コンピュータの高性能化により,最近ではこれらのモデル研究も新しい領域に入りつつある。放射線の照射により生じるDNA損傷・修復の初期の物理・化学的過程からDNA修復に関する生物学的過程及びアト秒領域におけるDNA-電子相互作用に焦点を当てた理論研究など,シミュレーション研究の最前線を解説する。
著者
矢川 元基
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.688-693, 1985-08-30 (Released:2009-04-21)
参考文献数
5
被引用文献数
2 3
著者
田仲 文郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.87-90, 2015 (Released:2020-02-19)

鉄道車両の保守には大勢の係員が関わっており,ヒューマンエラーによるトラブルの防止は現場管理上の重要な課題として様々な対策の工夫がなされてきている。本稿ではヒューマンファクターの観点からこれまでの取り組みを振り返り,ヒューマンエラー対策だけでなくヒューマンファクターを前向きに活用することや,全社的な安全管理,品質管理マネジメントの一環として現場の問題を考えることの必要性について述べる。
著者
今堀 彰
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.135-139, 1988-02-29 (Released:2009-03-31)

原子力災害時における一般公衆を対象とした防護対策の一環として,チェルノブイリ原発事故で一躍脚光を浴びたヨウ素剤の使用がある。これは原子炉事故時に周辺環境に放出される放射性ヨウ素による周辺住民の甲状腺内部被曝を防護する目的で,安定ヨウ素(KI, KIO3等)を周辺住民に対して事前あるいは事故直後に配布し服用させるものである。本稿では,一般公衆を対象としたヨウ素剤使用計画の現況を紹介し問題点を検討する。