著者
木島 佑一 山本 洋一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.156-160, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
7

日本原子力研究開発機構(原子力機構)では,包括的核実験禁止条約(CTBT)国内運用体制の下で国際監視制度(IMS)施設のうち放射性核種の監視のための観測所及び公認実験施設を整備し,運用を行っている。また,IMS観測所から得られる放射性核種観測データの解析及び評価を行う国内データセンターも整備し,運用を行っている。本稿ではCTBTの概要と原子力機構の活動に関して解説するとともに,これまで国内の放射性核種観測所で得られた観測結果のうち,2013年2月の第3回北朝鮮核実験を含む特異な人工放射性核種観測事例を2つ紹介する。
著者
岩崎 利泰 冨田 雅典
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.668-673, 2009 (Released:2019-06-17)
参考文献数
6

放射線防護において,放射線が人に与える影響を表すためのモデルとして,しきい値なし直線(LNT)モデルがある。これは基準を安全側に考えるための管理目標値を示すためのものであるが,時として放射線はどんなに微量であっても量に応じた影響があるとの誤解の元となっている。電力中央研究所(電中研)では,低線量や低線量率のときに実際にどのような影響があるかを明らかにするため,生物学的な機構面から取り組んでいる。その概要について紹介する。
著者
山田 進 町田 昌彦 有川 太郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.73-86, 2023 (Released:2023-04-27)
参考文献数
24

A siltfence is installed to prevent the spread of suspended sediments generated by engineering construction works in rivers and on the coast. Thus, the siltfence is regarded to be a tool to prevent radioactive materials adsorbed on suspended sediments from diffusing into the sea in ports of nuclear power plants during nuclear accidents. However, the prevention effects of the siltfence as sediment control structures have not yet been fully evaluated. Therefore, in this paper, we simulate the behaviors of suspended sediment particles using a coupled simulation scheme composed of water flow and deformation of the siltfence in a rectangular open channel under uniform steady flow, and evaluate the promotive effects of the installed siltfence on suspended sediment deposition. The results demonstrate that the installation of the siltfence significantly promotes deposition, especially of particles with low settling velocities. However, it should be noted that the opposite case is also possible, i.e., the siltfence promotes the diffusion of suspended sediments under particular conditions. These results suggest that a careful installation strategy is necessary. The present simulation scheme is useful in assessing the prevention effects of siltfences prior to their installation.
著者
鈴木 哲 田邉 賢一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.79-83, 2022 (Released:2022-02-10)
参考文献数
6

東芝エネルギーシステムズと富士電機が共同開発している小型モジュール高温ガス炉は,固有安全性を活用して原子炉格納施設を簡素化すると共に,プラントを4モジュール構成とすることで大型軽水炉並みの電気出力を得るコンセプトである。また,早期実用化のため成熟技術である蒸気タービンを採用し,蓄熱設備との接続により電力需給変動を吸収する機動的運用を検討している。本稿では本高温ガス炉のプラント概要と,実用化に向けた取り組みについて紹介する。
著者
堀田 亮年 中田 耕太郎 佐田 幸一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.727-731, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
9

シミュレーション技術が幅広い産業分野に普及するとともに,その信頼性をいかに確保するかということへの関心が高まっている。ISO9001の導入以来,検証(Verification)と妥当性確認(Validation)が品質管理のキーワードとなったが,シミュレーションのVerification & Validation(V&V)が今脚光を浴びつつある。原子力においては古くから存在し,かつ新しい側面も持つこのテーマについて計算科学技術部会における取り組みを中心に紹介する。
著者
佐藤 一憲
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.19-23, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
3

米国およびカナダにおいては,福島第一原発事故以降も原子力を温室効果ガスのほとんど出ないクリーンエネルギーと位置付け,エネルギー・ポートフォリオの重要な要素として引き続き利用してゆく方針である。一方,数年前には予測されていなかったシェールガス革命と呼ばれる状況は原子力発電所の新規建設の環境を一変させている。このような環境下での両国での原子力開発や発電等の動向について解説する。
著者
矢川 元基 大島 榮次
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.370-390, 1994-05-30 (Released:2009-04-21)
参考文献数
18

原子力発電プラントは30~40年が寿命とされているが,最近の用地難あるいは経済性などの理由により20~30年の寿命延長の可能性についての議論が盛んになっている。 本「特集」では,他分野のプラントの状況分析なども含め,保守,管理,設計,材料などの観点から,原子力発電プラントの長寿命化について論じる。特に,安全性についてはPSAとの関係についても考え方を述べる。
著者
青山 道夫 山澤 弘実 永井 晴康
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.46-50, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

福島第一原発事故により大気および海洋に放出された放射性物質の観測された核種,推定された放出量,放出の時間経過について,現在明らかになっていることを概観した。また,放出された核種について,その大気中,陸域および北太平洋での挙動についても纏めた。さらに,今後の研究課題として,良くわかっていないことを,1から3号炉の放出の配分と核種組成および海洋内部での中央モード水の挙動の観点で整理した。
著者
斯波 正誼
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.794-798, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
11

本稿は,福島第一原子力発電所の事故のような原子炉事故を防止するため,内外の原子力発電所で実施された津波に対する対策や全交流電源喪失などに関する多数の安全対策を紹介し,これらの対策の原子炉事故に対する実効性について論じている。そして内外の軽水炉の安全対策の脆弱な部分に関する情報に注意し,安全対策を強化することの重要性を強調する。
著者
白崎 謙次 門傳 陽平 山村 朝雄 塩川 佳伸
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2005年春の年会
巻号頁・発行日
pp.461, 2005 (Released:2005-05-24)

我が国の原子力発電から派生する劣化ウランの量は膨大であり、高速増殖炉のブランケット燃料として保管されているが実用の見通しは立っていない。核的性質以外の用途による有効利用法の開発は重要な課題である。軽アクチナイドは構造変化のない2組の可逆な酸化還元対を有しており、電池活物質として用いることによりエネルギー効率の高い電池の構築が期待できる。我々は劣化ウランについて、電力貯蔵用レドックスフロー電池の活物質としての利用を検討している。放電状態のウラン電池の正極溶液はウラン(V)溶液であるが、ウラン(V)は不均化反応によりプロトン存在下において不安定であるため、非プロトン性溶媒を用い研究している。安定なウラン(V)を得ることは、電池の高い容量維持性と容量回復性を実現する上で重要であるが、酸化状態の安定性についての知見はほとんどない。そこで、ウラン(VI)錯体の電解還元により調製したウラン(V)溶液を用い、分光学的手法により経時安定性を観察し半減期により評価した。
著者
石田 健二 岩井 敏 原口 和之 賞雅 朝子 當麻 秀樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.168-173, 2021 (Released:2021-02-10)
参考文献数
7

国際放射線防護委員会(ICRP)の幹細胞生物学に関するドラフト報告書「Stem Cell Biology with Respect to Carcinogenesis Aspects of Radiological Protection」は,2015年12月にICRP Publication 131(以降「Publ.131」と記載)「放射線防護のための発がんの幹細胞生物学」として発行された。同報告書には,放射線と幹細胞の動態に関する知見が示されており,発がんリスクに対する直線しきい値なし(LNT)モデルに基づく「現行の放射線防護体系」の見直しにつながる可能性がある。