- 著者
-
清水 健太郎
北村 哲久
前田 達也
小倉 裕司
嶋津 岳士
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床救急医学会
- 雑誌
- 日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.4, pp.473-479, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
- 参考文献数
- 23
背景:高齢者の救急搬送におけるDNAR(do not attempt resuscitation)の影響を地域網羅的に検討した報告はほとんどない。方法:大阪市消防局の救急搬送記録を用いて,救急隊が医療機関を選定した65歳以上の心停止症例1,933例を対象に検討した。三次医療機関への搬送の有無を目的変数とし,年齢,初期心電図波形,発生場所,DNARなどを説明変数として多変量解析を行った。結果:心停止症例1,933例において,DNARの保持率は8.3%であった。DNARの有無は三次医療機関への搬送選定に関して有意差があった(DNAR有8.1% vs 無45.5%,p<0.05)。発生場所が老人ホームの372件に関しても同様に有意差があった(DNAR有7.2% vs 無33.0%,p<0.05)。三次医療機関への搬送を目的変数として多変量解析を行うと,年齢,初期心電図波形,発生場所,普段の生活状況,DNARに統計学的有意差があった。とくに,DNAR有のオッズ比は0.157(95%信頼区間(0.088-0.282)であった。考察:高齢者心停止症例の救急搬送時には,DNARに対する意思表明が三次医療機関への搬送を有意に減少させていた。心停止症例に対し適切な医療を提供するために,アドバンス・ケア・プランニング,地域と救急医療機関とのより密接な連携が重要と推察された。