著者
一林 亮 本多 満 鈴木 銀河 渡辺 雅之 野口 晃司 豊田 幸樹年 田巻 一義 籾山 浩一 原 規子 吉原 克則
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.593-601, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
14

目的:東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020)に向けて,東京国際空港の利用客数の増加とともに,救急対応の質が求められる。われわれは空港における救急需要増加に対する方策を検討した。対象と方法:2014〜2015年にかけての空港からの搬送者を対象として東京消防庁の救急隊記録から,活動内容の解析を行った。結果:救急隊活動時間と空港内での活動時間を比較すると到着-接触時間,収容-出発時間が長く,国際線における収容-出発時間が延長し,2015年で17分を要した。考案:救急隊活動時間延長には救急医療体制に問題があると考えられる。到着-接触時間延長は空港の導線に問題があり,その間にfirst responderとしての職員の教育や空港内救急救命士などの介入が有用と考える。結語:東京2020に向けて救急活動における共通の課題として空港周辺医療施設,空港関係者で情報共有や対策作成が必要である。
著者
太田 智行 西岡 真樹子 中田 典生 福田 国彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.499-507, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
40

米国を中心に発展しているポイントオブケア超音波検査(point of care ultrasound, POCUS)は,臨床上重要と判断されたものを中心に評価するfocused ultrasound examination(的を絞った超音波検査法)が主体となる超音波検査であり,系統的で連続的な評価を行う従来の超音波検査とは異なる。臨床上の判断を間違えば,的外れな診療になってしまうリスクを負う。FAST,FATE,BLUE,RUSH,two-point compression methodはPOCUSの代表的プロトコールであるが,これらの開発された経緯や概略を理解することでfocused ultrasound examinationがCT検査に依存した日本の医療にもたらし得る変化を想像できるのではないかと思われる。CT検査依存で得た便利さや確実さと引き換えに,日本人は過剰な医療被ばくのリスクに直面している。今後,日本の医療がどう変化していくか,focused ultrasound examinationが普及するかどうかにかかっている。今後の動向を注視していく必要がある。
著者
下村 剛 藤浪 麻美 油布 邦夫 齋藤 聖多郎 竹中 隆一 中嶋 辰徳 三城 英昭 岡田 憲広 髙橋 尚彦 坂本 照夫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.671-679, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

大分県では2017年4月17日より,大分県遠隔画像伝送システムへの機能追加の形でクラウド型12誘導心電図伝送システムの運用を開始した。各消防本部に1台ずつのクラウド心電計を配置し,伝送には,既存のタブレット端末および回線を利用した。このシステムでは5地域中核病院を含む18施設が参加し,大分県の広い範囲を網羅している。運用開始から 2018年3月12日までに,111件(男性71例・女性40例:平均年齢75.6±12.7歳)の心電図伝送を行った。搬送先は,救命救急センター36例,PCI施設36例,地域中核病院32例で,そのほか7例あった。緊急心臓カテーテルが行われた22例(19.8%)の72.7%がACSであり,PCIが行われた14例は,コントロール群に比べ,有意にdoor to balloon time(DTBT)が短縮した。また,心電図所見からACSが否定的な45例(40.5%)は,近隣の施設で対応することにより不必要な遠隔地への搬送が回避できた。
著者
置塩 裕子 上田 健太郎 米満 尚史 那須 亨 川嶋 秀治 田中 真生 國立 晃成 岩﨑 安博 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-5, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
7

目的:和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センターに搬送された75歳以上の後期高齢者のCPA症例を検討し,今後の課題を明らかにする。方法:4年間に搬送された,DNAR未確認のCPA症例のうち,後期高齢者群と非後期高齢者群とを後向きに比較検討した。また,後期高齢者のROSCあり群となし群とを比較検討した。さらに,後期高齢者群の生存例を検討した。結果:対象475例中,後期高齢者は283例であった。後期高齢者群は,自宅や施設での発生が多く,初期波形VFの症例が少なかったが,ROSCや生存の割合に有意差は認めなかった。後期高齢者ROSC なし群では,目撃なし症例や初期波形心静止が多かったが,bystander CPRの有無や搬送時間に有意差は認めなかった。後期高齢者の生存8症例に初期波形VFはなく,すべてCPC4であった。結論:初期波形VFの生存症例がなく,改善の余地がある。また,事前指示書の普及が重要と考えられた。
著者
西川 嘉広 水谷 英夫 小出 哲朗 石川 久高 今井 裕一 大村 崇 山田 典一 大久保 節也 市川 毅彦 伊藤 正明
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.732-735, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
8

症例は60代,男性。初回来院時,診察中に心房細動から心室細動となりアミオダロン塩酸塩注を投与された。その後,心室細動はコントロールされ無事退院した。その際,予防的にアミオダロン塩酸塩錠が継続処方された。1カ月後,心房細動にて救急受診し,初回入院時に潜在性WPW症候群の可能性が疑われ,心室細動への移行が懸念されたことからアミオダロン塩酸塩注が静脈内に投与された。その10分後,アナフィラキシーショックを呈した。加療にて回復後,アレルゲンの検索が行われた。アミオダロン製剤には錠剤と注射剤がある。すでにアミオダロン塩酸塩錠を内服していたことから注射製剤の添加剤に着目し,皮膚反応試験を実施した結果,アレルゲンはベンジルアルコールと判明した。本添加剤は多岐にわたり含有されているため,新規投薬時には医療用医薬品だけでなく一般用医薬品にも含有されていないことを確認するなど細心の注意を払う必要があると考えられた。
著者
清村 紀子 鹿嶋 聡子 時吉 佐和子 寺師 榮 有田 孝 伊藤 直子 工藤 二郎
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.632-642, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
14

本研究は,中学生へのCPR教育の意味を質的に明らかにし,Kolb経験学習理論を基盤に考察することを目的とする。A地域の中学生53人に対し,簡易型キットを用いたCPR教育実施後に「いのちについて考える」をテーマに記載を求めた作文から,意味ある内容を文章単位で抽出し内容分析した。18部の作文から抽出した193のテクストデータから,【いのちと人とのつながり】,【救急医療に対する認識の高まり】,【思春期における成長】,【バイスタンダーCPRを拡大する上での課題】,【中学生のCPRに関する認識と認知度の実態】の5カテゴリを抽出した。中学生はCPR教育をきっかけとし,知識・技術の習得のみならず,救急医療の現状の課題への理解やバイスタンダーとなることを現実的に実感することに加え,いのちや人とのつながりについて深慮しており,中学生へのCPR教育がいのちの教育や成長発達に意義あることが示唆された。
著者
光定 誠 石井 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.56-61, 2014

<b>【要約】</b>高齢者施設の訪問診療医による適正な救急搬送を目的としたトリアージ基準を考案し,実施した。二次救急適応と医師が判断した場合には,搬送要請前に収容病院をできる限り選定した。12 施設,252 名を対象とした10 カ月間の救急搬送は46 例で,トリアージを行った 41 例は全例二次救急適応と判断した。うち39 例について収容病院を要請前に選定した。5 例は訪問医を介さず搬送され,うち2 例が三次搬送となった。本トリアージを包括的判断に基づき行うことで,本人や家族が望まない三次搬送や高度な処置をある程度回避できる可能性があると考えられた。地域の医療資源を熟知した訪問医が,患者全体像を把握したうえで収容先を搬送要請前に選定できれば,患者側および救急にも有益であると思われたが,困難なことも多かった。また急変時には訪問医を介さずに患者が搬送されうることも想定し,家族等との密なコミュニケーションをもとにスタッフに明瞭な指示を出しておくことが必要である。
著者
梅澤 耕学 作田 翔平 奈良 唯唯子 中澤 美和子 山上 浩 大淵 尚 福田 充宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.639-644, 2016-10-31 (Released:2016-10-31)
参考文献数
8

目的:救急外来トリアージの質の評価は統一した方法がないのが現状である。当院の救急外来トリアージを従来の報告と比較検討し,トリアージの質の評価を行った。方法:2013年4月からの1年間の当院救急外来の受診患者を対象とし,トリアージまでの時間,アンダー・オーバートリアージ率,診察応答時間充足率,救急外来滞在時間,緊急度別入院率を求めた。結果:対象患者は36,475名であった。トリアージまでの時間は中央値5分(IQR 0-11)で,アンダートリアージ率は1.1%,オーバートリアージ率は2.0%であった。診察応答時間充足率はLevel 1が84.6%,Level 2が91.1%,Level 3が84.8%,Level 4が88.2%,Level 5が99.8%であった。救急外来滞在時間は全体で中央値1時間39分であった。緊急度別入院率はLevel 1が97.6%,Level 2が73.1%,Level 3が30.8%,Level 4が5.0%,Level 5が0.1%であった。結語:診察応答時間充足率がより緊急度の高い群で悪く,患者動線の改善が必要と考えられた。今後は統一した質の評価方法が必要である。
著者
久米 梢子 岡本 博照 久保 佑美子 神山 麻由子 和田 貴子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.645-656, 2016-10-31 (Released:2016-10-31)
参考文献数
10

救急救命士有資格者を雇用した二次救急病院7施設の職員(医師,看護師,コメディカル,事務職員)を対象として,救急救命士有資格者の有用性・必要性の評価と彼らに行ってほしい業務について調査した。回答者481人のうち約7割の職員が救急救命士有資格者を必要で役立つと評価していた。また,彼らに行ってほしい業務として「胸骨圧迫」「救急外来でのトリアージ」「バイタルチェック」「救急車からの電話対応」「転院搬送の付き添い」が挙げられ,救急救命士有資格者の約7割以上がその業務を実際に行っていることが判明した。病院前救護で活躍する救急隊員のための資格である救急救命士であるが,その有資格者は二次救急病院でも活躍可能な人材であることが示唆された。しかし,救急救命士有資格者の不明瞭な業務内容とその存在の不明確さについて疑問視され,有資格者を活用するには業務内容の基準化や教育内容に関する議論が必要と思われる。
著者
中谷 亮介 満田 正樹 稲葉 静香 早田 修平 中村 俊介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.28-32, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
3

今回,院内急変対応時に薬剤師に求められる役割を見出し,急変対応に必要な知識および技能の習得を目的として,医師および看護師を対象に急変対応時の薬剤師の必要性についてアンケート調査を行い,薬剤師を対象に院内急変対応シミュレーション研修や急変対応アクションカードの作成,急変対応に関するアンケート調査を行った。8割以上の医師,看護師が院内急変時に薬剤師が必要と回答し,急変対応時に薬剤師に期待する役割として,「使用薬剤の提案」,「薬剤の搬送」,「薬剤の取り出し」,「使用薬剤の記録」の4つの項目が主にあげられた。取り組み前は院内緊急コールに駆け付けることができていなかったが,取り組み後は全症例に対して薬剤師が介入できていた。今回の取り組みにより急変対応における薬剤師の役割が明確となり,急変対応への積極的な参画が可能となった。
著者
金原 佑樹 山田 秀則 北川 喜己 市川 敦子 長瀬 亜岐 筧 裕香子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.675-679, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
9

精神科病床のない救命救急センターである当院において,精神科病院から紹介・救急搬送された身体合併症患者の診療改善点を見つける目的で,当院の現状と傾向を調査・検討した。2007年6月1日〜2012年5月31日の5年間における,近隣10施設の精神科病院から救急搬送され入院となった患者全303症例に対して診療録から後ろ向きに観察し,精神科基礎疾患,診断名,疾患分類,転帰,在院日数について調査・検討した。結果,統合失調症患者の身体合併症には肺炎,骨盤・下肢骨折,イレウス,低Na血症の頻度が高い特徴があり,また精神科疾患を基礎に持ち身体疾患を合併した患者の入院加療は,病棟運用に影響を及ぼすことがわかった。身体合併症の重症化を未然に防ぐ取り組みと,精神科病院との連携によるスムーズな診療,精神疾患に対する正しい知識と的確な看護における負担感の把握が,今後の病棟運用改善の重要課題である。
著者
島尻 史子 岡本 健 西村 あをい 今度 さやか 澤井 香子 斉藤 伊都子 森川 美樹 寒竹 正人 田中 裕
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.802-809, 2013-12-31 (Released:2014-01-15)
参考文献数
10

近年,救急外来トリアージへの関心が急激に高まっているが,その実態は明らかではない。今回,救急外来トリアージの現状と,トリアージの質向上のための課題を明らかにする目的で,全国の救急医療440 施設にアンケート調査を行った。有効回答158 施設(36%)中,トリアージ実施施設は79 施設あった。ガイドライン使用施設は52 施設(66%)だったが,標準ガイドラインの使用は17 施設(21%)のみだった。トリアージナースの選定要件や養成体制は施設間で差がみられた。事後評価システムをもつ施設は30 施設(39%)だったが,その半数で定期的な事後評価や明確な評価判定基準がなかった。本調査結果の分析により,救急外来トリアージの質を向上するためには,トリアージ方法の標準化の推進,トリアージ施行者の能力の担保および事後検証によるフィードバック体制の確立が今後の課題であると示唆された。
著者
藤田 有紀子 佐道 紳一 増山 純二 黒坂 升一 兼松 隆之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.581-587, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
6

背景・目的:NOACは利便性の高さで当院でも年々処方数が増加している。しかし,適正使用のうえで,各薬剤の特徴を正確に知っておくことが肝要である。そこで,今回,当院医師および近隣の調剤薬局薬剤師におけるNOAC適正使用の基本的事項の理解度を検討し,課題を明らかにしたので,報告する。対象・方法:当院でNOACを処方している医師10名・初期研修医7名・近隣の調剤薬局薬剤師15名にNOAC適正使用に関するアンケート調査を行い,CS分析を用いて評価した。結果および考察:CS分析の結果から,医師は,初期研修医や薬剤師に比べると用法用量の確認を行い,NOACを使用していた。初期研修医は,術前休薬期間の確認や他の抗血栓薬からの切り替え方の確認が重点改善分野にプロットされた。NOACをより適正に使用するためには初期研修医・薬剤師が医師に依存せず,薬剤師が専門性を生かし,医師と協働して抗凝固薬治療に参画することが課題である。
著者
後藤 明子 中島 厚士 山下 友子 岩村 高志 朽方 規喜 阪本 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.603-606, 2013-08-31 (Released:2013-10-15)
参考文献数
7

症例は60 歳代の男性。突然の前胸部痛と嘔気を主訴に救急搬送された。来院時は意識清明で,明らかな外傷や神経学的異常は認めなかった。心電図にV2 〜V5 でST 上昇があり,心エコー上,前壁中隔の壁運動低下を認め,急性冠症候群と判断し,緊急心臓カテーテル検査を施行した。左前下行枝Segment 7 の100%狭窄を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行したが,その後,ICU へ搬送中に意識レベルの低下を認めた。頭部CT で,外傷性脳挫傷,両側硬膜下血腫,外傷性くも膜下血腫を認め,PCI 時に使用した抗凝固薬により,血腫が増悪した可能性が考えられた。急性硬膜下血腫に対して,両側頭蓋内血腫除去術,および右広範囲外減圧術を施行したが,その後も意識レベルの改善はみられず,入院11 日目に死亡した。急性心筋梗塞治療後に頭部外傷が判明し,対応に苦慮した症例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する。
著者
兼古 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.63-67, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
10

回帰熱は回帰熱群ボレリアによる感染症で,シラミなどによって媒介される。世界各地での発症報告があるが,本邦では国内感染報告はなかった。今回われわれはライム病と診断した患者血清から回帰熱ボレリアDNAを検出し,回帰熱と診断したので報告する。患者は30代男性。マダニ咬症を認め自己摘除。12日後に高熱と刺口部周囲の発赤を認め,当科を受診した。遊走性紅斑を認め,抗ボレリア抗体が陽性であったことからライム病と診断し,感染症法に基づく届出を行った。後日,国立感染症研究所によるライム病患者血清の遡及調査で,本症例の血清からBorrelia miyamotoi(以下,B. miyamotoi)のDNAが検出された。B. miyamotoiは1995年に発見されたボレリアで,2010年ロシアでのヒトへの感染報告後,世界各地で感染報告が相次ぎ,“古くて新しい感染症”として最近注目を集めている。マダニ咬症後の発熱患者では本症を念頭に治療を行う必要がある。
著者
宮本 恭兵 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.69-73, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
10

硫化水素はさまざまな産業の副産物として生じ,しばしば中毒症例が報告されている。今回われわれは農薬タンク内で硫化水素が発生し中毒を発症した症例を経験したので報告する。症例は37歳男性。農薬タンク内の洗浄のため中に入ったところ意識消失し,救急要請となった。現場周辺は硫黄臭があり,ガス検知器で硫化水素が200ppmであった。タンク下部を切断して内部の換気を行ったのち,救助した。石灰硫黄合剤と第一リン酸カルシウムの混合により硫化水素が発生したことが判明した。当院到着時はGlasgow Coma ScaleでE2V2M5と意識障害があり,気管挿管による純酸素投与,亜硝酸ナトリウム投与を行った。亜硝酸ナトリウムは間欠投与より持続投与でメトヘモグロビンの良好な調整が得られた。どちらの投与法でも明らかな副作用は生じなかった。入院3日目に意識状態が改善し,入院6日目に神経学的症状を残さず自宅に退院となった。
著者
五味 知之 竹村 隆広 岡田 邦彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.499-508, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
6

佐久医療センター(以下,当院)は,2014年3月に専門医療と急性期医療に特化した病院として開院した。救命救急センター・集中治療部門は,3ユニットからなり,開院と同時に専従薬剤師2名と補助1名を配置して業務を行っている。薬品管理,配薬,持参薬確認といった全ユニット共通の業務に加え,GICUでは心臓血管外科チームの一員として,術後内服薬の処方計画の立案等を医師と協働で行い,EICU・救命救急病棟では中毒対応や脳神経外科との連携のもと,遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator;rt-PA)の使用や,抗凝固療法中の脳出血に対するプロトロンビン複合体製剤(Prothrombin Complex Concentrate;PCC)の適正使用を支援している。HCUでは周術期術後の患者管理主体の業務を行っている。各ユニットの特徴に合せて介入し,薬物治療の安全性や質の向上に貢献すべく業務を展開している。今後もマンパワー・人材育成等の課題を乗り越え,より積極的に介入することが望まれる。
著者
門口 直仁 田中 聡 宮本 典文 山本 創一 喜多村 泰輔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.715-719, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
9

目的:ICUにおいて,プロポフォール注射液は鎮静薬として繁用されているが,その投与による静脈炎の発生が臨床上問題となる。そこで,プロポフォール注射液投与による静脈炎の発生状況を調査した。方法:2012年9月から12月までに救命救急センターにおいてプロポフォール注射液が末梢静脈から2日間以上持続投与された症例を対象とした。結果:調査期間中の対象患者は41名で,静脈炎が発生した患者は19名(46.3%)であった。投与時間と平均投与速度が静脈炎発現の有意な因子であり,投与時間77時間以上,投与速度3.44mg/kg/hr以上で静脈炎が高頻度に発現していた。考察:プロポフォール注射液による静脈炎は添付文書上では頻度不明とされているが,今回の調査では46.3%と高頻度に発生していた。静脈炎の発生および重症化を防ぐため,投与時間,投与速度の確認と頻回な穿刺部位モニタリングの必要性が示唆された。