著者
松尾 光浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.617, 2020 (Released:2020-03-06)
参考文献数
6

薬剤師による疑義照会は医薬品の適正使用や安全性の確保に貢献する。近年,臨床知識を持ち合わせた薬剤師の育成が行なわれているにもかかわらず,実臨床において医師側がどのような疑義照会を求めているのか明らかにした報告はない。そこで本研究では,糸魚川総合病院に在籍する医師(62名)を対象に文部科学省が定める薬学教育コアカリキュラムを参考に作成したアンケート調査を行なった。選択肢を「是非指摘してほしい」,「指摘されても良い」,「分からない」および「指摘してほしくない」の順番で順位付けを行ない,各項目について平均順位を求めた。その結果,全32項目における平均順位は989.5±98.5であった。平均順位が有意に低かった項目は「医薬品の安全性(副作用,有害事象)」(711.3位,P=0.040)と「薬の作用(薬理作用,薬物相互作用)」(754.8位,P=0.035)であった。一方,平均順位が最も高かったのは「薬物治療,治療方針」(1,194.7位,P>0.05)であった。次に,糸魚川市内の調剤薬局にこれらの結果を開示し,薬剤師に対するアンケート調査を実施した(回収率65%)。その結果,「本研究結果は今後の疑義照会に活用できる」に対して「非常に当てはまる」または「少し当てはまる」を選択した薬剤師は28名(87.5%)と多かった。本研究から,医師は医薬品の安全性や薬理作用に関わる疑義照会を強く望んでいることが明らかとなった。今回得られた結果により薬剤師による疑義照会が促進され,医療安全の向上に貢献することが期待される。
著者
重田 匡利 久我 貴之 工藤 淳一 山下 晃正 藤井 康宏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.61-67, 2007 (Released:2007-09-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

マムシは琉球列島を除く日本の全土に分布している毒蛇であり春から秋にかけて多くみられる。本邦では年間,約10名前後が死亡する1)。田畑や山中での被害報告が多く農村医療では重視される。平成11年から平成18年においてマムシ咬傷35例を経験し臨床像および治療とその経過について検討した。患者は7歳から80歳 (平均60歳) 男性17名,女性18名であった。全例に咬傷部の腫脹と疼痛を認めたが,全身症状は16例 (46%) に認め眼症状が高率であった。血液検査上の異常はCPK高値を24例 (69%) で認め重症度と相関していた。治療は切開排毒処置のうえ原則全例入院とし,独自のマニュアルを初期治療に活用した。治療の結果,症状改善傾向が認められるまでの中央値は3日であった。入院日数の中央値は7日であった。腫脹などの局所症状の消失には時間がかかり治療期間の中央値は31日間であった。受傷から受診までの時間により重症度に差を認め重症化した1症例では集中治療を必要とした。マムシ咬傷では迅速かつ適切な初期治療が必要であると思われた。
著者
村藤 大樹 木村 和弘
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.178, 2009 (Released:2010-03-19)

アトピー性皮膚炎の治療は,一時期ステロイドバッシン グや民間療法の喧伝などにより混乱をきたしていたが, 2000年に日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイ ドラインが作成されてからは徐々に治療の統一がなされ, ステロイド外用剤の適正使用と保湿剤によるスキンケアの 重要性が強調されている。しかし,スキンケアの重要性に 対する認識は個々の医師によって差があり,その方法もま ちまちなのが実状である。 我々は2003年に小児科の専門外来として「アトピー外 来」を開設し,2009年4月現在の患者総数は1,135人であ る。そのうち重症と判断した319人(うち小児193人)を対 象に,ウェットラッピング法を用いて治療を行った。 ウェットラッピング法とは,保湿剤(炎症の強い個所には ステロイド外用剤を併用)を塗布した後に水で濡らした下 着やクッキングペーパーで体を覆い,さらにその上から調 理用ラップで被覆して2~3時間過ごすという手技で,通 常のスキンケアで対応困難な重度の乾燥肌に対し,初期治 療として行うものである。 治療の標準化を図るために,クリニカルパスを用いて4 日間の入院治療を行った。入院中に計6~8回のウェット ラッピングを行い,退院後も含めて計10回行った後通常の 外用療法のみへ移行した。患者は早ければ治療2日目の朝 には皮膚状態の改善を実感し,退院時にはほぼ全例で乾燥 肌の明らかな改善がみられた。短期間に皮膚の状態が劇的 に改善することで退院後の外用療法に対する治療コンプラ イアンスが向上し,ひいては治療期間の短縮とステロイド 外用剤使用総量の減量を達成することが可能となった。 アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに準拠した外用療法 にウェットラッピング法を併用することは,重症アトピー 性皮膚炎の高度な乾燥肌に対する初期治療として非常に有 用であると考えられた。
著者
小林 史岳 唐澤 忠宏 松下 智人 小松 修 安達 亙
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.499-503, 2017-11-30 (Released:2017-12-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

ツキヨタケ中毒の6 例を報告する。ある住民が採取してきたキノコを,バター焼きにして近隣住民6 人で食べた。食事開始1 時間から1 時間30分で嘔気が出現し,全員が当院救急外来を受診した。救急隊により,摂取したキノコがツキヨタケである可能性が示された。入院し対症的,保存的加療を行ない,全員翌日に退院した。しかしながら, 1 名が退院翌日からの腹痛,食思不振のため,もう1 名が退院当日からの嘔吐,下血のため,退院翌々日に再入院となり,後者はCT で十二指腸から空腸に強い壁肥厚を認めた。 ツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)による典型的な症状は,摂取後30分から3時間での嘔吐,下痢,腹痛だが,重症例では数日後に腸管の浮腫をきたすことがあるため,注意が必要である。
著者
藤田 紘一郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.777-781, 2002-03-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13
著者
松岡 悟 庄司 亮 阿部 元 田村 芳一 齊藤 崇
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.437-447, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
23

急性冠症候群(ACS)において回復期(第Ⅱ相)リハビリテーションの脂質プロファイルに対する効果と運動耐容能に対する効果との関連を明らかにするため,PCIに成功し回復期リハビリテーションを実施したスタチン服用中のACS連続104例(62±8歳,男性86例)に対し,リハビリテーション前後のCPXと同時期の脂質データについて後ろ向きに検討した。4か月間のリハビリテーションにより,予測値に対する%ATは67±11%から76±12%へ有意に増加(p<0.001),HDLCは41.5±11.8mg/dLから51.4±12.6mg/dLへ有意に増加(p<0.001),LDLC/HDLC比は2.3±0.8から1.8±0.6へ有意に低下した(p<0.001)。HDLC変化量と%AT変化量との間に正の相関を(r=0.463),HDLC変化率と%AT変化率との間にも正の相関を(r=0.485)認めた。またLDLC/HDLC比変化量と%AT変化量との間に負の相関を(r=-0.379),LDLC/HDLC比変化率と%AT変化率との間にも負の相関を(r=-0.374)認めた。重回帰分析の結果,HDL変化量およびLDLC/HDLC比変化量の関連要因として%AT変化量が,HDL変化率およびLDLC/HDLC比変化率の関連要因として%AT変化率が抽出された。以上により,ACS患者に対するスタチン服用下の回復期リハビリテーションにおいて,脂質プロファイルの改善と%ATの改善とが関連することが示された。
著者
若松 祐三 中村 雄一 重信 隆彰 石山 重行 草野 健 前之原 茂穂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.314, 2008 (Released:2009-02-04)

〈緒言〉昨今の食事の欧米化、運動不足に伴い肥満人口が増加している。体脂肪率、BMIは肥満の判定に有効な手段だが、メタボリックシンドロームの病態基盤である内臓脂肪量評価との関係性を調べることにより、当センター検診CTにおける内臓脂肪量評価の基準(内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量100cm2未満 正常、100cm2以上150cm2未満 多い、150cm2以上 非常に多い)の妥当性を確認する。なお当センターでは平成19年1月よりMS診断の補助としてCTによる内臓脂肪測定を開始している。今回平成19年4月より1年間おける受診者の測定結果と体脂肪率、BMI、との関係について検討した。対象及び方法)平成19度人間ドック受診者11712名中 CTによる内臓脂肪測定を行った1631名(男性:1042名 女性:589名)を対象とした。使用機器は東芝製Asteion4、内蔵脂肪解析ソフトはN2システム Fat Scan、TANITA 身長体重計を使用した。臍の高さ、呼気時のCT撮影、Fat Scanで処理したCT断面図により腹壁の筋肉を境にして外側を皮下脂肪、内側を内臓脂肪とした。内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量が100cm2未満を_I_群、100cm2以上150cm2未満を_II_群、150cm2以上を_III_群とし、その3つの群と、体脂肪率、BMIとの関係を調べ、内臓脂肪量の至適基準を検討する。結果)内臓脂肪量をGold standardとしてBMI、体脂肪率を検討した。BMI正常者の内臓脂肪量の平均は82.148cm2標準偏差43.007、またBMI異常者では平均136.168cm2標準偏差55.560となった。体脂肪率正常者の内臓脂肪量の平均は男性102.871cm2標準偏差47.771、女性は54.377cm2 標準偏差29.894となった。体脂肪率異常者の男性の平均は144.199cm2 標準偏差57.423、女性は平均97.978cm2 標準偏差43.576となった。さらに男性の体脂肪率25%未満、女性の体脂肪率30%未満を体脂肪率正常者、それ以上を体脂肪率異常者とした場合、男性の体脂肪率正常者は_I_、_II_、_III_群それぞれ82.7%、61.4%、43.7%となり、女性の体脂肪率正常者はそれぞれ63.4%、16.3%、13.5%となっている。_I_群の場合でも体脂肪率異常者が存在し、また男性の内臓脂肪量100cm2以上の_II_,_III_群にも体脂肪率正常者が存在している。次に内臓脂肪量各群とBMIとの関係について検討した。BMI25未満を正常者、25以上を異常者とした場合、正常者は_I_群では79.7%で_II_群、_III_群になるとそれぞれ48.7%、26.3%と減少傾向にある。これは皮下脂肪などの全構成要素か含まれた為だと考えられる。 BMI、体脂肪率は、肥満の度合いを知る為の簡便な方法ではあるが、必ずしも内臓脂肪量を正確に反映してるとは言えない。内臓脂肪量の正確な測定法としては、CTがもっとも適していると思われる。さらにメタボリックシンドロームとの関連も検討して報告する。
著者
堀内 信之 西垣 良夫 塩飽 邦憲 松永 剛 小池 且弥 佐藤 英嗣 鈴木 長男 内川 公人 村松 紘一 矢島 伸樹
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.23-37, 2004 (Released:2005-03-29)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

日本農村医学会の特別研究班として, 「病原媒介性マダニ類の刺咬症とその感染症の臨床疫学的調査研究班」が設置された。そこで, 日本農村医学会加盟の108医療機関にマダニ刺咬症・ライム病・日本紅斑熱について, 患者調査票を作成して送付し, 平成14年の1年間の患者を記載したものを集計した。その結果マダニ刺咬症151例 (男67例, 女84例), ライム病17例 (男13例, 女4例), 日本紅斑熱0例, が集計された。また, 平成13年以前の本症の受診状況を, 同じ108医療機関で, アンケートにて調べた。マダニ刺咬症が受診したのは24病院, しなかったのは13病院であった。ライム病は6病院が受診し31病院が受診しなかった。日本紅斑熱は, 1病院が受診し, 33病院が受診しなかった。半数以上の病院が無回答であったが, これはライム病に対する問題に病院としての対応ができていないのであろうか。この病院では本症に対する関心が少ないのかと思われる。以下, 151例のマダニ刺咬症で, 下記の項目について若干の考察を加えた。年齢別患者数, 月別患者数, 初診時の虫体の状態, マダニ虫体の除去法, 血清抗体価の測定, 組織・血液培養の評価と位置づけ, マダニの同定, 治療法など。本症の治療にとっての問題点は, 初期の状態で抗生剤の予防的投与が発症の抑制に有効かどうか, また必要かどうかである。この点に関しては, 検査法との関係もあり一定の標準が示されなければならない。抗生剤を初期に投与すると, 抗体価の上昇が見られなくなるとも言われている。ライム病の17例は, いずれも皮膚症状のみで第2・3期に進行していくものはみられなかった。
著者
田邊 翔太 矢野 彰三
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.924-931, 2017-01-31 (Released:2017-03-18)
参考文献数
28

中山間地域の中核病院におけるHAD 発症率とその危険因子を検討することを目的に公立邑智病院総合診療科の新規入院患者について入院時と退院時のADL を比較し,HAD発症率を調査した。また,入院時の栄養状態,認知機能,血液検査,介護認定の有無,在院期間を調査し,HAD 発症との関連を統計学的に解析した。 その結果,53例中8 例(15%)にHAD 発症を認めた。HAD 発症例は有意に高齢で,入院時のADL・栄養状態・認知機能が低く,血清アルブミンが低値であった。多重ロジスティック回帰分析から,栄養状態と認知機能がHAD 発症の独立した危険因子であることが示された。また,HAD 発症群は全例が介護認定を受けていた。 公立邑智病院におけるHAD 発症率は15%で,諸外国の既報に比して低値であった。認知機能と栄養状態は,年齢や入院前のADL と独立してHAD 発症の危険因子と考えられた。
著者
白石 卓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.725-728, 2015-11-30 (Released:2016-01-06)
参考文献数
7

病院や診療所などの医療機関から処方された残薬が高齢者宅から大量に見つかり, 社会問題として取り上げられている。その残薬の問題を解消すれば, 高齢化の進行に伴い増え続けている医療費が削減できる。そこで本研究では, 高齢化の進んだ中山間地域の診療所で残薬を調査し, 残薬問題の解消に何が必要か検討した。当診療所に定期通院する患者を対象に, 残薬を調査した。調査の参加に同意を得られた226名に,「残薬の有無」,「残薬の日数」および「残薬をどうしているか」を調査用紙に記入してもらった。また, 対象患者の年齢, 性別, 75歳以上の後期高齢者数, 処方日数,処方薬剤種類数, 飲み方および薬効から残薬発生の要因を検討した。その結果, 226名のうち38名は残薬ありと答えた。残薬を起こさないように医師は前回処方日時の確認や長期処方を少なくしていたが, 残薬は17%の患者に存在していた。検討項目と残薬発生の間に関連はなかった。「残薬をどうしているか」という質問に対しては,「保管」や「破棄」と回答した患者が多かった。残薬の保管は, 薬剤の不適正使用の危険性を高める。残薬の破棄は, 医療資源を無駄にする。本研究から, 残薬が発生しないように医師は注意し処方していても, 残薬の発生を防げない可能性が示唆された。残薬の問題を解消するためには, 残薬が発生した場合の対処方法を患者に提示する必要があると考えられた。
著者
比嘉 照夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.784-789, 1996-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

Chemical fertilizers, pesticides and large-size machinery characterize present-day intensive agricultural operations. Technological advances in the application of those chemicals and machinery have made a large contribution toward solving the food problem, to be sure, but with detriment to the earth's environment and endangering man's health. Such untoward consequences were also observable not in agriculture and the manufacturing industry alone but in medicine and many other branches of science as well. In 1972, I was diagnosed with pesticide poisoning. With this as a turning point, I washed my hands of modern agriculture, which had been in my line for many years, and decided to do research in microbiology in earnest with my sights set on establishing farming of the sort that is friendly to the natural environment and compatible with the laws of nature. So far, I have harvested well over 2, 000 varieties of microbes. At least two years would be required for the study of one variety thoroughly if conventional methods were employed. So, I gave up all the old ways and resorted to my own method of eliminating harmful bugs and unpleasant odors using pH values and activated water. As a result, a symbiotic group of colonies made up of more than 80 kinds of “effective microorganisms”(EMs) has been formed.Without reliance on chemical fertilizers and pesticides, it has become possible to produce more than twice as much crops of high quality only by dint of EMs. Not only that, those microscopic organisms have proved to be surprisingly helpful in the improvement as well as conservation of the environment. Agricultural, livestock and fishery products produced through the use of EMs are rated high as healthy foods today. Now that it has been made clear that the favorable effects of EMs are due to the antioxidizing substances synthesized by EMs, the scope of their application is being expanded from the above-mentioned sectors to medicine, manufacturing industry, environmental protection, energy resource development and so on. Thus, the EM technology is hailed as something that will bring about a new industrial revolution.The principle of the technology is very simple: Oxidation breaks down everything on earth, but is prevented by the work of antioxidizing substances formed in EMs. The application of this principle could not have been thought of no matter how much the knowledge of modern science as based on the law of entropy was extended. A good idea occurs when you get your thinking on a different track, see the natural phenomena as they are and study them multidimensionally.
著者
佐々木 一希 新明 美佳
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.487-493, 2017-11-30 (Released:2017-12-20)
参考文献数
4

右変形性股関節症の治療のため入院となった81歳の女性に,人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:以下THA)が施行された。術後は順調に回復し,T 字杖歩行が可能となった。術後9 病日で地域包括ケア病床へ転棟し,午前と午後の2 回(計4 単位)のリハビリテーション(以下リハ)を実施。術後22病日に右膝鵞足部痛が出現。リハビリテーション栄養(以下リハ栄養)アセスメントを実施し,加齢と摂取エネルギー不足によるサルコペニアを認めた。栄養管理と体重増加後のレジスタンストレーニング(以下RT)を実施し,鵞足部痛消失とT 字杖歩行を再獲得することができた。患者の病棟内の活動量,体重,食事摂取量などの栄養管理を含め,多職種との関わりを密にすることは,患者のADL の拡大や生活の質(Quality of Life:以下QOL)の向上に必要だと考える。
著者
岩月 奈都 久保田 勝俊 山本 喜之 中根 久美子 粕谷 法仁 植田 祐介 鈴木 和人 花之内 基夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-44, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
3

近年, HBs抗原陰性, HBs抗体もしくはHBc抗体陽性者のB型肝炎ウイルスが, 再活性化されることにより引き起こされるdenovoB型肝炎の重症化の報告がなされている。免疫抑制・化学療法患者が発症するdenovoB型肝炎は, 医療訴訟にまで発展することもあり, その対策として, 2009年1月に厚生労働省より『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』が公表され, 2013年には日本肝臓病学会より『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン (改定版)』(以下ガイドライン) が公表され, 各施設での対応が急務とされている。当院でも, 化学療法委員会で協議され, 医療の安心・安全及び迅速化を提供するためHBc抗体の院内測定を実施することとなった。 調査期間中, HBc抗体が測定された理由は, 化学療法対象患者並びに免疫抑制剤使用患者, 輸血前感染症検査, ウイルス性肝炎検査であった。当院においても, ガイドラインに適応する症例は218例中15例あり, 通常の感染症スクリーニングでは見つけることの出来ないHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性の患者は決して少なくない結果となった。 今後も免疫抑制・化学療法の対象患者は増加することが予想されるなか, 安心・安全な医療の提供の為にもガイドライン遵守の必要性が示唆された。
著者
丹羽 政美 安藤 秀人 平松 達 深澤 基 伊藤 栄里子 安藤 俊郎 渡邉 常夫 藤本 正夫 小出 卓也 岡野 学
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.143, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>前立腺癌は日本人の高齢化と食生活の欧米化に伴い、日本でも増加傾向にある疾患である。前立腺疾患の診断においてはprostate specific antigen(PSA)、直腸診、経直腸的超音波断層法、MRI、針生検などが中心になっているが、生検が簡便に施行できるため画像診断よりも生検が優先される傾向にあった。しかし、従来の生検のsensitivityは50%前後という報告や最近のMRI診断法の進歩によって前立腺の内部構造が明瞭に描出されるようになり生検で前立腺癌と確定した症例の臨床病期診断のみならず、生検前の癌病変の検出においても非常に有用であることがわかってきた。生検前にMRI検査を行って癌部が検出もしくは疑いができれば系統的生検と標的生検を同時に実施することができ、診断能の向上が期待できる。以前勤務した西美濃厚生病院や当院でも前立腺癌を疑った場合、生検前にMRI検査を行うことをルーチン化し、生検の診断能の向上を目指して担当技師が画像についてコメントを記載している。 今回、東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行した症例について生検結果と比較検討した。また拡散強調画像が可能であった症例についてADC(apparent diffusion coefficient)値を測定したので報告する。<方法>東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行し標的生検が可能であった91例について生検診断をゴールドスタンダードとして年齢、PSA値、MRI診断について検討した。撮影装置は1.5T(PhilipsおよびGE社製)装置でphased array coilを用いて撮像した。撮像法はT1強調画像、T2強調画像、Gdダイナミック画像で検討した。(可能であった24症例についてはADC値も検討した。)<結果>生検前にMRIが施行された91症例中37症例に生検によって前立腺癌が認められた。癌の平均年齢は72.5歳でPSA値の平均値は46.5ng/mlであった。PSA値を年代群別に癌とBPHを比較検討すると年代群が高くなるにつれて高値になる傾向がみられたが年代群別では有意差はみられなかった。しかし、癌とBPHでは各群で有意差を認めた。生検結果を基準にみたMRIの正診率は84%、感度96%、特異度76%、陽性的中率73%、陰性的中率95%と高い診断能が得られた。また拡散強調画像が可能であった前立腺癌部のADC値は平均0.97×10-3mm2/sec、正常部のADC値は1.57×10-3mm2/secであった。<考察>前立腺は生検後の出血によって前立腺の信号強度は修飾され、しかもその影響が長く続くことが知られている。これらの信号変化は読影の妨げになるだけでなく、偽病変の原因となり病変の検出能をも低下させる。そのためMRIは生検前に撮像することが推奨されるが、今回の検討でかなり精度の高い診断が可能であることが認められた。また、Gdダイナミック撮像やADC値を測定することにより、より精度が増すと考えられる。さらにMRIは検出能だけでなく皮膜外浸潤や隣接臓器浸潤などの検出も可能で治療法を選択するためにも必要不可欠な検査であると考えられた。ただし、MRIで強く前立腺癌が疑われたにもかかわらず生検でBPHと診断された症例があることやMRIで癌と良性病変との鑑別が困難な場合もあったことより十分に経過観察し今後の検討課題としたい。
著者
川原田 康
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.515-522, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
9

我々は分類不能癌と微小浸潤型腺癌,上皮内腺癌の異なる病理像の三重多発肺癌を経験したので報告する。症例は71歳男性。S状結腸癌術前の胸部CTで両肺の結節およびすりガラス結節(ground glass nodule:GGN)を指摘されていた。増大がなく経過観察されていたが,7年目のCTで左肺下葉の空洞性結節が壁肥厚を来たし悪性の可能性が否定できず。2か月後のCTで急速に増大あり,また左肺門リンパ節も急速に増大し,cT2aN1M0,stage ⅡBと判断した。手術を施行したが,左肺門リンパ節が気管分岐部および左主肺動脈まで浸潤しており,左肺全摘術を行なったが完全切除はできなかった。病理結果から左肺門部腫瘤は分類不能癌,左肺下葉の空洞性病変は微小浸潤型腺癌,左肺上葉のGGNは上皮内癌の結果であり,同時性三重多発肺癌と判断した。本症例では手術が予後の延長には寄与しなかったが,文献的には同時性多発肺癌に対して根治切除を行なうことで良好な予後が得られた症例も報告されている。画像所見から安易に多発肺転移と判断せずに,同時性多発肺癌である可能性も考慮した治療選択が必要であると考える。
著者
森下 啓明 坂本 英里子 保浦 晃徳 石崎 誠二 月山 克史 近藤 国和 玉井 宏史 山本 昌弘
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.120, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例> 61歳男性、既往歴に脳梗塞がある。アレルギー歴なし。 平成17年10月29日昼頃、自宅近くの山林で採取した白色のキノコ約20本を調理して摂取した。同日20時頃より腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出現したが自宅で経過観察していた。10月31日には経口摂取不能となったため、当院救急外来を受診。受診時は意識清明、バイタルサインに大きな異常はなく、神経学的異常所見も認めなかった。しかし、血液検査に於いて肝機能障害、腎機能障害を認めたことからキノコ中毒を疑い緊急入院となった。 患者の持参したキノコの特徴および、経過(消化器症状に続発する肝機能障害)よりドクツルタケ(アマニタトキシン)中毒を疑い、日本中毒センターに問い合わせを行った上で治療を開始した。補液、活性炭投与(25g/回、6回/日、2日間)、血液還流療法(2日間)、ペニシリンG大量投与(1800万単位/日、2日間)を施行し、肝機能障害は改善傾向、第26病日には正常化した。また、第7病日より急性膵炎を発症したが、メシル酸ガベキサート投与などを行い第28病日には改善したため、平成17年12月26日退院となった。 入院時に採取した血液、尿および持参したキノコは日本中毒センターに送付し、分析を依頼している。<考察> ドクツルタケ、タマゴテングタケなどに含まれるアマニタトキシンは、ヒトにおいては約0.1mg/kgが致死量とされており、日本におけるキノコ中毒の中で最も致死率の高いものである。急性胃腸症状とそれに続発する肝機能障害が典型的な経過であり、肝不全が死因となる。本例は典型的な臨床経過よりアマニタトキシン中毒と診断したが、ドクツルタケでは1から2本で致死量となることから、今回摂取したキノコは比較的アマニタトキシン含有量の少ない種類であったものと推測された。治療法としては腸肝循環するアマニタトキシンを活性炭により除去すること及び対症療法が中心となり、解毒薬として確立されたものはない。血液還流療法が有効とする報告もあるが、未だに確固たる証拠はない。ペニシリンG大量投与によってアマニタトキシンの肝細胞への取り込みが阻害されることが動物実験によって確認されているが、臨床における有効性は確立されていない。その他、シリマリン、シメチジン、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン等が使用されることもあるが、いずれの有効性も未確立である。 本例では活性炭投与、血液還流療法、ペニシリンG大量投与を行い、肝機能障害を残すことなく生存退院に至った
著者
永美 大志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.681-697, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
76

農薬による慢性的人体影響は,神経・精神障害,臓器障害,発癌,出生障害,発達障害など多岐に渡る。今回筆者は,出生障害について,近年の内外の文献を収集し,総括した。 出生障害については,出生児欠損,流産,死産,早産,出生体格の低下,出生性比異常について近年の農業用農薬使用,住居近傍での農薬散布,住居内での農薬曝露,有機塩素農薬残留との関係を検討した報告が欧米を中心に多数あった。それぞれの影響について過半数の報告が関係を認めていた。出生時欠損については,全般について関係が認められた報告が多く,無脳症など特定の欠損についても報告があった。尿道下裂・停留精巣については,DDT類よりはむしろ,クロルデン類,農薬暴露全般との関係が認められていた。 一方,東南アジア,南アフリカで行なわれた,2つの地域における研究からは,農業農薬暴露と出生時欠損,流産との間に強い関係が見出されていた。熱帯・亜熱帯地域の発展途上国では,農薬用防護具の使用が,気候的にまた経済的に困難であり,農薬暴露が多いことも推察され,これらの知見を検証する疫学研究が求められる。同時に,低毒性農薬への移行,農薬暴露の低減のための施策,活動も求められよう。さらには,欧米でも都市部および農村部の低所得マイノリティーについて,有意な危険度がみられているようで,農薬による人体影響についても社会経済的な因子が重要と推測された。 残念ながら日本国内では疫学的研究が極めて少ないのが現状である。出生障害は,農薬のヒトへの影響の中でも重要な位置を占めると考えられ,農村医学会として取り組むべき課題の一つといえよう。また,東南アジア地域における農薬曝露と慢性影響の疫学調査,低毒性農薬への移行,農薬暴露を低減させる活動が推進されるために,日本農村医学会も貢献すべきであろう。