著者
小柳 浩子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.470, 2011 (Released:2012-02-13)

<はじめに>リンクナースは、臨床現場(以下現場)において、感染対策の実践モデルとなるとともに現場の現状を把握し問題提起を行うなどの感染対策を推進するうえで重要な役割がある。その役割を担うためには、感染対策の基礎知識の習得が不可欠であり、リンクナースへの教育は院内感染対策上重要である。当院では、リンクナースの感染対策の知識の習得は、自己学習など本人の努力に任せている。そのため、感染対策の知識に個人差がみられた。そこで、「感染対策の実践モデルとなる」、「現場の現状を把握し問題提起できる」を目指し、リンクナース育成教育(以下勉強会)を開始した。その試みを報告する。 <方法>1.月1回開催する看護部感染対策委員会の時間を活用し、15分間の勉強会を実施 2.講義内容は、感染対策の基礎知識が習得できるよう10回に系統だて構成 3.毎回の資料に前月の復習問題をつけ、講義前に解答する 4.10回の勉強会終了後、小テスト、アンケートを実施 <結果>勉強会は、委員会の時間を活用したことで、ほぼ全員参加。アンケートでは、全員が「リンクナースとして勉強会は役にたった」、「今後も勉強会を続けた方が良い」と回答。また、半数が、「勉強会の内容を部署のスタッフへ時々伝達していた」と回答しているが、「他のスタッフへの伝達が難しい」という意見もあった。事前に資料を配布していたが、予習や復習問題の取り組み率が低いことも明らかになった。 <結論>1.系統だてた教育により、感染対策の基礎知識が得られた。2.基礎知識を習得することで、リンクナースとしての責任感や役割を認識するきっかけになった。3.得た知識を実践に活かせるように継続的な教育と活動のサポートが必要である。以上のことが再確認できた。今後も、知識の向上を目指し勉強会を継続していきたいと考えている。
著者
服部 晃 服部 麗波 田邉 直仁 岩田 文英
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.650-660, 2015

東日本大震災の1年後に行なった本アンケート調査 (7,811回答, 男女比: 1.9, 14~91歳) で, 被災の影響がターミナル (ケア) 意識に現われているかどうかを, 検討した。 被災の有無を問うと全体で約11%が直接的被害を受けていた。高被災 (約55%) 地 (福島, 茨城県) と周辺3県 (秋田, 新潟, 長野県) (被災14.5~3.2%) における, 被災者と非被災者の4群について, 回答者特性およびターミナル意識に関する12質問の結果を比較した。また被災の精神保健面の解析や現状を対比した。 高被災地では被災者群の非被災者群に対する陽性要因は女性, 若年で, 女性に限ると看護 (看) 学生, 医療・福祉 (医福) (職) であり, 男性に限ると医福のみであった。男女比較では, 女性は一般 (職), 看学生が多かった。 質問に対する被災者の所見に男女の違いがあった。男性では被災により, &ldquo;日常宗教あり&rdquo;, &ldquo;ターミナルケアよく知る&rdquo;, &ldquo;本人告知が望ましい&rdquo;, そして&ldquo;麻薬十分に使用する&rdquo;, &ldquo;ターミナルで宗教家に会う&rdquo;, という希望が増えた。女性では, %ldquo;最後の場所は自宅で&rdquo;が増加したのみであった。 最後の所見について, 全体集計を再検討すると, もともと, 男性に比べ, 女性, 特に壮年期の一般職の女性は, 自宅希望率が抑制されていた。今回の所見は被災がその抑制を解いたことを示した。精神面における被災の誘導要因には性 (女性), 場所, その他があり, 今回の結果との共通点も推定される。 結論: 被災体験は今回調査したターミナル (ケア) に関した意識の一部に影響を与えた。性差の理由や機序, 今後の経過, 対策があるか, などには課題が残る。
著者
武井 貴裕
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.444, 2010

安城更生病院は、平成21年7月よりDPC対象病院となった。当初の試算にて出来高請求金額とDPC請求金額には大きな隔たりがあった。DPCでは、入院期間内に従来の医療の質を維持しつつコストを抑えた医療の組み立てが要求される。当院におけるDPC導入への取り組みについて述べる。DPCを導入する為の病院の方針として、「医療の質の維持」、「収入の確保」この2つを決定した。この方針の下、当院のDPC導入への取り組みは、大きく分けて_丸1_全職員周知活動、_丸2_収支分析、_丸3_全職員収支分析報告、_丸4_DPC対応型クリニカルパスの作成です。周知会にて、DPCへ移行した場合の当院の現状、改善策の必要性について全職員を対象に説明を行った。その中で現状のままDPCへ移行した場合に年間で約4億円の減収となる事を示した。その結果、全職員に危機感が現れ、DPC導入は全職員で取り組むべき課題であると認識する結果となった。医師に対しては、各診療科のカンファレンスを訪問し、DPC導入した場合に医療の抑制は行わない事、診療上必要な行為は施行してもらう事を説明した上で適正な改善策の実行やクリニカルパスの見直しを依頼した。 結果としては減収と予想されていた収支がDPC導入後には増収となる結果であった。その要因としては、平均在院日数の短縮、病床利用率の維持、費用として計上される診療行為の外来移行と適正化、DPC対応型クリニカルパスの作成、コーディングの精度向上、全職員への周知が挙げられる。特に全職員への周知は一番重要であったと考える。DPCを導入するにあたり一部の事務員がDPC制度を理解し導入を進めていくのではなく、全職員がDPC制度を理解し同じ方向性を持ち、協力体制を構築していかなければ安城更生病院でのDPC導入は不可能であったと考える。その協力体制を築けた事が医療の質を保ちつつ収入の確保に繋がったと考える。
著者
安水 洸彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.42, 2008

今日の産科医療の危機的状況すなわち産科医師の減少と、それに伴う産科医療施設の相次ぐ閉鎖は、「産科の崩壊」として社会問題にまでなって来た。この経過で重要なことは、産科崩壊が地方自治体病院から始まったという事実である。二次救急施設として地域医療を支えている自治体病院での産科診療の廃絶は、地域住民に与える影響が大きく、医療に対する不安と行政に対する不信を生じる。埼玉県草加・八潮地区の中核病院である草加市立病院も、医師の退職と大学からの医師派遣中止により、平成17年4月に産科診療と婦人科手術を停止した。産科再建の依頼を受けて、私が着任したのは平成19年4月であったが、草加市と病院当局の努力により順調に医師が確保でき、平成19年10月には産科診療を再開できた。現在は月50-60例の分娩を管理している。この経験をもとに本ワークショップでは、自治体病院の産科維持に最優先事項となる医師の確保につき私見を述べたい。<BR>産科医の雇用:従来、自治体病院の医師派遣は大学の講座(医局)に依存していた。しかし現在では、「大学は地域医療に対し何らの責任を有しない」というのが一般的見解となり、大学が優先的に教室員を派遣するセンター病院以外の病院では、医師の雇用は個人的人脈、人材派遣会社、雑誌やインターネットでの募集広告などに頼らざるを得ない。これらの方法による募集は医局依頼に比べてかなりの手間はかかるが、病院自体の判断で有能で持続性のある医師を雇用できるというメリットはある。ただし、勤務条件の明示は必須なので、自治体・病院当局との綿密な事前検討が肝要となる。<BR>産科医の維持:稀少職扱いでの産科医の給与増額が話題となっているが、高額な給与設定は、自治体病院ではまず不可能である。むしろ、勤務手当の適正化と労働環境の改善に配慮すべきである。前者の具体例としては、当直手当の増額、分娩手当、オンコール手当の支給、時間外勤務の上限撤廃などが、また後者としては就業、採用における年齢制限の撤廃、個人的事情を考慮した柔軟な勤務体制の設定、当直明け勤務の減免、学会出張や年休の確保、託児所の設営などが挙げられる。<BR>今後の展望:都立病院での産科医待遇改善、周産期医療費の増額、無過失医療保障制度の導入・異状死届出義務の改定への動きなど、行政面から産科医減少防止のための具体策が提示されているが、産科専攻志望者は増加していない。また産科医養成対策として医学部入学時の稀少科枠や奨学金制度の設置などが検討されているが、これらが実現したとしても、効力を発揮するのは早くて10数年後である。したがって、この10-20年間は乏しい人的資源の有効活用を図るしかない。その妙案として提示されている病院の集約化は、大学間協力の難しさと長距離通勤などの勤務者の負担増のため、未だ成功例は少ない(産科閉鎖による結果的集約は多数あるが、この場合は他病院医師に過剰負荷を与える)。そこで現時点では、医会と学会が協力し、産科診療に従事している医師の負担軽減案を案出するべきである。例として以下の方法が考えられる。<BR>(1)医会のリーダーシップのもとに、地域の二次医療病院のオープンあるいはセミオープン化を推進し、診療所経営医師の病院診療(当直も含め)への参加を奨励する。<BR>(2)学会(地方部会)のリーダーシップのもとに、産科診療を行っていない病院の勤務医に地域の産科診療機関での日当直を奨励し、紹介を行う。
著者
木村 裕美 西尾 美登里 古賀 佳代子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.325-333, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
30

地域で生活する元気高齢者の抑うつの実態を明らかにし,生きがい感などとの関連要因を検討した。対象はA大学で行なわれた市民公開講座の参加高齢者213名に,基本属性,高齢者うつ尺度(Geriatric Depression Scale:以下GDS),高齢者向け生きがい感スケール(K-1式)(以下,生きがい感スケール),高齢者ソーシャルサポート尺度(以下,ソーシャルサポート尺度),基本チェックリスト(以下,フレイル尺度)について自記式質問紙調査を実施した。統計処理は,GDSで4点/5点をカットオフ値とし,4点以下をA群,5点以上をB群として比較した。結果,対象者は回答に欠損が1つ以上あった者を除く185名が有効回答であった。A群80名(男性35名,女性45名),B群は52名(男性14名,女性38名),平均年齢で有意な差が認められた。トータルサポート,生きがい感スケール下位尺度の自己実現と意欲,生活充実感,生きる意味,存在感でA群が有意に高かった。重回帰分析による抑うつに影響をおよぼす因子として,生活充実感(β=-0.36),健康状態(β=0.24),生きる意欲(β=-0.17),年齢(β=0.24),ネガティブサポート(β=0.18),健康習慣(β=0.12)が認められた。決定係数R2乗は0.52,調整済みR2乗は0.49であった。地域高齢者の抑うつ状態は,自己実現や生活充実感,生きる意欲,存在感が関連することが示唆された。
著者
荻野 朋子 篠崎 恵美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.448-459, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
22

認知症を抱える人が自分らしさを発揮する機会は重要である。認知症治療の考え方には,行動・心理症状の治療には,非薬物療法を薬物療法より優先的に適用するという原則がある。しかし,非薬物療法のエビデンスレベルは弱い。本研究では,写真療法を認知症高齢者に実施し,自律神経のバランスと揺らぎを整えることへの有効性を検証した。写真療法は,既存のプログラム(写真撮影,写真選択,アルバム作成,発表会)を基に実施した。軽度・中等度アルツハイマー型認知症高齢者10名には,認知症に配慮したプログラムを週1回計8回実施した。また,写真療法による自律神経データの変動を確認するために,認知症のない健康高齢者5名に,既存のプログラムを2週に1回計4回実施した。実施前・中・後に指尖脈波を測定し得られた自律神経バランス(Autonomic Nerve Balance:ANB)と最大リアプノフ指数(Largest Lyapunov Exponent:LLE)について,認知症高齢者各66データ,健康高齢者各20データを分析した。認知症高齢者のANBは,緊張状態の割合が実施前40.3%から実施中27.3%へ減少し,バランス良好は20.9%から36.4%へ増加した。LLEは,揺らぎが小さい(環境への適応力低下)状態の割合が実施前53.3%から実施中42.4%へ減少し,バランス良好は37.9%から53.0%へ増加し,健康高齢者の結果より顕著であった。以上より,認知症高齢者への写真療法には,自律神経のバランスと揺らぎを整える可能性があることが示唆された。
著者
阿部 真由子 中島 まゆみ 木村 郁美 中野 はる代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.96, 2009 (Released:2010-03-19)

〈はじめに〉年間平均10件の頸部郭清術が行われている。 今回,頸部リンパ節郭清を受けた患者から,退院間近に頸 部から肩,上肢にかけての疼痛と上肢の挙上困難の訴えが 聞かれ,また,家族より退院後の生活についての不安が聞 かれた。このことから,早期からの退院指導が必要である と感じ,頸部リンパ節郭清術後の退院後の患者の精神的・ 身体的・社会的苦痛について調査し明らかにした。 〈研究方法〉頸部リンパ節郭清を受け,現在腫瘍外来に通 院中の20名に対し,半構成質問紙法で調査を行った。 倫理的配慮では研究の主旨説明,プライバシーの保護, データを研究以外に用いないことを書面で説明し,署名で の同意を得た。 〈結果〉予測されていた肩,上肢の疼痛,可動域制限から 手に力が入りにくく,フライパンを握りづらい,運転時な ど後方確認などの振り向き動作が難しかったなどの日常生 活の苦痛が聞かれた。 〈考察〉患者の生活背景や性別により,個別の苦痛などが ある。入院中には気付かなかったことが退院後に明らかに なることがあり,早期から患者のライフスタイルに合わせ た指導,助言が重要である。退院の方向性がみえ医師と相 談した上で試験外泊を行ってもらい,患者・家族が不安を 軽減し退院できる援助が必要である。 〈おわりに〉今回インタビュー調査した事で退院後の患者 の現状を知る事ができた。スタッフ各々が患者の状態を把 握し,個別性を考えた指導が出来ることが重要である。そ のためにはアンケート結果を基にしたパンフレットを検討 していく必要がある。
著者
太田 祐介 長橋 究 小島 康裕 上原 博和
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.530-534, 2021

72歳,女性。大動脈弁狭窄症による心不全のため大動脈弁置換術を予定していたが,血小板減少を認めヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型と診断された。手術の延期が考慮されたが,循環動態が不安定であったため予定通り大動脈弁置換術を施行した。<br> 手術開始時にアルガトロバンを4μg/kg/minで持続静注を開始し,人工心肺開始時にメシル酸ナファモスタットを30mg/hで開始した。活性化凝固時間の推移を確認しながらアルガトロバンの投与量を調節した。大動脈遮断解除後,アルガトロバンの投与を終了し,大動脈遮断解除の1時間後に人工心肺を終了した。止血に難渋し人工心肺終了から7時間後に手術を終了した。手術時間12時間21分,人工心肺時間3時間10分,出血量3444mL,輸血量6400mLであった。<br> 本症例は,過去の症例報告と比較してアルガトロバンの投与量は少なかったが,人工心肺終了後の出血量を減らすことはできなかった。
著者
伊藤 しげ子 井後 一夫 水野 章 諦乗 正 河内 嘉文 伊藤 恭子 伊藤 雅彦 川瀬 朋子 小寺 久子 三和 静代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.27, 2007

_I_、はじめにいなべ総合病院は三重県最北に位置する220床の病院です。診療圏人口は約71,000人で地域の中核病院としての役割をもっている。当院は平成14年9月、新築移転をした。しかし、移転当初最新の医療設備、優秀なスタッフが揃っているのにも関わらず、地域の中では病院機能の理解はなかなかなされず、病院の活性化はならなかった。そこで、以前より活躍していた院内ボランティアの方にまず病院の機能を理解してもらうために「ボランティア委員会」を立ち上げ、年間2回の研修会と3回の委員会の開催をした。また、病院祭の際には、餅つきやアンケートの手伝いをしてもらい、職員と一体となって地域の人へのアピールを行ってきた。地域の人で作るボランティアの方の地域への宣伝効果は大きなものがあり、現在外来患者数880人(移転当初750人)、入院稼働率92%(移転当初88%)と活気ある病院になってきた。その経過を報告したいと思う。_II_方法1、ボランティアグループ1)ほほえみの会 100名登録 (玄関患者介助)2)ほほえみの会ひまわりグループ8名 (小児科外来絵本読み聞かせ)3)敷地内草取りボランティア130名 (シルバー)4)敷地内草取りボランティア5)小児科病棟絵本読み聞かせ 1名2、活動内容1)毎日2~3名が玄関で患者介助2)第1月曜日に2名が実施3)毎月1日と10日に敷地内の草取り実施4)年1回敷地内の草取り実施5)毎月第_I_土曜日に実施3、病院祭毎年開催する病院祭に、餅つき、アンケート聴取の手伝いやイベントコーナーへの参加など病院行事への自発的な参加を行っている。4、研修会年2回実施_III_、結論最初は20名ほどから始まったボランティア活動は、現在230名を超える大きな輪になった。ボランティアの人が「自分たちが支えている病院」という気持ちを持ってもらうことこそが病院活性化につながると考え、研修会、委員会、病院祭の参加とまずは病院へ足を運んでもらうこと。もう1つはボランティアの方が地域住民の代表者となり、病院への要望・意見を言ってもらい病院改善を行ってきた。年2回開催する研修会には、院長、事務部長、看護部長、外来師長が必ず出席して、常に病院の方針を話し理解していただき、考えを共有するようにした。また、ボランティアからの要望は最大限取り入れた。そうしたことで徐々に「自分たちの病院」という思いが広がっていき、その思いは地域の人にも広がっていった。移転後5年目を迎えた現在、救急車搬送率、外来患者数、入院患者数、健康診断受診者数等全てにおいて右肩上がりの成績を収めており、まさしく地域とあゆむ中で病院の活性化はなされてきたと感じている。
著者
柴田 純子 津谷 浩子 山城 洋子 浪岡 佳奈子 岩川 正子 簾内 陽子 久保 達彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.186, 2008

I.はじめに<BR>昨年、全職員(臨時職員・委託業者を含む240名)に対し、救急担当医師によって一次救命処置(以下、BLS)の講習が開催され、積極的な学習の必要性を感じると同時に救急への意識が高まってきた。さらに、二次救命処置(以下、ACLS)の講習会が行われるなど救急対応が確実に行える事が求められてきた。今回、BLSからACLSと一貫した講習会を受けて看護師の意識の変化・知識の向上など講習会の効果にについて知り、継続的支援の方向性を見いだす事が出来たので報告する。<BR>II.研究方法<BR>1.研究対象:当院でBLS・ACLS講習会を1回受けた看護師121名(アシスタントは除く)<BR>2.研究期間:2007年4月~10月<BR>3.研究方法<BR>1)講習会受講した看護師121名に対し質問紙調査<BR> 2)質問紙調査はAHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2005に準じBLSとACLSに関して各13項目とした<BR>4.データ分析 統計処理(エクセル)<BR> III.結果<BR> BLSについての質問紙調査結果、「急変時の意識・呼吸の確認ができると思う」「急変時の応援要請ができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は100%という結果であった。「効果的な」心臓マッサージができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は89%「AED取扱いができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は72%であった。ACLSについての質問紙調査結果、「心電図が取れると思う」「薬剤投与が正確にできると思う」「フラットライン・プロトコル適応基準が理解できたと思う」の4項目は「はい」と答えた人は、平均57%と不安の残る結果がでた。<BR>IV.考察<BR> 心肺蘇生はチーム医療で行われ看護師は役割を分担し、医師と共に救命行為を円滑に行う事が大切である。そのため、医師・看護師が統一されたプロトコルを理解しなければならない。看護師は急変の第一発見者となる機会が多くBLS習得は必然であると考えられる。調査結果よりBLSは、意識・知識を高める事が出来たと考えられるが、ACLSは4項目で出来ると答えた人は約50%であった事から、1回の講習会では習得は困難であったと考えられる。しかし、自分の弱点を明確にする事ができた良い機会であったと思われる。今後は各部署で実技訓練実施・講習会など、継続的に学習する事が重要である。河本らは「救急処置は反復訓練が重要であり、今後も患者急変時に自信を持って行動できるよう定期的に知識・技術の確認が行える場の支援が必要」と述べている。全体を通して講師・アシスタントの緊張させない和やかな雰囲気とわかりやすい指導が大きな成果を挙げたと考える。<BR>V.結論<BR>1.救急への意識が高まり院外の講習会参加が増えた<BR>2.各部署での実技訓練の実施が必要 <BR>3.定期的な講習会の開催が必要<BR>
著者
瀬能 美代子 鈴木 芳江 竹村 晶子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.265, 2006

<b><はじめに></b>日本の女性雇用者数は増加傾向にあり、働きつつ妊娠、出産、育児を続ける女性をサポートする法整備がなされている。しかし、これらのことが女性の就労の妨げとなっていることは少なくない。今回当院で分娩した褥婦の就業状況及び法制度の知識、利用状況を知り、看護者としてどのような援助が必要なのかを考えるため、アンケート調査を実施した結果、法的制度の周知度と利用状況などを知ることが出来たので、ここに報告する。<br><b><研究目的></b> <BR>当院産婦人科外来利用者を対象に労働基準法第6章の2の知識及び、利用状況について質問紙法を用いて調査し、その実態の把握を試みる。<br><b><研究方法></b><br> (1)期間<br> ・平成17年9月-平成17年11月の2ヶ月間<br> (2)対象<br> ・当院産婦人科外来に産後1ヶ月健診に訪れた褥婦100名<br> (3)方法<br> 労働基準法第6章の2の知識と利用状況を把握するためのアンケ?トを作成し、同意のもと記入後、手渡しにて回収。統計をとる。<br><b><倫理的配慮></b><br> アンケートは無記名とし研究目的と共にこの研究以外に使用しないことを説明し同意を得て実施。<br><b><結果></b><br>育児担当者は母(自分)97名であり、妊娠発覚時の就業者は73名である。<br>(1)雇用形態<br>正社員30名(41%)、準社員8名(11%)、パート21名(29%)、アルバイト7名(10%)、事業主(自営)3名(4%)、その他4名(5%)<br>(2)妊娠発覚後の就業状況仕事を辞めた46名(63%)、産後休暇をとり継続2名(3%)、産前・産後休暇をとり継続4名(5%)、産前・産後・育児休暇をとり継続18名(25%)、休暇をとらずに継続3名(4%)対象者全員に働く女性の妊娠・出産育児に関する制度について調査した(表1)利用状況(予定を含む)(表2)<br><b><考察></b><br>産前の就職状況は73%に対し、妊娠中及び産後仕事を辞めたのは63%であった。青木1)らは、「わが国においては、近年女性の社会進出が著しいものの、今なお男は仕事、女は家事、育児、という性(別)役割分担が根強いもの事実である」と述べている。育児の中心は母親であるとの結果からも、推測ができる。産前・産後休暇・育児休業の制度は6割強の周知度に対し、その他の制度に関しては1_から_2割程度の周知である。「産前休暇」「産後休暇」「育児休業」については制度を利用しようとする状況があるものの、利用者は周知度よりも低いことがわかる。(グラフ1)。つまり知っていても利用できない現状であるとわかる。正職員以外の就業者が5割以上いることから雇用形態によっては制度が利用できないことも考えられる。<br> <b><おわりに></b><br>今回の調査により法的制度の周知が進んでいない現状が明らかになった。そこで、私達看護者が法的制度の知識普及に努め、妊婦、産婦が働きながら安心して妊娠、出産、育児を両立できるよう支援していくことが今後の課題といえる。<br> <b><引用文献></b><br>1)助産学大系5 母子の心理・社会学 青木康子 加藤尚美 平澤美恵子p99、p39、<br><b><参考文献></b><br>1) 厚生労働省平成17年3月28日「平成16年版 働く女性の実情」<br>http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/03/h0328-7a.html#zu1-9<br>2) 国民衛生の動向2003年
著者
小泉 武夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.835-839, 2013-03-31
被引用文献数
1
著者
坂本 考弘 木村 光 矢崎 善一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.860-863, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
3

急性冠症候群は致死的疾患の代表的疾患であるが, 救急外来を受診した患者の1~8%は帰宅させられている。その原因の一つとして無痛性心筋梗塞が挙げられるが, 急性冠症候群の25%は胸痛以外が主訴で来院すると言われており, 悪心嘔吐のみの主訴は1%程度である。嘔気嘔吐のみの症状にて内科外来受診し, 前壁中隔心筋梗塞と診断され冠動脈バイパス術の適応となった1例を提示し, 本症例について診断学を中心に文献的考察を含めて検討した。高齢者はリスク要因が少ないからといって急性冠症候群を否定できず, 本症例のように他の随伴症状を認めない場合には鑑別に挙げる必要がある。鑑別に挙げることで致死的疾患である急性冠症候群の見逃しを防ぐことに繋がると考えられる。
著者
杉浦 利江 高橋 由佳 坂本 忍 稲森 美穂 山田 浩昭 米積 信宏 森下 博子 前田 美都里 川合 智之
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, 2018

安城更生病院(以下当院と略す)は,病院のスタッフ全員が,将来ビジョンを見据えた地域の病院となるためのプロジェクトに取り組んでいる。医事課を担当する病院職員は,「地域住民の健康と幸福」というスローガンの下,このプロジェクトに関わっている。達成に向けて3つの目標,すなわち1.未収金管理における回収の改善,2.委託金削減,3.委託取引件数の減少,を設定した。具体的な内容は,1.コンビニ決済の利用による未収金の回収,2.限度額適用認定証の周知および国民健康保険対象者の高額療養費貸付制度の推進による高額療養費の回収,3.無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援である。コンビニ決済の利用による未収金の回収額は約9万円/月であり,無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援により約8万円の回収が可能であった。さらに,限度額適用認定証利用の周知および高額療養費貸付制度の利用の推進は,年間約1,700万円の回収額を生みだした。今回の取り組みにより2016年の4月から8月の委託金の平均月額は890,188円で,委託件数は12件,2017年にはそれぞれ305,615円,10件へと削減することができた。本プロジェクトは,患者の自主的な医療費の支払いを促し,回収額の増加並びに委託金や委託取引件数の削減をもたらした。

1 0 0 0 OA がんの告知

著者
武藤 輝一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.777-783, 1996-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

Truth telling to the cancer patients (TTCP) is a part of informed consent (IC). The name of IC was firstly used in a judgement of the Court of Appeal of California in 1957 and then in Helsinki Declare of the 18th Congress of World Medical Association. The core of IC is “self-determination” in every medical treatment including diagnosis and therapy. Self-determination should be respected to the utmost in TTCP.The rate of TTCP is more than 90% in USA and northern countries of Europe, but slightly higher than 20% in Japan. However, Dr. M. Sasago who is a surgeon of National Cancer Center Hospital in Tokyo has reported the high rater of TTCP (97.1%).In attitude of doctors, devices of manner in TTCP such as a stepwise truth telling are necessary in order to prevent or reduce shock of cancer patients following TTCP. In attitude of cancér patients, they are recommended to have usually their own views of life and thanatopsis or religions to be able to receive TTCP without perturbation.Patient's prepardness confronting to cancer and considerable support of doctor, nurse and family are necessary following TTCP.In conclusion, it is stressed that doctors have to endeavor to tell the truth to the cancer patients considering thinkings of patients and families as possible they can.
著者
荒川 房江 秋山 ますみ 豊田 梓 高橋 恵美 阿瀬川 満枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.172, 2005

〔はじめに〕<BR>当院では、整形外科で牽引手術台を使用する際バスタオルで前腕を巻き、離被架につり下げる方法で長時間上肢の固定を行っていたが、いくつかの問題点が生じていた。そのため問題点を改善する目的で手台を作成したが、痛みを訴える患者があった。その痛みの原因を腕の太さと手台のサイズの不一致と考え、数種類のプロトタイプを作成し有効性を検証した。<BR>〔研究方法〕<BR>1.対象:手術室看護師6名<BR>2.手台の作成:3種類(S/M/L)のソフラットシーネを約40cmのところで屈曲させ肘関節部に約10cm四方の穴を開け、周囲を綿包帯で覆い、離被架につり下げるようにした。<BR>3.手台の実施:対象者の肘関節部の太さを測定し、3種類の手台で1時間体位を保持し、10分毎に痛みのレベルを4段階で評価した。<BR>〔結果および考察〕<BR>Sサイズの場合は腕の太さにかかわらず全員が時間の経過とともにレベル1-3の痛みを訴えている。その原因として最も多かったのは圧迫による痛みでありそのことにより体位の維持が出来なかった。よって肘関節の周囲が22.0cm以上の人には不適切と考えられる。Mサイズの手台では、腕の太さが22.0cm-23.0cmの人はほとんど痛みがなく、体位固定に安定性が見られた。一方27.5cmの2名には圧迫によりレベル2の痛みの出現が見られたことから、22.0cm-23.0cmの人にはMサイズの手台が適切であったと考えられる。Lサイズの手台では22.0cm-23.0cmの人には手台が大きすぎることで腕の引き抜きやずれが起こり、レベル2-3の強い痛みが出現し、固定の安定性もなく術者の視野確保の意味でも不適切であったと考えられる。27.5cmの2名には痛みの出現がなく体位を保持できたことから手台が適切であったと考えられる。腕の太さと手台のサイズの関連性を考慮したことにより、個々のニーズに応じてより安全安楽を考えた体位固定の工夫が出来たと考えられる。<BR>〔終わりに〕<BR>今回の研究では、対象人数が少なく腕の太さにバラつきがなかったため、Sサイズが適切とされる腕の太さやM・Lサイズの境界線といった細かい基準を明らかにすることが出来なかった。今後さらに研究を進めることでスタッフ間での統一を図り、いかに効果的な固定方法でも長時間の同一体位は、患者にとって精神的なストレスになることも考慮し、より安全で安楽な体位固定が出来るよう検討していきたいと思う。
著者
橋本 澄春 神林 ミユキ 原 靖子 小瀧 浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.230, 2009

〈緒言〉老人保健施設併設の在宅介護支援センター職員から急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)へ転職して約1年が経過し,入院期間という限られた時間内での業務遂行に大きな戸惑いを感じていた。そこで,この1年を振り返り,急性期病院の職員として組織の利益を守りながら,患者・家族ができる限り不安を感じることのない短期退院援助の方法を模索した。<br>〈方法〉1年間で介入したケース50件の平均在院日数は,当院の平均在院日数の約4倍であった。この結果から,現在のMSW としての退院援助に,まだ短縮できる部分があるのではないかと考えた。日報やケース記録から,ケースごとに依頼までの日数,依頼から初回面接までの日数など援助過程を細分化し,それぞれの期間におけるMSWの援助内容が妥当であったかを確認した。<br>〈結果〉専門職として学んだケースワーク過程を展開し,社会資源の利用準備を行う援助過程の中に省ける部分はないため,退院援助をおける時間短縮することは難しい。しかし,地域における急性期病院の役割を果たすためには,スピーディーな退院援助はMSW の絶対的な使命である。そこで援助過程の短縮ではなく,効果的に資源を利用し援助期間を短縮する方法として,短期完結を可能とする援助方法の獲得,社会資源を円滑に利用するための準備,院内スタッフとのコミュニケーションの促進が有効ではないかと考えた。入院期間という限られた時間内で,患者・家族が退院の準備をする時間を多く確保するため,MSW・地域・病院などの資源を最大限活用したい。<br>〈考察〉入職時に抱いていたMSW のイメージは,「退院」に対する病院と患者・家族とのギャップを患者側の立場で埋めていく専門職である。病院という組織が直面している課題を知ることで,そのイメージを現実にする方法が少しずつ具体的に見えてきた。専門職として,また病院の職員として,一つずつ課題を達成することが,患者の利益を守ることになると信じて,日々の業務に励んでいきたい。
著者
飯村 真樹 鈴木 勝也 萩谷 恵二 寺門 正二 清水 秀昭
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.445, 2010

【はじめに】<BR>現在の病院運営は全国的に非常に厳しいものとなっている。思うように医業収益が伸びない状況であれば、それ以外の部分で対策を講ずることも必要である。当院で実際に運用している取り組みを紹介する。<BR>【経過】<BR>当院の所在する行方市でオムツを処分する場合、一般家庭から排出されれば一般ゴミとして処理されるが、病院から排出すると感染性医療廃棄物扱いとなってしまう。平成21年度における感染性医療廃棄物の処理費用 約970万円のうちオムツ処理代は約260万円、27%を占めている。少しでもオムツの処理費用を埋めるような対策が必要と考えた。<BR>【方法】<BR>これまでは入院患者家族にオムツを用意してもらっていたが、家族の了解を得た上で、農協の運営する病院内売店で用意したオムツを使用してもらうこととした。使用したオムツ代は枚数に応じて売店から患者へ直接請求し、入院会計精算時に院内の農協出張所で併せて支払っていただいた。売店には使用前のオムツを保管する倉庫を貸すこととし、払い出したオムツの売り上げ金額の20%を倉庫賃貸料として毎月徴収した。<BR>【結果】<BR>売店からは月平均7~8万円程度の倉庫賃貸料を徴収できている。オムツ処理代が減ったわけではないが賃貸料収入が単純計算で年間100万円程度得られた計算になる。オムツの処理費用を埋める対策として効果は十分であった。<BR>【考察】<BR>これまで患者家族からは「どんなオムツを用意してよいか分からない」「買いに行く暇がない」などの意見があったので導入後は好評のようだ。オムツ交換作業の負担も軽減しスタッフの評価も高く、また経費削減の意味でも効果は十分であったと思われる。ただし、月数千円から数万円にもなる棚卸差損を減らすことが今後の課題である。<BR>【まとめ】<BR>経費削減につながるような対策を今後も検討していきたいと思う。<BR>
著者
山本 愛 林 美恵子 飯田 智子 多田 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.75, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>術後の患者は、術前からの絶飲食、手術中の挿管による口腔内の乾燥、副交感神経遮断薬使用による分泌物抑制、また術後の発熱などによる不感蒸泄など、さまざまな要因で口渇が生じやすい。従来、当病棟では口渇時は水による含嗽をすすめている。しかし、術後口渇を訴える患者は多い現状にある。そこで今回、唾液の分泌作用・清涼作用のあるレモン酢に注目し、口渇への効果があるか検討した。<研究方法> 目的:口渇に対するレモン酢の効果を知る。 期間:平成17年12月1日から平成18年2月28日。 対象:全身麻酔下で消化器開腹手術を受けた、術後2から3日目の絶飲食期間の患者11名。 方法:1.患者11名に対し、レモン酢を40倍に希釈したレモン酢水(以下40倍レモン水)・50倍に希釈したレモン酢水(以下50倍レモン水)・水道水の3種類での含嗽を実施。実施後は、患者が口渇緩和になると感じた含嗽を行う。希釈倍数は、無作為に選出した看護師に2種類のレモン水含嗽を行い、40倍をすっぱいと感じ50倍をすっぱいと感じなかった結果から決定した。 2.含嗽後、アンケートに沿って聞き取り調査を行う。<結果>口渇は10名が感じ、口渇のなかった1名はレモン水含嗽を行うことで口渇だったことが分かったと答えている。2種類のレモン水含嗽で3名が口渇は残ると答え、「早く飲みたい」という意見が強かった。全員が50倍レモン水での含嗽を続けていた。水道水は、「味がなくすっきりしない」「口の中がすぐに乾燥する」、50倍レモン水は口腔内の潤いを感じたと全員が答えていた。50倍レモン水は、味覚において不快に感じた人はおらず、「すっきりする」「さっぱりして気持ちが良い」と全員が答えた。しかし、40倍レモン水はレモン特有の酸味が強くなり後味が悪くなると3名が答えた。また2名の患者が氷を入れて含嗽を行っており「すっきりする」「生き返ったようにな」との言葉が聞かれた。<考察>50倍レモン水で全員が口腔内の潤いを感じたことは、レモン酢に含まれるクエン酸や酢酸の唾液分泌効果によるものと考える。一時的とはいえ口渇への緩和につながったのではないか。今回、絶飲食を強いられた患者にとって飲めないというストレスが生じている。レモン水含嗽を行っても口渇が生じたことは「飲みたい」という意識が高まっているからだと考える。術後苦痛が強いなか、患者の言葉からも、口渇という苦痛を緩和させることができ、同時にストレスも緩和できたと考える。今回、すっぱいと感じる40倍レモン水で不快を感じたことから、レモン特有の酸味を強くすることは、術後の患者に刺激を与え不快を生じ逆効果とわかった。術後回復過程をたどる患者に、絶飲食中に爽快感を得る50倍レモン水含嗽は有効であった。また、氷を入れて含嗽を行っていることから、口渇緩和と温度の関係も調べていけたのではないか。<まとめ>1.50倍レモン酢水は、一時的な口渇緩和での効果がみられ、口渇という苦痛の緩和にもつながる。2.術後の患者には、40倍レモン酢水の強い酸味で不快を与える。