著者
増渕 吉一 杉田 恵 茅原 修 蛇沼 俊枝 梶 由依子 佐野 渉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.392, 2010 (Released:2010-12-01)

目的:適温での食事提供は温冷配膳車を使用する施設が約半数に達しているが、当院では保温食器利用の為、現状設備において適温での食事提供には問題がある。そこで今回、料理の仕上がり時刻や盛付・配食時間の設定(以下配膳管理)等の工夫により、さらに美味しく食べてもらえる事を目的に適温サービスを行い患者満足度の向上を目指したので報告する。〈BP〉方法:_I_2009年9月から1カ月間の料理の温度計測_II_常食喫食者47名を対象とした適温アンケートの実施_III_喫食時温度が主食60~75℃、主菜60~75℃、副菜10~15℃と料理別に適温の目安を設定_IV_配膳管理徹底後、配膳時間・喫食時間の時差による満足度の変化を調査_V_温冷配膳車のデモ機による食事提供時のアンケート調査〈BP〉結果:_I_料理の温度計測では、主食が盛付時66.5℃から喫食時52.2℃、主菜が63.9℃から39.3℃、副菜が17.5℃から19.5℃となった。_II_現状の温度に「不満」は36%の回答があった。_III_喫食時温度は、主食(米飯)が実施前平均54.6℃実施後平均62.9℃、主菜(シチュー類)が39.3℃から65.3℃、副菜(和え物類)が19.5℃から10.5℃と適温の目安に近づく事が出来た。_IV_配膳管理の改善後は、時差に関係なく90%「満足」との回答が得られた。_V_温冷配膳車デモ機を使用時の満足度は良好であった。「温かい物は温かく、冷たい物は冷たく食べられる事が嬉しい」との意見が得られた。〈BP〉考察:現状把握により盛付時温度と喫食時温度の変化が著しい事が分かり、適温サービス意識が強化した。適温の目標設定により配膳管理が充実し患者満足度が向上したが、気温の変化や病棟による配膳時間の時差等の影響を考慮すると、温冷配膳車の利用が安定した適温サービスに非常に効果的であった。今後も、適温での食事提供には機械に頼るだけでなく常に配膳管理の意識・改善を継続する事の重要性が示唆された。
著者
萬田 芙美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1045-1052, 1991-01-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

オクラ栽培に起因する皮膚障害について, 鹿児島県南部のオクラ栽培地帯における実態を現地調査した。オクラ栽培作業者89名のうち48名 (53.9%) がオクラによる皮膚障害を経験している。障害部位は, 腕 (43.8%), 手背 (35.4%), 首 (33.3%), 手指 (29.2%) など皮膚の露出部位に生じやすい。症状は, 収穫作業時は主に掻痒 (85.4%), 発赤 (45.8%) であり, 袋詰作業時は掻痒 (66.7%) のほか, 手指の指紋消失 (50.0%) や亀裂 (50.0%) がみられる0これらは, 適切な予防措置を講じない場合にはほぼ全員に発症し, またその発症は作業開始後まもなく出現する。オクラ爽果成分の皮膚貼付試験では, オクラ群 (12.4%) が非オクラ群 (3.4%) に比べ陽性率が若干高い傾向がみられた。これらの成績から, オクラ栽培に伴う皮膚障害は主にオクラの一次刺激作用によるものと考えられるが, オクラ成分によるアレルギー性接触皮膚炎の可能性も示唆された。
著者
柏木 慎也 相沢 充 黒佐 義郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.376-380, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
6

近年,手術創管理に関して,ガーゼドレッシング以外の方法がいろいろ開発されてきている。ダーマボンド®は,シアノアクリレートモノマーが水分を重合開始剤として短期間のうちに重合し,ポリマーとなり,硬化することを利用した合成皮膚表面接着剤である。整形外科領域の手術創に対してダーマボンド®を塗布することにより創管理に良好な結果を得たので報告する。対象は当科にて2001年6月から2002年5月までに行なった20例。方法は閉創の際に皮下縫合した後,創上にダーマボンドを3層で塗布する。結果は全例において創感染,創離開,出血,発赤などは見られなかった。特に副作用は認めなかった。関節可動部に使用しても問題は生じなかった。ダーマボンド®を3層塗布することによって,通常の皮膚縫合の3分の1の強度を得られる。ダーマボンド®が硬化したあとは水分を通さないので新たな細菌感染は生じない。術後早期の入浴も可能である。単価は1本2,300円。これまでに術後出血等の問題は起きていない。最近増加傾向にあるDay Surgeryにおいて十分使用可能と思われる。今後日本の医療体制が治療費の包括医療の方向へと向かって行くと,Day Surgeryが主流となり,それに対しても有効なドレッシングの方法であると思われる。ダーマボンド®の応用例としては外科や婦人科領域における腹腔鏡下手術,甲状腺手術,顔面の手術などがある。ダーマボンド®を使用することにより整形外科領域での手術創管理に対して良好な結果を得たので報告する。
著者
中西 京子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.147, 2007 (Released:2007-12-01)

〈緒言〉手術時の手洗いは感染防止の上で重要な行為の一つとされている。現在,術前の手洗いは滅菌水によって行なわれているが,諸外国では消毒薬と水道水による手洗いが行なわれているのが現状である。2005年2月医療法の一部が改正され手術時手洗いに水道水が認められた。当院手術室は築40年で建物に老朽化が目立つが,月2回の水道水の細菌培養検査と連日PDP法による残留塩素濃度測定を行い水道法に基づいた水質基準は満たされている。現状では、手洗いに滅菌水を使用しているが,今後,手術室新築に向けて手術時手洗いに,コストのかかる滅菌水を使用する必要性があるのか検討しなければならない。そこで、今回水道水と滅菌水を用い,2002年CDCガイドラインで推奨されたアルコール擦式手指消毒剤による手術時手洗い=ウォーターレス(ラビング)法よる手洗い後の手指のコロニー数をパームスタンプ法で比較した。その結果、両者に有意差は認められなかった。<方法・対象>1.水道水使用時の処理:使用前に水道水を1分程度流水し、その後蛇口のみ薬液消毒(0.5%クロルヘキシジン)に5分浸水。2.ウォーターレス手順:1)予備洗い:非抗菌性石鹸にて素洗い(爪ピック使用)2回1~2分。2)非滅菌タオルで拭く。速乾性手指消毒薬による消毒:_丸1_速乾性擦式製剤(クロルヘキシジン)にてラビング2回2~3分。_丸2_最後に両指先のみラビングする1分<合計4~6分>3.手指コロニー数測定方法:当院手術室看護師10名に水道水(A群)と滅菌水(B郡)でウォーターレス(ラビング)法にて手洗い施行。手洗い後の手指のコロニー数をパームスタンプ法にて検出した。4.水道水と滅菌水の塩素濃度を比較した。5.当院の滅菌水管理に関わる費用の検討を行なった。<結果>手洗い前の両手掌にはCNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)、バチルス属が検出されたが,各水道水,滅菌水にてウォーターレス手洗い後,水道水では菌は検出されず,滅菌水で1名のみCNSが1コロニー検出された。当院の手術部水道水の残留塩素濃度は0.2ppm~0.3ppm、滅菌水は0.05ppmだった。年間の滅菌水の管理費用は年間約70万円である。ウォーターレス法は、従来のブラシを使う方法より手技時間が4~6分と短く手荒れが少なく,手技に伴うコストは1回が約25円で、従来の方法は177円だった。(電気,水道代,滅菌水代は除く)<考察>手術時の手洗いに使用する水については、水道水あるいは滅菌水かで議論がされている中、飲料水の水質基準は残留塩素濃度が0.1ppm以上と規定されており、滅菌水と異なって殺菌剤が添加されることを考慮すれば滅菌水より消毒効果は優れているという考えもある。今回、滅菌水で1名のみCNSが1コロニー検出されたのは、手技の問題だと思われる。藤井氏らによると手術時手洗いに滅菌水を使用する効果は見られなかった。また,水の品質に差があっても、手洗い後の手指の微生物数に有意差がなければ、手術部位感染に影響はないだろうという仮説の実証が一定の科学的根拠となると述べている。今回の結果から,十分に管理された水道水であれば手術時の手洗いに使用することは可能と考えられる。また,当院の滅菌水の年間管理費は約70万円であるが,手洗い効果に及ぼす影響に差がなければ敢えてコストのかかる滅菌水を使用する必要性はないと考えられる。<まとめ>今後は手術室新築に向けて経済性や効率性も考えて,手洗い水の検討をしていく必要性があると思われる。
著者
吉川 靖子 斎藤 澄子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.125, 2007 (Released:2007-12-01)

〈緒言〉 向精神薬は自律神経の副交感神経を抑制(抗コリン作用)することにより腸蠕動を抑制させ便秘となりやすい。特に精神科の患者は、多量の向精神薬を長期に内服しているためそのほとんどが便秘の悩みを抱えている。また向精神薬内服患者は活動量の低下や食事や水分の不足などにより便秘を助長させている。そして便秘により、イライラして精神状態が悪化したり、逆に排便コントロールがつくことで病気の回復を感じられることもある。便秘の改善は、患者の精神的安定にもつながる。便秘予防には緩下剤の使用以外に、散歩や運動などレクリエーションへの参加、適当な水分摂取、規則的な食事摂取、トイレ誘導(排便習慣をつける)などの指導が重要である。抑鬱状態の患者には、無理強いせず、気分を見ながら離床を促し軽く運動(歩行)をしたり、腹部マッサーシ゛、ツホ゛刺激等を試みることがのぞましいと考えられている。本病棟では、便秘予防に1時間程のストレッチ体操、排便習慣をつけるため午前と午後にトイレ誘導を実施してきたが、便秘に対して充分な効果がなかった。 冷たい水の刺激は、消化管の蠕動を促進させ、便容積の増加、腸内容物の通過時間短縮により、腸内圧の正常化が保たれ便秘が改善されると考えられている。本病棟で定期的に緩下剤を内服している患者は85%、時々内服している患者を含めると91%にもなる。 本研究では、向精神薬内服患者が冷水の飲水により毎日もしくは定期的に排便がある便の性状も普通便、排便後すっきり感があるかを明らかにすることを目的とする。 〈方法〉対象患者 対象患者は、尾西病院精神科に入院し、向精神薬内服患者の9名(女性8名・男性1名)とした。 1)便秘への援助方法 対象患者は1週間普段どおり生活し、その後1週間は朝起床直後に冷水(4~5ml/体重1kg)を飲水した。 2)測定方法 腹部症状と便の状態は最初の1週間は検温時に、後の1週間は冷水飲水前(6時頃)と飲水後(7時頃)に調査した。 3)便秘評価 便秘評価尺度を一部改定した日本語版CASの使用と便の回数・性状を観察して評価した。 〈結果〉1.飲水前後のCAS値の比較 症例1~9はそれぞれ飲水前8,4,4,2,3,5,5,2,1から飲水後7,5,2,4,6,4,6,2,1となり、飲水前後間に有意差は認めなかった。 2. 排便回数 症例1~9はそれぞれ飲水前1,1,1, 2,2,0,1,1,1から飲水後2,2,2,2,1,1,1,2,1となり、飲水前に比べ飲水後に排便回数が有意に増加した。 3. 便の性状 症例1~9はそれぞれ飲水前2,3,4,2,4,6,4,4,2から飲水後1,2,2,1,4,5,2,3,3となり、飲水前に比べ飲水後に硬かった便が有意に軟らかくなった。 今回便の回数・性状の変化、排便コントロールを図るため、冷水を用いて行ってみたところ排便回数は9名中5名が増え、便の性状は9名中7名が軟らかくなった。しかしCAS値はあまり変化がなかった、これは冷水飲水は便の回数・性状には効果があるがその他には効果がないことと、下痢や便秘を自覚していないことが考えられる。 向精神薬内服患者は朝起床直後に冷水を飲水することで排便回数が増え、便の性状が軟らかくなることが認められた。
著者
吉峯 宗大 瀬山 厚司 菅 淳 村上 雅憲 林 雅規 井上 隆 松並 展輝 守田 知明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.468-474, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
13

マムシ咬傷の治療に関するガイドラインは存在せず,臨床現場においては治療方針に迷うことが少なくないと推測される。そこで,当院で2007年から2016年までの10年間に経験した67例を用いて治療内容や予後について検討した。男女比は35:32,年齢は16歳から86歳(平均68歳)で,60歳以上が79%を占めていた。受傷時期は7月から9月に56例(84%)が集中し,受傷場所は田畑が28例,自宅が26例と多く,受傷部位は全て四肢であった。49例にマムシの目撃があり,目撃のない症例では臨床症状から診断した。受傷直後から著明な血小板減少を呈し重症化した「血小板減少型」の1例を除いた66例について検討した。全例に入院加療が行なわれ,平均入院日数は6.8日であった。腫脹範囲が大きい症例ほど入院日数が有意に長かった。3例が腎機能障害を合併し,そのうち1例が死亡した。腫脹がピ―クに達するのは平均21.8時間後,CPK値が最大となるのは平均2.6日目であり,初診時に軽症であっても数日間の経過観察は必要であると考えられた。マムシ抗毒素は28例に投与されたが,投与の有無では入院日数に差を認めなかった。しかし,より重症の症例にマムシ抗毒素が投与されていること,腎機能障害を合併した3例の中,死亡した1例を含む2例にはマムシ抗毒素が投与されていなかったことから,重症例にはマムシ抗毒素の投与が必要であると考えている。また当院で経験した非常に稀な「血小板減少型」の1例についても報告する。
著者
林 紋美 横田 素美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.122-132, 2022 (Released:2022-08-26)
参考文献数
29

本研究の目的は,糖尿病看護に携わる看護師が抱く,患者と看護師の関係に対する思いとコントロール不良な糖尿病患者に対する思いを明らかにし,その関係を探索することである。看護師10名を対象に半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析した。患者と看護の関係に対する思いは5つ,コントロール不良な糖尿病患者に対する思いが6つ抽出された。看護師が,患者と看護師との関係に対して【看護師の指導を受け入れて欲しい】【自分が傷つく患者には関わりたくない】【患者や医療者から看護師としての自分を評価されたい】という思いを抱いていると,コントロール不良な糖尿病患者へ【糖尿病はコントロールできる】や【病状悪化は患者の責任】【コントロール不良な患者への看護は虚しい】という思いを抱いていた。また【患者を尊重したい】や【真摯な姿勢は患者に伝わる】という思いを抱いていると,コントロール不良な患者に対して【良い方向へ変化して欲しい】や【糖尿病を抱えることは大変】という思いを抱く反面,繰り返される入退院の現実を前にすると【患者の気持ちが分からない】という思いを抱いていた。看護師が患者を尊重する思いを持ち続けることが,コントロール不良な患者を看護することにおいて重要な要素になると考える。
著者
渥美 利奈 梶山 由紀 君崎 文代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.274, 2008 (Released:2009-02-04)

はじめに 当院の小児科病棟には、一般病棟の他に小児集中治療室(以下PICUとする)がある。面会時に家族と関わり情報提供を行っているが、面会に来る家族は何を望んでいるのか、家族にとって必要な情報を提供できているのか疑問に思い、本研究に取り組んだ。 _I_.研究目的 面会時家族が看護師に何を求めているか、再確認し家族支援につなげていく。 _II_.研究方法 1.研究期間:2007年7月~8月 2.対象:1)PICU入院中、またPICUより一般病棟へ転室となった子どもの家族8人 2)病棟看護師18人 3.データ収集方法:質問紙調査 看護師がどのような情報を提供しているか、家族が必要としている情報を知り、両者を比較する。 4.倫理的配慮:対象者には研究の趣旨と無記名である旨を説明し、承諾を得て実施した。 _III_.結果 回収率:看護師100% 家族72.7% 表1. 現在の面会について 表2. 情報提供内容について(複数回答) 表3. 現在のケア状況について _IV_.考察 病状説明については、看護師からの説明に家族はほぼ満足しているという事が分かった。木下は、「看護者が両親に子どもの様子を伝えること,いわゆる情報提供は,両親に安心感や子どもを知る手がかりを与える」1)と述べている。このことから、バイタルサインなど身体面を重視している看護師に対し家族は、身体面同様機嫌や睡眠といった精神面も重視しているのではないかと考えられる。そのため、今後身体面だけではなく、面会時間外の児の精神面に関する申し送りを充実させ、家族へ提供できるようにしていく必要があると考える。 また、ケアについてはアンケート結果より一緒に行うべきだと思っていることが分かった。しかし現状においては、看護師が「行っている」と思っているのに対し、家族は「行っているが日によって違う」「行っていない」と意見の違いが生じた。これは、PICUのケアを二人で行っているため、入院中の患児全員を同じようにケアに入ることが難しいという現状から出てきているのではないかと推察する。松嵜は「患児とその家族が何を不安に感じどのように困っているのか、医療スタッフは何を提供することができるのかが重要となってきている」2)と述べている。PICUには緊急入院やレスパイト、急変等様々な児がいるため、必要なケアが個々に違うと思われる。アンケート結果から、ケアを必要としていない家族がいることも分かった。誰が何のケアを望んでいるのか、コミュニケーションのなかから導き出さなければならないと考えた。 _V_.おわりに 今回のアンケート調査により、看護師が提供したいと思っていることと、家族が望んでいることに大きな相違はなかったが、看護ケアに関しては看護師と家族の間に違いが生じていることが分かった。
著者
村上 穣 小松 裕和 高山 義浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.18-23, 2011-05-30 (Released:2011-08-18)
参考文献数
12

本邦ではいまだ感染症科のない医療機関が多く,そうした医療機関では院内感染への対応は各科の担当医師に委ねられている。とくにカンジダ血症のような重篤な感染症では必ずしも適正な診療が行なわれていないことが考えられる。我々は感染症科のない地域基幹病院である佐久総合病院において,2004年から2008年までに血液培養陽性でカンジダ血症と確定診断された全43例を対象に,カンジダの菌種,背景因子,治療の内訳,合併症,予後,米国感染症学会 (IDSA) ガイドラインの遵守率についてretrospectiveに検討した。カンジダの菌種はCandida albicansが最多であった。背景因子としては患者の84%に抗菌薬が投与され,79%に中心静脈カテーテル (CVC) が留置されていた。経験的治療としてはfosfluconazoleとmicafunginがそれぞれ35%を占めていたが,23%の患者は抗真菌剤が投与されていなかった。CVCが留置されていた34例中,診断後に抜去されたのは23例であった。カンジダ眼内炎の検索目的で眼科紹介が行なわれたのは42%であった。IDSAガイドラインの遵守率は42%で,カンジダ血症発症から28日後の死亡率は33%であった。本調査結果により当院ではカンジダ血症の診療について課題が多いことが明らかになったが,このような状況は感染症科のない地域基幹病院の一般的な現状と考えられる。今後はカンジダ血症に対するガイドラインに沿った適正な診療が行なわれる体制を,感染症科のない地域基幹病院でも定着させてゆくことが必要である。
著者
石塚 仁保 寺原 史貴 松木 有莉 櫻田 啓介 中村 裕一 鈴木 千波 小原 秀治 小原 郁司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.48-56, 2020 (Released:2020-07-16)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

薬剤師はスペシャリストとして求められる領域が拡大しているが,認定・専門薬剤師のキャリアパスに関連する意識調査は少ない。本研究では,JA北海道厚生連札幌厚生病院の全薬剤師(37名)を対象とし,キャリア形成と資格取得・研究活動に関する意識調査を行なった。Googleフォームによる無記名,選択肢および記述回答式の調査を実施したところ,有効回答率は100%であった。キャリアパスに関する設問では,現在重視している業務と将来重視したい業務を比べた際,「幅広い経験・知識・技能を習得する」を選択した割合は前者で多く,「専門領域の経験・知識・技能を深める」と「認定・専門薬剤師の資格取得」を選択した割合は後者で多かった。このことから,現在は幅広い経験・知識・技能の習得を重視し,将来においては専門性を深めていきたいと考えていることが推測された。認定・専門薬剤師に関する設問では,資格取得を志す理由として「関連する分野への興味」が最も多く選択されており,専門分野への興味が資格取得の最も大きな動機になることが考えられた。研究活動に関する設問では,「日常業務との両立」や「研究時間の確保」,「研究メンバーとの連携」が研究活動を行なううえで困ったこととして多く選択されていた。このことから,時間の有効活用,さらに周囲との連携等も必要になることから,時間の確保とスケジュール管理が重要になることが考えられた。
著者
杉山 昌秀 青木 悠 篠原 佳祐 宮田 智陽 関口 展貴
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.512, 2018 (Released:2018-12-18)
参考文献数
4

潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの治療は,早期に高トラフ値に保つことの重要性が示唆されている。我々は添付文書より多い初期投与量で開始し,連日TDMによる用量調節を行なった2症例について検討を行なった。2症例とも10~15ng/mLの高トラフ域を維持されることで症状の改善が認められた。高トラフ域に入ったのが開始後9日目であり,添付文書の投与法と同程度の日数を要した。
著者
浅沼 信治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.10, 2010 (Released:2010-12-01)

1.農薬の使用と中毒発症の現状 1)農薬使用状況の推移 わが国で農薬が本格的に使用されるようになったのは、第二次世界大戦後である。戦後、農薬は農作物の生産性向上、労力の軽減など農業には重要な資材としての役割を果たしてきた。生産量の推移をみると、戦後30年の間に急増し、1974年に過去最高の75万トンに達し、その後は暫時減少し、90年代後半からは60年代の水準(30万トン台)になっている。殺虫剤の使用が最も多いが、兼業化など人手不足による省力化のため、除草剤の使用も多くなっている。 2)急性中毒および障害 かつてはホリドールやテップなどの毒性の強い農薬による中毒が多かったが、1971年に強毒性農薬が禁止になり、中毒事故は減少した。しかし、その後パラコート系除草剤による死亡事故(主として自殺)が相次いだ。1976年にパラコート系除草剤のうちグラモキソンが製造中止になり、代わってプリグリックスLが使われるようになり、死亡事故はやや減少した。 農村病院を受診した者の統計からみると、急性中毒と皮膚障害が多い。「健康カレンダーによる調査」によると、4人に1人が中毒症状の経験がある。 2.農薬使用の問題点 1)2006年5月の「ポジティブリスト制度」の施行による問題点 「ポジティブリスト制」は、基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度である。以前の「ネガティブリスト制」は、農薬の残留基準値がない場合、規制の対象にならなかったが、新制度により一律基準0.01ppmが適用、規制される。消費者にとっては残留農薬の減少など好ましいことではあるが、生産者にとってはドリフトなど問題が多い。これは農薬の登録制度にも問題がある。 2)ネオニコチノイド系農薬の使用 最近、有機リン農薬に代わって新農薬「ネオニコチノイド」(新しいニコチン様物質)が大量に、しかも広範囲に使用されている。今、ミツバチが忽然と姿を消す怪奇現象が多発し、その原因の究明が急がれているが、ネオニコチノイド系の農薬もその一つに挙げられている。 3)農薬の表示についての問題点 日本では、「農薬」と表現されているように危険なイメージは少ない。 農薬には、その中毒を防止する観点から「毒物・危険」の表示が必要である。アメリカはドラム缶に「ドクロマークとPOIZON」表示がされている。フィリピンでは、その毒性により分類し、農薬のビンの下に幅広のテープを貼ったように色を付けている。色分けされ、一見してこれがどのランクの毒性を持つ農薬なのかが分かる。しかも毒性の強い農薬は、一般の店では販売されていない。日本は赤地に白文字で「毒物」、白地に赤文字で「劇物」と小さく書かれているだけである。 4)農薬による皮膚炎 農薬による中毒・皮膚炎などにはその種類により特徴があり、注意する点も多い。とくに石灰硫黄合剤による皮膚傷害は深刻である。中毒を防ぐためにマスクの使用や、通気性がよく防水性のある防除衣の使用などについても考えてみたい。
著者
竹増 まゆみ 梶谷 真也 徳本 和哉 要田 芳代 川上 恵子 只佐 宣子 堀川 俊二 福原 和秀
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.904-908, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
6
被引用文献数
1

急性薬物中毒患者が搬入された際には,薬剤師が中毒原因物質に関する情報を迅速に収集し,個々の症例にあった適切な情報と治療方法を医師,看護師に提案する必要がある。 今回,ジフェンヒドラミン(以下,DPH)含有軟膏を大量に誤飲した99歳女性の救命治療に対して,胃洗浄を含めた治療方法と,患者の血中DPH濃度を経時的に測定することを提案した。その結果,血中DPH濃度の低下とともに臨床症状の改善が認められ,DPH含有軟膏誤飲例に対して胃洗浄を施行したこと,および血中濃度測定の臨床における有用性が示唆された。
著者
高松 道生 柳沢 素子 町田 輝子 松島 松翠 飯島 秀人 中沢 あけみ 池田 せつ子 宮入 健三 矢島 伸樹 佐々木 敏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.595-602, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

こんにゃくのコレステロール低下作用について検討し, その健康食品としての意義を明らかにする研究を行った。こんにゃくの成分であるグルコマンナンをチップ化して煎餅状に加工 (以下, マンナン煎餅) し, 総コレステロール200mg/dl以上の当院職員と正常範囲内の当院附属看護専門学校寄宿学生を対象に, 脂質代謝への影響を調査した。毎食後に煎餅を摂取し, 試験期間前後に脂質を中心とする血液検査を行ってマンナン煎餅の脂質代謝への影響を評価した。その結果, マンナン煎餅を摂取する事によって総コレステロール値の低下が認められ, 試験前総コレステロール値の高い群ほどその低下の度合いが大きかった。HDLコレステロールや中性脂肪への影響は認められなかった事から, マンナン煎餅はLDLコレステロールを特異的に低下させる作用を有するものと考えられた。血算や生化学などの検査値には変化を認めず, 腹満や下痢などの消化器症状が一部に観察されたものの, 重症なものではなかった。一方, 試験前後の体重に差はないものの試験期間中の総摂取エネルギーや脂質摂取は減少しており, マンナン煎餅を摂取することが食習慣に影響を与えた事が示唆される。以上から, こんにゃく (グルコマンナン) は直接・間接の作用でコレステロール, 特にLDLコレステロールを低下させ, マンナン煎餅が健康食品として意義を有するものと考えられた。
著者
田辺 裕 稲石 貴弘 森本 大士 直海 晃 田中 友理 柴田 有宏 高瀬 恒信 中山 茂樹 梶川 真樹 矢口 豊久
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.116, 2010 (Released:2010-12-01)

症例1 20歳代男性 H21年5月 祭りの最中に人を乗せた馬に腹部を蹴られた。救急病院入院したが翌日まで腹痛治まらず当院に転院。腹部は板状硬。CT上腹腔内遊離ガスと腹水を認め消化管破裂と診断。緊急開腹手術施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸単純縫合術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で11日目に退院した。 症例2 60歳代女性 H21年7月 馬の調教をしている時に後ろ足で上腹部を蹴られ、救急車で当院受診。右上腹部に軽度圧痛認めた。CT上肝内側区域に不整な低濃度領域あり。採血上GOT/GPT 279/223と肝逸脱酵素の上昇が見られた。外傷性肝損傷と診断し、安静目的に入院。入院翌日にはGOT/GPT 90/136と低下しており、CT上も血腫の増大なく退院とした。 症例3 30歳代男性 H21年10月 馬の世話をしている時に右鼠径部を蹴られ、救急車で当院受診。腹部は板状硬。CT上モリソン窩に少量の腹水を認めた。腹部所見から消化管破裂による腹膜炎を疑い緊急開腹手術を施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸部分切除術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で10日目に退院した。 馬に蹴られたことによって入院、手術が必要となった症例を続けて経験した。 馬に蹴られるという外傷は、狭い面積に強い力がかかり、内部臓器損傷のリスクも高くなると考えられる。このようなケースの診療に当たる際はそれを踏まえてアンダートリアージのないようにする必要がある。
著者
木田 秀幸 今野 武津子 高橋 美智子 近藤 敬三 飯田 健一 佐藤 繁樹 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.312, 2008

〈緒言〉<I>Helicobacter.pylori</I>(<I>H.pylori</I>)は、グラム陰性の螺旋様桿菌で胃内に感染し胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などの上部消化管疾患の病態に関与していることが明らかになっている。<I>H.pylori</I>の診断方法としては、血清及び尿中抗体測定(抗体)、便中抗原測定(HpSA)、尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験、病理組織学的検査、細菌培養などがある。唯一の直接的証明法である<I>H.pylori</I>の分離培養は、特異性に優れ菌株保存が可能なため抗菌薬の感受性検査や遺伝子学的解析を行うためには不可欠である。培養に用いる検体は胃粘膜生検が一般的であるが、我々は胃粘膜生検の他に胃液を検体とした<I>H.pylori</I>培養を1997年より行なっている。この10年間の培養経験と成績を報告する。<BR>〈対象と方法〉1997年3月から2008年3月までに腹痛を主訴に、当院小児科を受診し上部消化管内視鏡検査を施行した小児を対象とした。また、血清<I>H.pylori</I> IgG抗体(血清抗体)あるいは便中<I>H.pylori</I>抗原(HpSA)陽性患児とその家族も対象とした。<BR>患児95例は内視鏡検査と胃粘膜生検を施行し、その家族で<I>H.pylori</I>陽性の有症状者(既往も含む)にはインフォームドコンセント(I.C.)を得た後、82例に対し内視鏡下生検あるいは胃液を採取し培養を施行した。除菌後の検体を含む延べ培養総数は、289例(胃液培養111例、胃粘膜培養178例)であった。培地は<I>H.pylori</I>の選択分離培地である「ニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地」(日水製薬株式会社)を用い、微好気条件下で35℃(2005年10月までは37℃)ふらん器にて最大1週間の培養を行なった。結果の判定は、発育したコロニーのグラム染色を行い、グラム陰性螺旋菌であることを確認、ウレアーゼ試験、オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験陽性となったものを<I>H.pylori</I>培養陽性とした。<BR>〈結果〉HpSA又は血清抗体陽性群78例の胃液培養では、68例が陽性で10例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は抗体陽性群118例の胃粘膜培養では、103例が陽性で15例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は血清抗体陰性群では胃液培養、胃粘膜培養共に全例が培養陰性であり特異度は100%であった。培養結果とHpSA及び血清抗体が不一致となった25例中9例に雑菌発育が認められ培養不可能であった。胃液と胃粘膜の雑菌発育に大きな有意差は認められなかった。1998年までは、HpSA又は血清抗体やウレアーゼ試験との不一致例が検体56例中18例(32%)、雑菌発育8例(14%)と培養成績に良好な結果が得られなかった。不一致18例中7例(39%)の原因は雑菌発育によるものであった。しかし、1999年以降の不一致は、検体233例中7例(3%)、雑菌発育2例(1%未満)と培養成績が明らかに向上した。<BR>〈結語〉我々は、胃液を検体とした<I>H.pylori</I>の培養を1997年から試行錯誤の中行なってきた。1998年以前の培養成績と他の検査方法との不一致や雑菌発育は、培地の使用方法や培養条件、検体処理方法等、様々な要因が示唆された。<BR>胃液検体は胃粘膜検体と比較しても十分な培養成績を得ることができた。また、胃液採取は、内視鏡を用いた胃粘膜採取と比較し患者への侵襲性が小さく、採取部位による影響も受けないことからも有用性が高いと考えられる。