- 著者
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平石 典子
- 出版者
- 三重大学人文学部文化学科
- 雑誌
- 人文論叢 (ISSN:02897253)
- 巻号頁・発行日
- no.18, pp.33-50, 2001
明治後期の日本において,「女学生」は「女子学生」という字義上の意味以上のものを人々に訴えかける存在であった。本論では,高等女学校の成立過程,女学生を主人公にした文学作品の分析などを通して,「女学生神話」がどのようにして成立していったのかを追っている。明治初期の女学生は,ネガティブにとらえられることが多かったが,明治三十年代に入ると,良妻賢母主義に女子教育の照準が定まったことも手伝って,高等女学校は乱立の時代を迎える。その結果,彼女たちは都市における西洋風の美の代名詞のように扱われることとなる。しかし,その一方で,「西洋風」の「恋愛」への憧れと無用心な下宿環境は,彼女たちが「性的に奔放」だというレッテルを貼る。この仮説は,新聞小説やスキャンダル記事によって強化され,「西洋的な美しさを持ち,積極的で性的にも奔放」な存在としての「女学生神話」が確立するのである。