著者
嘉本 伊都子 KAMOTO Itsuko
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.23-50, 2011-12

旧姓長田信子さんは、アメリカ軍に徴兵され極東での勤務を志願した飯沼星光さんと渋谷の富ヶ谷教会で結婚式をあげ、1953年9月に軍用船で海を渡った。彼女自身は戦争花嫁だとは思っていない。なぜなら星光さんはアメリカで生まれた二世ではあるが、幼少期から青年期までを日本で過ごしたいわゆる帰米二世であるからだ。日本人という同人種ゆえに国際結婚とは位置づけていないのである。しかし、アメリカ国籍をもつ日系二世のG・Iと、日本人女性との結婚は、敗戦後の国際結婚の歴史なかでも重要な位置を占める。飯沼信子さんのケースを取り上げることによって、研究上、焦点が当てられてこなかった帰米二世との「国際結婚」について考察していく。
著者
野口 実 NOGUCHI Minoru
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-104, 2001-03-30

日本人一般はアジア・太平洋戦争について、その悲惨さは認識しているが、なぜそのようなことになってしまったのかということを真剣に考える姿勢が見えない。このノートは国民が軍国体制にからめとられていく背景として、誤った「武士」認識が近代国家の教育によって国民に注入されたことを論じ、そのような認識が今日に至っても払拭されていないことを問題にしたものである。まず、武士の成立に遡ってその実像を明らかにするとともに、東アジア的な視点から、王朝権力とは別のところに成立した武人政権が長く継続した日本の歴史の在り方を不幸で例外的なものと見る。ついで日本人一般に見られる武土賛美がもたらす諸問題を指摘する。そして、近代の日本国家が国民全体を武士的な精神で統合するために、どのような教育手段を用いたのかを具体的に提示し、戦前への回帰の方向に向かいつつある今日、その克服のために科学的な成果に基づく歴史教育の重要性を説く。
著者
加茂 直樹 KAMO Naoki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.5-28, 2008-12

本稿は、英国を中心に欧米における社会福祉の発展過程を概観した前々稿「社会保障制度の形成」(『現代社会研究』Vol. 10、2007年)および20世紀前半までの日本における社会福祉の発展過程を概観した前稿「日本の社会保障制度の形成」(『現代社会研究科論集』第2 号、2008年)に続き、20世紀後半における日本の社会保障制度の成立とその後の変遷を大まかに把握することを目的とする。なお、これらの歴史的な研究は、さまざまな問題を抱えている現代日本の社会保障制度を批判的に検討するための予備的考察である。本稿の内容は下記の通りである。Ⅰ 社会福祉の発展過程 Ⅱ 社会保障制度の成立過程 Ⅲ 国民皆保険・皆年金体制の成立 Ⅳ 制度の変遷過程The purpose of this paper is to comprehend briefly how Japanese social security system came into existence and underwent changes in the latter half of the 20th century. I think it is necessary to do so as a preliminary step to develop a critical examination of the social security system in contemporary Japan. The contents are as follows : Ⅰ The Progress of the Social Welfare Ⅱ How Japanese Social Security System Came into Existence Ⅲ The Realization of the 'Medical and Pension Insurance for All' System Ⅳ The Changing Process of the System
著者
澤田 知樹 SAWADA Tomoki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.43-59, 2006-12

行政機関の裁量行使を適正化する手法の可能性の一つとして、大統領による行政コントロールという方法が考えられる。大統領コントロールモデルといった概念が、米国において数年前から主張されており、その概念の中核となる考え方は、法律によって各行政機関に委任された裁量に関して、大統領がその裁量の行使について指示を発する権限を有するというものである。この見解を採る論者は、法律条文によって行政官に委任された裁量の行使について大統領が指示権を主張することがきると読むことができると考える。だが、議会が権限を委任したのは大統領ではなく行政機関に対してであると一般的には理解されており、この見解に対しては疑問や批判が多く提示されているところである。本稿では、法律条文の解釈によって大統領の指示権を導くことの可能性について、そのような解釈に批判的な論者の主張に基づいて検証を試みる。
著者
澤 敬子 手嶋 昭子 藤本 亮 TEJIMA Akiko 藤本 亮 FUJIMOTO Akira 南野 佳代 MINAMINO Kayo 三輪 敦子 MIWA Atsuko
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.131-150, 2004-11

本稿は、科学研究費補助金基盤研究(C)( 1 )「ジェンダー法学のアカウンタビリティー ―アメリカの先駆者たちに見るその軌跡―」の2003年度の成果の一部であり、現実の法実施状況のなかで、ジェンダーをめぐる理念、法理論、問題設定などが持ちうる具体的な射程、可能性、問題性について、法社会学研究者を中心とした研究者らが各人の研究領域に引き寄せて検討し確認するための予備的研究である。第Ⅰ章は、女性の地位の向上やジェンダー平等に向けた取り組みのなかで、条約が大きな役割を果たしている状況を概観する。第Ⅱ章は、日本における強姦罪の問題点のうち、被害者の「抵抗」の問題を取り上げ、日米を比較しつつ検討する。第Ⅲ章は、労働規制法が暗黙に想定する労働者像を明らかにしたうえで、「人たるに値する生活」の現代的意義の考察の基礎づけを行う。第Ⅳ章は、アファーマティヴ・アクションが持つ一側面を米国大学スポーツのあり方を手がかりに検討する。
著者
西尾 久美子 NISHIO Kumiko
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.69-78, 2008-12

350年継続する京都花街では、どのようなマーケティング・マネジメントがおこなわれているのか。それは、いったい何を大事にしてきたから、今日まで継続できたのだろうか。本稿では、リレーションシップ・マーケティングのフレームワークを用いて、日本の伝統産業である京都花街の一見さんお断りの取引慣行を分析し、お茶屋を中心とする取引仕組みが、顧客満足度を高め複数の事業者の取引を円滑にするとともに、事業者の提供するサービスの質そのものを高めていることを指摘する。そのうえで、おもてなしというサービスの提供に特化した地域産業が、複数の事業者間の競争と協働により、長期継続的な顧客との関係構築を志向していることを考察する。
著者
江口 聡 澤 敬子 藤本 亮 SAWA Keiko 藤本 亮 FUJIMOTO Akira 南野 佳代 MINAMINO Kayo 望月 清世 MOCHIZUKI Sawayo
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-114, 2004-01

科学研究費補助金基盤研究(C)(2)「ジェンダー理論の法学教育への統合的モデル構築にむけた現状と課題の実践的研究」の2002年度研究経過報告である本稿は、米国フェミニズム法学のケースブックに基づき、以下の分野を扱う。第1章は、マイノリティの観点である批判的人種フェミニズムからの法学およびフェミニズム法学への批判と貢献を検討し、第2章はアファーマティヴ・アクション導入以来の批判派対擁護派の論争を整理し、平等概念、能力主義基準自体の歴史性を指摘する。第3章は、ポルノグラフィにかんして自由論者と規制論者の論点と、ポルノ規制条例にかんする判決を取り上げる。第4章は、なぜ法と女性とのかかわりにおいて「親密な関係」を統制する法が重視されるのか、婚姻関係内部の権力関係と婚姻可能性の権力性を検討し、第5章は、他者のケアを引き受ける者が置かれがちな経済的依存状態について、平等の観点から、ありうべき社会保障モデルを検討する。
著者
伊藤 正憲 ITO Shoken
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.119-130, 2013-12

幸福のパラドックスについて議論する場合には、生活評価、生活満足度、幸福度、感情の四つを区別することが重要である。幸福のパラドックスとは、いわゆるイースタリン・パラドックス─国際比較でみて所得の高い国のwell-beingが高いとはいえないこと、及び一国時系列でみて所得の上昇が必ずしもwell-beingの上昇をもたらさないこと─そして国際比較で所得がある水準以上になるとwell-beingが頭打ちになること(飽和点の存在)である。しかし、Cantril Ladderによる生活評価を指標に使った近年の諸研究によれば、国際比較でみて評価と対数所得との間に直線的な右上がりの関係が見出される。これは、生活の評価がグローバル・スタンダードに基づいてなされているからだと考えられている。一国時系列でも多くの場合、生活満足度を指標にとればそれは所得の上昇とともに上昇している。ただし、感情を指標にとると米国の場合、最近の一時点でみてwell-beingがある所得水準で頭打ちになる。
著者
筒井 美紀 TSUTSUI Miki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.51-67, 2008-12

本稿は、京都女子大学現代社会学部を2008年3月に卒業した4回生の、就職活動のプロセスと結果について、質問紙調査を元に解明する。具体的には、諸活動の開始時期や活動量について記述した上で、就職活動期間と最初の内定獲得時期の規定要因を明らかにする。先行研究が明らかにしてきた構造的・関係的要因と人的資本論的要因は、中堅女子大学の学生の場合、どのような影響力をもつのか。得られた知見は次の5点である : (1) 時間的側面から見た平均像は、3回生の11月頃に就活支援サイトに登録、12月に企業セミナー・会社説明会へ参加、というかたちで始まって、4回生の5月中旬に最初の内定獲得、6月上旬に4月以降勤務先の内定獲得と、約7ヶ月の活動、(2) 活動量から見た平均像は、エントリーシート送付企業数21社、説明会参加社数25~26社、筆記試験受験企業数12社強、面接受験企業数11社、会ったOB・OGの数1.3人(0人は全体の6 割)、内(々)定企業数2社強、(3) 「下宿・寮→独居・寮から通勤」の学生は、「自宅→親元から通勤」の学生と比べて、活動期間が有意に1.5ヶ月短くなっており、最初の内定獲得時期が有意に1.5ヶ月早い、(4) 総合職の学生は一般職の学生と比べて、活動期間が有意に1.2ヶ月長い、(5) OB・OGに会った学生は会わなかった学生と比べて、最初の内定獲得時期が有意に1.5ヶ月早い。以上に基づく理論的含意は、(1) 人的資本としての生活力・自活力の重要性、(2) OB・OG接触の重要性、(3) 買い手市場下の調査の必要性、の3点。実践的示唆は、(1) 3 回生前期までと4 回生後期の教育のさらなる徹底、(2) OB・OGに会うべしという助言、(3) 総合職志望者への適切な配慮、の3点である。The purpose of this paper is (1) to describe the process and result of job search of the students who graduated from the Faculty for the Study of Contemporary Society, Kyoto Women's University in March, 2008 and (2) to identify the factors of both the length of the job search and the timing of the first "naitei (unofficial decision)", from the analysis of the quantitative data. The following are the findings : (1) from the temporal aspect, the average is; register in job search support sites in Nov. 2006 → attend seminars in Dec. 2006 → take the first naitei in May 2007 → take the naitei she finally decided to go in June 2007, then the length is about 7 months, (2) from the quantitative aspect, the average is; entry sheets = 21 firms, seminar attendance = 25 to 26 firms, writing exam. = 12 firms, interview = 12 firms, OB/OG they met = 1.3 persons, na(nai)tei = 2 firms, (3) the length of job search of "living alone or dorm. → living alone or dorm." type is 1.5 months shorter and their timing of the first naitei is also 1.5 months earlier than those of "living with their parents → living with their parents" type, (4) the length of job search of sougou-shoku is 1.2 months longer than that of ippan-shoku, (5) the timing of the first naitei of the students who met OB/OG is 1.5 months earlier than that of the students who did not. Theoretical implications are (1) the importance of independence as human capital, (2) the importance of meeting OB/OG, (3) the need of further research under loose labor markets. Practical suggestions are (1) to make learning more intensive especially until the fifth semester and in the eighth semester, (2) to advise them to meet OB/OG, (3) to pay considerable attention to students who want to work as sougou-shoku.
著者
柿本 佳美 KAKIMOTO Yoshimi
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-51, 2009-12

本稿は、「甘え」が象徴する社会構造によって、日本社会における「自由」と「権利」概念理解のずれが生じることを指摘する。土居は、日本社会においては、「甘え」に象徴される、子が親から無条件で受容される関係が関係性のモデルとなることで、個人による集団への従属を善とする社会規範が形成され、「自由」を「わがまま」とも理解するずれが生じたことを指摘する。明治初期における西欧世界からの法システムの導入は、個々人の属性に依存する社会関係が存続したことで、諸概念の理解においてゆがみを伴っていた。属性に依存する社会規範は、社会関係が希薄化した現代社会においても、個々人に「分を守る」ことを求める。「自由」と「権利」の概念理解の両義性は、属性・役割を社会規範の規準とし、個の意識を曖昧にすることで「甘え」を許容する日本の社会構造から生じる。ここに、既存の社会にはない新しい知の理解には、その社会の価値規範の影響によるずれを避けることができないことを見て取ることができよう。This article aims to clarify the reason why Japanese people have the double-edged understanding about the notion of the freedom and the rights. The word "Amae" symbolises the social structure in Japan where parents accept the unconditional indulgence of their child. Being based on this model of the relationship, this structure makes the miss-leading about the freedom and the rights, sustained by the social norms which premise the dependence of the individual to the society. This doulde-edged understanding on the freedom and the rights comes from the structure of the Japanese society, which depends on the personal social status and position and which weakens the self-consciousness, too. We can see the inevitable influence of the social value and norm on the introduction of the sciences which have developped in the different culture back ground.
著者
櫻井 純理 SAKURAI Junri
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.147-163, 2008-12

1990年代半ば以降、グローバル競争の激化や株主構造の変化などの影響を受け、柔軟に活用しうる有期雇用の非正規雇用者を増加させるという雇用戦略が、多くの企業で推進されてきた。その結果、職業キャリアの観点から見れば、長期にわたって企業に定着し(え)ないキャリア展開がより一般的になりつつある。労働者が所属企業に依存せず、より自律的な職業キャリア形成を行うためには、職業能力形成を支援する重層的な支えが必要になるだろう。本稿では、そのようなキャリア形成支援政策の新たな主体の一つとして、労働組合に注目する。分析の対象は、電機連合が実施している「電機産業職業アカデミー」などのキャリア形成支援政策である。この取り組みでは、キャリア開発推進者の育成、組合員に対するキャリア相談窓口の開設、教育訓練コースの産業内相互開放などが始められている。単位組織におけるキャリア開発推進者の活動促進、個別組合員への浸透などに課題を残すが、特に企業主導のキャリア形成支援策の対象外とされてきた非正規従業員や、教育訓練基盤の弱い中小企業従業員に対して、産別組合がキャリア形成支援を展開することには大きな意義がある。Since mid-1990s, traditional employment practices of Japanese companies, such as long-term employment and seniority system, have been reexamined and the ratio of non-regular workers has been rising. This trend means occupational career of workers has become more and more "boundaryless," that is, not bounded in a single company or a single job. Under such an environment, it is crucial for workers to develop their own vocational capabilities more autonomously. This urges the need for career development support systems (including vocational education and training programs), since resources and information of an individual worker are limited. This paper examines, as a case study, career development programs funded and operated by an industrial union. It is a significant attempt, though there are some problems that should be solved.
著者
鳥谷 一生 TORITANI Kazuo
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35-53, 2013-12

本論文の目的は、2009年6 月に始まった人民元建貿易取引とその決済勘定の受け皿となった香港金融市場における人民元建オフショア市場の発展について、既発表論文をベースに改めて整理し直すと共に、当時「一国二制度、三通貨」といわれたCNY、NDF、CNHという三つの人民元為替市場の関連について明らかにした。また論文では、人民元建輸出入取引が、人民元先高観を背景に、投機的差益の獲得を目論んだミスインヴォイス(misinvoice)に促される傾向にあったことを明らかにしている。だが、2011年後半以降、中国の国際収支も変調をきたし、これまでの人民元高政策を今後も引き続き推進することは、次第に難しくなってきている。それと共に、人民元「国際化」策も、新たな金融規制緩和を講ぜねばならない段階となってきている。しかし、そのことは人民元を非居住者による投資と投機の波に晒すことを意味している以上、今後の展開についても注視が必要である。The purpose of this paper is to put in place historically and theoretically development of internationalization of Chinese renminbi and renminbi-denominated off-shore market in Hong Kong, initiating from June 2009, while revising the author' s previously published papers. In the paper, relation among CNY, NDF and CNH, named as 'One Country, Two Systems, Three Currencies' , should be taken up in terms of exchange arbitrage. Besides, it should be highlighted that renminbi-denominated trade has been conducted purposefully in 'misinvoiced' manner for speculative exchange arbitrage in the foreign exchange market surrounded with strongly prevailing prospect for appreciating renminbi exchange rate further in future. The balance of payments of China, however, turned away, since the second half of 2011, from one-way 'surplus' as experienced in previous years. With this trend, it becomes difficult to keep policy of making renminbi appreciating straightforwardly. This makes Chinese policy makers set forth new measures for internationalization of renminbi with financial deregulation. On the other, there should be deeply concerning over renminbi facing possible crisis, due to international shortterm capital transaction for arbitrage.
著者
宮下 健輔 MIYASHITA Kensuke
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-79, 2013-12

京都女子大学で2000年に始まった全学情報教育カリキュラムと全学情報基盤の運用は, 現在まで絶え間なく改善されながら年々充実してきている. また, これに合わせて事務部署にもICT(情報通信技術)が導入され, 活用され始めている. 以前は構内の掲示板への掲出のみだった休講情報はWWW上への掲出が行われるようになり, 学生が登校せずとも確認できるようになった. 著者は昨年度, これをもっと便利なものにするため, 休講情報をメール配信する仕組み(休講情報通知機構)を構築し試験運用を開始した. これは既存システムにできるだけ侵襲せずにこれらを組み合せ, かつ休講の申請, 受付, 休講情報の登録等における教職員の作業フローをまったく変更せずに構築された. 本論文では休講情報通知機構を1 年間に亙り運用したことで得られた知見と, それを元にこの機構に施した改善とについて報告する.It is impossible to manage our society without information infrastructure. All the more for that, the institutions of higher education in which human resources to support such society are nurtured need to make efficient use of information infrastructure. The information systems of Kyoto Women's University have been established in the year of 2000, and information technology has been introduced into its office and educational affairs. Among them, the author has developed and deployed the notification system of lecture cancellation last year. In this paper, the author describes knowledge from 1-year operation of the system and some improvements which have been realized during the operation.
著者
槇村 久子 MAKIMURA Hisako
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.5-21, 2011-12

少子高齢人口減少は大都市にも見られるようになり、一方都心に高層マンション等住宅供給が増加し子育て世帯層が増加している。大都市において子育て期にある親と子が安全に安心して生活できるための条件を日常生活の視点から明らかにする。本稿では大阪市で幼児と子育て世帯層が増加している地区を取り上げ、そこに備わっている条件を現地調査、親子のベビーカーでの調査、地域の子育て支援グループ、認可外保育所、親へのヒアリング調査などで分析した。まち歩きではハード面で主に道路、公園、駅舎、商業施設や公共施設などをチェックし、その他の調査から子育て期の親子、特に女性が安全で安心して住むことができる要素を立地、交通アクセス、マンションの価格、保育施設と保育サービス、子育てサービスや施設、近くで利用できるサービスを詳細に抽出した。We found that the old aged is increasing and the young aged is decreasing in population, the other side the child-rearing families increasing in population by high residential buildings in center of Osaka. We researched some areas in Osaka City on traffic access, conveniently, day nursery, day-care service, regional child-care support group. We checked on roads, parks, stations, public facilities, shopping centers by baby carriage in addition.
著者
宮下 健輔 MIYASHITA Kensuke
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.55-68, 2012-12

現代社会は情報基盤なしには成り立たなくなっており,そのような社会を支える人材を育成する高等教育機関ではなおさらその効率的な利活用が要求されている.京都女子大学では2000年から現在まで情報教育カリキュラムと全学の情報基盤を変革し続け,これに合わせる形で事務・教務システムにもICT(情報通信技術)が導入され,変化してきた.その中で,以前は構内の掲示板への掲出のみだった休講情報も,現在ではWWW上への掲出を行うことによって学生への迅速な通知を実現している.今回,これを学生にとってもっと便利なものにするために,休講情報をメール配信する仕組み(休講情報通知機構)を構築し試験運用を開始したので,ここに報告する.この機構は既存のシステムにできるだけ侵襲せずこれらを組み合せ,かつ休講申請やその処理における教職員の作業フローをまったく変更せずに構築されている.We can not manage our society without information infrastructure. All the more for that, the institutions of higher education in which human resources to support such society are nurtured need to make efficient use of information infrastructure. In the case of Kyoto Women's University, the curricula for information education and the information systems have been restructured without interruption from the year of 2000, and information technology has been introduced into its office and educational affairs and restructured too. Among them the information of lecture cancellation is posted on the WWW page and the students are rapidly notified, although it has been posted on only the bulletin board. In this paper, the author makes a report of deploying the notification system of lecture cancellation and its trial operation. This system sends the information of lecture cancellation via e-mail so it is more convenient for students. It is made of some existing services(mush up)and the work flow of lecture cancellation remains unchanged.
著者
杉浦 功一 SUGIURA Koichi
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.23-41, 2006-12

民主化支援が国際的関心を集める中で、日本による民主化支援活動に関する研究は乏しい。そこで本稿では、民主化支援の国際的な動向を踏まえながら、日本の民主化への関与を分析し、その特徴の一端を明らかにする。日本の民主化支援の歴史を概観すると、日本は優先順位は高くないもののODA 大綱などを通じて民主化への支援のコミットを明確にしつつ、民主化の基盤を作る経済社会協力と対話を通じたアプローチを民主化支援の方針としてきたことがわかる。次に、日本の実際の民主化支援活動について具体的に検証する。広い意味での民主化支援活動は、大きく、民主化に関する国際規範の形成、民主化の「促進」、民主化の「擁護」より構成される。日本の個々の活動を検証すると、上記の特徴がやはり現れている。その上で、民主化支援活動の制度の明確化と他の利益とのバランス、市民社会との協力が今後の課題である。There has been little literature on Japan's democratization activities although democratization support is recently attracting much international attention. This article examines Japan's involvement in democratization abroad in the international trend of democratization support, and attempts to show its characteristics. This article briefly looks at the history of Japan's democratization support, and then examines its actual activities of democratization support, focusing on three activities : helping foster democratic norms, promoting democratization, and defending democratization. It makes it clear that Japan has shown its strong commitment to support for democratization abroad although its priority in Japan's diplomacy is still low, and that its approach to democratization support has been based on dialogue and economic and social cooperation to establish a foundation for democratization. Japan needs to institutionalize democratization support more clearly, keep balance between democratization abroad and other national interests, and seek more cooperation with civil society in Japan.
著者
江口 聡 EGUCHI Satoshi
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.119-135, 2007-12

本稿では、国内の生命倫理学研究者の間ではマイケル・トゥーリーらに代表される「パーソン論」と呼ばれる考え方が正確に理解されておらず、それが国内の生命倫理学の健全な発展を阻害している可能性があることを指摘する。In this paper, I will show that many Japanese bioethicists have long misunderstood Michael Tooley's seminal article "Abortion and Infanticide" and other philosophers' important arguments, and this has caused much trouble in discussing abortion issues in Japan.