著者
安井 明美 進藤 久美子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.405-410, 0001-01-01 (Released:2001-06-29)
参考文献数
6
被引用文献数
41 62

玄米中の無機元素組成から産地を判別する方法を検討した。1996年産の産地あるいは栽培法の異なるコシヒカリ{もみ(籾),一部玄米}34点を27産地から収集した。籾摺り後,粒のまま約1g(約50粒)を,硝酸と過塩素酸を用いる開放系の湿式分解で分解して,1%塩酸で試料溶液を調製した。P,K,Mg,Ca,Mn,Zn,Fe,Cuは,ICP-AESで測定し,Rb,Mo,Ba,Sr,Ni,Cd,Cs,Pb,Al,Cr,CoはICP-MSで測定した。13元素(P,K,Mg,Ca,Mn,Zn,Fe,Cu,Rb,Mo,Ba,Sr,Ni)の測定値を,クラスター分析と主成分分析で解析した。Ward法によるクラスター分析と主成分分析の結果から,9元素(Mn,Zn,Fe,Cu,Rb,Mo,Ba,Sr,Ni)による産地判別で,東北産·関東産と北陸産が良く分離し,東北産と関東産はそれぞれまとまる傾向を示し,無機元素組成による産地判別の可能性を示唆した。
著者
中島 憲一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.783-799, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
106
被引用文献数
5 6

薬物の乱用は世界中で大きな社会問題を引き起こしている.乱用によるリスクから人々の健康を予防し,守るためには乱用薬物の分析法の開発と応用が重要である.一方,薬物の摂取を証明するには,血液や尿などの生体試料の分析が不可欠であるが,その中で,毛髪は長期にわたる摂取情報を知ることのできる貴重な試料といえる.毛髪分析の歴史は比較的新しいが,分析機器の発展に伴って,実用的で有用な分析法が開発されるようになり,現在では法中毒学あるいは臨床化学などの分野で大いに利用されるようになっている.本総説では,毛髪分析の歴史,意義などを解説するとともに,最近の分析例を紹介する.
著者
大道 公秀 橘田 規 椎野 博 清水 文雄 西念 幸江 小田 裕樹 三舟 隆之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1.2, pp.57-62, 2023-01-05 (Released:2023-02-05)
参考文献数
16

考古学分野において,土器の内面に白色物質が付着した報告が散見される.これまでに土器内面付着白色物を対象に行った蛍光X線分析,FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)分析及びX線回折によって,白色物は水酸化アルミニウムの結晶と同定した報告がある.ただし,その起源については明らかにはなっていない.今般,平城京跡出土の奈良時代須恵器内面に白色付着物が見られた事例があった.そこで土器の用途について解明することを目的に,土器内面の白色物について蛍光X線分析,FTIR分析,X線回折を行ったところ,水酸化アルミニウムの結晶の一種であるバイヤライトと同定した.土器付着白色物質の同定例としてバイヤライトが同定されることは珍しい.バイヤライトの成因は土器の使用用途に関連していると考えられるが,そこに外部環境が関与した可能性がある.これまでの知見と考え合わせながら,白色物起源の解明を進めている.
著者
田村 英夫 穂積 啓一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.149-155, 1971-02-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ガスクロマトグラムで定量分析を行なう場合,装置がいかに正常に働き,正確なクロマトグラムが記録紙に描かれたとしても,自動積分計以外の方法で面積評価を行なうとクロマトグラムのピークの形が測定に適した条件を備えていないとあまりよい結果が期待できない.著者らは従来のマニアルな面積評価法より比較的簡単で再現精度のよい新方法を考案した.本法はクロマトグラムのピーク立ち上がり点からピーク頂点までの所要時間tとピークの高さhをパラメーターとするものであり,面積はh×tとして評価する.マニアルないろいろの方法による面積評価と成分量の関係を求め,これから最小二乗法による回帰直線を算出し,回帰直線からのばらつきを標準偏差として計算すると本法が最もすぐれた結果を与えた.同一操作条件においては,クロマトグラムのピークパターンは成分量により影響されないことから,h×tの値が成分量に比例することについて考察を行なった.またクロマトグラムのピークの曲線は簡単に正規分布,あるいはポアソン分布曲線として取り扱われることが多いが,著者らはそれらの分布曲線より,むしろLevenspielによる混合拡散モデルのほうが種々のピークに正確に一致することを確認した.本法は作図による面積測定の困難なシャープなピークからテーリングピークまで比較的広い範囲にわたって適用でき,将来は簡単な電子タイマーを用いる自動計測も可能である.
著者
瀬戸 康雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.981-991, 2007 (Released:2008-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

1998年に発生した和歌山毒カレー事件のような,原因不明の大規模な中毒事件の発生は,安全・安心な社会を脅かすものであり,行政レベルで十分な対策を施す必要がある.分析化学がこのような毒劇物中毒事件発生の危機にいかに貢献すべきであるか.著者は,警察庁科学警察研究所において,シアンなどの揮発性毒物の分析,代謝,毒性に係る研究,鑑定,都道府県警察本部科学捜査研究所職員に対する研修・指導を業務としてきたが,1998年に発生した毒物連鎖事件の鑑定に携わった.本総合論文では,毒物連鎖事件と著者が担当した鑑定の概要を紹介し,本事件の事後対応における反省点を挙げ,原因不明の中毒事件に際した場合の毒物検査に従事する分析化学者が留意すべき点に関して述べる.
著者
柴田 村治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.14, no.8, pp.749-755, 1965-08-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
4
著者
久永 真央 津田 孝雄 大桑 哲男 伊藤 宏
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-61, 2011 (Released:2012-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

労働環境や生活環境において,生体内に取り込まれた化学物質の皮膚からの放出に関する研究は少ない.そこで皮膚ガスを採取し,ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で分析を行い,生体内への化学物質の取込みを推定することを目的として本研究を行った.皮膚ガスの採取は,労働環境や生活環境の異なる被験者10名(男性7名,女性3名)の左手から行った.被験者の皮膚ガス中に,ベンゼン,トルエン,キシレン,2-エチル-1-ヘキサノール,p-ジクロロベンゼンなどを確認した.有機化学実験をしている異なる2 つの研究室の被験者間に,2-エチル-1-ヘキサノールの濃度平均値の有意差を認めた.またトルエン濃度が,他の被験者に比べ有意(P<0.05)に高い被験者がいた.この被験者がガス関連事業所で働いていたことから,職場での暴露によると推測された.労働環境や生活環境の違いにより,皮膚ガスに含まれる化学物質には,人により差があることが示唆された.
著者
田端 正明 上田 晋也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.839-846, 2017-11-05 (Released:2017-12-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

三重津海軍所(佐賀市川副町,諸富町)から出土した磁器の生産地を推定するために,三重津海軍所が稼働した幕末期に鍋島藩の肥前で磁器を製造していた窯跡{年木谷(有田町),広瀬向(有田町),志田東山(嬉野市塩田町),波佐見(波佐見町)}から出土した磁器(135点)についてシンクロトロン蛍光X線分析を行い,三重津海軍所出土磁器(24点)と比較した.磁器の胎土成分であるRb,Sr,Y,Zr,Nbの蛍光強度比について,log(Rb/Sr)vs. log(Zr/Sr),(Fe/Rb)vs.(Sr/Rb)及び(Rb/Nb)vs.(Zr/Nb)の関係を調べた.水簸工程における元素の移動に着目した(Rb/Nb)vs.(Zr/Nb)のプロットから,出土磁器の生産地を三つのグループに分類することができた.同様に,三重津海軍所出土磁器の碗も種類によって三つのグループに分類された.二つのプロットの類似性より三重津海軍所出土磁器の産地を推定した.
著者
赤峰 生朗 大高 亜生子 保倉 明子 伊藤 勇二 中井 泉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.863-871, 2010 (Released:2010-12-21)
参考文献数
17
被引用文献数
9 12

実験室レベルで高感度な分析が可能な三次元偏光光学系蛍光X線分析装置を用いて,コーヒー豆の微量元素を定量し,統計解析を行った.産地判別に有用な元素を明らかにし,簡易・迅速な産地判別法として確立することを目指した.産地の指標となる6元素(Mn,Fe,Ni,Rb,Sr,Ba)を高感度に分析するために測定条件を最適化した結果,各元素において直線性のよい検量線を作成することができ,各元素の検出限界は,サブppmレベルとなった.コーヒー生豆75試料中の6元素を定量し,主成分分析を行った結果,6産地(ブラジル,コロンビア,ベトナム,インドネシア,タンザニア,グアテマラ)の生豆を特性化することができた.また,同ロットの生豆と焙煎豆の各元素濃度を比較した結果,これらの6元素について大きな差は見られなかったため,今回の産地判別手法における焙煎の影響は小さいことが分かった.本手法では,試料の前処理は10分程度,測定時間は2時間30分であり,自動連続測定が可能であることから,簡易・迅速な実用性の高い分析手法として,コーヒー豆の産地判別への応用が更に期待される.
著者
鈴木 彌生子 中下 留美子 赤松 史一 伊永 隆史
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1053-1058, 2009 (Released:2010-01-25)
参考文献数
35
被引用文献数
10 21

We determined the differences in carbon, nitrogen and oxygen isotopic compositions (δ13C, δ15N, and δ18O) between short grain rice samples from 9 locations (Hokkaido, Yamagata, Niigata, Nagano, Ibaraki, Tokyo, Mie, Hiroshima and Okinawa) in Japan to discriminate their geographical origin. Oxygen isotopic composition of brown rice is well correlation with that of ambient water (R2 = 0.69). The δ18O values of rice samples are correlated with an increase in the latitude (R2 = 0.82). The δ13C values of upland rice are higher than those of paddy rice, depending on the water stress. These results suggest that δ18O and δ13C values of Japanese rice samples are reflected the difference in growth condition. The δ15N values of rice depend on the soil nutrition, where the rice is cultivated. Organic rice is characterized by higher nitrogen isotopic compositions (+ 3.0 to + 8.9‰) than conventional rice (−0.4 to + 3.2‰). Thus, δ15N would become a strong tool to discriminate between organic and conventional rice samples. Thus, the δ18O and δ13C values will be potentially useful for the discrimination of organic rice, and the geographical origin of rice within Japan.
著者
下山 進 野田 裕子 勝原 伸也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-100, 1998-02-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
17
被引用文献数
3 7

日本古来の浮世絵は,最も広く世界に行き渡った絵画形式であり,西洋文化に対する芸術的衝撃,特に多くの印象派の画家たちに与えた影響は“ジャポニズム”と言われる文化現象として知られている.1823年ごろに刷られた葛飾北斎の浮世絵“四日市”の赤色の着色料(R1~R3)と黄色の着色料(Y1~Y3),そして1821年ごろに刷られた五渡亭国貞の浮世絵“木母寺暮雪”の青色の着色料(B1~B3)について,それらの非破壊分析を光ファイバーを用いる三次元スペクトル法によって実施した.色刷り標準試料のそれぞれと三次元蛍光スペクトルの等高線図を比較した結果,赤色の着色料はベニバナの花弁から得られた染料“サフラワー”,黄色の着色料はウコンの根から得られた染料“ターメリック”,そして青色の染料は藍の葉から得られた染料“インジゴチン”であることが明らかとなった.
著者
脇坂 昭弘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.743-758, 2010 (Released:2010-11-11)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

溶液中の微視的構造に関する情報を得るために,液滴を真空チャンバー内でクラスターレベルに断片化し,その質量スペクトルを測定する分析技術を開発した.これにより水と有機化合物,及び電解質との相互作用によって形成されたクラスター構造とこれら水溶液の物性との関係を研究した.水-有機化合物系では,水-アルコール混合溶液のクラスター構造と,粘度,相分離特性,選択的溶媒和などの溶液の物性との関係を明らかにした.また,アルコール自己会合クラスターの生成が水によって促進されるのは,溶液中で生じる分子間相互作用の相対的関係によることを明らかにした.電解質水溶液系では,硝酸,硫酸,酢酸水溶液のクラスター構造を解析し,酸性度との関係を明らかにした.更に,水中の酢酸が水酸化ナトリウムにより中和され塩を生成する過程をクラスターレベルで観測した.
著者
上田 智也 江南 和幸 藤原 学
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.505-513, 2020
被引用文献数
1

<p>For the four paintings in the first volume of the Nara-ehon "Taketori Monogatari", made in the early Edo period (1661-1681), point and two-dimensional analyses were carried out with an X-ray analytical microscope at room temperature under atmospheric conditions. The fluorescent X-ray spectrum of the washi used confirmed the presence of small amounts of Si, P, S and K, and it was very similar to that of a Torinoko-gami that was quite expensive but common in Japan of the Edo era. By point analyses of the four paintings, various pigments, such as vermillion (HgS), minium (Pb<sub>3</sub>O<sub>4</sub>), marachite (Cu<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>(OH)<sub>2</sub>), azurite (Cu<sub>3</sub>(CO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>(OH)<sub>2</sub>), chalk (CaCO<sub>3</sub>), gold and silver, were found to be used. The point analyses were performed on the eight gray-blue areas in the four paintings. In all parts Co was detected together with Si, Fe and As. These results suggest that a cobalt ore with a high probability of smalt was selected for coloring gray-blue. There are three types of blue colorants in the fourth painting: azurite, indigo as a dye and the cobalt ore. It was confirmed that the production period of the Nara-ehon "Taketori Monogatari" was in the early Edo period consistent with its appraisal.</p>
著者
小畠 弐朗
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.364-369, 1956-06-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1
著者
津越 敬寿 高見 耕三 三島 有二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.117-124, 2019-02-05 (Released:2019-03-05)
参考文献数
13

GC等の分離工程なしに,試料を昇温加熱した際の発生気体成分を分子量情報ごとに分離検出する分析装置を用いたポリオールエステル油製品の組成解析について報告する.分析装置は,イオン化法として分子イオン検出性能に優れるイオン付着イオン化法を備え,約30 Paの減圧下で昇温加熱するダイレクトインレットプローブと,精密質量での評価を可能とする飛行時間型質量分析計で構成される.減圧下での昇温加熱は,高沸点成分や難揮発性成分も熱分解の影響少なく検出することが可能となる利点がある.市販のポリオールエステル油製品5種類を測定したところ,その分子量情報と構成脂肪酸組成,製品中に含まれる遊離脂肪酸やその他の含有成分の情報を得ることができた.1測定は10~15分程度であり,GC/MSなどでは検出困難な長鎖脂肪酸を構成要素とするポリオールエステル類も明瞭に検出することができた.
著者
北條 正司 能勢 晶
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.171-181, 2008 (Released:2008-03-24)
参考文献数
43
被引用文献数
2 1

アルコール飲料中における水-エタノールの水素結合の特性は十分には解明されていない.本研究中では,水及びエタノールのOHの1H核磁気共鳴及びラマン分光データに基づき,水素結合構造性に及ぼす要因を研究した.酸類(H+及び解離していないHA)だけではなく,塩基類(OH-及び弱酸からの共役塩基A-)が水とエタノール間のプロトン交換を促進するとともに,水-エタノール混合媒体の水素結合構造性を強めていることが明らかになった.酒類(ウイスキー,日本酒,焼酎)中においても,溶存する化学成分によって,水素結合性が強められていることが実証された.酒類又はアルコール飲料中において,元々含まれていたか,又は後に獲得された成分である水素結合供与体及び受容体が水とエタノール分子間のプロトン交換速度を促進すると示唆された.
著者
中田 麻衣子 村田 芳行 多田 幹郎 下石 靖昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.899-902, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
8

A simple spectrophotometric method for the determination of polyoxyethylene nonionic surfactants, such as TritonX-100 with 1-(p-phenylphenacyl)-4-(4-aminonaphthylazo)-pyridinium bromide(PPAP), was developed. PPAP was synthesized by quarternizing 4-(4-aminonaphthylazo)-pyridine with p-phenylphenacyl bromide. Because PPAP was easily associated with nonionic surfactants to produce a blue ion associate in aqueous solution, the concentration of nonionic surfactants were determined by measuring the absorbance of ion associates at 612 nm. The apparent molar absorptivity of the TritonX-100 ion associate was 1.0×103 dm3 mol−1 cm−1 at 612 nm. The calibration graph for TritonX-100 was linear over the range from 6.0×10−5 to 8.0×10−4 M, and the relative standard deviation for 5.6×10−4 M of TritonX-100 was 2.0%. The proposed method was applied to the determination of nonionic surfactants in commercial domestic detergents.
著者
笹本 なみ 阿部 善也 高久 雄一 中井 泉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.591-597, 2017-08-05 (Released:2017-09-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

For the characterization of Japanese sake, the trace-element composition and isotope ratio of the light elements of the sake (rice wine) were analyzed by means of an inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy/mass spectrometry and isotope ratio mass spectrometry with the aim of chemical characterization of sake related to their origins and grades. The origin of trace elements in sake was investigated by comparing the trace-element composition between sake and water for brewing sake. It was found that the hydrogen stable isotope ratio of sake shows a latitude effect, which is related to that of the river water and groundwater of the surrounding area. Certain trace elements, such as V and Sr, were related to the geological origin of the water source, indicating the region of the brewery. We have discovered that certain trace elements are related to the rise polishing ratio, which determines the quality of Japanese sake, which is hence useful for evaluating the sake’s grade. Specially designated sake (Tokutei meisho-shu) and regular sake (Futsu-shu) could be distinguished by combining the use of the isotope ratios of hydrogen and carbon. Consequently, the present study has demonstrated the effectiveness of trace-element composition and isotope ratio of light elements for the chemical discrimination of factors directly linked to the sales price of Japanese sake, i.e., the rice-polishing ratio, the region of breweries and the addition of brewing alcohol into sake.
著者
石井 裕子 滝山 一善
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.145-149, 1990-03-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
17
被引用文献数
10 4

食用のほうれん草,野草のベゴニア,すいば,あかざなどは葉や茎にシュウ酸カルシウム結晶を含んでいる.植物体では代謝の最終産物で不用有害なシュウ酸をカルシウム塩として固定して無害にしている.これらの結晶に一水和物と二水和物があることを見いだし,結晶の形態から両者を区別することができた.ベゴニアには二水和物が,すいば,あかざには一水和物が,ほうれん草には大部分が二水和物で約20%の一水和物が存在していた.シュウ酸とカルシウムの種々の濃度の溶液を種々のpHで室温で反応してシュウ酸カルシウム沈殿を生成した.試薬濃度と,pHを変化させて生成した場合,更にクエン酸,リンゴ酸,コハク酸などを共存させた場合に粒子の形態に特徴ある,長い六角形板状の一水和物及び八面体を基本とする二水和物の結晶が析出した.これらのことから植物中のシュウ酸カルシウム結晶の一水和物と二水和物の生成条件の一部が解明できた.
著者
富山 眞吾 上田 晃 北井 亜希子 葵 守一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.131-142, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
31
被引用文献数
4 5 2

食品原材料となる地下水の品質管理の問題が起きており,地下水の起源について水質特徴などの科学的根拠に基づいて判別する技術が必要とされている.本研究は,埼玉県狭山市にある株式会社フードケミファ新埼玉工場の井戸で採水している地下水と周辺河川水を対象に,水素・酸素安定同位体比等の地球化学的手法と3次元数値モデルによる地下水流動解析を用いて地下水の起源や流れを予測した.地下水の水質は関東平野西縁辺部の河川水と同様の重炭酸カルシウム型であり,河川水と比較してNa+とHCO3−に富む傾向にある.水素・酸素同位体比から,地下水の起源は入間川上流等の平野縁辺の河川にあることが推定される.数値モデルによる地下水流動解析では入間川上流域から新埼玉工場に向かう地下水の流れが予測され,主要陽・陰イオン濃度や水素・酸素安定同位体比から推定される地下水流動と整合的である.地球化学的手法と数値解析により得られた結果は従来の知見と矛盾せず,地下水起源の判別法としての可能性が示唆された.