著者
下山 晃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.14-18, 2002
参考文献数
21

隕石の中でも炭素質隕石は太陽系の原始物質であり, 有機物を含んでいる。隕石アミノ酸が地球起源でなく, 非生物起源であり, このため宇宙起源であることはマーチソン隕石の分析から判明した。同様な結果は南極隕石のアミノ酸分析からも判明し, その種類や存在量, また, 隕石有機物としての特徴もこれらの隕石では共通していた。その後の分析ではジカルボン酸もアミノ酸と類似した特徴をもつことが判明した。隕石有機物の起源については, これまで原始太陽系星雲中や隕石母天体上での成因が提案され, 議論されてきた。近年のH, C, Nの安定同位体比の研究は, 異常に高い同位体比を隕石有機物が示すことから, 先太陽系(つまり星間)での生成が議論され, 起源と成因について新しい展開が見られる。さらに, 個別の同位体比測定が可能になり, 分子の生成経路に関しても考察が可能となった。さらになお, 隕石有機物の化学進化はアミノ酸や核酸の塩基などの生成まで進んだことを示しており, 地球に次いで生体関連有機物が存在する天体が存在することが判明した。
著者
SEKI Shu ACHARYA Anjali KOIZUMI Yoshiko SAEKI Akinori TAGAWA Seiichi MOCHIDA Kunio
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
Chemistry letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1690-1691, 2005-12-05
参考文献数
14
被引用文献数
17

The photoconductive properties of a series of oligogermanes with dendrite or linear skeleton have been studied by flash photolysis time-resolved conductivity (FP-TRMC) technique. The values of mobility (&Sigma;&mu;) and photocarrier generation yield (&phi;) have been discussed as a function of C<SUB>60</SUB> concentration. The &phi;&Sigma;&mu; values in the order of 10<SUP>&minus;4</SUP> to 10<SUP>&minus;3</SUP> cm<SUP>2</SUP>/Vs were observed for the oligogermanes upon exposure to 532, 355, and 193 nm light. The intrinsic value of mobility in the derivatives was also estimated without contribution from the additives, suggesting the presence of a highly conducting path along the Ge backbones of not only linear oligogermanes but also hyper-branched germanium dendrites.
著者
中井 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.377-381, 1939 (Released:2009-12-22)
参考文献数
3

滿洲國奉天省海城縣より産出せる一放射性鑛物の化學分析を試みて第3表の結果を得,之によりて此の鑛物がユークセン石なることを確めたり.又X線スペクトルにより此の鑛物に於けるランタニド元素の配分状態を見たり.尚此の鑛物及びその外圍に附着せる分解生成物のラヂウム含量を測定し前者にありてはラヂウムとウランとはほぼ平衡にあれど,後者に於ては平衡にあらざることを指摘したり.又別に此の鑛物と共出する褐簾石のラヂウム含量をも定めたり.
著者
蓑手 重國
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.14-18, 1994-01-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
3

化学を学ぶ者にとって, 物質量「モル」は非常に有用な単位である。しかし, この「モル」という単位は, これに初めて出会う高校生にとっては理解するのにかなり苦労するようである。生徒が「モル」を理解し, これを利用して物質の量的関係をうまく取り扱えるようになると, 少なくとも化学を敬遠することはなくなるであろう。そこで, 高校生が「モル」の学習の際, どこでつまずくのかを探り, それを解決する方法を考えてみる。
著者
桂田 和子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.606-607, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
4
著者
長岡 涼太
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.282-283, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)

長岡技術科学大学Technical Education Circle(TEC)は,青少年の科学技術教育の推進を目的に活動する学生サークルである。TECは長岡市内を中心に主に新潟県内で実験教室や工作教室を開催し,子どもたちに科学の楽しさを伝える活動を行っている。本稿では,その取り組み内容について紹介する。
著者
奥脇 昭嗣 伊藤 宏 岡部 泰二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.10, pp.1462-1468, 1977
被引用文献数
5

アンモニアーアンモニウム塩-炭水化物混合溶液によりマンガンノジュールを処理し,銅,ニヅケル,コバルト,マンガンおよび鉄の浸出率を求め,最適浸出条件および浸出機構を検討した。 チタンライニング製内容積11のオートク1レーブに炭水化物としてブドウ糖,デンプンあるいはホルムアルデヒド0~591,ユール(平均粒径o.05~o.44,4種)10~1009/1およびアンモニア濃度0~7。5N,アンモニウム塩濃度0~1009μのアンモニアーアンモニウム塩混合溶液500 mJを入れ,温度60~160。C,時間0~6 hr,かきまぜ速度500 rpmの条件下で浸出した。ブドウ糖の場合,微細なノジュールから1時間以内に銅,ニッケルおよびコパルトを80%以上の高収率で浸出するための条件は温慶80。C,ブドウ糖/ノジュール重量比0.16,アンモニア濃度1,5N,アンモニウム塩濃度409μであった。マンガンと鉄の浸出率を抑制するためには,銅,ニッケルおよびコパルトの浸出率は少し低下するが,アンモニウム儘としては炭酸塩が非常に良好であったげデンプンおよびホルムアルデヒドの場合,ブドウ糖の場合よりはるかに高温で浸出する必要カミあり,最適温度は160。Cであった。 銅,二撃ケル,コバルトおよびマンガンの浸出挙動はつねに-体であるから,浸出機構としては,アンモニアーアンモニウム塩混合溶液においてノジュール中の酸化マンガン(y)が還元され,てマンガン(III)アンミンが生成し,それにともなって銅ニッケル,コバルトがアンミン化浸出されるものと考えられる。
著者
中山 将伸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.154-157, 2006-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2
被引用文献数
1

古くから電池の電解液には水が使われてきたが,今日の携帯電話やノートパソコンの電源に使われているリチウムイオン電池の中にはリチウム塩を溶かした有機電解液が水の代わリに使われている。本稿では,最初になぜ水ではなく有機電解液が用いられているのかを説明し,続いて有機電解液の分子材料設計をイオン伝導の観点から説明する。最後に,有機電解液を超えた新たな材料開発への取り組みについて簡単に紹介する。
著者
Fujii Ryosuke Kondo Mizuho Kawatsuki Nobuhiro
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.673-675, 2016
被引用文献数
5

Doping photosensitive <i>N</i>-benzylideneaniline (NBA) derivatives in a photoinactive polymethacrylate with benzoic acid (BA) side groups (P6BAM) produces a photoinduced orientation in a P6BAM film and its patterning upon exposure to linearly polarized (LP) 365-nm light and subsequent annealing. Two types of NBA derivatives are used: NBA1 containing a carboxylic acid substituent effectively generates a significant photoinduced reorientation. The H-bonds among the carboxylic acids of BA and NBA1 play an important role in the photoinduced orientation.
著者
岡本 裕巳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.42-45, 1999-01-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

分子の中で, 原子はバネ(化学結合)でつながれた質点系のように振る舞い, 固有の振動数で振動している。その振動数は赤外線の振動数に相当し, 赤外線を分子にあてると固有振動と共鳴して吸収される。これを利用して分子内振動を調べるのが赤外吸収スペクトルである。赤外吸収スペクトルは, 化合物中の官能基の同定に用いられるほか, 分子の対称性を教えてくれることもあり, 構造化学上の重要な発見に寄与している。ここでは赤外吸収がどのように測定されるのか, どのように分子構造の研究に用いられるか, その考え方の基礎を解説する。
著者
尾野 光夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.20-23, 1997
参考文献数
7

「教科書が面白い」などという台詞は, とんと聞いたことがない。理由は色々あろうが, 指導要領と検定による内容の画一化, 十年一日の如き内容の古さ, 大学入試を意識した内容のてんこ盛り等々, 数え上げれば切りがない。どうすればよいのか-使う側とつくる側との二股をかけている筆者には, 皆目見当が付かない。が, 黙っていたのでは解決策も生まれてこない。徒然なるままに思いの一端を記し, 読者のご判断を仰ぎたい。
著者
斎藤 智夫 野口 順蔵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.469-471, 1961-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
6

D-グルコースを冷濃硫酸に溶解し,オキシ塩化リンと反応させたのち,反応液を冷工一テルに注入する。沈殿は結晶として得られる。この沈殿を水酸化バリウムで処理してD-グルコース-6-リン酸バリウム(mp157℃(分解))が理論の90%の収率で得られた。水酸化バリウムで遊離硫酸イオンのみを除けば,ビス-D-グルコース6,6´リン酸が得られ,これは等mo1の炭酸水素カリウムで中和すればD-グルコース-6-リン酸モノカリウム塩を与える。それでこの反応はD-グルコース2mo1とオキシ塩化リン1molが反応してビス-D-グルコース-6,6-リン酸が中間体としてでき,アルカリでの中和でD-グルコース1mo1が離れてD-グルコース-6-リン酸塩ができると思われる。グルコース-6-リン酸バリウムの赤外線吸収スペクトルやフェーリング反応も容易にすみやかに起ること,亜硫酸水素ナトリウムと沈殿を生ずること,明瞭なシップ反応を示すことなどからD-グルコース-6-リン酸バリウムの構造はピラノース環状構造でなく開環構造であると考えられる。
著者
石崎 舜三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.151-155, 1989-04-20 (Released:2017-07-13)

偉大な自然という営みの中で, 動物や植物の生命から作り出された繊維は, 水が存在する自然の環境の中で形造られ, 約紀元前3000年も前から, 我々人類の生活に深いかかわりをもちながら現在に至っている。天然繊維は, 生まれながら親水性の繊維であり, その背景も理解できよう。一方, 疎水性の合成繊維は, 自然の営みを先生に, 人類の知恵を駆使して誕生した繊維で, 生まれてから, まだ半世紀にも満たない。合成繊維は, 水のない状態から生まれてきた秀才であるが, しかし, 水に関しては天然繊維に比して, まだほど遠い。この点でまだまだ天然繊維に学ばなければならないことも多い。吸水性も吸湿性も共に高い合成繊維を作ってみたいという課題は, 合成繊維の研究に携わる者にとって大きな目標でもあり, 夢でもある。