著者
北島 信正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.478-482, 1994-07-20 (Released:2017-07-11)

金属タンパク質は電子伝達体, 酸素運搬体, 酵素, 遺伝子発現の調節因子などとして生体にとって必要不可欠な働きを行っている。合成金属錯体では得られないこれら精緻な機能を実現している最大の秘密はその金属サイトの特異な構造にある。最近になりX線解析をはじめ種々のアプローチによってその構造が原子レベルで解明されつつある。ここでは代表的な例としてヘモシアニン, メタンモノオキシゲナーゼ, ニトロゲナーゼを取り上げ, これらの研究の現状と今後の展望を簡単に述べる。
著者
上田 邦介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.408-409, 2013-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

岩絵具とは,有色鉱物を粉砕し,その粉末を水簸(すいひ)精製して作られた鉱物性顔料である。その主たる特徴は,1種類の有色鉱物を水簸分級することによって何種類かの粗さの粉体を造り,それにより色のバリエーションを構成する粒状顔料である。近年は日本画の画風が大きく変化をしたため,金属酸化物を焼成溶融し塊を作り,天然岩絵具と同様に粉砕し水簸精製した新岩絵具も登場。その色数は1,500色をはるかに超える。本稿は近代日本画を支えた岩絵具の本質と美の進化に迫る。
著者
上山 憲一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.346-349, 1998-06-20 (Released:2017-07-11)

アミノ酸や核酸の原料となるアンモニアは, 窒素固定菌による窒素分子の還元反応によってつくられる。ニトロゲナーゼと呼ばれる酵素が, 電子, プロトンとATPなどの還元剤を使って, この反応の触媒として働く。ニトロゲナーゼの反応中心はMoとFe原子を含む蛋白質で, それぞれの金属イオンは無機硫黄でつながったクラスターを形成している。このクラスターは空気に極めて不安定であり, この性質が, 遺伝子操作で効率の良い作物をつくるという重要課題を解決するときの障壁になっている。
著者
高野 慎二郎 佃 達哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.602-605, 2014-12-20 (Released:2017-06-16)

美しい光沢を発する金は,古来より装飾品等に用いられるなど我々にとって身近な金属である。有機配位子と呼ばれる分子によって表面を修飾することで,1ナノメートル程度の大きさの超微粒子(金クラスター)を安定化合物として合成することができる。これらの配位子保護金クラスターの構造を調べると,13個の金原子が「超原子」と呼ばれる正二十面体形の基本構造体を形成することが明らかになった。さらに,2つの金超原子が様々な様式で結合した双二十面体形の「超原子分子」も合成されている。本稿では,これら金原子の集団が示すナノの世界の美を紹介する。口絵30ページ参照。
著者
清水 瀞 加藤 博史 米沢 貞次郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1050-1053, 1967-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18

シクロプロパン環の共役性について検討するため, シクロプロビルベンゼンおよびメチルシクロプロピルケトンについて, それぞれ2種の構造,非bisect形〔A〕とbisect形〔B〕の電子状態を拡張Hückel法を用いて計算しエチルベンゼン,スチレン,メチルイソプ揖ピルケトンおよびメチルビニルケトンの結果と比較した。シクロプロピルベンぜンおよびメチルシクロプロピルケトンのイオン化ポテンシャル, 電子分布およびπ-bond populationを比較することによって,両化合物とも〔B〕構造の方が〔A〕構造より共役能が大きいことがわかった。それゆえに, シクロプロパン環は環平面内にビニル基と同程度の共役能を有することが明らかにされた。
著者
佐藤 成哉 亀丸 寛一 相浦 哲
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.585-588, 2001-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
井上 誠一 小杉 千香子 陸 占国 佐藤 菊正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.1, pp.45-52, 1992-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3

[2,3]シグマトロピ-転位反応によりオリベトールモノアセタートのヒドロキシル基のオルト位にメチル-3-ブテニル=イソプロピル=スルフィドを導入した結果,ほぼ1:1の比率で2種類の生成物すなわちかアルキル体と6-アルキル体が得られた。この2種類のアルキルオリベトール誘導体を原料とし,カンナビノールの全合成を試みた。まずそれぞれをアシル化し,酸化して得られたスルポキシドのキシレン溶液を加熱還流すると,スルポキシドのβ-脱離の後,分子内Diels-Alder付加環化反応が起こり,ラクトン環を含む三環性化合物であるΔ9-テトラヒドロジベンゾ[b,d]ピラン-6-オンをシス体優勢に得た。この三環性ラクトンは,メチル化,脱水を経てカンナビノールの前駆体`証4翫テトラヒドロカンナビジオール(CBDと略記する)とabn-cis-Δ9-CBDに収率よく導かれた。このcis-Δ9-CBDにBF3触媒を作用させると,定量的にcis-Δ9-テトラヒドロカンナビノールが得られた。もう一方のabn-cis-Δ9CBDをかトルエンスルホン酸共存下ベンゼン中で加熱還流させると,71%(GC)収率(単離収率37%)でtrans-Δ8-テトラヒドロカンナビノールが得られた。
著者
伊東 一臣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.362-363, 2013-07-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

我々がただ美しいと見ている花火。その一瞬に花火師たちの多くの努力が込められている。初めに花火の打ち上げ方法と煙火玉の構造について解説し,打ち上げに伴う問題点について述べる。次に花火を美しく演出する色を作り出す金属化合物及び星の組成を紹介し,発色の問題点を指摘する。また現在も赤,黄,緑及び青の4色に限られる発光メカニズムと発光・発色種について説明し,実際に使われる星の構造と製作法について述べる。
著者
坂本 清子 綱脇 恵章 津波古 充朝 田中 和男 小林 正光
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.363-369, 1990
被引用文献数
1

五酸化ニリンと水酸化アルミニウムとの反応によるリン酸アルミニウムの生成における3種の結晶形の異なる五酸化ニリン(H型,0型および0'型)の反応性の相違,および水酸化アルミニウム分子内のヒドロキシル基がリン酸アルミニウムの生成におよぼす効果について,粉末X線回折,示差熱分析および熱重量分析法を用いて検討した。1.生成するリソ酸アルミニウムの種類およびその生成量は,五酸化ニリソと水酸化アルミニウムの混合割合(R=P205A1(OH)3),加熱温度および加熱時間によって異なった。すなわち,R=0.5ではオルトリン酸アルミニウムAIPO4のberliniteとcristobalite型およびメタリン酸アルミニウムAl・(PO3)3のA型,R=1.5では三リン酸二水素アルミニウムAIH2P3O10.のI型およびA1(PO3)3のA型とB型,R=3ではA1(PO3)3のA型.B型およびE型が生成した。2・水酸化アルミニウムに対する五酸化ニリンの反応性は,H型五酸化ニリンが一番高く,次にO'型,0型五酸化ニリンの順であった。この傾向は五酸化ニリンの加水分解速度の順序と一致した。3.水酸化アルミニウム分子内のヒドロキシル基は五酸化ニリンの加水分解に寄与し,それは五酸化ニリソとα-アルミナとの反応においてあらかじめ添加した水分と同様に重要な役割を果した。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.178-181, 1999
参考文献数
4

昨年5月から11月にかけ, 日本化学会・同化学教育協議会・「夢・化学-21委員会」は合同で, 初の試み「高校化学グランプリ」を企画実行した。今回は境界条件がきつくて「全国」の手前, 関東・東北大会に終わったが, 国際化学オリンピック(IChO)への参加を(まだ少し遠い?)射程内に置き, 大学入試レベルを超す部分もある筆記試験と, マニュアルがないに等しい実技試験(実験)で高校生の頭と腕を競ってもらった。企画のいきさつ, 現場の雰囲気, 将来展望などを紹介したい。
著者
鬼頭 真弓 長谷川 將 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.82-85, 2013-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

キチンに担持させた金(III)化合物を用いる,還元性有機化合物の検出における反応条件を再検討した。反応時に用いる塩基を従来の炭酸ナトリウムから炭酸アンモニウムに変えることで,金ナノ粒子の生成による呈色が鮮やかな色調に変化した。またキチンに担持させる金(III)化合物の量を従来の五分の一まで減少させることができた。さらに,銀鏡反応やフェーリング液の還元では検出が困難であったギ酸エステルの還元性も検出できることが明らかとなった。
著者
小林 悦郎 植松 喜稔 須貝 稔 樋口 美起雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.8, pp.1319-1325, 1981-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

酸化チタン(IV)-水和物(メタチタン酸)と活性炭から複合体を調製し,このもののリン酸イオン,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質などの吸着特性を研究した。メタチタン酸の原料には酸化チタン(N)製造における中間体としてのTiOSO4の硫酸溶液(TiO2250g,H2SO41044g/l)を用いた。吸着剤としての複合体はつぎのようにして調製した。適量のTiOSO4の硫酸溶液と粒状活性炭とをまぜあわせ,混合物を180℃ に加熱して過剰の硫酸を除き,活性炭に添着した酸化硫酸チタン(IV)を水洗してメタチタン酸に加水分解したのち,生成物を乾燥した。適当な調製条件(5mlTiOSO,溶液/10g活性炭)で得た複合体は市販メタチタン酸と同程度のリン酸イオンを吸着(Freundlich式;q=kc1/nのk値は17~19mg-PO43-/g-吸着剤)し,複合体中に含まれたメタチタン酸の質量あたりに換算したリン酸イオンの吸着量は市販メタチタン酸のそれの約10倍の値を示した。複合体はまた縮合リン酸イオンを吸着した。吸着等温線の傾きFreundlich式の1/nは,オルトリン酸イオンではO.116,三リン酸イオンでは0.261であった。複合体は担体としての活性炭の特性を活かし,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質(フェノール)などを吸着した。それらのものに対する吸着能は複合体の調製条件におけるTiOSO,溶液(ml)と活性炭(g)との比の増大によって減少した。カラム試験では複合体中に吸着されたリン酸イオンは,2N水酸化ナトリウム溶液と水で溶離され,のち吸着剤は酸で再生した。
著者
奥 彬
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.450-453, 2002-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

ペットボトルに象徴される廃プラスチック問題を, 環境問題のみならず有機資源枯渇問題としてとらえ, 化学産業の生命線である資源保護のために, 教育界, 産官学, 消費者社会が協力して, 一定量の資源から繰り返し同じ商品を製造する資源再生の考え方を実現すべきことを説く。石油は経年的に急速に枯渇する資源, また植物資源は量的に有限な資源であるから, プラスチック産業は早急に資源増殖型の化学的な資源再生技術を考案して「資源の社会的蓄積による無限化への挑戦」に取り組むことを述べる。そのためには製造と廃棄の量を減らすだけでなく, 燃焼処理法を抑制する化学システムと生物非分解性の植物由来プラスチックの生産技術を考案すべきことも説く。さらにそれを助けるデポジット・リース・レンタル制度の普及, 素材の統一, 廃プラスチックの直接クラッキング法によるナフサ循環などを提案している。
著者
森 重樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.600-601, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
2
著者
中西 真 高田 潤
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.484-485, 2012-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

電磁波吸収材料は,不要な電磁波を効率良く吸収し熱に変換する材料である。電磁波の電界や磁界は物質中の電子が持つ電荷や磁気モーメントと相互作用し,電磁波のエネルギーが電子の移動や磁気モーメントの運動のエネルギーに変換されることで吸収が生じる。特に磁性損失材料の吸収機構である磁気共鳴について解説するとともに,最近の材料の開発動向についても触れる。