著者
草間 潤 石井 忠雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1509-1511, 1966-08-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
2

ぶな材からHCIガス法木材糖化によって得られた後処理液を,脱色用樹脂,活性炭,イオン交換膜,イオン交換樹脂などによって精製し,糖液よりグルコースの晶出試験を行なった。この精製糖液は全糖に対し1.3%のキシロース,4.5%のポリグルコースを含んでいるが,糖類以外の不純物はほとんど含まれていない。内容積1.6lおよび0.6lのガラス製横型晶出器による試験結果によれば一番糖より三番糖までの累計結晶収率は原液グルコースに対し最大84.8%であり,累計晶出時間は149時間であった。不純物のキシロース,ポリグルコースの大部分は糖蜜中に蓄積される。したがって二,三番糖の晶出速度は一番糖に比して低下し,微晶が多い。一方前処理糖液は不純物が多く経済的な精製は困難であるが,十分に精製した場合,一番糖として全糖に対し20.8%のキシロースと8.4%のグルコースの混晶が析出した。
著者
君塚 信夫 前田 憲 半田 豊和 國武 豊喜
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.5, pp.301-308, 1997

無機原子・分子を集積組織化して,無機ナノ構造を造り上げてゆく無機マニビュレーション技術の開発は,無機精密合成の重要な課題である.近年,従来の物理的無機微細化技術にはない特徴を有する手法として,有機分子集合体を利用する無機ナノ合成が注目されている.本論文では,高い構造秩序性を有する二分子膜キャストフィルムの層間を鋳型とする,低次元金属ハロゲン化物クラスターやシアノ架橋高分子錯体の合成,構造制御について検討した.その結果,イオン交換法,共分散法ならびに逐次合成法により,二次元キャストフィルム層間において無機クラスター・高分子錯体が形成されること,またその次元構造ならびに配向組織化状態が,二分子膜の秩序構造や膜表面における静電的相互作用に依存することを明らかにした.
著者
藤永 太一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.400-403, 1985

環境化学は, 人間活動の効果を考慮に入れた自然科学と技術の一分野である。したがって総合科学の代表的なものの一つであるが, 学術としての基礎が確立していないために公害対策技術と誤まって考える向きが多い。本稿では健全な環境の基本条件を化学の立場から考え, また将来の環境工学のあり方について述べる。環境化学の学問としての基礎は, Empedoklesが提唱したとされる4元説にあると考え, 気圏, 水圏, 岩石圏の化学反応と平衡を考察する。このため本稿の内容は主として化学であるが, 物理学, 生物学, 地学はもとより, 一部は社会人文科学の領域にも係っている。
著者
中村 洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.588-591, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
2

クロマトグラフィーは電気泳動とともに現代を代表する高性能物質分離手段である。クロマトグラフィーは固定相と移動相をツールとして様々な手法で広範囲の物質群の相互分離に活用されており,産業界においても分析・解析目的から分取目的まで広い用途がある。本稿では,クロマトグラフィーの理解に必要な用語・基礎理論を解説し,液体クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィーの要点を記述する。
著者
矢部 富雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.418-421, 2012
参考文献数
7

食品に含まれる糖質(炭水化物)は,タンパク質や脂質とともに三大栄養素の一つに数えられているが,糖質の摂取量は必要エネルギー量の60%程度と他に比べて非常に大きいことからも,その重要性をうかがい知ることができる。しかし,摂取される糖質はエネルギー源として利用されるばかりではなく,さまざまな生理機能に利用されている上,共生する腸内細菌が利用することによりその恩恵をも受けている。本稿では糖質がどのように化学物質としてふるまっているのかについて,「見分ける」をキーワードとして概説する。
著者
土橋 律
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.88-89, 2014-02-20 (Released:2017-06-16)

燃焼は,古くから身近なエネルギー源として用いられている。燃焼により,燃料のもつ化学エネルギーを熱エネルギーに変換することができる。本稿では,都市ガスの主成分であるメタンを例に,燃焼とエネルギー変換について取り上げた。燃焼熱の高位発熱量と低位発熱量,燃焼の総括反応と素反応,火炎からの発光(化学発光とすす粒子の発光),実際の給湯器におけるエネルギー効率向上の技術などについて概説した。
著者
中川 良三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.4, pp.703-708, 1985-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
8

人為的水銀汚染の実態を解明するためには,まず,自然環境から供給される水銀量を明らかにしなければならない。火山ガスは環境大気中に水銀を供給する発生源の一つである。火山ガスの水銀に関連する基礎資料を得るために,北海道地方の地熱地帯 10 箇所(知床半島羅臼,屈斜路湖畔和琴オワツコツ地獄,川湯アトサヌプリ硫黄山,阿寒湖畔ボッケ,大雪山系高原温泉,旭岳地獄谷,十勝岳安政および新々噴火口,登別温泉地獄谷,昭和新山,恵山)の噴気孔ガス中の水銀含量を調べた。 34 試料の噴気孔ガス中の水銀量は乾きガスあたりで 3.2~1828μg/m3,相乗平均値 54μg/m3 であった。これらの値は,本州および九州地方の噴気孔ガス中の水銀含量の約 6 倍であった。同時に採集した凝縮水中の水銀含量は 0.01~32μg/l の範囲であり,火山性温泉水の水銀含量と同程度か,やや高値であったが,平均して気体として揮散した水銀量の 5 % 以下であった。温泉ガス中の水銀含量は 1.2μg/m3 以下であり,噴気孔ガスにくらべて 1/100 以下の低値であつた。火山活動によつて大気中に放出される水銀量を噴気孔ガス中の水銀含量から試算した結果,北海道地方では大気に関連する水銀の約 4 % が火山ガスの寄与によると推定された。この値は本州および九州地方の噴気孔ガス中の水銀量から試算した値の約 6 倍であった。
著者
千葉 耕司 遠藤 政博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.6, pp.1152-1155, 1973

活性アルミナ触媒の存在下,フェノールとメタノールとからヘキサメチルベンゼンを生ずる反応においてペソタメチルベンゼン,テトラメチルベンゼン類,トリメチルベンゼン類,ポリメチルフェノール類およびポリメチルフェノールのメチルエーテル類が副生した。これらの副反応生成物は原料中のメタノールの割合を減ずるか,もしぐは反応温度を下げるかすると増量した。また,ペソタメチルベンゼンもしくはテトラメチルベンゼンは本反応条件下ではテトラ-もしくはトリ-メチルベンゼンへ転化することなしにヘキサメチルベンゼンへ容易に転化した。フェノールがヘキサメチルベンゼンへ転化する主たる反応径路はつぎのとおりであるものと推察された。<BR>フェノール→2,6-キシレノール→2,4,6-,2,3,6-トリメチルフェノール→2,3,4,6-テトラメチルフェノール→ペンタメチルフェノール→ペソタメチルベンゼン→ヘキサメチルベンゼン
著者
Yamamoto Yohei
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
Bull. Chem. Soc. Jpn. (ISSN:00092673)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.17-25, 2011
被引用文献数
12

Self-assembly of &pi;-conjugated molecules is attractive for construction of well-defined, nanometer-scale electroactive materials. This account describes our developments on self-assembled nanotubes from Gemini-shaped hexa-<i>peri</i>-hexabenzocoronenes (HBCs). At first, detailed molecular arrangement in the nanotube is presented, which is perfectly revealed by a synchrotron radiation X-ray diffraction analysis of a macroscopic fiber consisting of highly aligned HBC nanotubes. Next, electroconductive properties of the HBC nanotubes are investigated. By means of direct current and noncontact methods, anisotropic charge-transport properties in the nanotubes are confirmed. The effect of the surface oligoether chains on intertubular conduction is also examined by field-effect transistor measurements. Finally, optoelectronic applications are developed by constructing newly designed nanotubes. These nanotubes possess a coaxial configuration, where an electron-donating graphitic bilayer of &pi;-stacked HBC arrays is laminated by an electron-accepting molecular layer. Due to the molecular-layer donor/acceptor heterojunction, the nanotubes exhibit remarkable photoconduction and photovoltaic outputs. Furthermore, the optoelectronic properties are modulated by changing the density of electron acceptors on the nanotube surfaces by coassembly of multiple components or utilizing photochromism. These results will advance to electronic and optoelectronic applications of supramolecular nanomaterials.
著者
浦野 泰照
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.264-267, 2011-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1

蛍光を原理とする分析手法は高い感度を有し,様々な分野で汎用されている技術である。本稿ではまず,生物・医学領域での蛍光可視化手法の有用性について,その感度,特異性の面から概説する。さらに,蛍光観測法に必須となる各種蛍光物質の挙動を化学的に正しく理解することをめざし,励起,発光,無輻射遷移の各過程についてわかりやすく解説する。