著者
岡崎 進 小又 基彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.9, pp.1615-1621, 1972-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
3

金属フッ化物の脱ハロゲン化水素反応に対する触媒活性を比較検討する目的で,CH3CF3の気相連続接触脱フッ化水素反応を行なった。初めに対比として無触媒反応を行なったところ,反応は750℃以上の高温で初めて進行し,一次反応となり,その速度定数はk=1.63 × 1010 exp (-53800/RT)となった。試みた十数種の金属フッ化物中,アルミニウム,鉄,マグネシウムのフッ化物が活性を示し,これらを用いると530℃程度の低温でも十分に反応が進行するようになる。これら活性金属フッ化物はいずれも固体酸性を呈し,不活性金属フッ化物が固体酸性を示さなかったことと対照的である。なお,触媒寿命を考慮する場合,塩基性フッ化アルミニウムはさらに有効な触媒であり,これによる接触反応を解析した結果,その反応は表面反応律速で,活性化エネルギーは28.3kcal/molになった。また吸着熱は12.9kcal/molと算出された。
著者
田中 稔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.404-405, 2017

<p>肝臓は体内最大の臓器であり,代謝をはじめとした生命を維持するうえで必須の機能を数多く担っている。その中でも,三大栄養素と呼ばれる炭水化物,脂質,タンパク質のエネルギー代謝は我々が活動するためになくてはならない重要な機能である。一方,人体に有毒な物質を解毒する薬物代謝も,生命を守るためには必要な機能である。このような肝機能を十分に理解することは,健康の維持だけでなく,新薬の開発においても重要な意味を持っている。</p>
著者
仲島 浩紀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.160-161, 2012-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

高等学校と大学の化学教育の架け橋になるような機会の提供として「化学実験」体験講座を実施した。その中で,女子高校生の日常生活の中の疑問としてでてきた日焼け止めクリームの紫外線防止効果について大学が保有する分析装置の1つであるESRを用いて検討を行った。本講座の試みとともに,得られた実験結果を紹介する。
著者
大崎 茂芳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.484-487, 2014

細いクモの糸は柔かくて強いと言われるが,繊維集合体となると繊維間に隙間があることから必ずしも強くない。クモの糸の繊維集合体において,隙間を軽減した構造を持つ切れにくいヴァイオリンの弦作りに成功した。クモの糸の弦でストラディヴァリウスに勝るとも劣らぬ音色を呈することを科学的に明らかにした。
著者
中西 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.530-531, 2006-10-20 (Released:2017-06-30)

大学で学んだことがそのまま実社会で役立つことは少ないが,広い視野でものごとを考える能力はいろいろな場面で役に立つ。広い視野でものごとを考える能力は,いろいろな教科及び科目の学習で得た知識を総合的に駆使する訓練から生まれる。このような能力を養う学習法は高校でも教えることができる。
著者
権 順度 田中 基明 去来 川覚三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.7, pp.1314-1319, 1973-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2

2-位にカルボニル基を有するセリジン類,すなわち2-ホルミルピリジン,2-アセチルピリジンおよび2-ベンゾィルピリジンを2-ヒドラジノベンゾチァゾールといろいろの条件下で反応させ,相当するヒドラゾン類を得た。このときに得られるZ-およびE-異性体をカラムクロマトグラフィーにより分離し,それらの分光学的性質を検討した。さらに,Z-およびE-異性体間の異性化反応について調べた。Z-異性体は分子内で六員環水素結合を形成するためNMRスペクトルではNHプロトンおよびピリジン環の6-位のプトンがE-異性体にくらべて低磁場シフトし, IRスペクトルではz,o :N吸収がE-異性体にくらべて低波数側に現われた。さらに,UVスペクトルではZ-異性体の極大吸収がE-異性体にくらべて長波長側にシフトした。得られたヒドラゾン類のうち,2-アセチルピリジン=2-ベソゾチァゾリルヒドラゾン[5]をキシレン中で加熱還流して,Z-およびE-異性体の挙動を調べた。その結果,[5z]a[5 E]の平衡は[5 z][5 E]÷3/7(wt%)の割合で一定値になることが明らかとなった。また[5E]はいくつかの有機溶媒中(2x10-5 molll),温度25ccでタングステンランプを照射すると容易にZ-異性体に異性化した。その異性化の速さは溶媒によって異なり,その速さの順序はEtOH>CH3CN>cyclo-C6H,2であった。
著者
権 順度 田中 基明 去来川 覚三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.8, pp.1526-1531, 1974-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
2

2-ホルミルフラン,2-ホルミル-5-メチルフラン,2-アセチルフラン,2-ホルミルチオフェンおよび2-アセチルチオフェンと2-ペンゾチァゾリルヒドラジンとをエタノール還流下で反応させ相当するヒドラゾン類(1)(X=O,RF R2H),(2)(X=O, R,=H, R2=CHs),(3)(X=O, R,= CH, R2=H),(4)(X=S,R,=,Rz=H)および(5)(X=S,Rl = CHs,R2H)を得た。このとき得られるヒドラゾン類からE体およびZ体を分別再結晶およびカラムクロマトグラフヂーによって分離し,それらの立体配置をNMRスペクトノレから決定するとともにスペクトル特性を調べた。さらに,得られた動体およびZ年間の光異性化反応についても検討した。NMRスペクトルでは(1E)~(3E)のフラン環の3-位のプロトンおよび4-位のプロトンが(1Z) (k3Z)にくらべて高磁場シフトし,また(IE),(2E):および(4E)におけるNHプロトンは対応するZ体よりも低磁場シフトした。これに対し,(3E)および(5E)と(3Z)および(5Z)のNHプロトンの間には差は認められなかった。 E体およびZ体は光によって容易に異性化したのでそれらの異性化速度を二三の有機溶媒中25 Cで,光源としてタングステンランプを照射して求あた。その結果,フラン環を有するヒドラゾン類 (1Z) E の異性化においてはZ体からE体への異性化速度定数k,は溶媒依存性[k (EtOH) ki(CHsCN) gtk,(6 40-C6H,2)],がみられたのに対しチオフェン環を有するヒドラゾン類(4Z);=2(4E)の場合の馬は顕著な溶媒依存性はみちれなかったe-方,E体からZ体への異牲化速度定数-,は前に述べた溶媒依存性とは逆の結果が得られた。
著者
石川 陽一郎 巳波 敏郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.277-279, 1960-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

アルカリ溶液中でのメチルエチルケトンとホルムアルデヒドの反応を動力学的に研究するため,メチルエチルケトンに対するホルムアルデヒドの第1段,ならびに第2段付加反応の速度定数をそれぞれ測定し,後者が前者よりも約4倍の大きさをもつことをあきらかにした。その結果反応生成物の中でもっとも重要なβ-メチル-γ-ケトブタノールを収量よく得るためにはホルムアルデヒドに対し, 大過剰のメチルエチルケトンを使用することによってジメチロール化合物の生成をおさえることが必要であることがわかった。
著者
山崎 恒博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1667-1671, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

塩化鉄(III)-メタノール系を対象に,化学蓄熱材としての適性を判定するため,必要な基礎的性質について実験的に検討し,次のような結果を得た。1.メタノール中に案げる塩化鉄(III)1molあたりの溶解熱は実験範囲内で92kJ以上あった。この溶液の希釈濃縮プロセスは可逆的に行うことができ,その際発生する希萩熱を利用する昇温サイクルは低温廃熱の回収などに適用できることを示した。2.基礎的物性として,その溶解度,沸点,密度などを測定した。また,蒸気圧,比熱などを推定した。これらの物性値を用い,昇温サイクルにおける温度上昇幅の計算例を示した。
著者
久保山 昭 松崎 早苗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.12, pp.2249-2252, 1973

77 Kにおいて,各種の結晶性溶液中で測定したアセナフテンキノソのリソ光スペク5ルは,いずれもその短い寿命(12~16ミリ秒),振動構造および溶媒効果に基づいて,π nスペクトルに帰属された。n-パラフィン中では,鋭いリン光バンドが観測された。 n-ヘキサンの場合は,たがいに接近した二つのリン光スペクトル(両者の間隔は約180 cm-i)が観測されたが,一方, n-ヘプタンの場合は,n-ヘキサンの場合の短波長のスペクトルに相当するスペクトルのみが観測された。このことから,Shpo1'skii効果の規則にしたがって,短波長と長波長のスペクトルはそれぞれ, n-ヘキサン結晶中で,その同称軸をn-ヘキサン分子の平面ジグザグ形の長軸方向に平行および垂直にして配位したアセナフテンキノン分子によるものと考えられるeジオキサンと四塩化炭素中のリソ光スペクトルは,アセナフテソキノソと溶媒間の強い電荷移動相互作用(四塩化炭素はO-アクセプターとなる)により,n-パラフィン中のそれにくらべて大きくブルーシフト(それぞれ約1100および700cm-目)し,かつ,幅が広い。
著者
安藤 亘 門脇 徹治 渡辺 篤史 崔 奈美 加部 義夫 恵良田 知樹 石井 紀彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1994, no.3, pp.214-223, 1994
被引用文献数
7

14族典型元素からなるセスキスルフィド(RM)<SUB>2n</SUB>Y<SUB>3n</SUB>(M=Si,Ge,Sn,Y=S)は,アダマンタン構造(IIa)(n=2)又は,まれにダブルデッカー構造(IIb)(n=2)をとることが知られている.これらセスキスルフィドから向かい合っている一対の硫黄を一つずつ減らすとノルアダマンタン(VIIIa),ビスノルアダマンタン(IXa),ノルダブルデッカー(VIIIb),ビスノルダブルデッカー(IXb)と呼ばれる新規なペンタ及びテトラスルフィドが生成する.トリクロロモノゲルマン([1a]と[lb]),トリクロルモノシラソ([8a]と[8b])トリクロロモノスタナン([10a]と[10b])の硫化水素/ピリジン,硫化リチウム,硫化ナトリウム,五硫化アンモニウム,ビストリメチルシリルスルフィドなどによる硫化反応では,トリクロロモノゲルマン([1a]と[1b])のみがゲルマニウム-ゲルマニウム結合を有するペンタスルフィド([5a]と[7b])を副生した.主生成物は,アダマンタン構造のセスキスルフィド([2a],[2b],[9a],[9b],[11a]と[11b])が,トリクロロモノゲルマン,トリクロロモノシラン,トリクロロモノスタナンにおいても生成してきた.一方,テトラクロロジシラン[12]とテトラクロロジゲルマン[15]の硫化リチウムとセレン化リチウムによる硫化ないしセレノ化では,ペンタスルフィドとペンタセレニド([13a],[13b]と[5a])が収率良く生成した.X線結晶構造解析は,ケイ素-ケイ素結合の切断されたノルアダマンタン構造を明らかにした.テトラクロロジゲルマンは,硫化水素/ピリジン,硫化リチウム,五硫化アンモニウム,テトラチオタングステン酸ピペリジニウムなどの種々の硫化剤と反応し,ゲルマニウム-ゲルマニウム結合の切断されていないテトラスルフィド[16]も副生した.その構造は,ビスノルアダマンタン構造であるとX線結晶構造解析により確定した.トリクロロモノゲルマン([1a]と[1b])からのペンタスルフィド([5a]と[7b])の生成は,硫化剤が還元剤として働くことにより,又,テトラクロロジゲルマン[15]からのペンタスルフィド[5a]とテトラスルフィド[16]の生成は硫化剤の求核性の強さに依存しているものと考えられる.
著者
竹中 敏文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.388-390, 1985-10-20 (Released:2017-09-15)

「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」というように我々の脳の中はどんな時でも電気信号がかけめぐっている。この信号はスパイク状の活動電位とシナプス電位の二つに大別できる。さらに神経細胞自体静かにしている時でも-50から-100mVという静止電位をもっている。これらが複雑に組み合わさって脳の働きが形成される。我々が夢をみたりするのはこれら信号の組み合わせである。ここでは個々のこれら信号について述べる。
著者
妹尾 学
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.334-337, 1994-05-20 (Released:2017-07-11)

気体分子はいろいろな方向に飛びまわり, これが器壁に衝突することによって圧力を示すと考えられ, この気体分子運動論のモデルによって, ボイル・シャルルの法則が説明されてきた。このようなモデルがどのように展開されたのか, そして気体の分子運動とは実際にはどのようなものであるのか考えてみよう。
著者
Himeno Sadayuki Hori Toshitaka Saito Atsuyoshi
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.2184-2188, 1989
被引用文献数
42

The formation conditions of a yellow Dawson-type S<SUB>2</SUB>Mo<SUB>18</SUB>O<SUB>62</SUB><SUP>4&minus;</SUP> anion have been investigated as functions of the concentrations of Mo(VI), H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>, organic solvents, the nature of the organic solvents used, temperature of the solution, and the reaction time. For a 50 mM Mo(VI)/50% (v/v) acetonitrile system, the yellow S<SUB>2</SUB>Mo<SUB>18</SUB>O<SUB>62</SUB><SUP>4&minus;</SUP> anion formed in 0.2&ndash;1.0 M H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>, while a pale-yellow Mo<SUB>6</SUB>O<SUB>19</SUB><SUP>2&minus;</SUP> anion did in 0.04&ndash;0.3 M H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>. The yellow heteropolyanion is electrochemically reduced in six successive steps to mixed-valence heteropoly blues at the glassy carbon electrode. Each of the first four waves corresponds to a reversible two-electron transfer. The mixed-valence blue species were characterized by their inherent visible and infrared (IR) spectra.
著者
胸組 虎胤
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.170-174, 1998-03-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

生体のタンパク質を構成するアミノ酸の立体配置はL体であることはよく知られているが, そうなった理由はまだはっきりしていない。ただ, L体のアミノ酸から成るタンパク質系は物質の進化で形成されたと考えられている。ここでは, アミノ酸, ペプチド, タンパク質の片手構造について説明し, L体のタンパク質系の生成した過程を化学進化の点から概説する。