著者
佐藤 れえ子 山岸 浩之 内藤 善久 村上 大蔵 大島 寛一 高木 久 藤田 茂 佐々木 重荘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.577-581, 1993-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
6 11

1990年5~7月. キャットフードによるビタミンD中毒が疑われた猫4頭について, 血中ビタミンD代謝産物濃度とキャットフード中のビタミンD含有量を測定し, 石灰沈着との因果関係を追究した. また, 4頭の実験猫を用いてそのキャットフードによる給与試験を実施した. 全症例は同一市販キャットフードを主体に飼育され, 症例1と2は尿毒症に陥っていた. 血漿Ca濃度は症例1の初診時を除き全症例で11mg/dl以上を, また25 (OH) D濃度は100ng/ml以上を呈した. 死亡例では全身性の石灰沈着が著明に認められ, 上皮小体の萎縮が観察された. いっぽう, キャットフード中のビタミンD含有量は5, 290IU/100gと異常な高値を示し, キャットフードの給与試験では給与開始後血漿25 (OH) D濃度は著しく上昇しCa濃度も増加した.
著者
小川 高 新家 俊樹 三島 浩享
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.469-472, 2009-06-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
10
被引用文献数
1

17歳4カ月齢の猫の扁平上皮癌が疑われた口腔内および下顎骨の腫瘤に対して,活性炭吸着カルボプラチンを局所注射する治療を行った. 治療後,口腔内腫瘤は縮小し,下顎骨の腫瘤の増大傾向もみられていない. 標的化学療法の選択肢の一つとして本治療法の有用性が示唆された.
著者
宇野 雄博 湯本 哲夫 片桐 麻紀子 金刺 祐一朗 藤田 桂一 山村 穂積 佐藤 常男 酒井 健夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.401-404, 2005-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

市販フードを主食とする平均年齢10.5カ月齢 (6カ月~1歳4カ月齢) の猫4例に, 黄色脂肪症を認めたので, 給与食餌との関連について検討した.発症猫2例に給与されていた2種類の市販フードの分析では, 推奨量のビタミンEが含有されていたが, 療法食メーカーの成猫用フードに比べて, リノール酸の含有率が低く, ドコサヘキサエン酸の含有率が高く, ω3系の比率はω6系に比べて高かった.次に, 健康な成猫2頭に, 発症猫に給与していたフードを70日間給与したところ, 血中のアラキドン酸, エイコサペンタエン酸, ドコサヘキサエン酸の濃度が著しく高く, ω3系の比率はω6系に比べて高くなった.以上, 推奨量のビタミンEが含有されていても, リノール酸含有率が低く, 高度不飽和脂肪酸含有率が高く, ω3系の比率がω6系に比べて高い飼料を継続給与すると, 黄色脂肪症を発症する可能性があると考えられた.
著者
黒田 聡史 佐々木 伸雄 伊藤 直之 村岡 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.923-927, 2014-12-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
14

7カ月齢の日本猫が,左前肢の跛行と掌球部の石灰沈着に伴う白斑を主訴に来院した.血液検査では持続的な高リン血症がみられたが,血漿カルシウム値は正常範囲内であった.また,腎不全,甲状腺機能亢進症及び原発性上皮小体機能低下症は認められず,当初は血清中のビタミンD値が高値を示した.リン制限食給与並びにリン吸着剤の投与により,血漿無機リン(iP)値は有意に減少し,カルシウム・リン溶解度積も減少した.また,ビタミンD値は正常値に復した.しかし,血漿iP値は依然正常範囲より高値であった.跛行は改善したものの,掌球の石灰沈着症は初診から2年半以上にわたり観察された.本例の高リン血症の原因は明らかにできなかった.
著者
中本 裕也 溝口 倫生 中本 美和
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.383-387, 2021-06-20 (Released:2021-07-20)
参考文献数
15

3カ月齢の雄のラグドールが突然の四肢の起立困難を主訴に主治医を受診し,翌日に紹介来院した.麻酔下のX線検査では異常所見が認められなかったが,MRI検査にて環軸椎背側領域の脊髄実質における信号強度異常,脳脊髄液検査にて出血を示唆する所見が認められたことから,外傷性環軸椎不安定症が疑われた.頸部の外固定,運動制限,投薬,理学療法といった内科的治療により,経過は良好であった.経時的なMRI検査にて損傷の疑われた脊髄実質における病変部位が空洞化していたことから,神経症状の将来的な残存が示唆された.猫の環軸椎不安定症に対して継時的なMRI検査によって脊髄実質の評価を行うことは,予後判断に有用であると考えられた.
著者
谷津 實 佐藤 光寛 一條 俊浩 佐藤 洋 佐藤 繁
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.581-585, 2018-10-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
21

展示飼育されている臨床的に健康な雌雄成熟アカキツネの非発情期におけるバイタルサインと,臨床検査値の基準範囲を調べた.採血は,無麻酔下で外側伏在静脈より行った.すべての項目で,雌雄差は認められなかった.犬の基準範囲に比べ,体温は高値,赤血球数と好酸球数,血清グルコース(Glu),アルブミン(Alb)及び尿素窒素濃度(UN)は高値,逆に血清ブチリルコリンエステラーゼ活性は低値を示した.これら所見は夏毛から冬毛への換毛期の影響(体温上昇),小球性赤血球(赤血球恒数MCVとMCHの低値を伴う赤血球数の高値),肉食中心の食餌(Glu,Alb及びUN濃度の高値)によると推測された.以上のアカキツネの基準範囲は,獣医療や研究現場において健康状態の把握,疾患の類症鑑別や治療あるいは予防に利用できると考えられた.
著者
伊藤 直之 青木 美樹子 板垣 匡
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.683-686, 2005-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

青森県八戸地域の一般家庭で飼育されている1カ月齢~16歳齢の猫460頭から採取した糞便を対象に, ホルマリン・酢酸エチル沈澱法で消化管内寄生虫を検査した. 検出された寄生虫とその検出率はネコ回虫13.9%, ネコ鉤虫2.4%, ネコ糞線虫0.2%, マンソン裂頭条虫3.0%, テニア属条虫2.2%, イソスポラ属原虫2.0%およびジァルジア3.3%であった. ネコ回虫の検出率は1~6カ月齢の猫で高く, いっぽう, ネコ鉤虫, マンソン裂頭条虫およびテニア属条虫の検出率は2~5歳齢で高かった. さらに, 検出された寄生虫の多くはその検出率が室外飼育猫で高く, 室内飼育猫で低かった.
著者
熱海 明 青柳 澄 小野 精美 鈴木 武 鈴木 肇 栗原 幸一 西塚 胞喜 岡 英彦 二戸 源治 梅沢 長一 木村 広 安孫子 淳一 高梨 勝広 山口 正志 丹羽 与英 中村 春夫 高槻 和雄 遠藤 厳 岡田 昌吉 佐藤 幸雄 東海林 喜助 斯波 八郎 奥山 繁雄 五十嵐 茂 斎藤 安司 菊地 正逸 槙 千秋
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.521-526,539, 1964-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22

A total of 244 persons were reported officially to be involved in an outbreak of food poisoning possibly attributed to whale-meat bacon in Yamagata and its neighboring areas in Yamagata Prefecture at the end of August. One fatal case occurred in the city of Yamagata.The period of incubation was 12 to 21 hours in most cases. The main symptoms consisted of fever, stomachache, vomiting, and diarrhea and were almost identical with those of food poisoning known to be caused by enteritis vibriones.The incriminated food was whale-meat bacon, which had been eaten without being cooked. The same food as this, in raw state, was given per os to mice and cats without any ill effect. Bacteriological examination failed to detect any known pathogenic organisms, except staphylococci, or such enteritis vibriones as identical with those of the known serotype.Enteritis vibrio O-2 (“E” by Agatsuma's classification) was detected from 19 (76%) of 25 fecal specimens collected from the patients involved. Staphylococcus and Proteus were also detected from these specimens. Most of the staphylococci isolated from the whale-meat bacon, and the fecal specimens were coagulase-positive.All the strains of enteritis vibriones isolated from the fecal specimens were pathogenic for mice. So were three strains of these organisms isolated from the whale-meat bacon.
著者
五十嵐 健二 矢冨 謙治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.597-599, 1992-08-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

1989年6月~8月, 兵庫県東播磨地域の児童公園の砂場168カ所における犬と猫の回虫卵の汚染状況を調査した. 37カ所 (22.0%) の公園から犬と猫の回虫卵が検出され, そのうち人に感染力のある幼虫包蔵卵は12カ所 (7.1%) で認められた. 地域別にみると, 田園地域の公園は8.3%(6/72) と低率であったが, 市街地の公園は32.3%(31/96) と高率であった. 糞便の認められた砂場は47.1%(16/64) とさらに高率に汚染されていた.
著者
丸山 成和 丸山 典彦 伊藤 宏 田中 良和 植松 典昭
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.330-333, 1983-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

牛以外の動物, とくに人と豚のアカバネウィルスに対する抗体の保有状況を知る目的で, 両者の血清について, 赤血球凝集抑制 (HI) 反応, 中和 (NT) 試験による調査を実施した. なおHI価10以上, NT価4以上を反応陽性とした.調査期間は人では1977年6月~1979年4月, 豚では1978年9月~1979年2月であった. 調査地域は人では県内8市5町, 豚では9市4町であった. その結果以下の成績を得た.1) 人血清1, 348例のうち1.3%(17/1, 348) がHI陽性であった. これらの陽性例は県東部の隣接田園地区に集中してみられた. 陽性例のHI価は10~40, NT価は4~32であった. なお豚のHI陽性率の高い地域の養豚従事者19人では1例が陽性 (陽性率5.3%) で, そのHI価およびNT価はそれぞれ10および8であった.2) 豚血清1, 134例 (4~5ヵ月齢の肥育豚654頭, 繁殖豚480頭) についてHI価を測定したところ, 1.4%(16/1, 134) の陽性率であった. このうち肥育豚は0.8%(5/654), 繁殖豚は2.3%(11/480) の陽性率であった.陽性例のHI価は10~20, NT価は4~64であった.豚および人は, Vectorの動物嗜好性によることも考えられるが, 牛にくらべて本ウイルスの感染をうけにくいものと推測される.
著者
中井 正博 河村 正 松岡 信男 片江 宏巳 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.360-366, 1990-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
31

犬糸状虫症の予防に用いるIvermectin (IVM) の投与量6~9μg/kgの約2倍量を, ラフ・コリーに投与した場合の影響およびIVMの中枢神経組織への移行について検討した.試験犬は2ヵ月齢の幼犬である.ラフ・コリー4頭と雑種4頭にIVM20μg/kgを, 対照群4頭 (ラフ・コリー2, 雑種2) にplacebo (賦形剤) をいずれも1回経口投与した.投薬後24時間臨床所見を観察したが中枢神経症状を含あ, 異常所見は認あられなかった.また, 心電図, 血液・血漿生化学的検査値および24時間後の剖検による病理学的検査所見にも, IVM投与に関係すると考えられる異常は認められなかった.IVM投与後6, 24時間の血漿中IVM濃度は, コリー群と雑種群間に有意差はなく, 吸収・排泄に差は認められなかった.IVM投与後24時間の中枢神経組織中IVM濃度は, コリー3頭, 雑種4頭では検出限界以下であったが, コリー1頭では, 小脳で同時点における血漿中濃度の約1/3, 脳幹と脊髄では血漿中濃度に近い濃度が検出された.この成績から, ラフ・コリーのなかにはIVMが中枢神経組織に入り得る個体のあることが明らかにされた.
著者
石田 葵一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.603-609,618, 1966-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
95

1 0 0 0 OA 凍結精液

著者
永瀬 弘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.199-203, 1962-05-20 (Released:2011-06-17)
著者
佐藤 健太郎 小泉 源也
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.370-374, 2017-06-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

24カ月齢の黒毛和種肥育雌牛が慢性的な下痢を呈し,充実性組織塊が混在する水様性下痢,血液検査で栄養状態の低下と好酸球増多症を認めた.糞便より有意菌や寄生虫卵等は不検出であった.組織塊の細胞診で好酸球性炎による腸粘膜が剝離したものと推定し,好酸球性腸炎と診断した.また,当該牛は慢性的に高GGT血症を示し,16病日と47病日に下痢が再発した.粗飼料中のマイコトキシン検査では残飼稲ワラにおいて総アフラトキシンとして60病日に0.152mg/kg,120病日に0.300mg/kgが検出され,アフラトキシン中毒が示唆されたが,副腎皮質ホルモンを中心とした治療やマイコトキシン吸着剤の飼料添加後,栄養状態の改善が認められ,50病日以降の下痢の再発や好酸球数の増加は認められなかった.以上より,本例はアフラトキシン中毒を併発した好酸球性腸炎と考えられた.
著者
川口 博明 笹竹 洋 野口 倫子 秋岡 幸兵 三浦 直樹 武石 嘉一朗 堀内 正久 谷本 昭英
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.143-146, 2016-03-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,動物の乗り物による移動の機会が増えている.動物福祉の観点から,輸送ストレスを軽減する対策が必要になってきている.今回,輸送ストレスによる乗り物酔い症状(嘔吐,流涎,元気消失)を示す11頭の犬に対して,より副作用の少ない輸送ストレス軽減のための新規鍼治療を試みた.この鍼治療は円皮鍼という貼り付けるタイプの鍼を経穴「耳尖(じせん)」に装着する簡便な方法であり,全例の嘔吐,流涎,元気消失を抑制した.今後,獣医診療に鍼治療が利用されていくことが期待される.
著者
早崎 峯夫 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.455-458, 1987-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

秋田犬 (雄, 3才, 体重18kg) に全身性強皮症に類似した皮膚変化がみられた.特徴的異状所見は, 仮面様顔貌, まばたきおよび開口の困難, 木馬様歩行であった.開口の程度は, 口吻先端で約5cmで, 舌の運動も障害されていた.しかし, 食欲, 元気は正常であり, 採食も時間をかけて必要量を採ることができた.被毛, 皮膚表面, 眼, 粘膜, 筋肉, 関節, 骨, 耳および性格に異常を認めなかった.皮膚の生検にて, 膠原線維の著明な膨化増生や, 汗腺, 皮脂腺の萎縮が認められた. 臨床病理学的検査では, 抗核抗体とCRPは陰性, 副腎機能検査では, ソーン試験における好酸球数減少率は56.5%と, 軽度な機能低下が示唆された.症例犬は, 病態観察中, 第104日に腸捻転と腹膜炎により突然死亡した.