著者
岡野 公禎 河内 由紀 上原 ひかり 田近 萌
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.e177-e182, 2023 (Released:2023-06-27)
参考文献数
32

卵巣子宮摘出術の術前にモルヒネを皮下投与した供試犬60頭を,マロピタントを経口投与した2群(MP2群:n=15,2mg/kg;MP8群:n=15,8mg/kg),皮下投与群(MS1群:n=15,1mg/kg)及び生理食塩水を皮下投与した対照群(Control群:n=15,0.1ml/kg)の4群に分類した.悪心や嘔吐を麻酔導入前と抜管後で,PONV(postoperative nausea and vomiting)スコアを抜管後で評価した.導入前の嘔吐はMP2群,MP8群,MS1群で,悪心はMP8群で有意に減少した(P<0.05).抜管後は,MP8群が有意な悪心抑制とPONVスコアの改善を示した(P<0.05).マロピタントの経口投与はモルヒネによる嘔吐に対し皮下投与と同様な制吐作用を有し,8mg/kgの経口投与では悪心及びPONVに対し十分な抑制効果を示した.
著者
才田 祐人 北野 寿 矢田 乃路子 矢田 新平
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.e141-e148, 2023 (Released:2023-06-14)
参考文献数
39

胸部X線検査において椎体長により指標化された評価法が一般的に知られている.そこで本研究では,僧帽弁粘液腫様変性犬において左心房サイズを椎体長に依存しない方法により評価することの有用性について検討した.左心房サイズ(Left atrial size:LAS)は,臨床ステージとともに有意に上昇し,椎骨左心房径と同等に心臓超音波検査所見と強い相関性を示した.したがって,胸部X線検査におけるLASは,従来法と比較し測定がより簡便であり,体重1kg以上3kg未満,3kg以上5kg未満及び5kg以上10kg未満の個体においてカットオフ値をそれぞれ2.3,3.0及び3.3cmに設定することで,心臓超音波検査における左心房及び左心室拡張の目安になりうると考えられた.
著者
寺本 直輝 島田 圭悟 杉田 由佳 グルゲ・ キールティ・シリ 吉岡 都 山中 典子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.788-791, 2021-12-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
14

ドングリによる中毒の診断に資するために,ドングリに含まれる総ポリフェノール(TPPs)の簡便,迅速な抽出手法を開発した.含水アセトンで振盪する本手法は高速溶媒抽出法(ASE)に匹敵する回収率であった上,再現性が高く,簡易であり,十分診断に応用できるものと考えられた.また,この手法でマテバシイのドングリのTPPs濃度を定量したところ,未熟果は熟果よりも有意に濃度が高かった.
著者
紫野 正雄 林 繁利 市原 伸恒
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.331-333, 2005-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

チワワ種雌犬が, 難産の末3匹を初産分娩したが, その後のX線検査によって子宮外に2胎のミイラ化胎子が認められた. その後無処置の状態で分娩後2回日の発情でふたたび妊娠した. 妊娠末期にX線検査を行ったところ, 4胎の正常胎子とともに2胎のミイラ化胎子が確認された. 正常胎子の摘出のための卵巣子宮全摘出を行い, さらに腹腔内ミイラ化胎子の摘出も行った. 摘出右子宮の先端に脱出跡と思われる組織学的所見が得られた. また, 摘出ミイラ化胎子についてX線検査による骨格測定を行ったところ, 妊娠末期の胎子と一致した. 以上の結果から, このミイラ化胎子は前回の分娩時の難産のおりに子宮破裂口から腹腔内に脱出し, 長期間腹腔内に遺残し, その後の子宮修復に伴い重複妊娠した事が示唆された.
著者
安積 一平 西田 英高 田中 美有 桑村 充 嶋崎 等 田中 利幸 山本 卓矢 秋吉 秀保
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.e75-e80, 2023 (Released:2023-05-02)
参考文献数
12

7歳齢の避妊雌のトイプードルが,右前肢の跛行を主訴に受診した.初診時のX線検査では右肩甲骨の骨増生及び皮質骨の不整が認められた.病変部位の組織の一部を採取したところ,非感染性の骨の炎症が疑われた.プレドニゾロン内服によって臨床徴候の改善が認められ,休薬によって血中C反応性蛋白(CRP)の高値及び両後肢不全麻痺が認められるようになった.核磁気共鳴画像(MRI)検査によって,第1-2胸椎,第4-5胸椎の硬膜外脂肪の炎症が認められ,特発性無菌性化膿性肉芽腫と診断した.免疫抑制量のプレドニゾロン及びシクロスポリンの内服によって,両後肢の神経徴候は改善し,血中CRPは正常範囲内まで低下し,MRI検査では病変は消失していた.本症例では,無菌性化膿性肉芽腫が肩甲骨及び硬膜外脂肪に発症したと考えられた.
著者
中川 恭子 南 毅生
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.191-195, 2021-03-20 (Released:2021-04-20)
参考文献数
16

7歳のペキニーズが排便困難を主訴に来院した.直腸検査にて腫瘤状病変による直腸狭窄を認めた.CT検査によって周囲組織への浸潤を伴う全周性の腫瘤状病変が確認され,病理組織学検査により直腸腺癌と診断した.外科切除が困難と考えられたため,緩和的治療として自己拡張型直腸ステントの設置を実施した.直腸ステント設置により狭窄部の拡張が認められ,排便困難が改善した.その後,時々軽度のしぶりや血便は認められたものの一般状態も改善し,自力での排便が可能となった.しかし,直腸ステント設置40日後の第72病日に自宅にて突然死した.死因は明らかではなく,腫瘍及びステント設置との因果関係は不明であった.死亡時まで一般状態,排便ともに良好であったことから,短期的には有効性が認められたが,長期的な安全性や有効性については確認できなかった.
著者
坪倉 操
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.317-323, 1987-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
91
被引用文献数
1
著者
木村 浩和 菅沼 常徳 小方 宗次 和久井 信 鹿野 胖 浅利 昌男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.123-127, 1994-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

日本猫51例の単純X線フィルムについて, 椎骨数ならびに頸椎・胸部構造・腎陰影の3部位などを計測して基準値の設定を試みた. 脊柱管の高さと後頭骨~C1幅の比は1: 0.61, 脊柱管の高さとC1~C2最小距離の比は1: 0.19であった. 気管・胸大動脈・後大静脈の太さはほぼ等しく, 肺静脈・肺動脈の太さは第8~ 第10肋骨の最も細い部位にほぼ等しかった. 日本猫は米国産雑種猫に比べ胸郭の深いことが特徴的であった. 腹部VD像における第2腰椎縦軸と左右腎陰影長径との比はそれぞれ1: 2.38および1: 2.49で, 第2腰椎横径と左右腎短径との比はそれぞれ1: 3.03および1: 3.05であった化側面像では, 第2腰椎長径と左右腎の長径との比は1: 2.39, 第2腰椎短径と左右腎短径との比はそれぞれ1: 5.20および1: 5.25であった.
著者
塚本 真由美 苅谷 俊宏 山﨑 翔矢 小畑 麗 向島 幸司 村瀬 繁樹 朝倉 宏 森田 幸雄
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.e11-e17, 2023 (Released:2023-02-03)
参考文献数
9

ゼロトレランス検証の有用性を確認するため,獣毛(5),糞便(8),消化管内容物(6),レールダスト(5),フットカッター汚れ(5)が付着した黒毛和種牛枝肉を採材した.獣毛,糞便,消化管内容物間の一般細菌数と腸内細菌科菌群数に有意差がなかった.獣毛-糞便-消化管内容物検体の一般細菌数はレールダスト-フットカッター汚れ検体のそれと比べ高値であった.消化管内容物はFirmicutes 門,獣毛・レールダスト・フットカッター汚れはProteobacteria 門の比率が高く,糞便はFirmicutes 門とProteobacteria 門が高い比率の菌叢であった.付着異物ごとに菌叢の違いが確認された.食肉衛生上,糞便及び消化管内容物だけでなく獣毛が付着したと体表面はトリミングすることが必要であると思われた.
著者
岡田 啓司 菊地 薫 三浦 潔 佐藤 利博 森田 靖 田高 恵 荻野 朋子 金田 義宏
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.74-79, 1997-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

生後1-6週齢の白痢発症黒毛和種子牛とその母牛16組および健康な母子牛5組について, 白痢発症とアルコール不安定性母乳との関連を検討した.発症子牛16頭の母乳はアルコール試験陽性9頭 (56.3%)(A群), 陰性7頭 (B群) であった.血液所見から発症子牛の母牛は非発症健康対照群 (C群) に比べて低エネルギー状態にあることが示唆され, 子牛は低脂質血症を示した.またA群母牛はB群に比べて血中アンモニア濃度は高値を, 乳清中グルコース (GLU), カルシウムは低値を示し, 子牛の血中トリグリセライドは高値であった.A群母牛にメンブトン5gを2日間経口投与したところ, アルコール不安定乳は全頭で改善され, 子牛7頭の白痢は治癒した.メンブトン投与後母牛乳清中GLUは増加した.以上から母牛のエネルギー不足がアルコール不安定乳と子牛の白痢の誘因と考えられた.
著者
木原 滋陽
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.354-358, 1975-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
5

The floatation method with zinc sulfate solution was applied to eggs of five species of canine intestinal parasites. The rate of floatation determined by it ranged from 56 to 79% for eggs of Trichuris vulpis. It reached 95% for eggs of Toxocara canis. It ranged from 13 to 64% for eggs of Gnathostoma spinigerum, from 43 to 91% for eggs of Ciphyllobothrium erinacei, and from 0 to 86% for eggs of Metagonimus yokogawai.
著者
樋口 徹 井上 哲 佐藤 正人 後藤 忠広
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.133-137, 2016-03-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

近位指(趾)節間関節固定術は重度の変形性関節症,亜脱臼,関節部での骨折に適応される.今回,4頭の馬において3穴ナローlocking compression plate(LCP)と関節貫通スクリューとして3〜4本の5.5mm皮質骨スクリューを用いた内固定を行った.症例馬は,3頭がサラブレッド繁殖雌馬,1頭はサラ系障害飛越競技馬であった.1頭は前肢の近位指節間関節の亜脱臼,1頭は後肢の近位趾節間関節の亜脱臼,2頭は変形性関節症で,前肢と後肢が1頭ずつであった.手術は吸入麻酔下で仰臥位で行い,関節を開けてできる限り関節軟骨を除去し,関節貫通スクリューが関節の掌(底)側を引き寄せるように挿入し,次いでLCPを軸側に置いて関節全体を圧着させるように5.5mm皮質骨スクリューとlocking head screw(LHS)で固定した.術後はハーフリムキャストを3〜4週間装着した.この方法は強度に優れ,安定した関節固定が可能であった.症例馬の疼痛は徐々に緩和し,10〜12週間後には放牧あるいは速歩運動が可能であった.
著者
國谷 貴司 須部 明香 金村 典哉 渡辺 直之
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.137-141, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
27

後肢の不全麻痺を呈し,CT検査において大動脈血栓塞栓症(ATE)と診断した犬4例の臨床症状と臨床病理学的所見の特徴について検討した.初診時に跛行を呈した11~14(13.0±1.4)歳齢の高齢犬が,14~30(18.0±8.0)日の慢性経過で不全麻痺あるいは全麻痺への臨床症状の悪化を認めた.血液検査ではD-ダイマーの上昇(4例),AST,CK及びALTの上昇(3例),血小板減少(3例)を認めた.慢性進行性の跛行を呈する高齢犬において,D-ダイマーの高値がATEと関連性が高いことが示唆された.D-ダイマーと他の臨床検査の組み合わせにより犬のATEの診断に有用であることが示された.