著者
岡野 公禎 木村 太郎 鈴木 亮一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.99-104, 2018-02-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
19

犬42頭の不妊手術に対し,麻酔導入15分前にブトルファノール(BTR)0.4mg/kgの静脈内投与もしくはモルヒネ(MOR)0.5mg/kgを皮下投与した群(pre-B群n=14,pre-M群n=14)と麻酔導入後に投与した群(post-B群n=7,post-M群n=7)に分類し,気管挿管に必要なアルファキサロン(ALFX)の麻酔導入量を検討した.ALFXの麻酔導入量は,pre-B群(1.59±0.26mg/kg)がpost-B群(2.45±0.36mg/kg)に対し35.1%の減少を示し,pre-M群(1.30±0.38mg/kg)はpost-M群(2.42±0.52mg/kg)に対し46.2%の減少を認めた(P<0.05).ALFXの麻酔導入量はBTR及びMORの麻酔前投薬により減少した.
著者
田村 和也 永原 美治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.491-494, 2019-08-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
8

飼育犬において歯周炎の有病率は高く,治療にあたる機会の多い疾患である.歯周基本治療後に深い歯周ポケットが残存する症例では,新付着の獲得を目的に歯周組織再生療法が選択される場合がある.人歯科医療において,2016年9月に新規歯周再生療法医薬品としてトラフェルミン(リグロス®,科研製薬㈱,東京)が製造販売承認された.本研究では,骨欠損を伴う自然発生的歯周炎に罹患した犬3頭に対するトラフェルミンの治療効果を検討した.同一患畜犬の口腔内で治療側と対照側を比較するスプリットマウスモデル法を用いた試験結果から,トラフェルミンの歯周組織再生における有効性を認めたので報告する.
著者
相馬 武久 安川 明男 甲斐 一成
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.89-93, 2002-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本邦の家庭猫における猫免疫不全ウイルス (FIV) 抗体, 猫白血病ウイルス (FeLV) 抗原および猫コロナウイルス (FCoV) 抗体の陽性率を検討した. 胸・腹水貯留により猫伝染性腹膜炎 (FIP) が疑われた症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ26.3%, 36.8%で, 健康猫 (FIV9.3%, FeLV8.1%) に比べ高い値を示した. 上部気道炎を呈する症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ35.7%, 21.4%で, 健康猫に比べ高い値を示した. 以上の成績から, FIVやFeLVの感染がFIPや呼吸器感染症の顕性化の一因である可能性が示された. 一方, 健康猫におけるFCoVの陽性率は47.7%と, FIV, FeLVに比べ高く, FCoVの野外での伝播力の強さがうかがわれた. また, 貧血症例が66.7%ときわめて高いFeLV陽性率を示したことから, 貧血を伴う症例においてFeLV検査は不可欠な診断手段であることが示された.
著者
浜名 克己
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-38, 1989-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
151
被引用文献数
2 3
著者
川崎 武志 滝沢 直樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.159-162, 2002-03-20
参考文献数
12

セキセイインコの前胸部皮下に径約2cmの限界明瞭な腫瘤が認められた. 腫瘤は表皮ごと摘出され, 病理組織学的に検査された. 肉眼的には, 腫瘤の中心部は黄白色チーズ様で, それを薄い被膜組織が取り巻いていた. 組織学的に, 被膜組織の真皮層には多中心性の組織球性微小肉芽腫を認め, 皮下組織層には泡沫状の組織球, 類上皮細胞, 変性した結合組織が混在し, 脂肪様組織を形成していた. 脂肪様組織は, 中心に向かうに従って変性の程度を増し, 中心部は壊死に陥っていた. 真皮の微小肉芽腫と脂肪様組織に, チール・ネールゼン染色と免疫染色により, 抗酸菌が見いだされた.
著者
黒崎 嘉子 天野 光彦 栗田 吾郎 桧山 充 岡田 重宣 渡辺 昭宣
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.108-112, 1987-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6

埼玉県内のK血液処理施設で処理された食用と畜血液 (豚) の衛生状態を調査し, 以下の成績を得た.1) K血液処理施設に搬入された原料血液からは, 平均で一般生菌数2.8×104/ml, 低温細菌数1.5×104/ml, 大腸菌群数4.2/ml, 黄色ブドウ球菌数4.6/ml, 耐熱性菌数1.9/mlが検出され, ウェルシュ菌およびサルモネラは検出されなかった.2) 豚の血液は, 4℃ で48時間保管した場合, 細菌数の増加はみられなかった.3) K血液処理施設で生産された製品の「豚プラズマ」からは, 平均で一般生菌数1.9×104/ml, 低温細菌数1.1×103/ml, 大腸菌群数3.2/ml, 黄色ブドウ球菌数2.1/ml, 耐熱性菌数1.11mlが検出され, ウェルシュ菌は検出されなかった. サルモネラは48例中1例から検出された. また, 抗菌性物質は検出されなかった.4) 製品「豚プラズマ」の汚染は, 夏季に高く冬季に低かった.5) 製品の製造工程における各細菌数は, 経時的に大差はなかった.6) 製品「豚プラズマ」は, -20℃ で保存すると, 経時的に細菌数の減少がみられた.
著者
黒田 晃平 東 和生 村端 悠介 大﨑 智弘 柄 武志 伊藤 典彦 今川 智敬 岡本 芳晴
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.303-306, 2018-06-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
16

11歳のミニチュアダックスフントが全般発作を主訴に来院し,MRI検査で髄膜腫と診断された.抗がん剤等の治療を希望されなかったため,病変に対し温熱療法の1つであるラジオ波誘導温熱療法(オンコサーミア)を実施した.本症例は治療開始より1,065日で亡くなった.その間,てんかん様発作は認められたものの,一般状態は良好に維持されていた.今回の症例では,オンコサーミアによって長期間の生存が可能であった(33.1カ月).これは,手術及び放射線を併用した場合と同等の生存期間である.さらに,その期間は大きな副作用もなく,症例のQuality Of Lifeは良好に維持されていた.この結果から,オンコサーミアは犬の髄膜腫の進行を抑える効果がある可能性が示唆された.
著者
升 秀夫 熊坂 隆行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.485-488, 2001-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

老人ホーム72施設を対象に, 動物の飼育状況についてアンケート調査を行った.動物を飼育する老人ホームでは, 利用者のquality of lifeの向上を目的とする施設が多かった.動物の飼育を行わない老人ホームでは, 飼育の負担, 設備の未整備, 人獣共通感染症に留意している施設が多かった.動物介在活動ボランティアの受け入れを希望する老人ホームは, 調査した72施設のうち30施設であった.
著者
湯木 正史 鈴木 清美 杉本 典子 樋口 貴志 鈴木 秀典 石川 勝行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.721-724, 2004-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

免疫介在性溶血性貧血 (Immune-mediated hemolytic anemia: IMHA) と診断した犬2例に対し, プレドニゾロン, シクロスポリン, アザチオプリン, ヒト免疫グロブリン製剤, 輸血などによる治療を行ったが, 貧血の改善が得られなかった. そこでシクロスポリンの10~100倍の免疫抑制作用を持つとされるタクロリムス (FK506) を併用したところ, 1例では貧血の著明な改善が, 他の1例ではPCVの維持が認められた.
著者
松田 一哉 柳 充紘 秋山 義侑 才力 慎也 村田 亮 谷山 弘行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.47-51, 2016

北海道におけるエゾシカ検査モデルにおいて,獣医師による解体時検査の実施されたエゾシカ368例のうち8例の肺に異常が確認された.このうち7例では,肉眼的に孤在性から多発性の硬結感のある結節性病変が認められ,組織学的にはアスペルギルス様真菌を伴う乾酪化肉芽腫もしくは乾酪壊死巣が認められた.うち3例については分子生物学的に<i>Aspergillus fumigatus</i>と同定された.以上から,7例は肺アスペルギルス症と診断された.シカの肺病変に占める割合の高さと病変の重篤化の点から,アスペルギルス症はシカの肺における重要な疾患であると考えられた.容易に触知できる病変を形成するため,解体時検査における触診検査が重要であり,個体の健康状態の把握のためにも適切な内臓検査の実施が不可欠であると考えられる.
著者
三角 一浩 鳥居 哲太郎 青木 修 藤木 誠 三浦 直樹 柳田 宏一 坂本 紘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.829-836, 2001-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肥育牛における蹄の生長, 蹄疾患の発生や生産性と削蹄との関係について検討した. 肥育期の黒毛和種16頭 (13.0±2.0カ月齢, 体重308.0±30.8kg, 去勢牛) を削蹄間隔により3, 6および12カ月削蹄群ならびに無削蹄群の4群に分け, 以後19カ月間, 蹄計測, 蹄形の変化を記録した. と殺後, 蹄病変を観察し, 枝肉成績を記録した. 削蹄間隔の延長に伴い, 蹄角度は小さく, 蹄壁・蹄踵長は長くなった. 12カ月削蹄群および無削蹄群では蹄の変形が進み, 伸びた蹄踵で負重するようになった. 白帯離解の発生頻度は無削蹄群で有意に高かった (P<0.05). 歩留基準値は, 6カ月削蹄群が12カ月および無削蹄群と比較して有意に高い値を示し (P<0.05), 産肉量が向上していた.本研究結果から, 削蹄間隔を6カ月とすることで, 標準蹄に近い蹄形が維持され, 蹄病変の発生抑制と産肉量向上に役立つことが明らかとなった.
著者
大野 秀樹 大脇 将夫 中島 尚志 吉岡 一機 武藤 顕一郎 小山田 敏文
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.929-932, 2012-12-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
14

猫の膝関節に,大腿骨と膝関節の関節包の間に膝関節筋があることを確認した.膝関節筋は1歳までは発達するが,加齢に従い筋線維は退縮し脂肪組織に置換する傾向がみられた.また筋紡錘の分布密度が高く,退縮した筋を充塡する脂肪組織の間にも筋紡錘が残存していた.この理由から猫においては加齢に従い膝関節筋の肉眼的観察が困難になり,今までその存在が明らかにならなかった.また,膝関節筋が機能的には膝関節筋の動力学的モニターとして機能していることが示唆された.
著者
井隼 ミキ 山下 厚 溝本 朋子 香本 頴利 吉田 正明 佐野 文子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.136-138, 2008-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

漢方生薬配合薬の抗真菌活性を検討したところ, 本剤は多くの真菌に対して発育を抑制した. 管内肥育牧場で発生した牛白癬3例に応用した結果, 本剤の1週間経口投与と漢方生薬10%煎じ液の4日間体表噴霧の併用治療は著効を示した.