著者
船坂 陽子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.12, pp.2671-2679, 2022-11-20 (Released:2022-11-21)
参考文献数
17

高齢化社会を迎え,慢性の紫外線曝露による光老化の治療を求められることが多い.光老化を予防するためには,遮光が必須である.サンスクリーン剤について正しい知識を持って活用することが肝要である.シミ,シワについては種々の治療法が確立されている.特にケミカルピーリング,IPL(Intense Pulsed Light),レーザー治療については繰り返し用いられることが多く,光老化皮膚に対して,長期反復して治療に用いた場合の安全性について検証した結果とあわせて解説した.
著者
端本 宇志
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.157-160, 2019-02-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
22

Episodic angioedema with eosinophiliaは,好酸球増多を伴って繰り返される血管浮腫,体重増加,発熱を主症状とする疾患である.本邦では症状が一過性で軽症にとどまる例が多く,Non-episodic angioedema with eosinophilia(NEAE)という名称が用いられる.発作時には血液中のIL-5やTARCが上昇し,主にT細胞の機能異常によって発症している可能性が高い.治療には一般に経口ステロイド薬が用いられるが,NEAEでは自然軽快が期待できる.また,NEAEに対する抗ヒスタミン薬の投与は,治療期間を短縮しないと報告されている.
著者
山﨑 修
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.2367-2372, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
33

黄色ブドウ球菌は外毒素として表皮剝脱毒A,B(exfoliative toxin;ETA,ETB),トキシックショック症候群毒素-1(toxic shock syndrome toxin-1;TSST-1),エンテロトキシン(staphylococcal enterotoxin;SE),Panton-Valentine型ロイコシジン(Panton Valentine leukocidin;PVL)などの病原因子を産生し,水疱性膿痂疹,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS),トキシックショック症候群(TSS),neonatal TSS-like exanthematous disease(NTED),せつ・せつ腫症などの皮膚疾患とそれぞれ深く関連している.
著者
石川 博康 玉井 克人 見坊 公子 角田 孝彦 澤村 大輔 梅木 薫 菅原 隆光 矢島 晴美 佐々木 千秋 熊野 高行 三上 英樹 三上 幸子 高木 順之 門馬 節子 菊池 朋子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.8, pp.1229-1239, 2003-07-20 (Released:2014-12-13)

帯状疱疹の現状把握を目的とし,2000年4月から2001年3月までの1年間に東日本地区の総合病院と診療所の計11施設を受診した帯状疱疹患者1,065例を対象に統計的解析を行った.結果として,1)8月が最多であったが季節差は認めなかった.2)男女比では女性が多く(M:F=1:1.4),年齢別では60代を中心とした大きな峰と10~20代の小さい峰との2峰性を示した.3)発症部位は上肢~胸背部が最多で31.2%を占め,胸髄部発症例は全体の50.8%であったが,部位別分節別で比較すると頭顔部が最多であった.4)汎発化は2.3%にみられ,70代を中心に頭顔部症例が多かった.5)PHN(postherpetic neuralgia:帯状疱疹後神経痛)は5.3%に残存し,70代を中心に腹背部に多かった.6)抗ウイルス薬は全体の79.0%に投与されていた.7)頭顔部症例の13.4%に眼病変が,1.1%にRamsay-Hunt症候群がそれぞれ合併していた.8)全体の8.8%に基礎疾患を認めた.9)2回以上の再罹患率は全体の3.6%であった.10)医療機関別の比較では患者の年齢層が有意に異なっており,総合病院は60代以上の高齢者主体で診療所は50代以下が多かった.
著者
乃村 俊史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.11, pp.2495-2500, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
23

化膿性汗腺炎は,腋窩・臀部・鼠径部などの間擦部を中心に炎症性結節や囊腫,排膿,瘢痕,瘻孔を繰り返す難治性皮膚疾患であり,かつて本邦では慢性膿皮症と呼称されていた.診断には,好発部位での皮疹出現と慢性再発性の経過が重要であるが,未だ本症についての医師の疾患理解は十分とは言えず,診断と治療の遅れが本症の難治例の多さに繋がっている可能性がある.本症は,かつてはアポクリン汗腺を主座とする細菌感染症のひとつと考えられていたが,2010年に一部の患者にγセクレターゼをコードする遺伝子群(NCSTN,PSENEN,PSEN1)に機能喪失変異を持つことが発見されてからその病態理解が進み,現在は毛包を主座とする自己炎症性疾患と考えられている.化膿性汗腺炎に対しては,以前は抗生剤の内服と外用,外科的治療が行われていたが,2019年にアダリムマブが使用可能になり治療成績が向上している.今後,さらに治療が多角化していくことが予想されるが,皮膚科医が本症の疾患概念や病態を正しく理解することで治療新時代にうまく適応し,本症の治療成績が向上することを強く期待している.
著者
大磯 直毅
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.10, pp.2137-2143, 2019-09-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
14

色素異常症は,色素増強症,色素脱失症,異物沈着症に分類される.色調変化をともなう皮膚疾患は多岐にわたり,色素異常症との鑑別診断が求められる.鑑別すべき疾患のひとつに色調変化をともなう母斑・母斑症がある.本稿では,母斑・母斑症における色調変化の発症機構について最近の知見を整理したい.
著者
吉永 和恵
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.14, 1975

色素性母斑の加令による変動を検べる目的で自験例62例について臨床分類を行ない, Miescher et Albertini の分類に従い,組織学的検討を行なった. 生下時より存在する非隆起性斑状母斑,点状集族性母斑は生涯を通じ非隆起性で,組織学的に a,b 型母斑細胞のみからなり,加令め変化としては境界母斑から真皮母斑への移行がみられたL隆起性斑状母斑,巨大色素性母斑,乳頭状母斑は後年(恐らくは10代以後)隆起性となり,組織学的に加令に無関係に境界活性を有し. a,b 型母斑細胞の下方に合胞体形成細胞,c 型母斑細胞が増加している.長じても複合母斑の形を留めていた. 生後に出現する丘疹状黒子,軟属腫様母斑,前者は10代から隆起性となり,後者は20代になって出現する.a,b 型母斑細胞は b 型母斑細胞の巨細胞化,浸潤細胞の出現,間質の増加も加わって加令とともに衰退の傾向を示したが,合胞体形成細胞,マイスネル小体様器官は真皮下層から上層に向かって加令とともに増加の傾向を示したレ 次にこれら母斑の構築要素の非特異的コリンエステラーゼ活性の有無を検討した. ChE は表皮滴落型母斑細胞である a,b 型母斑細胞は陰性, Schwann由来とされる合胞体形成細胞,マイスネル小体様器官,c 型母斑細胞のいずれも活性を示した.酵素学的にも2系統の集合体の組合せによって病型毎に活性の状態は異なっていた.臨床的に非隆起性であるか,隆起性となるかめ理由として. a,b 型母斑細胞が胎生中,生後もまなくのうちに増加したのに比し, Schwann 由来性母斑細胞は遅れて,10代になって出現,増加する特徴を有する母斑細胞であるためと考えた.
著者
五十嵐 中 松崎 稔矢 滕 麗達 長谷川 紗由美 常深 祐一郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.719-731, 2021-04-20 (Released:2021-04-21)
参考文献数
26

ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(F-RVCZ)を含む爪白癬に対する薬剤の費用対効果を,完全治癒率と質調整生存年(quality-adjusted life years:QALY)をアウトカムとして評価した.各薬剤の標準的な投与期間における投与開始48週間後の評価をした場合,F-RVCZを最も安価のテルビナフィン後発品と比較すると,費用は57,361円増大し,完全治癒率は20.7ポイント増加する.完全治癒者1人増加当たりの増分費用効果比は,277,155円,1 QALY獲得あたりの増分費用効果比は1,979,681円となり,一般的に許容可能な上限値(500~600万円/QALY)の水準を下回っており,費用対効果に優れた薬剤であると判断した.
著者
国定 充
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.9, pp.2035-2041, 2020-08-20 (Released:2020-08-21)
参考文献数
11

紫外線による皮膚発がんは他のがん腫と同様,がん遺伝子およびがん抑制遺伝子の変異により生じる.その起点となる現象としては紫外線が細胞のDNAに吸収されることによって生じるピリミジンダイマーという変異を高率に起こす二量体形成であり,これは紫外線による特有の変異のパターンを起こす.この二量体を修復(ヌクレオチド除去修復)できない遺伝性疾患が色素性乾皮症である.その他紫外線によって生じる活性酸素,そして紫外線による炎症反応も皮膚発がん形成に重要な関わりを持つ.
著者
大日 輝記
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.7, pp.1709-1712, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
16

局所免疫療法は円形脱毛症に対して最も推奨度の高い治療のひとつとして日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインのみならず海外のガイドラインでも採り上げられている.しかしながら本邦では手技が保険収載されていないこと,治療に用いるハプテンなどが医薬品として定義されていないことが課題である.本治療を,2016年改正医療法施行規則に定められた「高難度新規医療技術等」として香川大学医学部附属病院の評価委員会に申請,承認を受けた.一連の手続を紹介し,本治療のさらなる普及の足がかりとなることを期待する.
著者
前島 英樹 齊藤 典充 天羽 康之 新山 史朗 向野 哲 勝岡 憲生
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.1757-1763, 2012-06-20 (Released:2014-11-13)

当科で治療した円形脱毛症383例(男性152例,女性231例)を対象に臨床所見,治療と予後につき検討した.初診時,易抜毛性がみられた症例は236例で,アトピー性素因を有する症例は142例であった.初診時の病型は,単発型34例,少数型60例,多数型146例,びまん型52例,全頭型15例,汎発型61例,蛇行型12例であった.治療は,SADBE外用塗布施行138例,ケナコルト局所注射施行126例,冷凍凝固施行126例であった.予後を略治(治癒後6カ月後再発なし),再発,離脱,治療中に分けて検討したところ,略治例は全体の23%であった.単発型では40%以上が略治したが,その他の病型では20%以下にすぎなかった.治療法では,ステロイド剤の内服とPUVA療法の組み合わせ療法で“易抜毛性あり”の症例が“易抜毛性なし”の症例より有意に略治率が高い.アトピー素因のある患者では,ステロイド剤の内服は有効であるが再発率が高い傾向があった.
著者
武藤 美香 河内 繋雄 福澤 正男 斎田 俊明
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1543, 2000 (Released:2014-08-19)
被引用文献数
4

薬疹におけるリンパ球刺激試験(DLST)の診断的価値について検討した.DLSTが施行された薬疹の報告例812例について,発疹型別,薬剤系統別, 個別薬剤別にDLST陽性率を解析した.全症例におけるDLST陽性率は42%であった.発疹型別では,陽性率は中毒性表皮壊死症型(61%),紅皮症型(52%)で高く,紫斑型(11%),光線過敏症型(21%),固定薬疹型(30%)で低かった.蕁麻疹型でも38%の陽性率が認められた.薬剤系統別では,総合感冒剤(72%),抗結核剤(56%),抗てんかん剤(54%),解熱消炎鎮痛剤(53%)で高く,痛風治療剤(22%),合成抗菌剤,循環器官剤(ともに29%)で低い傾向が認められた.塩酸ミノサイクリン(13例),アリルイソプロビルアセチル尿素(8例)ではDLST陽性例は認められなかった.また,薬剤アレルギー検査法としてのDLSTの特異性を明らかにするために,同意のえられた健常人4名を被験者として,主としてDLST陽性率の高い薬剤についてDLSTを試行し,非特異的陽性反応(偽陽性反応)の有無について検討した.その結果,スパクロ■(クロレラ製剤),パリダーゼオラール■,シオゾール■は高率に偽陽性反応を呈し,PL顆粒■(総合感冒剤),ビオフェルミン■(乳酸菌製剤)も偽陽性反応を呈し得ることが判明した.これらによる薬疹では,DLSTが陽性であっても原因薬剤ではない可能性があるので注意を要する.
著者
山本 俊幸
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.7, pp.1665-1670, 2022-06-20 (Released:2022-06-20)
参考文献数
14

本邦におけるサルコイドーシスの皮膚病変の分類では,特異疹,非特異疹とは別に瘢痕浸潤が記載されてきた.これに対し海外では,瘢痕浸潤という考え方を独立させずに,サルコイドーシス患者の陳旧性瘢痕が隆起してきたものはscar sarcoidosisとして特異疹に含めている.本稿では,これまでの考え方を振り返り,瘢痕浸潤はscar sarcoidosisと同一と考えてよく,本邦においても従来の瘢痕浸潤は特異疹と別扱いせず特異疹の一つのタイプに含めるという考え方を紹介し,いくつかの問題点についても言及した.
著者
辻脇 真澄 藤田 靖幸 清水 宏
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.1305-1311, 2014-06-20 (Released:2014-06-23)
参考文献数
18

Intravascular large B-cell lymphoma(以下IVLBCL)はリンパ腫細胞が全身の小血管を閉塞する結果,多彩な症状を呈するリンパ腫の一型である.近年,早期診断に有用な検査方法としてランダム皮膚生検が注目されている.我々は当科で施行したランダム皮膚生検33名を検討した.その結果,ランダム皮膚生検の施行部位は皮下脂肪織の厚い腹部または下肢が望ましいと考えた.また生検方法はスピンドル生検が望ましいが,自験例では5 mmパンチ生検も検出率に有意差はなく,パンチ生検の選択の余地があると考えた.
著者
猪爪 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.6, pp.1291-1299, 2018-05-20 (Released:2018-05-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

免疫チェックポイント阻害剤は作用機序,効果,副作用において従来の治療とは全く異なる新しいがん治療薬である.最大の特徴は奏効例における効果の長さと,特異な治療関連有害事象(自己免疫現象)である.メラノーマ以外のがん種でも適応が拡大し続けており,画期的がん治療薬として注目を集めているが,解決すべき課題も多い.本稿では免疫チェックポイント阻害剤の特性,現状,今後の課題について解説する.
著者
佐々木 優 杉山 拓洋 高松 良光 但馬 匠 寺島 玄 林 伸和
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.6, pp.1463-1470, 2022-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
6

レセプトデータベースを用いて2020年の集簇性痤瘡の患者数と患者背景,診療科,処方薬について調査した.分析対象者8,521,265人中,集簇性痤瘡患者は2,726人で,有病率0.032%,本邦の推計患者数は29,171人であった.内服抗菌薬の処方は72.3%,うち年間91日以上が10.3%であった.一方,外用抗菌薬の処方は70.4%で,うち年間101 g以上が6.3%であった.診療科は一般外科が19.5%であった.治療に難渋し,抗菌薬の長期投与や外科的処置が行われている現状が示唆された.
著者
石関 昇
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31, 1961 (Released:2014-08-29)

脂漏性皮膚炎の原因は皮脂の分泌異常によると考えられているとはいえ,その本態はなお未知に属する.動物実驗的には,ビタミンB6欠乏食によつて惹起される大黒鼠の皮膚変化が人の脂漏性皮膚炎に類似し,且つこの際尿中にXanthurenic acidの排泄されることが証明されている.以上の事実よりその治療にビタミンB6の應用は当然考えられ,1943年Wrightらの報告以来,吾國においても諸家によりその有効なることが強調された.さらにこれ等の報告を裏書するごとき実驗としては,1951年GlazerらはPyridoxine拮抗体Desoxypyridoxineを人体に投與してビタミンB6欠乏症を惹起せしめ,皮膚には脂漏性皮膚炎類似の症状を顯現した.この際にも,動物実驗に於けるがごとく,尿中よりTryptophanの異常代謝物Xanthurenic acidを檢出し,しかもこれらの欠乏症状はPyridoxineの投與により容易に消褪した.しかるに人の自然の脂漏性皮膚炎とビタミンB6代謝の関係,特にその欠乏の有無は,ビタミンB6測定の良法がないために,臨床的経驗より漠然と使用しているといつても過言ではない.
著者
長谷川 道子 齋藤 龍一 堀内 あゆみ 田村 敦志
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.479-486, 2022-03-20 (Released:2022-03-22)
参考文献数
19

動物用ワクチンのヒトへの誤刺は畜産業従事者の間で起こるが,誤注入された薬剤のヒトへの影響を述べた文献は極めて少ない.我々はオイルアジュバント加鶏用ワクチンを手掌に誤注射後,高度の局所反応を呈した44歳男性例を経験した.高熱を伴う蜂窩織炎様の初期反応が沈静化したのち,進行性に拡大する局所壊死を生じ,組織学的には変性・壊死した組織内の稠密な好中球浸潤と多核巨細胞を混じた肉芽腫形成を認めた.ステロイド全身投与が奏効したが,誤注射された薬剤の除去が不十分または困難な例では試みる価値があると考え報告した.
著者
矢部 朋子 三石 剛 川名 誠司
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1271-1275, 2004

1999年から2003年の間に当科を受診したヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19,以下HPVB 19)感染患者67例について,臨床症状,合併症,妊婦が感染した場合の胎児への影響について検討した.患者は0歳から60歳で,30歳代の女性が最も多かった.患者数は2001年に多く,月別に比較すると,6月に多かった.また,主な臨床症状について小児と成人における出現率を比較したところ,顔面,四肢の紅斑は小児に多く,手足の浮腫,関節痛が成人に多くみられた.皮疹の性状には,成人,小児ともに典型的な顔面の平手打ち様の紅斑や四肢のレース状の紅斑以外に躯幹,四肢の点状紅斑があった.また小児では顔面,躯幹,四肢の点状出血があった.HPVB19に感染した成人女性35例中妊婦は14例で,そのうち2例(14.3%)は妊娠の経過に異常を来たし,1例は子宮内胎児死亡,もう1例は切迫早産であった.妊婦にHPVB19が感染した場合は慎重な対応が必要と考えた.