著者
藤田 次郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.7, pp.1691-1699, 2021

<p>肺を病変の場とする非HIV患者の免疫再構築症候群について,特に呼吸器感染症に着目し,文献検索を実施した.該当したのは,31文献,47症例であった.病原体の内訳は,抗酸菌感染症26例,ヒストプラスマ症9例,アスペルギルス症5例,クリプトコッカス症5例,およびニューモシスチス肺炎2例であった.自験例を紹介するとともに,肺を病変の場とする非HIV免疫再構築症候群の病態,および治療方針について概説した.</p>
著者
福田 英嗣 鈴木 琢 佐藤 八千代 猿谷 佳奈子 向井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.11, pp.2195-2201, 2010-10-20 (Released:2014-11-28)

重症なアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)患者の入院治療は,短期間に皮膚症状を改善する有用な治療法である.しかし,入院中に使用される比較的多くの量のステロイド外用薬が生体に及ぼす影響については明らかではない.今回われわれはADの入院患者において,入院時(検査は入院翌日)および退院時の血中コルチゾール値を測定し,その推移について検討を行った.対象は,当院皮膚科に2007年5月から2008年8月までに入院加療した重症度の高いAD患者である.11歳から43歳(平均値±SD:27.4±7.5歳)の20名(男性12名,女性8名)に,入院時および退院時の朝7時から8時の間に血中コルチゾール値を測定した.結果は入院時の血中コルチゾール値は3.7±5.7 μg/dl(平均値±SD)と低下を示していたが,退院時は11.6±4.4 μg/dlと上昇した.この推移には統計上有意差を認めた(p<0.05).また,入院期間は13.3±4.7日(平均値±SD)であり,血中コルチゾール値が基準値である4.0 μg/dlに復するのに必要な入院期間は平均4.8日(推定)であった.入院中に使用したステロイド外用量はII群が8.6±6.3 g/日(平均値±SD),III群が4.8±5.8 g/日であり,ステロイド外用薬の使用量と血中コルチゾール値の変化量には差がなかった.今回の検討で, 入院を要する重症AD患者では,入院時には副腎皮質機能が抑制されているケースが多く,入院治療を行うことにより皮膚症状の改善が認められ,さらに入院時に基準値より低かった16症例のうち1例を除き退院時には基準値以上になり副腎皮質機能が正常に回復することが示された.重症AD患者においての入院療法は,短期間で効率的に皮膚状態を改善させるのみでなく,抑制状態にある内分泌系機能も同時に回復させることが示された.
著者
荒井 美奈子 白崎 文朗 長谷川 稔 竹原 和彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.14, pp.2471-2478, 2007-12-20 (Released:2014-12-03)

金沢大学皮膚科で10年間に経験した成人発症Still病15症例(男性1例,女性14例,平均年齢35.8歳)について,臨床症状,治療,および予後に関して検討した.本症の特徴的な皮疹は発熱に伴い出没する痒みのない紅斑とされている.しかし,自験例の検討では,発熱に伴って出没する紅斑が4/15例(27%)にしかみられなかったのに対し,発熱と関連なく出没する紅斑が9/15例(60%)にみられた.また紅斑がみられた症例のうち6/15例(40%)は痒みを伴っていた.これらの検討からは,発熱との関連やそう痒の有無にはとらわれず,出没する散在性の淡紅色の小紅斑がStill病の皮疹の特徴と考えられた.経過の検討では,12カ月以上観察しえた14例中6例(43%)はステロイド剤の中止が可能であった.また14例中7例(50%)は減量時などに症状の再発があった.臨床経過が初発症状や検査値により推測できるかを予測したところ,皮疹が発熱や関節痛に先行して出現した6例は全例再発がなく,皮疹が発熱や関節痛と同時あるいは後で出現した群の再発率(8例中7例:88%)と比べて有意に低かった(P<0.05).今後多数例での解析は必要であるが,初発が皮疹のみで全身症状がすぐに出現してこない症例は軽症で,再発しにくい可能性があると考えられた.

1 0 0 0 光老化

著者
上出 良一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.14, pp.3717-3723, 2012-12-20 (Released:2014-11-13)

光老化は紫外線による慢性皮膚障害で,加齢により生じる内因性あるいは自然老化とは異なる皮膚変化である.症状として露光部の色素沈着(日光黒子,光線性花弁状色素沈着),深い皺(表情筋による皺,項部菱形皮膚),頬部のたるみなどが見られる.機序はUVB,UVAにより角化細胞,線維芽細胞の細胞膜表面のEGF,IL-1,TNF-αなどの受容体が活性化され,細胞内のシグナル伝達系を介して転写因子AP-1を誘導し,matrixmetalloproteinase(MMP)の転写が亢進する.産生された蛋白分解酵素が真皮のコラーゲンやエラスチンを分解し,真皮は損傷を受ける.
著者
川田 暁
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.1875-1880, 2004-11-20 (Released:2014-12-13)
被引用文献数
1

Photoaging, which is different from intrinsic or chronological aging, is a skin change induced by chronic and repeated exposure to ultraviolet light (UV). Photoaging skin is characterized by sallowness, mottled pigmentation, solar lentigines, dry and rough skin, telangiectasia, loss of skin tone, leathery texture, laxity, coarse and fine wrinkles, and benign and malignant skin tumors. The dermis of photoaging skin displays solar elastosis and prominent alterations in the collagenous extracellular matrix of the connective tissue. Solar elastosis is the accumulation of massive amounts of abnormal elastic material in the dermis. Some studies using a novel transgenic mouse model expressing a human elastin promoter-reporter gene construct have revealed that an increase in human elastin promoter activity is involved in accelated synthesis of elastin-related proteins. UV irradiation induces an increase in the activity, mRNA, and protein of matrix metalloproteinases via downstream signal transduction through activation of MAP kinase pathways and may contribute to photoaging. Sunscreens are known to be capable of preventing photoaging.
著者
神永 博子 臼井 俊博 四宮 達郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.21-26, 2001-01-20 (Released:2014-12-27)

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすことが知られている.毛髪についても,ストレスで脱毛などの影響を受けることが経験的に知られているが,学術的な研究報告はほとんど見受けられない.そこで,ストレスが被毛成長に及ぼす影響についてモルモットを用いて検討を行った.その結果,ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に,毛長,毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった.加えて,ストレスを受けた動物の成長毛は筋状の模様が形成され,被毛の質的な変化も引き起こすことが確認された.また,被毛成長と関連があるといわれているγ-glutamyl transpeptidase活性,skin sulfhydryl oxidase活性,alkaline phosphatase活性に有意な低下が観察され,ストレスは生化学的にも被毛成長に影響を及ぼしていることが明らかになった.これらのことから,ストレスは被毛成長に抑制的影響を及ぼしていることが示唆された.
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
高島 有香 守内 玲寧 白戸 貴久 和田 吉生 福澤 信之 原田 浩 清水 聡子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.2373-2377, 2020

<p>臓器移植患者は免疫抑制のため水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症のリスクが高く,重症化の恐れもあるが,これまで多数例の検討は少なく,治療基準も明確ではない.当施設で施行された腎移植548症例中VZV感染症を発症した81例につき,患者背景,発症頻度,移植から発症までの期間,臨床症状をレトロスペクティブに検証した.汎発型帯状疱疹を11例に認め,うち1例は脳炎を合併し死亡した.腎移植後のVZV感染症診療の際には,速やかな治療開始と慎重な観察が必須であるが,腎移植後1年間以内の患者や献腎移植患者では特に発症率が高く,より慎重な観察が重要である.</p>
著者
坪井 良治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.163-171, 2009-02-20 (Released:2014-11-28)

マラセチア(Malassezia)はヒトの皮膚に常在する脂質要求性の二形性真菌で,歴史的変遷を経て現在13菌種に分類されている.非培養法を用いた解析ではM. globosaとM. restrictaが主要分離菌種である.マラセチアが関連する皮膚疾患としては,癜風,マラセチア毛包炎,脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎などが挙げられるが,最近の研究から,癜風やマラセチア毛包炎はマラセチア感染症といえるが,脂漏性皮膚炎はマラセチアが発症,増悪に深く関与した疾患であり,アトピー性皮膚炎においては特異IgE抗体が上昇し,増悪因子のひとつであると考えられる.新しい分類による各菌種の病態ならびに病原的意義は必ずしも明確になっていないので,今後さらに研究が必要である.
著者
山城 充士 山口 さやか 大嶺 卓也 内海 大介 山本 雄一 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.12, pp.2641-2645, 2017

<p>14歳,男性.スキーをした翌日に眼瞼,頬部,手背に疼痛を伴う発赤や腫脹を生じた.血中プロトポルフィリン高値,光溶血現象及び蛍光赤血球陽性,肝障害があり骨髄性プロトポルフィリン症と診断した.フェロケラターゼ遺伝子にナンセンス変異(c.361C>T,p.R121<sup>*</sup>)と低発現アレル(IVS3-48C)の複合ヘテロ接合を同定した.父方の祖母,従姉妹らも同様の複合へテロ接合を有していた.一方,無症候の父親と叔母は,ナンセンス変異をヘテロ接合で保持していたが,対側アレルは正常アレル(IVS3-48T)であった.</p>
著者
神永 博子 四宮 達郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.615, 1997 (Released:2014-08-13)

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすといわれているが,皮膚科学領域での学術的な知見はほとんど得られていないのが現状である.そこで,ストレスが及ぼす影響を血液生化学検査,皮膚抽出成分の測定,皮膚色測定,皮膚組織学的検索の観点から検討した.血液成分ではコレステロール,アルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられ,ストレスは全身的な影響を示すことが確認された.また,皮膚抽出成分においてもアルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられた.皮膚色はストレスにより,明度L*値,黄色味b*値の上昇,赤味a*値,彩度C*値の低下が観察された.組織学的検討として,表皮DOPA染色によるメラノサイトの観察を行ったところ,ストレスで増加傾向を示し,メラノジェネシスが亢進している可能性が示された.また,表皮のATPase染色によるランゲルハンス細胞の観察を行ったところ,ストレスで減少傾向を示し,皮膚の免疫能が低下している可能性が示された.以上より,ストレスは皮膚そのものに対しても様々な影響を及ぼしていることが明らかとなった.
著者
有川 順子 檜垣 祐子 高村 悦子 川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1107-1110, 2002-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

眼瞼を含む顔面の皮疹が高度で,顔面へのステロイド外用量が5g/月程度のアトピー性皮膚炎患者25人を対象とし,経時的に眼圧の測定を行い,ステロイド外用療法の眼圧への影響を検討した.その結果,開始時に1人(4%)で軽度の眼圧上昇を認めた以外は,7カ月~2年8カ月の観察期間中,眼圧の上昇は認めず,前述の1例ではその後眼圧がさらに上昇することもなかった.より多数例での検討を要するものの,今回の検討からは,顔面へのステロイド外用療法はミディアムクラス5g/月程度の使用量では眼圧上昇の原因にはなりにくいと考えられた.
著者
小野 友道
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.1549-1564, 2012

1935年,当時東北帝国大学教授太田正雄は映画のシナリオ作成を依頼された.映画は梅毒予防のための啓発映画で,作成されたシナリオは当時熊本医科大学助教授北村包彦に手直しするよう送付された.それは「螺旋形の悪魔」という題名で完成を見たが,しかし,映画は実現しないまま幻に終わった.太田正雄のシナリオは,現在,神奈川近代文学館に所蔵されている.このシナリオには当時の梅毒に対する考え方,歴史,症状そして治療などが記されており,それらを混ぜながらの若い建築家夫婦の梅毒物語である.歴史学的に貴重であり,また皮膚科学的にも興味深い資料である.
著者
遠藤 薫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.6, pp.945-959, 2003

アトピー性皮膚炎入院患者504名(男202名,女302名)に施行した矢田部―ギルフォード(YG)性格検査の結果を健常人164名(男45名,女119名)と比較すると,男性患者は健常人男より性格因子D(抑うつ的),I(劣等感),N(神経質)が高く,G(活動的)が有意に低くなっていた.女性患者は健常人女よりAg(攻撃的)とR(のんき)が低くなっていた.健常人女は健常人男よりD,C(回帰性傾向),Iが高く,情緒的に不安定であった.逆に男性患者は女性患者よりNが高く,S(社会的外向)が低く,女性患者は男性患者よりAgとRが低くなっていた.アトピー性皮膚炎の症状で比較すると,男では,入院時重症になるほど,DとCが高く,Sが低くなっていたが,女では性格因子に差がなかった.治療などを考慮した疾患重症度をみると,男では,D,Cの有意差が消失していた.顔面重症度を見ると,女性患者では中等症に比べて軽症及び重症患者で,GとSに低下が見られた.発疹型を6群(紅斑型,丘疹型,紅斑+丘疹型,貨幣状型,肥厚・苔癬化型,痒疹型)に分類すると,男において,紅斑型と肥厚・苔癬化型は,紅斑+丘疹型,貨幣状型に比べて,D,I,N,Co(非協調的)が高く,Ag,G,R,A(支配的),Sが低くなっていた.アトピー性皮膚炎を臨床経過から,現在の発疹が悪化してからの年数が5年未満の群と5年以上の群に分けると,5年以上の群は男性患者でCoが高くなっていた.入院直前1カ月のステロイド外用量から,5群(0g/月,5g/月未満,5~50g/月,50g/月以上,ステロイド内服・注射)に分類した.男性患者では,5g/月未満と5~50g/月の群は0g/月とステロイド内服・注射の群に比べてAgが高く,女性患者では50g/月以上の群でAgが高くなっていた.さらに,入院中のステロイド外用量から同様に分けると,男性患者ではステロイド内服した群において,性格因子D,Iが高く,G,R,A,Sが低下していた.女性患者では,ステロイドの外用が多くなると,AgとSが低くなっていた.検査値との関係を見ると,血清LDH値では,高値であるほど女性患者でRが低下していた.血清IgE値が高いほど,男性患者ではDが高く,女性患者ではRが低下していた.また,血清cortisol値が低いほど,男性患者では,O(主観的)が高く,女性患者では,DとIが高くなっていた.アトピー性皮膚炎の男は,健常人より情緒が不安定で人間嫌いで閉じこもる傾向があり,女は優柔不断で他人の意見に左右されやすく,特に顔面が悪化すると人間嫌いで閉じこもる傾向があると言える.また,皮膚症状が性格因子に影響する以上に,性格因子の問題点が臨床経過に重大な影響を及ぼしている可能性がある.
著者
高橋 千歳 大西 誉光 渡辺 晋一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, 1999

症例1:54歳男.約10年前より右足関節外異の皮疹が徐々に増大し,30×25×5mmの広基性の表面平滑で一部糜爛を伴う腫瘤となった.症例2:46歳男.約5年前よりの左下腿の結節が最近数ヵ月で急速に増大し,38×48×8mmの広基有茎性の表面細顆粒状,易出血性の赤褐色腫瘤となった.症例3:76歳女.3年前に左腓骨骨折,2ヵ月後のギプス除去時,同部の結節に気付くも放置.42×29×6mm大の広基有茎性で,糜爛を伴う易出血性紅色腫瘤となった.症例4:63歳男.約8年前よりの右下腿の結節が2年前より急速に増大し,35×38×7mmの広基有茎性で,潰瘍を伴う易出血性紅色腫瘤となった.4症例とも全身検索にて転移は認められなかった.組織はいずれも腫瘍は表皮と連続して真皮内に島嶼状または索状に増殖し,一部に管腔構造を認めた.腫瘍細胞は小型で好酸性の胞体を持つporoma様細胞で,異型性を認めた.症例1,2ではその他に胞体の豊富な澄明細胞の増殖を認めた.以上4例の腫瘍細胞の分化の方向を探る目的で各種抗ケラチン抗体にて免疫組織化学染色を行ったところ,RCK102とMNF116抗体染色が陽性を示すなどeccrine poromaと同様な染色態度を示し,腫瘍細胞の多くは真皮内汗管の基底細胞へ分化しているものと考えられた.
著者
大津 晃
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.1291, 1991 (Released:2014-08-11)

チメロサール皮膚炎の13例を検討し,その抗原決定基による分類は,チオサリチル酸(S群)8名,チメロサール(T群)3名,水銀系(H群)1名,チオサリチル酸と水銀(HS群)1名であった.チオサリチル酸感作高度例にピロキシカムの光貼布試験以外に貼布試験も陽性となるものが存在した.254名の外来患者についてチメロサール感作基による分類を試み,同時にピロキシカム光貼布試験を検討したところ,70名のチメロサール貼布試験陽性者を認め,その構成は,S群17名,HS群4名,H群37名,T群12名であった.ピロキシカム光貼布試験陽性者はチオサリチル酸陽性群(S+HS群)21名中13名に認められた.ピロキシカム光線過敏症はチメロサール皮膚炎の42.8%に発生する可能性があることを示した.またチメロサールの陽性率および貼布試験の施行方法の問題点について述べた.
著者
山前 恵美子 相馬 良直 室田 東彦 山前 正臣 溝口 昌子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.43-48, 2004

抗Jo-1抗体に代表される抗aminoacyl-tRNA synthetase抗体が陽性の多発性筋炎/皮膚筋炎患者では,筋炎のほかに間質性肺炎,関節炎,Raynaud現象などが高頻度に認められ,臨床的なサブセットとして認識されることから,antisynthetase症候群と呼ばれる.症例は64歳男性.筋力低下,関節痛,倦怠感と共に,両手の指腹,手指側縁と関節背面に落屑と亀裂を伴う角化性病変が出現.爪郭の出血点を伴うが,ほかに皮膚筋炎を示唆する皮疹はない.手指の皮疹は組織学的には慢性湿疹様で,satellite cell necrosisを伴っていた.血清CPK 6687 IU/<i>l</i>,筋電図で筋原性変化,筋生検にて変性と萎縮.間質性肺炎あり.抗Jo-1抗体陽性より,antisynthetase症候群と診断.手指の病変はantisynthetase症候群に伴ったmechanic's handと診断した.mechanic's handの過去報告例を集計し,antisynthetase症候群との関連について考察した.
著者
古川 福実
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.13, pp.2689-2697, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
24

2005年から13年間,和歌山県立医科大学医学部学生の人権教育のテーマとして,ハンセン病をとりあげた.ハンセン病の国内施設において不法中絶の常態化を報じる新聞記事も紹介して,講義と記事に対するレポートの提出を求めた.更に,2010年から4年間の学生には3年後の臨床実習の際に同じレポート提出を求めて,傾向を比較し変化を解析した.合計1,347のレポートの検討によって,ハンセン病が人権教育や臨床倫理教育に極めて有用なテーマであることが確認された.