著者
古川 福実 松永 佳世子 秋田 浩孝 上田 説子 薄木 晶子 菊地 克子 幸野 健 田中 俊宏 林 伸和 船坂 陽子 師井 洋一 山本 有紀 米井 希
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.347-356, 2008-03-20 (Released:2014-12-03)

Chemical peeling is one of dermatological treatments for certain cutaneous diseases or conditions or aesthetic improvement, which consists of the application of one or more chemical agents to the skin. Chemical peeling has been very popular in medical fields as well as aesthetic fields. Since scientific background and adequate approach is not completely understood or established, medical and social problems have been reported. This prompted us to establish and distribute standard guideline of care for chemical peeling. Previous guidelines such as 2001 version and 2004 version included the minimums for the indications, the chemicals used, their applications, associated precautions, and postpeeling care and findings. The principles were as follows :1) chemical peeling should be performed under the control and the responsibility of the physician. 2) the physician should have knowledge of the skin and subcutaneous tissue and understand the mechanism of wound-healing. 3) the physician should be board-certified in an appropriate specialty such as dermatology. 4) the ultimate judgment regarding the appropriateness of any specific chemical peeling procedure must be made by the physician in light of all standard therapeutic ways, which are presented by each individual patient. Keeping these concepts, this new version of guidelines includes more scientific and detailed approaches from the evidence-based medicine.
著者
浅井 芳江 濱田 稔夫 鈴木 伸典 中野 和子 谷井 司 泉谷 一裕
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, 1983

背部正中部,鎖骨上部,肋骨部,前脛骨部,肘頭,膝蓋部などに褐色の色素沈着を生じた19歳から36歳の男2例,女11例,計13例について臨床的,病理組織学的に検討を行った. 臨床的には,比較的若いやせ型の女性に好発し,癈埠は無いかあっても軽度で,色素沈着は前記の骨の直上部皮膚に限局するものが多く,一部の症例では上背部,頚部に及んでおり,その性状はびまん性,表面平滑で角化傾向は示さない.病理組織学的,組織化学的所見では,表皮基底層のメラニン顆粒の増加と真皮上層に多数の melanophage を認めたが炎症性細胞浸潤は極く僅かであった.アミロイド染色では全例にアミロイドの沈着は認められなかった. このような症例の記載は成書にはみられないが,臨床的には特異であり,1つの entity と考えたい.原因はなお不詳であるがその一因として,当該部ではその直下に骨が存在し,皮下脂肪が少ないことも相まって,慢性刺激,摩擦,圧迫などの機械的刺激を受けやすいことが挙げられる.併せて皮膚アミロイドーシスの中,特に臨床像が類似する macular amyloidosis との関係について考察を加えた.
著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.2513-2517, 2019

<p>アタマジラミは,市販されているピレスロイド製剤を用いて家庭内で駆虫してきたため,これまで皮膚科医が介入する機会はほとんどなかった.しかし近年,ピレスロイド製剤で駆虫できない難治性アタマジラミ症が世界中で広がり,日本でも遭遇する機会が増えている.アタマジラミの特徴,治療法,感染対策について解説するとともに,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの耐性化機序や日本の現状と,今後期待される薬剤について紹介する.</p>
著者
塩原 哲夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, 1978

マウスにおけるトリュトロベソゼソスルフォン酸ソーダ(TNBS)の経静脈前投与によるトリニトロクロロベソゼン(TNCB)接触過敏症及び,抗トリニトロフェニル(TNP)抗体産生に対する免疫寛容に関し in vivo及び in vitro の実験で検討を加え,以下の結果を得た. 1. TNBS投与により TNCB接触過敏症だけでなく,抗 TNP 抗体産生にも免疫寛容が導入される事がみいだされた.抗TNP抗体産生の免疫寛容は,その導入には感作1週間前の TNBS 投与が最も効果的であり,接触過敏症の免疫寛容の場合と比べ,完全な寛容導入に比較的多量のTNBSを要し,また寛容状態からの回復も比較的早い事が示された. 2. TNBS 投与マウス牌細胞を in vitro において,抗原(ハプテソーキャリヤー)と carrier primed helperT cell とともに培養したところ,正常牌細胞に比べ,抗 TNP 抗体産生が著明に抑制された.この抑制はハプテン(TNP)に特異的であり,しかも抑制にはT細胞の関与はなく,正常勝細胞の抗ハプテソ抗体産生をactiveに抑制するようなサプレッサー細胞の存在も否定され,B 細胞レベルの receptor blockade による免疫寛容であることが示唆された.3.接触過敏症の in vitro の assay 法としていわゆる antigen-induced activationを用いて検討した結果,TNBS 投与により免疫寛容を導入後感作したマウスの勝細胞やリンパ節細胞では antigen・induced activation が抑制されており, in vivo の結果と相関する結果を得た.4.感作マウス吽細胞集団からマクロファージ(Mφ)を除くと,有意のantigen-induced activation は見られなくなったが,それに TNBS 投与マウスMφを加えた場合でも,元の細胞集団と同様の activation を示すように回復し,この点においてはトレラントマウスMφと正常マウスMφとの差は認められなかった.
著者
早川 順 塩原 哲夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1115, 2000 (Released:2014-08-19)

アトピー性皮膚炎患者における発汗障害を明らかにするために,アトピー性皮膚炎患者20名[男性12名,女性8名,平均26.0歳]と健常人20名[男性10名,女性10名,平均25.2歳]について入浴負荷後の発汗量を前額,頸部,肘窩,背部の4ヵ所について局所発汗量連続記録装置(Kenz Perspiro OSS-100)を用いて測定した.結果:アトピー性皮膚炎患者群では健常人群と比較していずれの部位においても発汗の低下が認められ,皮疹の程度の強い前額部において健常人群0.36±0.04mg/cm2/minに対してアトピー性皮膚炎患者群0.21±0.02mg/cm2/minと有意に低下(p<0.05)していた.また,患者群内の皮疹部と無疹部の比較では,無疹部でより発汗が少ない傾向が認められた.以上より,アトピー性皮膚炎患者では,温熱負荷に対する発汗能が低下しており,それによる熱放散の障害が皮疹の悪化因子となっている可能性が示唆された.さらに,患者群内で皮疹部より無疹部で発汗の低下が認められたことは,発汗低下が単に皮疹に関連した炎症の結果としての現象ではなく,神経支配の異常などに基づくものである可能性が示唆された.
著者
原 典昭 藤澤 崇行 山蔭 明生 山崎 雙次
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.9, 1997 (Released:2014-08-13)

ステロイド投与中のSLEおよび水疱症患者の股関節をX-P,MRIを用い、大腿骨頭壊死の有無を検討し,若干の知見を得たので報告する.対象症例はSLE30例,水疱症17例の計47例で,うち11例に大腿骨頭壊死が認められ,SLE10例,尋常性天疱瘡1例であった.なお11例中7例はX-P所見で異常は見出せず,MRIにて初めて病変が認められた.症例を大腿骨頭壊死(+)および大腿骨頭壊死(-)のSLE群,水疱症群の3群に分類し,比較検討した,SLEではステロイドの1日平均投与量および最大1日投与量が多い例,PSL 30mg/day以上の大量投与日数の長期例,最大尿蛋白量が多い例に,有意に大腿骨頭壊死が認められた.ステロイドの投与方法を工夫することによりANFの予防ができる可能性があると思われた.
著者
丸山 千里
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.139, 1964 (Released:2014-08-29)

我々は昭和19年結核症のワクチン療法について研究を開始し,現在もなお続行中である.研究開始当時結核菌より特異抗原性物質を抽出し,これをワクチンとして皮膚結核症の患者に使用したところ好成績を収めることに成功し,昭和21年6月第1回の報告を試みた.その後臨床実験の成績を参考にワクチンの改良に専念し,その成績はすでに20数回にわたつて報告したが,最近協同研究者の参加をえて肺結核症の患者にも使用し予期以上の成績をあげることができた.このように,我々がワクチン療法の研究を続行している間に,結核症の化学療法に関する研究は瞠目に値する進歩をとげた.然しながら,最近化学療法の効果にも限界のあることが次第に明らかになつてきた.また,上記抗結核剤はその副作用或いは菌の耐性化等のため長期にわたる使用が不可能になる場合にしばしば遭遇する.ワクチン療法と化学療法は,その作用機序が全く異なるものと想像されるので,化学療法が限界に達した場合,すなわち病状の好転が期待できないような場合,作用機序を異にするワクチン療法を試みることは,確に一つの方法であるに違いない.このような考えのもとに,我々は化学療法によつて病状の好転しない結核症患者に対しワクチンを使用したところ,予期以上に好転した症例を多数経験することができた.すなわち,我々のワクチン療法は,最初よりワクチンを使用した場合(初回治療)は勿論,化学療法が限界に達した場合に使用しても奏効するということがいえるのであつて,これらの事実は結核症の治療に対してきわめて大きな意味を持つものと思う.我々のワクチン療法に関する研究は上述の通りかなりの年数に達しているので,ここに現在迄の研究経過の概略を述べ,大方のご批判を仰ぎたいと思う.
著者
山本 洋子 橋本 明彦 冨樫 きょう子 高塚 純子 伊藤 明子 志村 英樹 伊藤 雅章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.821-826, 2001-04-20
参考文献数
17
被引用文献数
16

掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.
著者
盛山 吉弘
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.11, pp.2187-2194, 2010

近年,創傷管理の基本理論の1つとしてmoist wound healingというキーワードがあげられている.そして,本邦では,その理論をもとに,食品用のラップを用いて簡便に湿潤環境を作り出す,いわゆる"ラップ療法"が広く行われるようになっている."ラップ療法"は,医療材料でないものを使用するという問題点は残るものの,創傷管理の正しい知識をもった医療従事者が施行すれば,安価で有用な治療法の一つであろう.しかし,どんな傷も簡単に治る万能な治療法と誤解し,適応を考えずに"ラップ療法"を施行している医療従事者も多い."ラップ療法"の恩恵を受ける患者がいる裏側に,被害者が生まれている事実があることも忘れてはならない.本稿では,不適切な湿潤療法を施行され,重篤な感染症が続発した象徴的な5症例を供覧し,安易な湿潤療法の施行に警鐘を鳴らしたい.
著者
岩澤 真理 寄藤 和彦 戸井田 敏彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2165-2171, 2009-10-20 (Released:2014-11-28)

コンドロイチン硫酸・鉄コロイド注射液(以下ブルタール®)は鉄欠乏性貧血の治療に使用される鉄コロイド製剤である.我々は成田赤十字病院皮膚科外来にて,平成18年3月から5月にかけて,ブルタール®による薬疹4例を経験した.従来原料として使用していたウシ由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムを,平成17年11月サメ由来品に変更後より副作用報告が急増した.平成18年7月よりブルタール®の自主回収が実施され,被害の増加は防がれたが,原因は解明されていない.今回我々は,ブルタール®の材料に使われたコンドロイチン硫酸を分析し,その結果,ウシ由来のコンドロイチン硫酸は4位に硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSA)が主たる成分であり,サメ由来のコンドロイチン硫酸は6位の硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSC)が主たる成分であった.ヒトのコンドロイチン硫酸はCSAが主成分であることが知られており,硫酸化度,分子量などの構造の変化により薬疹を生じた可能性を推測した.
著者
谷崎 英昭 神戸 直智 瀧 玲子 松村 由美 是枝 哲 十一 英子 宮地 良樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.979-983, 2007-05-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
2

22歳,男性.既往歴に花粉症.フルーツ摂取時に違和感を自覚していたが,摂取制限はしていない.整形外科での手術に際して,既往歴から口腔アレルギー症候群やラテックスフルーツ症候群の可能性を疑われラテックスを含有しない使用器具が準備されたが,全身麻酔導入し気管内挿管・抗生剤投与(執刀前)をした時点でショック状態となった.当院での皮内テストの結果,投与されたジェネリック医薬品で陽性反応を認め,その先発品では陰性であった.両者は共に添加物を含まない製剤であるため,自験例では有効成分以外の,製造過程で混入する可能性がある類縁物質を原因としてアナフィラキシー反応が生じたものと推測された.医療経済の効率化からジェネリック医薬品の使用頻度が急速に上昇している今日,安全性に対しても十分な配慮が必要であることの警鐘として報告する.
著者
宮倉 崇 大越 加奈恵 水上 潤哉 室 繭子 山本 真実 荒井 佳恵 永井 彩子 入澤 亮吉 山崎 正視 坪井 良治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.213-219, 2008-02-20 (Released:2014-12-03)

2005年末のフィナステリド(プロペシア®)の発売以来,東京医科大学病院皮膚科では2006年11月までに449名の患者が内服治療を受けている.初診時に男性型脱毛症の病型分類と患者の体毛の濃さを診察し,あわせて家族歴,環境因子,現在までの治療,内服薬への期待などについてアンケート調査を行った.また,6カ月以上内服した症例については,使用前の臨床写真と比較して有効性を判定した.これらの調査の結果,受診患者のNorwood-Hamilton分類は軽症のII型が43%,III型が17%と両者で約半数を占め,重症のVI型,VII型は10%以下であった.有効性の判定では,「やや改善」以上は内服半年後で66%であった.髭,胸毛,四肢など体毛同士の比較では,その他の体毛と比べて髭,下肢が濃い傾向が認められた.家族歴では患者の父親に男性型脱毛症があるのが68%で,祖父は44%であった.また,内服脱落例は全体の17%であり,受診時年齢,家族歴,飲酒の有無が脱落症例と関連が認められた.内服経過中に重大な副作用を生じた症例はなく,服用中止は1例であった.
著者
徳田 安章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, 1960

著者等はさきに「表在性膿皮症の抗生物質軟膏療法の基礎的研究」として,現在市販に供されている凡てを含む13種類の抗生物質の各種軟膏について種々の観点から検討を施した.抗生物質軟膏療法を論ずるにあたり,著者等は次のごとき諸問題を解決しなければならないと思惟するものである.即ち1)当該抗生物質のin vitroの抗菌力 2)原因菌の感受性 3)軟膏貼用局所皮膚の抗生物質濃度 4)軟膏中抗生物質の力價の持続性 5)軟膏からの抗生物質の遊離度 6)軟膏中の抗生物質の協力作用 7)抗生物質軟膏の肉芽形成に対する影響 8)刺戟又は感作による接触性皮膚炎等アレルギーの発生頻度等である.かくてその大部分の抗生物質軟膏については以上の諸條件を詳細に檢討し,その結果はすでに報告したが,國産のGramicidin-J(GRMN-Jと略称する)のみは水に極めて難溶性であり,且つcyclic hexapeptideの高分子構造をなすため定量が困難となり,経皮滲透量を測定し得る定量法を当時は見出し得なかつたので併せ論ずることが出来なかつた.今囘,著者はその補遺としてGRMN-Jの定量法並びに種々の軟膏基剤に配合した時のGRMN-Jの経皮滲透量を測定し若干の知見を得たので報告する.
著者
谷奥 喜平 徳田 安章 小泉 雄一郎 山田 佳也 中山 創生
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, 1959

現在市販されている抗生物質軟膏としては,ペニシリン(PC)軟膏,クロールテトラサイクリン(CTC)軟膏,オキシテトラサイクリン(OTC)軟膏,テトラサイクリン(TC)軟膏,クロラムフエニコール(CP)軟膏,エリスロマイシン(EM)軟膏,ロイコマイシン(LM)軟膏,バシトラシン(BTRC)軟膏,フラシオマイシン(FRM)軟膏,グラミジン・J(GRMN-J)軟膏,コリスチン(Colistin)軟膏j,ポリミキシン・B(PMX-B)軟膏等があり,これ等の合剤としてはBTRC-FRM軟膏,GRMN-DHSM(ジヒドロストレプトマイシン)軟膏,BTRC-Colistin軟膏等,更にFRMーハイドロコーチゾン軟膏がある.且これ等の軟膏基剤としては主として白色ワゼリン,親水ワゼリンであるが,極く一部では親水軟膏(CP),ソルベース(GRMN-DHSM)が用いられている.又その軟膏中の抗生物質濃度は大部分5mg/gで,一部では10mg/g(CP),又は30mg/g(TC系3剤)である.以上の如き抗生物質軟膏基剤が主として白色ワゼリンであり,尚その濃度が同じく5mg/gである理論的実驗的根據が殆ど知られていない.他方最近PC・アレルギーに於ける感作源,誘発源として抗生物質が注目されている.・に於て我々は抗生物質軟膏療法の実驗的研究を企てた次第である.我々は抗生物質軟膏の選擇は次の基準によつて行うべきものと考えている.即ち 1)当該抗生物質のin vitro抗菌力 2)原因菌の感受性 3)軟膏貼用局所皮膚の抗生物質濃度 4)軟膏中の抗生物質力價の持続性 5)軟膏からの抗生物質の遊離度 6)軟膏中の校正物質の協力作用 7)抗生物質軟膏の肉芽組織に対する影響 8)刺戟又は感作による接触性皮膚炎等アレルギーの発生頻度 我々はPC等13種類の抗生物質を夫々白色ワゼリン,親水ワゼリン,吸水軟膏,親水軟膏,ソルベース,カーボワックスに配伍した抗生物質軟膏に就て,以上の8項目を檢討して,次に述べるが如き結果並びに結論を得たから,・に報告する次第である.
著者
相原 道子 相原 雄幸 池澤 善郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.135-143, 2005-02-20 (Released:2014-12-10)

Stevens-Johnson症候群(SJS)の本邦報告例を小児例と成人例に分けて集計し,検討した.1981年から2004年2月までに報告された症例のうち小児123例(11カ月~15歳,男女比1:0.6),成人208例(16歳~79歳,男女比1:1.5)を調査対象とした.SJSの原因と考えられたものは,小児では薬剤が48.8%,感染症が39.8%,成人では薬剤が76.9%,感染症が12.5%であり,小児で感染症の比率が高かった.小児,成人ともに原因薬剤は抗けいれん薬が,感染症はマイコプラズマ感染が最も多く,小児ではマイコプラズマ感染がSJS全体の原因の27.6%を占め,成人の5.7%より多かった.臓器障害は小児,成人とも肝障害,呼吸器障害が多くその頻度に差はみられなかった.遷延化した病変は小児,成人ともに眼病変(小児13.8%,成人12.0%),呼吸器障害(小児5.7%,成人5.3%)の順に多く,小児に特徴的なものとしては歯牙の形成障害がみられた.死亡率は小児0.8%,成人8.2%であり,マイコプラズマ感染によるSJSで中毒性表皮壊死症(TEN)に移行した症例はみられなかった.治療はステロイド剤の全身投与が83.9%に行われ,有効であった.以上より,小児のSJSは成人SJSよりマイコプラズマ感染症が原因となることが多く,臓器障害や遷延化病変の発症率は成人と比較して低くはないが,死亡率は低いことが明らかとなった.