著者
米屋 武文 佐藤 泰
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.363-367, 1979

<i>Rhizopus javanicus</i>の有機酸およびエタノールの生産量に及ぼす好気培養条件の影響ならびにそのときの菌体発育状況,酵素活性の変化等を調べ,さらに本菌のアルコール発酵乳製造への利用性についても若干の言及を行った.その結果,有機酸生産量は培養液への通気量増加とともに上昇し,エタノール生産量は特定の条件下で最大値を取ることが認められた.酸素供給量が菌体の要求量を上回る条件下では培養液は高酸低エタノール型となり,逆の条件下では低酸高エタノール型となった.いずれの場合にもフマル酸,コハク酸,リンゴ酸,酒石酸が含まれ,後者では酢酸も検出された.両者の差異は菌体内酵素活性にもみられ,アルコール脱水素酵素およびチトクロム酸化酵素はどちらも低酸高エタノール型培養液中の菌体に高い活性が検出された.本菌による有機酸・エタノールの生成比率は培養時の通気攪拌条件によってコントロールしうるとともに,その生成量は主として酵母と乳酸菌の混合培養によって製造される既存のアルコール発酵乳に劣らないことが示され,利用性が認められた.
著者
原 利男 久保田 悦郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.625-630, 1982 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
9 12

緑茶の貯蔵臭の原因物質を解明するために,各種緑茶の貯蔵中における香気成分の変化を,GCおよびGC-MS法によって調べた. その結果,25°Cに貯蔵した番茶および下級煎茶は1-penten-3-ol, cis-2-penten-I-ol, tvans-2,cis-4-hep-tadiena1, traps-2,trans-4-heptadienalが非常に多く生成した.中級および上級煎茶でもこれら4成分が他の化合物より多く生成するが,番茶および下級煎茶に比較するとその量は少なかった.これらの化合物はにおいの性質から緑茶の貯蔵臭の原隙物質と推定された. 緑茶貯蔵中に,カロチノイド類の酸化生成物と推定される2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxycyclohexanone, β-cyciocitral,α-ionone, β-ionone, 5, 6-epoxy-β-ionone, dihydroactinidiolideが少し増加した. このほか, cis-3-hexen-1-ol,traas-3, cis-5-octa-lien-2-one, 6-methyl-5-hepten-2-one, n-amylalco-hol, n-octanolも貯蔵申に少し増加した.
著者
ENDO Hiroshi NAKAJIMA Kei CHINO Ryuji SHIROTA Minoru
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
Agricultural and Biological Chemistry (ISSN:00021369)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.9-18, 1974
被引用文献数
28

A <i>Chlorella</i> strain with high growth rates under heterotrophic growth condition was isolated from a pond and identified as <i>Chlorella regularis.</i> The optimal temperature for growth was 36&deg;C and the optimal pH 6.0_??_7.0. Glucose, galactose, acetic acid, ethanol, acetaldehyde and pyruvic acid may serve as the carbon source supporting the growth under both dark and light conditions.<br> The specific growth rate &mu;max was; 0.3 hr<sup>-1</sup> under autotrophic condition, 0.28 hr<sup>-1</sup> under heterotrophic condition, and 0.45 hr<sup>-1</sup> under mixotrophic condition. In the dark heterotrophic culture, the yield of the cells to glucose was 0.5_??_0.6, that to acetic acid 0.48, and that to ethanol 0.66. When dark heterotrophic cells were cultured under mixotrophic condition, the yield to glucose increased to 0.82, that to acetic acid to 0.85 and to ethanol to 0.91.<br> The protein and chlorophyll contents of the cells in autotrophic culture were approximately, 60% and 4Y., respectively. These contents of the cells in dark heterotrophic culture changed in accordance with the growth phase. The protein of the cells reached to, approximately, 60% and the chlorophyll to 2% in stationary phase of growth, although the cells were maintained even in the dark.
著者
遠藤 章
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.276-280, 2010-04-01 (Released:2011-08-29)
参考文献数
20

コンパクチン(ML-236B,メバスタチン)とその最初の同族体ロバスタチン(モナコリンK,メビノリン)が発見されたのは30年以上前の1970年代である(コンパクチン同族体をスタチンと総称).ロバスタチンが商業化スタチン第1号として登場してから(1987年)でも20年以上が過ぎた.現在では,その後開発された半合成および合成スタチンを加えた計7種のスタチンが,世界中で毎日約4,000万人の患者に投与され,すでに500万人の命を救ったとされる.スタチンの年間売り上げは3兆円(邦貨換算)を越す.卓越した安全性と薬効が認められたスタチンは,ペニシリンと並ぶ‘奇跡の薬’と呼ばれている.医学と医療に与えたインパクトが巨大なだけでなく,世界の医薬品産業でも史上最大の売上げを記録して,産業界からも注目されている.このような例は百年に幾度もないだけに,ペニシリンの例に倣って(1),発見と開発をめぐる事実を正確に後世に残すのが,筆者に課せられた責務と考える.
著者
西元 勝也 戸田 義郎 山本 武彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.99-105, 1975 (Released:2008-11-21)
参考文献数
13

1. 鶏卵黄をRhizopus属糸状菌より得られた酸性proteinase, lipaseを含む酵素剤(“Samprose”)とともにインキュベートすることにより,イソプロパノールにより抽出される脂質の収量は増加した. 2. 酵素処理した卵黄は,酸度,ホルモール滴定値は増加するが,その増加のある時点以後では卵黄は遠心分離のみにより上,中,下の3層に分離することがわかった. 3. 分離した上層は中性脂質と若干のそれの分解物,中層は主としてリン脂質と若干のそれらの分解物,下層は脂質をほとんど含まない卵黄蛋白の分解物であることがわかった.
著者
神戸 千幸 岩浅 孝 逆井 利夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.329-334, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
5 5

当社工場で製麹した麹を,実験室にて食塩濃度が17%になるようにして仕込んだ20試料の諸味について,熟成期間中における各種有機酸について検討を加え,次の結果を得た. (1) 仕込経過に伴って増加する酸はピログルタミン酸,乳酸,酢酸,コハク酸で,減少する酸はリンゴ酸,クエン酸であった. (2) 各試料によって乳酸量が大幅にばらついており,最高9.02mg/mlから最低1.06mg/mlまで9倍近い差が認められた.また,乳酸の多い醤油には酢酸が多く,逆にリンゴ酸,クエン酸の存在は認められなかった. (3) 有機酸の個々の成分の中では,乳酸と酢酸の間に高い正の相関が認められ,醤油中のかなりの量の酢酸が乳酸菌によって作られていることが示唆された.また,乳酸とクエン酸の間には高い負の相関が認められ,醤油乳酸菌によるクエン酸の代謝が考えられた. そこで,醤油諸味より分離した12株の醤油乳酸菌を炭素源をグルコース,クエン酸,リンゴ酸の3種に変えて純粋培養し,その代謝産物をしらべたところ, (4) グルコースを代謝した場合には,1モルのグルコースから1.71モルの乳酸, 0.28モルの酢酸, 0.17モルのギ酸が生成されていた. (5) クエン酸を代謝した場合には,生成有機酸の種類はグルコースを代謝した場合と同様であったが,おのおのの酸のモル比は大幅に異なり,1モルのクエン酸が資化されたときに, 0.16モルの乳酸, 1.86モルの酢酸, 0.59モルのギ酸が生成されていた. (6) リンゴ酸を基質にした場合は,菌の生育はたいへん緩慢となり,また,リンゴ酸の消費はほとんど認められなかった. (7) 上記のグルコース培地あるいはクエン酸培地で生成した乳酸のD, L-型分別定量を行ったところ,いずれの株の生成する乳酸も100%L型でありD型乳酸は事実上,認められなかった.