著者
若生 麻弥 郡司 竜平 岩出 幸夫 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.163-170, 2003-02-05

特殊学級に通う小学2年生のA君(自閉症)との、見通しを持ち、A君が安心・納得して行動の切り替え がスムーズにできることを目指した取り組みについて述べたものである。構造化のアイディアを用いて、朝準備ボード、アナログ時計の勉強と合わせたA君個人の時間割ボード、一貫した接し方などの取り組みを行った。この間A君は、朝準備ボードやA君個人の時間割ボードを自分なりの使い方で用い、見通しを持つことができるようになり、行動の切りかえがスムーズにできるようになってきた。ごほうびとして用いた「やったね!」(=クルクルをしてもらえる)は行動の動機付けとなっただけでなく、若生と喜びを共感しあう関係を築いたと思われた。
著者
後藤 泰宏 由井 典子
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,正標数の体上で定義された3次元カラビ・ヤウ多様体について,その形式群に焦点を当てつつ数論的性質を考察した。主たる研究対象は,3次元重さ付きデルサルト型多様体とBorcea-Voisin型多様体であり,それらの形式群の高さについて多くの新しいデータを得るとともに,ホッジ数をはじめとする多様体の幾何学的性質と形式群の高さとの関係性を調べた。また,その応用としてミラー対称なカラビ・ヤウ多様体の形式群について考察した。
著者
片山 晴夫
出版者
北海道教育大学
雑誌
語学文学 (ISSN:02868962)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.99-106, 2001-03
著者
佐藤 美幸 米山 実 伊藤 則博
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-36, 1992-03-31

現在,日本の肥満の子どもたちは増加傾向にあり,子供の肥満は小児成人病の危険因子を持つとされ予防対策と早期治療が求められている。しかし学校における肥満児は身体の健康問題だけでなく心の健康にも問題を持ち,心身相互に作用して形成された悪循環の中にある。筆者は肥満児の心の問題を探るため内面へのアプローチを試み,道内における肥満児療育センターとして機能している道立有珠優健学園を研究のフィールドとし,自己像に関する調査を実施した。その結果,(1)肥満児は普通児に比べて自己に否定的で情動不安定,敏感性が強く意欲・強靭性に欠けるなど多くの因子において普通児との相違が見られた。(2)同じ肥満児でも性差がみられ,特に普通学級に在籍している肥満女子が極めてネガティブな自己を示した。これに対し(3)療育途中にある肥満児は情動不安定を残すものの他の因子において普通児との間に有意差が認められなかった。彼らには,(4)SCTの記述により意欲・強靭性の高まりや自己肯定への兆候がみられた。道立有珠優健学園における肥満児のための食事療法,運動療法をはじめとする環境設定のあり方や精神面でのケアを重視した子ども主体の自治会活動など多面的な実践が彼らに自己意識の変容をもたらし,理想自己に向けて成長する現実対処的な自己の形成^<1)>を促したと思われる。肥満児に対してはこのような全人格的指導が重要であり,今後は地域・学校保健の場においてこのようなアプローチが試みられることが望まれる。
著者
木村 隆 木村 尚美
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.89-96, 2002-02-05

7歳の自閉症の息子に対して,TEACCHプログラムが家庭で行えるかどうかを検討した。物理的構造化は,特別な壁を用いなくても,一つの場所を多目的に用いないという原則と視覚的シンボルを用いることで可能であった。スケジュールの視覚化・構造化は十分に行えていないが,始めと終わりを明確にする,手近なルーチンを確立することから始めることにした。コミュニケーションについては,受容性コミュニケーションでは聴覚だけでなく視覚刺激も併用することが必要と考えられた。表現性コミュニケーションでは,待つ姿勢と褒めることが大切と考えられた。社会性については,日常のルーチンの確立と並び余暇の過ごし方が重要と考えられた。継続的・一貫性のある治療・教育・訓練は今後の課題であり,我々養育者とともに教育者や行政に働きかけ,お互いに協力してより理想的な教育システムの構築が早期に望まれる。
著者
木村 隆 木村 尚美 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.25-29, 2003-02-05

昨年は、自閉症の息子に対して、家庭内での物理的構造化の取り組みについて発表した。本年度はスケジュールの構造化について取り組みたいと目標を決め、試行錯誤しながら種々の検討を行った。当初のスケジュール表の失敗の原因が、息子が認知しづらいアイテムであり、かつ多ステップであったためと考え、写真カードを用いたシンプルなものを用い、1ステップ提示を行った。当初、日常生活はかなりカード提示で自分から行うことが可能だったが、次第に、従わなくなった。比較的文字が好きだったこともあり、思い切って文字カード提示をしたところ、現在に至るまで極めて良好に反応している。現在、多ステップ提示も可能となっており、システマチックなスケジュール表への移行も視野に入れることが出来つつある。子どもに対する認知へのアクセスは、その子どもの特性に応じて検討すべきと考えられた。
著者
吉原 英夫
出版者
北海道教育大学
雑誌
札幌国語研究 (ISSN:13426869)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.左1-左60, 1998
著者
板谷 厚
出版者
北海道教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする.当該年度は,当初,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討するために,健康な大学生を対象者とするトレーニング実験を実施する予定であった.しかし,旭川市立保育所の要請で幼児対象の運動遊びを実施する機会に恵まれたこともあり,三年目に予定していた組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究を前倒しして実施した.組体操の多様な行い方のひとつとして運動遊びプログラム「ぼうけんくみたいそう」を開発した.「ぼうけんくみたいそう」は,ごっこ遊びの要素を強く打ち出したストーリー仕立ての組体操であった.物語の進行とともに,ひとりで行うポーズ(9種類)から2人組(5種類),3人組(2種類)へと段階的に複雑になるよう全16種類の組体操による演技を構成した.また,イメージをふくらませるために効果音や音楽を適宜用いた.組体操の効果を評価するために,保育所の年長児を対象にバランスの測定を実施した.プログラムのはじめと終わりに木のポーズ(閉眼片足立ち)を30秒間行い,その様子をビデオ撮影した.動画から30秒間の制限時間内に木のポーズを最大で何秒間維持できたかを測定した.対応のあるt検定の結果,木のポーズ持続時間は終わりではじめよりも高い値を示した(はじめ: 8.17 ± 8.33 s, 終わり: 11.07 ± 9.01 s, P = 0.022).したがって,「ぼうけんくみたいそう」は,幼児の閉眼片足立ち時間を即時的に向上させると考えられる.また,閉眼片足立ち時間は,組体操の効果を評価する方法として有用である.
著者
木村 隆 木村 尚美 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.30-34, 2003-02-05

近年、障害児・者に対するノーマライゼーションという考えが、注目を浴びている。ノーマライゼーションは障害に対する支援により、社会に参加できることを目的としていると解釈している。しかしながら、障害を持つ子どもがいかなる支援をもってしても競争社会に参加できる自信を得ることは困難である。私たちは、自分の子どものパーシャルインクルージョンを目指して、たとえ同情的なまなざしがあったとしても、子どもが社会に参加することが許されるような環境を作りたいと希望して、同級生に対して自閉症の理解を促す目的で自閉症の絵本の読みきかせを行った。働きかけに対する解析は不十分であったが、息子の親学級の子どもたちが、自閉症という病気が存在すること、息子の特性についての理解が図られたことは意義のあることだった。
著者
潟沼 誠二
出版者
北海道教育大学
雑誌
語学文学 (ISSN:02868962)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-7, 2002-03
著者
後藤 嘉也
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に、ハイデガー哲学の内在的・歴史的研究をとおして、非対称的共同性という問題を浮かび上がらせ、ハイデガーに学びハイデガーを批判したドイツ系哲学者と対話して非対称的な共同性の構造を解明し、平成18年度に、ハイデガーに学びハイデガーを批判したフランス系哲学者と対話して非対称的な共同性の構造を解明した。平成19年度にはこれらの研究を総括し、そこからハイデガー哲学を逆照射するとともに、非対称的共同性の構造の解明に関して暫定的ながら結論を出した。それはおよそ次のとおりである。非対称的共同性は死すべきものたちの単独性と複数性から解明できる。できるかぎり自らを不死にしようとする努力はおそらく幻想を核にしており、死すべきものは、不死の神々にならうのではなく死すべきもののことを考えなくてはならない。そうすることによって、私たちは、19世紀半ば以来の誰でもない人の支配する公共性・公開性から自らの運命に、そしてまた同じく死すべきものである他者の運命に引き戻される。自他の死はそれぞれの単独性を浮き彫りにし、私をこえた他者の命令の前に私を立たせる。これに応えて私は種々の仕方で生と死を他者と自分に返し与える。そのとき、愛や友情においてであれ、民主的な討議においてであれ、他者(たち)と私はけっして一つにはならない。それぞれの単独性を受け入れることは自他の複数性を承認することである。ところが、自己愛ゆえだけでなく、そのためにも、複数のものたちに無条件に従うことは不可能であり、単独性をおびた他者たちを比較考量せざるをえない。単独のものを計算しその他者性を否定しながらも、死すべきものたちの統一なき統一という可能性を、調和を拒まれ逸脱にみちた一種の公的空間を、いまここで遠くに望めるかもしれない。