著者
粥川 一成 中保 仁 岡 信恵 亀淵 興紀 谷川 忍 矢口 少子 長 和彦 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.113-120, 1999-02-10

6年生の自閉的傾向を持ったA君は思春期を迎え,これまでに見られなかったような様々な行動が目につくようになった。A君とかかわりをもった粥川は,まず彼にふさわしい指示理解の方法を探った。その結果,絵または文字によるカード等を用いて視覚的に見通しを持たせる支援をすると,指示理解ができやすくなり,意欲的に行動できることがわかった。また,青年前期に求められるものとして「家事の分担」があげられるが,この取り組みとして家庭での「おつかい」ができることををめざした。この場合にも,視覚的に見通しの持てる絵または文字カードを提示するなど,一定の条件があれば取り組めると実感した。その実践を報告する。
著者
涌井 佐和子 志手 典之 新開谷 央
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、寒冷地における児童の身体活動推進を目的とした行動科学的介入方法の開発を目的とした。研究の概要は下記の通りである。1)先行研究を検討した。欧米における児童の身体活動推進に関しては、教科体育、教科外での運動実践、栄養教育、家族サポート、などを含む複合型が多かった。また、児童の身体活動の評価は、簡便な質問票に加速度計での測定を併用したものが多かった。様々な行動変容の理論体系の中で重視される心理環境要因の検討も行われていた。2)42名の児童を対象としてスズケン社製ライフコーダEXを用いた予備調査を行なった。児童の身体活動量は休日と平日で異なっており、少なくとも7日間の平均値を用いることが好ましいことが明らかとなった。3)保護者に対して健康づくり環境についての調査を行なった。子どもの健康づくりに関する学校に対する要望として、教科外の取り組みに対するものが多く、学校施設の開放を求める声も見られた。地域に対する要望は、今日問題となっている安全対策に関するものが多かった。4)64名の児童を対象とした調査を行なった。冬になると児童の身体活動量は特に平日に減少し、また身体活動に関わる環境も変化していた。身体活動度の高い児童と低い児童との間では、社会的支援や心理的要因が異なっていた。5)330名の児童を対象とした調査を行なった。冬になると運動・スポーツを実施するための環境は大きく変化している可能性が示唆された。6)教員を対象として無記名自由記述調査を行なった。児童が活発である学校の特徴として、地域要因(スポーツ少年団の種類が多く活発、校区が狭く車による送り迎えが少ない、地域にさかんなスポーツがある、等)、学校要因(遊具や施設、教職員の連携や統一感、学校行事)、家庭要因(家族が活動的、家族支援)の3つが挙げられた。7)研究1〜6の結果をふまえ、推進のための現実的な試案を作成した。
著者
野村 ますみ
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.29-34, 1988-03-15

筆者が,はじめて,『たんぽぽ教室』を訪れ,障害を持つ子どもの母親と出会った時,その陽気で暖かい姿に,強い感銘を受けた。母親たちは,この教室に「なぜ,集まって来るのだろうか?」,「何を求めているのだろうか?」……この2つの疑問が,教室と筆者を強く結び付け,この研究の動機となった。近年,わが国の早期療育の制度や機関が充実されつつある。しかし,それらの相互の連携やシステム化という,新しい課題が出現してきたことも事実である。これは,早期療育のさまざまな実践や活動が重ねられているうちに,各機関が固有の役割を持ち専門化していくと共に,孤立化した状態を呈し始めたものを,再び,統合しようとする課題でもある。しかし,各地の早期療育の試みが,独自的歴史を持つが故に,この課題の解決は,それぞれの地域性を抜きにしては不可能なことだろう。そこで,筆者は,地域の志ある人々の連携による療育実践の原点ともいえる『たんぽぽ教室』の関係者の発言をとおして,地域の早期療育の課題を明確にしたい。方法として,この教室に参加した親・学生ボランティア・指導員(関係者)のそれぞれの立場から,『たんぽぽ教室』を含めた早期療育についての自由な意見を求め,面接調査を行った。その結果をまとめてみると,(1)子どもと親の双方へのアプローチは,発見から処遇までのいずれの場面においても必要とされているということ,(2)一人ひとりの子どもの健やかな成長への援助を考えた時,各機関の連携が必須の条件となると共に,療育者のしっかりとした考え方と技量が要求されること,(3)早期療育のシステム化には,専門的な機関はもとより,地域に生活する多くの人々の参加と協力が要件となること,の3点が中心的な内容であった。筆者は,親が進んで地域社会と接触を持ち,地域と子どもの橋わたしをすることが大切であり,また,住民が"共に考え,共に生きる"地域になることが,地域療育の未来に求められている姿であることを強調したい。
著者
高橋 庸哉 佐藤 昇
出版者
北海道教育大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

1.「雪」に関するコンテンツの拡充セスナー機から撮影した流氷写真・ビデオ、クリオネや降雪粒子のビデオ、ヒグマなどに関するページを制作した。また、「降ってくる雪」中の「ルーペで見てみよう!」コーナーを視覚的なものに改良した。2006年度のトップページアクセス数は11万4千余件であった。2.学校教育現場での実践と内容の妥当性検討雪に関する関するコンテンツを利用した授業等を行い、その内容妥当性の検証を進めた。また、前年度に制作したLAN対応リアルタイム気象データモニタリングシステムを市内小学校4校に展開し、実地試験を進めた。2006年12月に札幌市内小学校の研究授業を行った。3.教育現場でのコンテンツ利用の促進方法の実施雪の学習に関する教員向けセミナーを実施し、全道各地から53名の参加があった。雪たんけん館を活用した模擬授業及び授業作りワークショップ、雪たんけん館やITをどう生かすかをテーマとした討論・講演などを行った。事後アンケートによると、セミナー内容に関する満足度は5段階評価で4.5、参加者の98%が教室ですぐに使える情報があったと答えた。また、天気情報と大気の実験に関する小学校教員ワークショップを企画・実施した。4.コンテンツ利用状況調査札幌市内小学校(209校)を対象としたアンケートを行い、次の結果が得られた:a)Webページ「北海道雪たんけん館」を使った実践を行った学校が12%あった,b)「雪」を教育素材として、どう思うかも問いに対して、70%は取り上げるべきと答えた。また、これまでに4回実施した雪の学習研究会参加者のうち小学校教員にコンテンツ利用状況に関するアンケートを実施した。31%が北海道雪たんけん館を授業で使ったことがある、あるいは同僚が使っているのを見たと答えた。実際に授業で活用し得るコンテンツであることが示された。
著者
石黒 一次
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.113-120, 1996-03-15

夏休みを間近に控え,校下の公園で過ごす一人の青年のことが,大きな話題となった。その青年は子供たちの遊びの中に分け入り,夕方暗くなるまで公園で過ごすことを毎日の楽しみとしているようであった。そうした青年の思いとは裏腹に,子供たちは大人と遊ぶことへの「遠慮や違和感」など,遊びの不自由さを次第に募らせていった。夕方になり子供たちが帰宅し始めると,青年は帰りそびれた子どもをいつまでもその場に留めた。その上,帰ろうとする仕草に逆上し,長々と怒鳴りつけることが度々あった。当然,子供たちの間では,「怖い人」「おかしい人」などのマイナスイメージが膨らみ公園で遊ぼうとする子供たちはその青年の姿をうかがい,避けるようになっていった。本論は,一青年のなげかけを通し,児童・父母・教職員が共通の基盤に立ち,これまでの人間関係やふれあいの在り方を振り返るなど,多くを学んだ実践事例を報告する。
著者
古川 宇一 長 和彦 寺尾 孝士 木村 健一郎 大場 公孝
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、自閉症児・知的障害児の生涯ケア体制の整った地域社会の創出をめざして、北海道にTEACCHプログラムを導入する10ヶ年計画の第2次3ヵ年計画のまとめをなすもので、函館・旭川両地区をモデル地区として、幼児期から成人期にいたる各ライフステージにおいてTEACCHプログラムのアイデアの有効性を検証し、関係者・機関への展開を図った。画期的であったことは、函館地区おしまコロニーが独自に、2001年4月、全国に先駆けて自閉症センター「あおいそら」を立ち上げ、活発な相談指導、コーディネート活動を展開し、地域センターとしての活動を展開した。幼児施設、養護学校、特殊学級、施設においてTEACCHプログラムのアイデアを導入するところが増え、幼児期から成人期にいたるTEACCHプログラムを基本においた一貫性のある療育システムが構築されつつあり、全道のセンター的役割を果たそうとしている。旭川地区では、幼児施設でTEACCHのアイデアを引き継ぎ、小学校特殊学級で導入する教室が増え、1成人施設が導入4年目で成果を上げている。両地域とも研究活動は親を含み継続している。本年度の研究16論文は、情緒障害教育研究紀要第21号に、1年次13論文は19号に、2年次12論文は20号に掲載されている。札幌・道央地区、帯広・道東地区では、おのおの1療育施設でTEACCHの手法を用いており、福祉施設においても積極的に導入し研修がすすめられている。札幌、旭川では、家庭教育にTEACCHのアイデアを用いた積極的な取り組みがなされている。おしまの自閉症センターと連携しながら、全道的な展開への準備が整いつつあり、次の第3次3ヵ年計画において道内4圏域でのTEACCHセンター機能の展開が課題である。
著者
佐藤 満雄 佐藤 貴虎
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.213-221, 2002-02-05

特別な教育的ニーズという概念を打ち出したイギリスの特殊教育(ウォーノック報告等)を概観しながら日本との比較を試み,実際に現地調査を試みて,21世紀の我が国の特別支援教育の在り方について述べた。英国がインクルージョン理念のもとに教育改革を進めているのに対し,日本では障害児と健常児の二分法的なインテグレーション理念に基づく改革であることを指摘した。
著者
倉賀野 志郎 玉井 康之 笠間 浩幸 奥山 洌 高嶋 幸男 明神 勲
出版者
北海道教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本教師教育に関する研究では、教師の成長を教師の体験性と理論の相互作用としてとらえ、その上で、教師の体験を(1)自然体験による自然科学的認識、(2)社会体験による社会科学的認識、(3)生活体験による生活科学的認識の3つに分類して経験を提供した。(1)の自然体験では、ゴミ袋バルーン作りによる自然の不思議発見学習を行った。(2)の社会経験では、地域の産業学習として、酪農体験学習、鮭の養殖・捕獲・加工の体験学習、羊毛製造体験学習、を行った。生活体験では、郷土料理作りとその意味学習を行った。これらの体験学習によって、教師の教材の説明の幅が厚くなり、実感のこもった内容説明ができるようになることが明らかになった。また、体験の数が少なくても、深い実体験をすることによって、他の分野の説明にも応用が効くようになったことが明らかとなった。
著者
蛇穴 治夫
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、動物園を活用した授業案と教材を作成し、学校現場に提供することを目的とした。授業案作成においては、「実物観察の重要性」、「進化の概念を意識させることの重要性」、「目的を持った観察の重要性」に特に留意した。教材としては、エゾシカとライオンの頭骨レプリカ、ブタ小腸の消化管プラスティネーション、ニワトリの手羽先骨格標本、イヌ・ライオン・ウシの足形レプリカ、脊椎動物の移動方法を比較できるビデオ教材を作製した。これらを用いて、「動物の体のつくりと働き」、「動物のなかま」における授業案を作成した。授業案においては、食性や脊椎動物の移動方法の違いに基づく動物の適応形に着目させるようにして、動物が共通の祖先から進化してきたことを理解させるようにした。そのことを通して、全ての動物には系統的なつながりがあることを実感させ、更には生命の連続性から生命尊重の意識を育てることをねらった。また、観察に目的意識を持たせるために、仮説から演繹的に推論させ、それを観察で確かめるという授業構成にした。一部は附属中学校において実践し、その有効性について検証を加えた。学校現場への研究成果の還元及び教材の普及活動のために、旭山動物園教育研究会の立ち上げと現職教員スキルアップ研修活動を実施し、さらに、平成17〜19年度の教員10年経験者研修を利用した。旭山動物園教育研究会では、動物園スタッフ、小・中学校の教員(現在約45名)と共に年2回のワークショップを行い、ニューズレターの発行も行っている。スキルアップ研修では、物理・化学・地学・理科教育の大学教員と共に、19年度に市内の教員向けの研修を各教科ごとに年1回ずつ開催した。以上の研究により、生物の学習並びに生命尊重の意識を育てることに必須となる、生物を進化という観点から見たり考えたりする力を育てる教材の開発とその普及を行うことができたと考える。
著者
佐藤 徹
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

体育授業において、生徒に教材の運動を習得させる際には、動きのメカニズムや生理的機能の説明をするのではなく、自分の身体で動きのコツをつかませることが必要である。本研究の目的は、動きのコツをつかむことの内実を明らかにし、コツの獲得が効果的に実現される体育授業の方法を開発するための理論的基礎を探求することにある。従来、運動の研究は動きを外から見た特徴を分析するいわゆる科学的手法が主流であったが、それだけでは生命ある人間の運動の研究として不十分であることから、本研究では、フッサールの意味での発生現象学の方法を土台として、運動を実施している人間の内的過程を重点的に考察した。動きのコツをつかませるための方策を考えるにあたり、コツがうまくつかめない生徒は運動習得の過程においてどのような特徴があるのかを重点的に考察した。また、運動実施者がコツをつかむということは、新たな動きを発生させることであることから、動きを覚えさせるために効果的な言語指示のあり方などを研究した。上記の観点から、体育授業で行われるさまざまなスポーツ運動に関して事例的に考察を進めた結果、コツを指導するためには,他者の動きを外部から観察した情報に基づくだけでは不十分であり,指導者自身の運動経験や指導経験,なかでも運動感覚意識を形成していく努力が不可欠であることが分かった。具体的な研究事例に関しては、学会発表ならびに論文として公開された。
著者
高橋 庸哉 新保 元康 土田 幹憲 佐藤 裕三 小笠原 啓之 割石 隆浩 神林 裕子 佐野 浩志 坂田 一則 細川 健裕 土門 啓二 松田 聡 本間 寛太 伊藤 健太郎 杉原 正樹 中島 繁登 吉野 貴宏
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

開発してきた雪に関するWebコンテンツの授業での普及を図るために、コンテンツの拡充と共に児童向けワークシート及び教員向け学習プラン集、教員研修プログラムの開発を行った。ワークシートを授業で利用した教員は5段階で平均4.8と高く評価した。教員研修プログラム後に参加小学校教員の45%はこのコンテンツを利用しており、プログラムが有効に機能した。また、コンテンツが授業に役立ったかについて5段階で4.5と答えており、Webコンテンツの内容妥当性も示された。
著者
北川 和博
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-76, 1993-03-17

昭和48年,帯広市に通級制情緒障害学級が開設され,平成4年度で20年を迎えることとなった。本研究では,帯広市の情緒学級のあゆみを様々な角度から調査・検証し,その歴史的,地域的意義をまとめ,今後の展望を図ろうとするものである。調査の結果,20年の通級児童の数が174名をかぞえ,子どもの実態は自閉的傾向児,登校拒否傾向児をはじめとした集団内で適応しづらい子どもたちであるが,情緒学級は子どもの実態にかかわらず,普通学級および特殊学級から受け入れてきた。その変遷過程をたどると,自閉的傾向児主体からいわゆる「集団不適応」へと移り,その背景には,就学指導休載の変化,登校拒否傾向児の増加,乳幼児期の地域療育システムの充実等,時代の変動と,地域の実情に影響されていることが分かる。実践研究は,事例研究を重視しながら,疎通性を育て高めるための指導,個々の子どもに合った指導目標の確立,情緒障害児の効果的な諸検査と指導方法,コミュニケーションとしての言語指導へと積み上げられてきている。帯広の情緒障害教育が20年を経過した現在,自閉的傾向児主体の治療教育的役割から,普通学級の援助学級的役割を求められる時代となっているが,これはこの学級が歩み出そうとした開級当初の地域ニーズにもどった観がある。
著者
川前 あゆみ
出版者
北海道教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究1年目の成果では、事例研究において学校統廃合を幾度も経験しながら、校区が広域化することのデメリットを積極面としての地域づくりの観点からとらえた。研究2年目の成果としては、第一に、学校統廃合による地域生活の営みの変容から、地域住民の学校づくりへの参画や地域づくりの担い手の育成を図ることの重要性についてとらえるとともに、近年の学校教育政策の変化から学校教育と社会教育のあり方を明らかにした。第二に、学校統廃合の対象となるへき地・小規模校の学校教員の役割について、大学生への意識調査から、へき地に対する意識転換の必要性と今後のあり方について明らかにした。
著者
今 尚之 馬渕 浩一 早川 渡
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,科学史,技術史研究における建設記録映画の史料的価値を見いだし,さらに映像シーン毎に視聴を可能とするデータベースシステムのプロトタイプを作成することで,建設記録映像の史料的価値をより見いだすことを目的とするものである。本研究では,建設記録映画の内容情報データベースを作成する過程から,土木建設の分野における細部の施工の機械化および施工機械の変遷および技術を取り巻く社会の変化に関する知見を多数得ることができ,建設記録映画が持つ史料的価値の大きさを確認することができた。さらに,シーン毎に視聴を可能とするデータベースの構築手法ならびに視聴するためのシステムのあり方を提供することが可能となった。
著者
福田 薫
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

言語の中の本来語彙的な表現が文法的要素へと機能変化する文法化と呼ばれる現象がある。英語のno doubt は本来の名詞句に加え副詞的用法を獲得している。本研究は、近代および現代英語の膨大な電子化テキストを対象にした調査と統計解析に基づいて、副詞的用法のno doubt を類義表現と比較して、量的な特徴づけを行った。頻度が言語変化の主要因との立場から、no doubtの頻度推移と語法変化の関連を検討した。
著者
谷古宇 尚
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 (ISSN:13466283)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.123-132, 2003-03

This article treats of Russian artists in Sakhalin of various descents and two recently published Japanese novels, whose stories are set in the ex-Japanese territories.
著者
谷川 忍 植竹 敦子 土谷 智子 高橋 絵理子 阿部 聖子 林 明子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.21-28, 2002-02-05

函館市立柏野小学校では,4月に「たんぽぽ」「ひまわり」の知的障害児学級2学級に加えて,新たに情緒障害児学級「なのはな」が開設され,児童数12名,スタッフ5名という数字的には大変恵まれた体制となった。本学級では本紀要19号20号で報告してきたように,保護者そして児童のニーズに応えるべくIEP ・ TEACCHの手法に学んだ実践により,ようやく学級のカラーが出来上がってきたと自負していたところであったが,今年度はなかなか思うように進まず,自閉症センター「あおいそら」のアドバイスも得ながら,子どもたちへの対応を見直してきた。また保護者へのインフォームドコンセントとアカウンタビリティーの充実を図るために,IEPについても見直しを図ってきた。 IEP・TEACCHに学んで,子どもたちの指導の最適化を目指した学級づくりも3年がたとうとしている。日々試行錯誤の毎日であるが,少しずつ子どもたちも落ち着き,変容が見られてきた。
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-64, 2004-11-30

母子相互作用における認知の発達(言語・遊び)を生後5ヶ月から2歳まで縦断的研究をするため、第1子を持つ母親へ研究協力を求め、27組の母子が参加した(男児16名,女児11名)。本研究は、5ヶ月児への母親の反応、乳児の注意、親の役割に関する自己意識に焦点を当てそれらの関係を検討した。乳児が5ヶ月に達した時、家庭訪問を行い1時間の日常生活場面と母子遊び、一人遊びを30分観察した。日常生活場面では乳児行動と母親の反応について頻度数を分析し、母子遊びでは乳児の注意を1秒単位でマイクロ分析を行った。さらに、質問紙によって親となる事や子育て観に関する情報を得た。結果は、乳児は観察中ネガティブな声を出すことが多く、母親の反応については、社会的反応や養育的反応が多く見られた。乳児の注意については、おもちやを見たり、母親の手元を見る時間が多かったが、周りを見る時間が最も多かった。男児はおもちゃを見ている時間が女児より長く、女児は母親との共同注意が男児より長かった。又、母親の反応との関係を見たところ、全体的には有意な関係は認められなかったが、男女差が見られた。男児においては、母親がネガティブな声に反応する事と乳児のおもちゃへの注意と正の相関が認められ、母親の声への模倣と母子遊びで母親に注意を向けることと正の相関が認められた。女児においては、ネガティブでない声への反応と母子遊びで母を見る事と負の相関が認められた。母親の役割に関する自己意識の結果は、親になる事において男女差が認められ、女児を持つ母親ほど親になった事に満足していた。又、男児において子育てについての自信・満足感と母親の養育的反応との間に負の相関が認められた。即ち、子育てに自信のない男児の母親ほど乳児行動に対して養育的行動で応えていることが明らかとなった。これらの結果はさらに、詳細な検討が必要である。