著者
田口 哲
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

若い世代の中学校理科教師の多くは,高校までの物理と化学の縦割り教育,高校での物理未履修などにより,「化学反応とエネルギー」の本質を微視的な(原子・分子レベルの)エネルギー変換の観点からは深く理解せずに教えている可能性がある。そこで本研究では,直接認識できる巨視的な実験結果(例えば,吸熱・発熱現象)を基に,目には見えない微視的な現象(化学結合の切断・生成など)を観ることでこの分野の本質的理解を学習者に促す,理科教員養成のための先導的な実験教材を開発した。
著者
小川 和也
出版者
北海道教育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究には2つの柱がある。(1)大老・堀田正俊の政治思想研究。(2)「御家」の思想と民政思想の研究である。研究成果は以下のとおりである。(1)に関して、一橋大学附属図書館所蔵の堀田家文書のうち、朝鮮通信使に関する史料を使い『日韓相互認識』(第5号、2012)に論文「天和度朝鮮通信使と大老・堀田正俊の「筆談唱和」」を発表し、東アジアにおける近世日本の儒学、領主思想の一端を明らかにした。(2)に関しては、昨年10 月に群馬県在住の秋山景山の子孫・秋山綽家の原文書を悉皆調査し、その史料をもとに、『書物・出版と社会変容』(第12 号、2012) に「越後長岡藩儒・秋山景山の『教育談』について」を発表し、近世武士教育のあり方を考察した。
著者
下田 卓朗*
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.95-98, 1988-03-15

心因性の場面緘黙(Elective mutism)は,ある特定の場面では貝のように口を閉ざし,人に対しての言語コミュニケーションをいっさい拒否する。その要因は古くから研究され,統計的には母子依存が強く,過敏,臆病,恥ずかしがりの傾向にある子どもなどに多く見られると言われている。最近の出現状況としては村本(1983)が北海道上川管内の小学校・中学校を調査して0.0369%の出現率であったことを報告している。このように数としてはまことに少数であるが,言語発達の著しい幼児期・児童期に言語コミュニケーションを持たないことは,その子の社会性の発達を考える上で憂慮されなければならない。本研究では2人の子どもの事例をとおして,緘黙児を理解するにはどのような方法でアプローチすればよいかを検討することにした。そして,それにはまずなによりも,これまで関わってきた人たちの証言から理解していくという方法と,もうひとつには,対象児との"遊び"というふれあいをとおして理解していくという2つの面から進めていくのが適切であると考えた。そうした方法で対象児をフォローし,形成要因,その理解という形で緘黙児を考察することによって"遊び"の中および"言葉"の中に秘められている子ども理解への鍵をつかむに至った。
著者
柴田 與志則
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.71-78, 1996-03-15

筆者は27年間の通常の学級における実践の反省を踏まえ,一人ひとりに応じた教育の実現をめざし,あらたに知的障害児学級での実践に取り組んでいる。S子はまったく言葉のない子であるが,好きな所で好きなことを全て受容することで,S子が心を開き,思いや気持ちなど持っているものを表出し,行動の変容が見られ,コミュニケーションが深まり,よりS子を理解することができた。
著者
神林 勲 石村 宣人 小林 和美 佐川 正人 武田 秀勝
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 自然科学編 (ISSN:13442570)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.89-96, 2003-09-30

本研究では健康で活動的な成人男性6名と成人女性6名を被検者に,前腕の等尺性筋収縮を30%MVCの強度で維持させ,男女における筋持久力の差異を近赤外分光法(NIRS)によって測定された筋酸素動態[oxy(Hb+Mb)]の面から検討した.結果は以下の通りである.1)男性のMVC(55.1±8.7kg)は女性(34.2±2.5kg)よりも有意に高値を示した(p<0.05).2)運動継続時間は,男性で139.2±29.4秒,女性で175.8±23.7秒と女性の方が男性と比較して有意に長かった(p<0.05). 3)掌握運動中のoxy(Hb+Mb)の変化には明らかな男女差が認められ,男性では初期の直線的な低下後,20〜25%で疲労困憊まで推移したのに対して,女性では初期の直線的な低下後,漸増し,疲労困憊時には約75%にまで達した.4)初期脱酸素化速度には男女間に有意な差は認められず,また,運動継続時間との間にも有意な相関関係は認められなかった.以上のことから,30%MVC強度の筋持久力(運動継続時間)は女性の方が男性と比較し優れていた.この性差は筋の有酸素性代謝能の優劣ではなく,運動中の筋血流量の違いによってもたらされる有酸素性代謝の割合によることが示唆された.
著者
鴈澤 好博
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

石英のOSL が熱に極めて敏感(300℃x20秒でリセット)であることに注目しOSL法による活断層年代測定のための基盤研究を進めた.アニール実験からOSLのFC (速成分)とTLのシグナル消失条件を検討したところ,OSLでは300℃,20秒で,UV‐TL270℃領域では300℃,12~30秒で消失した.トラップ寿命の評価でも,同様な結果が得られた.このことからOSL法は活断層年代測定に有効であることが示された。
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.59-69, 2006

母親の養育態度と幼児の自己制御機能及び社会的行動との関係を検討することを目的に、幼稚園に通っている母親を対象に研究への協力を求め、176名(男児86名,女児90名)の母親から研究への参加協力を得た。質問紙は、幼稚園を通して母親に配布された。質問紙は50項目からなり、因子分析の結果、7因子が抽出された(受容/子ども中心主義、統制/専制的、一貫性のないしつけ、服従的、過保護、甘やかし、放任)。幼児の自己制御機能及び社会的行動に関しては、幼稚園の先生に評価してもらった。自己制御機能については、因子分析の結果、自己主張と自己抑制の2因子が抽出され、社会的行動については因子分析の結果、思いやり行動と攻撃的行動の2因子が抽出された。母親の養育態度と幼児の制御機能との関係では、自己主張と母親の養育態度、服従的、過保護、甘やかしに負の関係が認められた。又、思いやり行動と過保護と負の関係が認められた。さらに、幼児の制御機能や社会的行動に影響を及ぼす母親の養育態度について重回帰分析を行ったところ、幼児の自己主張にマイナスの影響を与えていたのは、母親の養育態度の中で、過保護と甘やかしであった。又、思いやり行動に影響を与えている養育態度は、過保護であった。これらの結果は、母親が幼児を育てる過程で、自己主張や思いやり行動を育てるには、過保護や甘やかしといった行き過ぎた母親の養育行動がマイナスの影響を及ぼしていることを示唆している。どのような育て方をすれば、幼児の自己主張や向社会的行動が育てられるのか、さらに継続して検討していくことが必要である。
著者
平澤 治寿
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-50, 1988-03-15

今日,教育の荒廃が問題となっている。普通学校にあっては,落ちこぼれ・登校拒否・いじめ・校内暴力などの問題が依然として跡を絶たない。それには,学歴偏重社会・受験競争の過熱・核家族化などのさまざまな原因が考えられる。これらの問題について,望ましい解決策が早急に求められており,教育に携わる者の切実な願いとなっている。障害児教育実地指導で,われわれは,養護学校,盲・聾学校,北海道療育園の実状を学ぶことができたが,そこで,初めて「教育の原点」に巡り会うことができたような気がする。その時,痛切に感じだのは,今日の教育問題を考えていくにあたっては,障害児教育抜きには論ずることができないということであった。児童・生徒ひとりひとりの障害や発達の状況を多面的・総合的に把握した障害児教育のちみつな指導が,今,障害児のみならず健常児にも必要である。教育情勢の展開に伴い,教育改革が必要になっているけれども,学校教育を見直していく場合,こうした観点から教育現場をもう一度じっくり見詰め直すことが先決であると思われる。障害児教育,健常児の教育が,それぞれの分野のみの研究に終わらず,相互に学び合い,望ましい交流教育を進めていくとともに,両者が一体となって子どもの幸せを追求することができたなら,教育問題の見通しは明るくなってくると考えられる。
著者
木村 哲也
出版者
北海道教育大学
雑誌
語学文学 (ISSN:02868962)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.31-39, 1999-03