著者
立石 貴之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.659-665, 2021-06-15

Point ●横隔膜の機能は構造上,胸郭の形状と脊柱アライメントに依存する ●脊柱のコントロールにおいて,横隔膜の最大の関与は腹腔内圧の発生である ●課題遂行時には呼吸を止めないように注意を払う
著者
南 由起子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.874-877, 1998-09-01

今回は聖路加国際病院の医療倫理委員会で取り上げられた検討事項について紹介し,臨床倫理について考えてみたいと思う.
著者
玉 珍 及川 直樹 千見寺 貴子 青木 光広 坪田 貞子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.353-358, 2016-04-25

背景:ピアノ演奏家の手内筋筋力は知られていない.本研究では女性のピアノ専攻学生とピアノ非経験者の手内筋筋力を比較し,ピアノ専攻者の手内筋の特徴を調べた. 対象と方法:ピアノ専攻者16名(19.8歳)とピアノ非経験者17名(対照:21.5歳)の握力とピンチ力,手内筋筋力をJAMAR Hand DynamometerとRotterdam筋力計で測定した. 結果:握力はピアノ専攻群と対照群間に差がなく,両群内の利き手非利き手の差もなかった.ピンチ力と手内筋力はピアノ専攻群が対照群より大きかった(P<0.01). まとめ:ピアノ専攻群の左右の手内筋は発達しており演奏に適していた.
著者
滝野澤 直子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.760-763, 1993-08-01

おしっこの湯気 「おしっこ」という言葉が好きだ.あっ,いや,その,「尿」という言葉に比べればという意味ですよ.尿というのは,白い紙コップに入ったアレであり,私のおしっこは,尿じゃない.尿は冷たい.おしっこは温かいものだ,と思う. 青森で生まれ育った私は,おしっこというと,白い湯気つきで思い浮かぶ.冬の朝などにトイレにしゃがむと,おしっこからモクモクと湯気が立ちのぼる.元来がロマンチックな質なので,結婚披露宴のドライアイスみたいだぁ,と湯気が消えるまでまじまじと見入ったものだった.
著者
亀山 正邦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.968-978, 1975-10-10

はじめに 共同偏視は脳血管発作の重要な徴候の一つである。大脳半球の障害においては,病巣側へ向く共同偏視が,脳幹(橋)障害においては,病巣の反対側へ向かう共同偏視が出現することは,よく知られている。また,大脳半球障害においても,それが刺激的にはたらくときには,共同偏視が病巣と反対側に向くことも,Grassert-Landouzyの法則として古くから知られている。 しかし,これらの所見については,例外がないわけではない。脳血管病巣と共同偏視との関係については,沖中・豊倉らの報告1),Fisher2)の報告などがある。多数例について,脳病変の局在と共同偏視の型およびその出現頻度,特徴などをしらべた研究は,ほとんど報告されていない。
著者
鈴木 健大 柿坂 庸介 北澤 悠 神 一敬 佐藤 志帆 岩崎 真樹 藤川 真由 西尾 慶之 菅野 彰剛 中里 信和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.167-171, 2017-02-01

症例は28歳女性。てんかん発症は19歳。頭部MRIで右傍シルヴィウス裂に多小脳回を認めた。発作症状は,体性感覚前兆,意識減損発作,健忘発作など多彩であった。家族より,寝言が多い翌日は発作が増加する,との病歴が聴取された。長時間ビデオ脳波モニタリングにより「寝言」は右半球性起始のてんかん発作と判明した。医療者は「寝言」が発作症状である可能性を念頭に置き,積極的に病的な「寝言」の存在を聴取する必要がある。
著者
鬼怒川 雄久 杉田 祐子 佐藤 公光子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.183-190, 2002-02-15

原因不明の眼瞼痙攣47症例に対し抑肝散を内服させた。抑肝散は漢方薬で,神経症・不眠・更年期障害に有効とされている。男性14名,女性33名であり,開瞼困難などの症状はすべて軽症で,角膜障害はなかった。抑肝散の投与量は,40名に対しては7.5gを1日3回,7名に対しては5gを1日2回とした。連続投与3〜7日で自覚症状が45例で改善した。随伴症状としての不眠と神経症も同時に改善した。副作用として軽度の食欲不振が3例に起こった。全症例中26例が40歳以上の女性であり,眼瞼痙攣と更年期障害との関連が推定された。以上から,原因不明の軽度の眼瞼痙攣に抑肝散の内服投与が有効であると結論される。
著者
浜中 淑彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1220-1231, 1975-11-15

上に訳出したV. v. Weizsäcker(1886-1956)の論文は,1926年彼がはじめてSiegmund Freudを訪ねたWienと,翌1927年2月,既に数年来の知己であった哲学者Max Schelerの招きによりKolnのカント協会で行った講演であり,彼の医学的人間学―その生証人として後に彼はSchelerとFreudをあげた―の出発点となったにとどまらず,今世紀20年代における医学のみならず他の学問の領域における新しい入間学誕生の一標石ともなった記念碑的著作であるが,V. v. Weizsäckerの医学的人間学とその周辺については,最近既にかなり詳しく述べる機会(浜中,1972)があったので,ここでは繰り返しを避け,人間学および医学的人間学の歴史的背景について―今世紀の医学的人間学には,後述するごとく19世紀初頭のそれの復興とみなし得る一面もある―若干の補説を試みたい。 人間学はAnthropologie(独)の訳語である。この西欧語(ラテン語ではanthropologia,英語ではanthropology,仏語ではanthropologie―以下A.,医学的人間学はm. A. と略す)は,ανθρωποδ(人間)とλογοδ(言葉,論述,学)なるギリシャ語より16世紀につくられた合成語であるが,明治初年わが国に西洋科学が紹介されて以来,人身学・人学・人道・人性学(西周,昭和6年まで),人類学(井上哲次郎,同14年),人間学(大月隆?,同30年前後)など様々な訳語が当てられてきたことからもうかがわれるとおり,―今日でこそわれわれが人間学と人類学のもとに理解する2つの主たる意味を付与されるに至ったとはいえ―歴史的に,また各国の精神史的伝統の相違に応じて,様々に異なる意味で用いられてきた。
著者
田中 重男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.38-42, 1967-12-10

三池炭鉱三川鉱では,昭和38年11月9日坑内の炭じん爆発で458名が死亡して,そのうち20名が爆死,438名が一酸化炭素中毒死であった。生存者941名のうち,意識喪失の状態になったものが435名あり,その大部分が一酸化炭素中毒によるものである。それから4年後の昭和42年9月28日には,同じ三川鉱で坑内火災が発生して,一酸化炭素中毒のため7名が死亡して,多くの被災者を出したが,今度は全般に症状が軽く,後遺症を残すものはないという見通しである。 一酸化炭素(CO)ガスは各種燃料の不完全燃焼によって生じ,無色,無臭,無刺激性で,比重は0.967と空気よりわずかに軽い。COガスは各種の工場のみならず,石油やガソリンを使用する暖房器具や自動車のエンジンなど,また都市ガスを使用する家庭内においても発生する。日常使用しているものでは,微量ではあるが煙草の煙のなかにも含まれている。とくに集団的にCO中毒が発生して,社会的に問題をおこしているのは,炭鉱の坑内爆発やトンネル工事中の事故などによるものである。
著者
井廻 道夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1563-1564, 1989-10-30

末梢血リンパ球あるいは脾細胞を高濃度のリンパ球の分化誘導・成長因子であるリンホカイン,インターロイキン−2(IL−2)の存在下で培養すると,ナチュラルキラー(NK)細胞に抵抗性の株化癌細胞や新鮮な癌組織の癌細胞を殺すキラー細胞が4〜5日で誘導され,このようなキラー細胞はリンホカイン活性化キラー細胞(lymphokine-activated killer細胞;LAK細胞)と呼ばれる.LAK細胞の誘導には腫瘍抗原刺激は必要でなく,LAK細胞は主要組織適合遺伝子複合体(majorhistocompatibility complex;MHC)に規定されずに広範囲の腫瘍細胞を殺す.LAK細胞は不均一なキラー細胞の集団であり,大きくはMHCに拘束されない細胞傷害性T細胞(CTL)とNK細胞の2群に分かれ,IL−2との培養の初期に誘導されてくるLAK細胞は,主としてNK分画に属し,長期培養を行うとCTL分画のLAK細胞の割合が増してくる. IL−2は,1976年MorganらによりT細胞増殖因子として報告されたヘルパーT細胞により産生されるリンホカインの一種であり,CTLの分化・増殖,NK細胞の増殖・増強,γ—INFの産生誘導を促す作用を有する.1983年には遺伝子組換えIL−2(rIL−2)の生産技術により,大量のrIL−2を得ることが可能となった.
著者
山下 格
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.585-587, 2011-06-15

はじめに 思春期妄想症は,村上靖彦氏らが1960年代から詳細な臨床的検討を重ねて報告した症候群である2,3)。その内容は対人恐怖と関連が深く,今もよく参照・引用される。 一方,1980年に発表されたDSM-Ⅲには,社会恐怖(DSM-Ⅳの社交不安障害)がほとんど唐突に取り上げられ,わが国で早くから知られた対人恐怖との異同が関心を呼んだ。筆者は同じ1960年代から対人恐怖の診療の際にしばしば自己の症状に妄想的意味づけをする症例を経験したが,その訴えはDSMの記載とは異なり,上記の思春期妄想症に共通するところが多かった5,6)。今回,操作的診断基準による報告との相違を検討するため,村上氏に代わって要点を紹介する。
著者
遠藤 俊毅 伊藤 明 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1151-1159, 2021-11-10

Point・脊髄脊椎外科の魅力は,正しい診断と手術により患者の症状を劇的に改善できることにある.・画像を直すのではなく,患者を治す.そのために,神経診察により患者症状の責任病変を絞り込むことが大切である.・画像所見はあくまでも神経診察による診断を確認するために使用する.その際,同一椎間板レベルにおける神経根と脊髄髄節レベルの「ずれ」に注意する.・患者の訴えを聴き,姿勢や動きによる症状の変化に注目する.
著者
岩﨑 素之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1141-1150, 2021-11-10

Point・脊髄の解剖を理解し,神経回路を意識してみる.・臨床診断を行うための最低限の知識を得る.・実際の症例に当てはめて,合理的な病態説明ができるか確認する.

1 0 0 0 抗ENA抗体

著者
岩田 進
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.254-255, 1986-03-01

抗ENA抗体は抗核抗体の一種で,全身性エリテマトーデス(SLE),慢性関節リウマチ(RA)をはじめとする自己免疫疾患の患者血清中に見られる. ENAとはextractable nuclear antigen(可溶性核抗原)の略で,細胞成分の中の核質成分の総称である(図1).この成分は生食水またはリン酸緩衝液により抽出され,非ヒストン核蛋白または酸性核蛋白抗原(nuclear acids protein antigen;NAPA)とも呼ばれている.しかしENAから核酸を除いたものがNAPAであり,必ずしも同一成分とは言い難い.これまでENAの中の抗原性をもつ核成分が主にNAPAであることから同一視されてきたが,抗原分析の進歩により塩基性蛋白抗原も存在することが証明され,これらを総称する意味で非ヒストン核蛋白と言う場合が多くなってきている.
著者
杉浦 むつみ 大前 由紀雄 池田 稔 中里 秀史 赤野間 百香
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.140-143, 2001-02-20

はじめに Ramsay Hunt症候群(以下,Hunt症候群と略)は,外耳道,耳介のへルペス疹に加え,同側の顔面神経麻痺とさらに内耳神経症状を認める症候群で,その原因は水痘帯状疱疹ウイルス(以下,VZVと略)の膝神経節における再活性化とされている1)。帯状疱疹におけるVZVの再活性化は,同一のあるいは隣接する神経根または神経節で起こり,その支配領域に臨床症状を呈することが多い。しかし,皮膚科領域からの報告では,異なる神経節においてウイルスの再活性化が同時に起こることが知られている。特に両側性に,かつ隣接しない神経節において帯状疱疹が出現するものは,複発性帯状疱疹として取り扱われている2)。 今回われわれは,耳介の帯状疱疹を伴わずに,反対側の体幹に帯状疱疹を同時に認めた顔面神経麻痺の症例を経験したので,その経過と病態に対する若干の考察を加えて報告する。
著者
小宮 義孝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.421-425, 1962-08-15

学校を卒業してから,すぐに東大医学部の衛生学教室にはいって,そこで5〜6年,ごろちゃらしていた。 と,ある日,当時の医学部長林春雄先生がお呼びになる。ふとしたことから先生には,日ごろ何やかやとご厄介になるようになっていた。で,おうかがいすると,「君は上海に行く気はないかね」とのたまう。
著者
蝦名 玲子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.850-854, 2021-12-15

はじめに 先月号では,注意を喚起させたり,気付かせたり,控えめに警告したりし,人々の行動をより良いものにするように誘導する「ナッジ」について紹介した. 現在,新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)のワクチン接種が進められ,2021年9月13日時点で,すでに国民の5割以上が2回接種を完了したが1),このワクチン・コミュニケーションでも,ナッジは活用されていた.メディアは日々,多くの人々がワクチンを接種する様を報道し,首相官邸もホームページ2)で総接種回数や接種率を実績として公表しているが,これらは,社会規範に従うという人の特性を利用したナッジといえる. しかし,こうしたナッジに,逆に反発を覚える人もいる.そうした人に,今後,どうアプローチしていけばいいのか?