著者
高内 康司 タカウチ コウジ TAKAUCHI Koji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.138-153, 2008-03

社会科教育において、個人の多様な意見を調整し、より望ましい解を求めて意思決定や合意形成などが行われている。これまでの学習は対話や優れた決定の技能に注目してきた。しかし、優れた技能による判断のみを市民的判断力というのだろうか。知識と技能で優れた決定はできる。しかし、それだけでは、その過程で他者の存在を結果のための思考の手がかりに見なしかねない。そもそも他者を認めるから他者と対話するのであって、他者は手がかりとして存在するのではない。つまり、市民として具備すべき資質には知識や技能以外に、他者を認めることが不可欠なのではないだろうか。そこで、本稿では他者を認める方法として寛容に注目した。まず英国の『市民と社会』の教科書を参考にして寛容の学習過程を明らかにした後、クリックの考察から寛容の定義やその内容の考察を行った。最後に、以上の結果をもとにして、今後社会科教育で寛容を扱うポイントを示唆する。
著者
西村 靖敬 ニシムラ ヤスノリ NISHIMURA Yasunori
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.191, pp.3-17, 2009-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第191集『モダニズムのナラティヴ』 時實早苗 編
著者
池田 健雄
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.264, pp.37-48, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第264集『東アジア「近世」比較社会史研究』 山田 賢 編"Comparative Study of Early Modern Societies in East Asia" Report on the Research Projects No.264
著者
太田 岳人 オオタ タケト Taketo OHTA
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.219, pp.31-39, 2011-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第219集『イメージ・政治・メディア』三宅晶子 編"Image, Politics, Media" Report on Research Project No.219
著者
王 書[イ] WANG Shuwei オウ ショイ
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-14, 2011-03

大正作家と中国との関連を言うとき、すぐ思い浮かぶのは谷崎潤一郎、佐藤春夫、芥川龍之介、木下杢太郎などといった作家ぐらいで、その数が明治時代と比べるとずいぶん少ないが、しかし、右の作家たちはいずれも大正時代においての大家であることは事実である。これらの作家たちは大正時代において、いわゆる「支那趣味」を持つ作家たちである。「支那趣味」という言葉が生活の西洋化が進んだ大正時代に生まれたのは興味深いことである。明治維新以来、文学者を含む日本人が、社会における各分野で欧米を追う中で、これらの文学者たちは、どうして中国に関心を寄せたのだろうか。また、当時の中国はどのように彼らの眼に映ったのであろうか。そして、彼らの「支那趣味」の内実はどのようなものであろうか。本論文では、谷崎潤一郎と芥川を例にあげ、大正作家の「支那趣味」を見ていきたい。
著者
中西 純夫
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.24, pp.108-121, 2012-03

東京ディズニーランド(ディズニーシーを含むパーク)の大成功(集客と驚異的リピート率)の要因は、①「夢と魔法の王国」にふさわしいアトラクション1、②接客従業員(主に、非正社員、キャラクターを含む)のホスピタリティ・サービスが、顧客に「素晴らしい思い出に残る感動経験」を与えていることである。望ましいサービス労働のあり方は「顧客・従業員インターラクティブの共感に基づく従業員の感動労働」であるという仮説をたて、その解明を研究目的とした。①先行研究の考察、②運営会社へのインタビュー、③現場でのキャストのサービス労働の実査と簡単な質問、④顧客へのヒストリカル・インタビュー・アンケート実施という研究方法によって、接客従業員の「共感・感動労働」を実証中である。共感・感動労働の視点で、東京ディズニーランドと日本マクドナルド、スターバックスコーヒーとを比較した。
著者
朴 銀姫 PIAO Yinji パク ギンヒ
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.17, pp.309-319, 2008-09

本論は、植民地時代という極めて特殊な背景の中で書かれたテクスト-「光の中に」を取り上げ、「主体性」の追求や挫折、抵抗を読み解こうとするものである。結論から言えば、「主体性」とは「意志」と「行動」との反復的な分裂、結合の中に存在する矛盾状態・生成状態の様相に他ならないということになるであろう。まず、このテクストは、自分に与えられた名前の呼び方によって、また自分の使用言語によって、主体の主体性が変わっていく事態を明確に提示している。「名前」という出来事の外部と自己意志という内面の相互関係についての分析から、主体性の追求や挫折、抵抗の中で生きてきた植民地朝鮮人の時代像を把握することができた。また、言語や血統に関する集団的イデオロギーが時代の支配的価値として個々人を抑圧する状況の中、それに対する個人の実存的抵抗を描き出したという点で、このテクストは植民地朝鮮人作家による日本語文学の中で例外的な意義を持つ作品であると思われる。
著者
横山 陽子
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.240, pp.66-146, 2012-03-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第240集「記録史料に関する総合的研究VII - 記録史料と日本近世社会VI -」菅原憲ニ 編"A Comprehensive Study on Historical Records and Archives - Historical Records and Archives in the Early Modern Japanese Society -" Report on Research Project No.240
著者
中西 純夫 ナカニシ スミオ NAKANISHI Sumio
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.22, pp.151-166, 2011-03-30

東京ディズニーランド(シーを含む、以下TDL と略)は現在年間2500万人以上の集客と驚異的リピート率97.5%を誇る日本一のテーマパークである。リピート率では世界一である。その成功要因を探るため、米国ディズニー文化のTDLへの受容の実態について現地調査を行った。(1)ディズニーパークはアメリカ人にとって聖地巡礼対象であるが、日本人にとっては、大衆消費娯楽空間であること、(2)文化帝国主義としての受容(アメリカディズニーパークの忠実なコピー)ではなく、日本文化に合わせ日本的コンテクスト化、独創化した受容であり、その事例を「日本に馴染みのもの化」、「ロマンチック性の強化」、「もてなしの強化」、「買い物優先」、「独創的なもの」の5つのキーワードにまとめた。その上、TDLではディズニー哲学の「ファミリーエンタテインメント」、「非日常世界」、「パークは一生完成しない」、「毎日が初演」、「すべての顧客はVIP」とする従業員のサービスが企業文化となっていることが成功要因であり、日本のテーマパーク企業はTDLの成功要因を取り入れることが肝要である。
著者
金子 洋一 カネコ ヨウイチ Yoichi Kaneko
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.253, pp.151-244, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第253集『日独比較民事法』半田吉信 編"The Comparative Study of the Japanese Civil Law and the German Civil Law" Report on Research Projects No.253資料あり pp.196-244 (1.相続事件における管轄、準拠法、裁判の承認及び執行、公文書の受領及び執行、並びに欧州相続証明書の導入に関する2012年7月4日の欧州議会・理事会規則(仮訳)、2.相続事件における管轄、準拠法、裁判及び公文書の承認及び執行、並びに欧州相続証明書の導入に関する欧州議会・理事会規則のための提案(仮訳・抄訳))
著者
青木 寛子 石戸 光 川嶋 香菜 石戸 光 イシド ヒカリ ISHIDO Hikari 川嶋 香菜 カワシマ カナ KAWASHIMA Kana
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.20, pp.49-68, 2010-03

ブータンは、南アジアの中国とインドの間に位置する人口約70 万人、面積も九州の1.1 倍ほどしかない小国である。経済規模においてもいわゆる「途上国」と呼ばれるレベルの国であるが、興味深い概念を持つ国として国際的に注目されつつある。それこそが「国民総幸福(Gross National Happiness、GNH)」であり、国民が幸福感を持って生活できるということを理念とした独自の国づくりが行われている。アジアの小国の国王が発したこの概念は、ひたすらに近代化を善としてきた先進諸国に対するアンチテーゼとして大きなインパクトを与えた。筆者らは2009 年9月1日から8日までの約1週間ブータンに滞在し、「国民総幸福」に関する調査を行い、そしてその結果をもとに経済面、環境面からの考察を加えた。本稿は、そうした「豊かさ」と密接に関係する経済や環境という側面からGNH を紹介し、内面性を重視した「豊かさの経済」の提起を行っている。
著者
望月 由紀 モチズキ ユキ Yuki MOCHIZUKI
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.185, pp.24-32, 2010-03-31

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第185集『犯罪・修復・責任』嶋津格 編"Crime, Restoration and Responsibility" Report on Research Project No.185
著者
小林 正弥 コバヤシ マサヤ Kobayashi Masaya
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
公共研究 (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.8-56, 2006-03-28

千葉大学公共研究センター21世紀COEプログラム「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」
著者
中井 良太 ナカイ リョウタ NAKAI Ryota
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.243, pp.14-21, 2012-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第243集「個体と権利」嶋津格 編 "Rights and Individuals" Report on Research Project No.243
著者
久保 勇
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-12, 2012-09

明治期の『平家物語』研究として,注目されることが少ない福地桜痴(源一郎)の事績に注目する。関連資料を紹介しながら,桜痴架蔵・参看の『平家物語』異本,平曲伝習とその人脈などを検証し,明治末年に大成する館山漸之進『平家音楽史』・山田孝雄『平家物語考』の前史としての研究史的位置を提示した。
著者
光延 忠彦 ミツノブ タダヒコ MITSUNOBU Tadahiko
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.31-41, 2008-03

1965年の「刷新都議会選挙」まで都議会内では主に自民党が多数を維持したが、この選挙を分岐に多数党は登場しない政党システムに都議会は変容した。この意味でこの選挙は、戦後の都議会の政党配置に重要な変化をもたらす契機となったのである。その後、都議会では多党化の中で「合意の政治」が展開されるが、しかし、一方では二元的代表制の「民意」の集約に「課題」を残す結果ともなった。そこで本稿は、選挙時とは異なる「民意」の可能性が議会内でなぜ昂じることになったのか、この点に興味深い説明を試みる。
著者
小笠原 春菜 オガサワラ ハルナ OGASAWARA Haruna
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.17, pp.165-181, 2008-09

この論文は、ケイパビリティ・アプローチにおける自由と必要の関係について考察をするものである。具体的には、初めにA. センとM. ヌスバウムそれぞれのケイパビリティ・アプローチについて詳細に考察を行う。次にケイパビリティ・アプローチにおいて自由と必要に焦点を当てた先行研究を踏まえて、これまでの研究では見落とされていた点を明らかにする。検討の結果、センのケイパビリティ・アプローチでは自由概念と必要概念の区分が不明瞭であることが判明した。本論文では、ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチにおける概念構築のための機能のリストアップの立場を参考にし、ケイパビリティ・アプローチにおいて自由と必要にずれが生じているケースが存在しうることを指摘している。
著者
馬上 丈司 マガミ タケシ MAGAMI Takeshi
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.20, pp.191-206, 2010-03

本研究は、千葉大学公共研究センターと特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所の共同研究による「エネルギー永続地帯指標」をもとにして、日本国内における自然エネルギー利用の現状への考察を行ったものである。化石燃料などの枯渇性資源からの転換、気候変動対策として自然エネルギーの導入拡大が言われるようになって久しいが、国内の利用実態については、統計資料の整備が不十分な状況が続いている。自然エネルギーの利用には地理的条件や気象条件が大きく影響するものであり、導入を検討するにあたってもこれらの情報は必要不可欠であるが、エネルギー永続地帯指標では、全ての市区町村における自然エネルギーの利用実態を推計している。本研究では、エネルギー永続地帯指標の試算結果から、国内における自然エネルギー利用の全体像を概括すると共に、大都市あるいは自然エネルギー供給の多い都道府県を中心に、なぜ現在のような自然エネルギー利用がなされるようになったのか等、その実態の分析を試みた。
著者
光延 忠彦 ミツノブ タダヒコ MITSUNOBU Tadahiko
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-13, 2010-09

政党政治が「都政」において扱う対象の変遷は、「五五年体制」成立以降、60年代前半期までの「保守都政」、60年代後半から70年代までの「革新都政」、さらに、80年代から90年代にかけての「保守中道都政」へと推移した。90年代に入って、政党の支持を受けない知事が登場すると、「無党派都政」とまでいわれ、「都政」はこれまで政党間の対立と協調による伝統的なダイナミズムによって語られてきた。 しかしながら、こうした見方に立つと、自民、公明などの政党の支援を受けた知事候補に対抗して、政党からの協力を得ずして勝利した青島知事は、都議会内において少数の勢力の支持さえ困難であったにも拘らずなぜ「都政」を運営できたのかという疑義が生じる。そこで、本稿は、知事選挙における政党の支持の状況を、都政における知事のリーダーシップの在り方に帰する既存の議論とは異なる点から都政を検討する。
著者
荒巻 英司 アラマキ エイジ ARAMAKI Eiji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.281-288, 2008-03

本稿では、アマルティア・センの潜在能力アプローチが抱える問題点を指摘する。現代の厚生経済学の基礎が抱える問題点を鋭く批判し、人々の多様性に着目した新たな福祉理論の一つにセンの潜在能力アプローチがある。本稿はこの潜在能力アプローチを詳細に検討することで、その独自性と共に、問題点を浮き彫りにすることを目的としている。最初に、センがどのようにして潜在能力を定式化しているのかを詳細に考察する。次に、そこで与件として与えられている財に対する権原が、人の福祉を決定する上で本質的な役割を果たしていることを指摘する。さらに、この財に対する権原は、他者の選択から影響を受ける点でゲーム的性質を持っていることも説明する。本稿での分析の結果、センの潜在能力アプローチは個人間の戦略的相互依存性を考慮の埒外においている点で、財の所有権構造の捉え方に重大な欠陥を抱えていることが示される。