著者
南雲 大悟
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.207, pp.44-58, 2010-02-25

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第207集『マイノリティの言語実践と社会行動 - 文化・越境・歴史』土田知則 編"Verbal Practice and Social Behavior in the Minorities: Culture, Border-crossing and History" Report on Research Project No.207
著者
江 涛
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.28, pp.218-227, 2014-03

香港は急速な高齢化社会が進んでいるため、成年後見制度の整備が導入されている。香港の成年後見制度は、法定後見と任意後見との2つの制度からなる。この2つの制度は、主に成年の意思無能力者の財産管理に対応するため、成年の意思無能力者の治療及び介護に対応するのは、代行決定と事前指示に委ねる。本研究は、香港成年後見制度の法的枠組について検証し、法律関係規定を引用することにより成年後見制度の基本的構成及び法技術を確認し、その動向を考察するのを目的とする。
著者
中村 隆文
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-17, 2008-09

現代哲学思想において「ヒューム主義(Humeanism)」というものは、反実在論(anti-realism)、あるいはそれに准ずるような、性質に関する「非.認知主義(non-cognitivism) 」として、一般的には主観主義に近い形で理解される傾向にある1。そのような傾向のもと、或る種の反実在主義者(そして、そのほとんどが非-認知主義者であり、たとえば、A.J. エアーのような表出論者やS. ブラックバーンのような投影論者たち)はヒュームの主張を好意的に取り上げる一方、或る種の実在論者たち(たとえば、J. マクダウェルのような認知主義者)はヒュームの主張それ自体を批判しながら反ヒューム主義を提唱するという対立の図式が出来上がっている。しかし、そもそもそうした反実在論vs. 実在論の対立が、あたかもヒューム思想を認めるかどうかであるように図式化されていることについて、私はそこに違和感を感じる。もちろん、その対立図式のもとで生み出された各種議論はそれぞれ重要な意味をもっているのであるが、そもそもヒューム思想がそのような二分法によって理解されるべきものであるかどうかについて、本論考全体を通じて考えてゆきたい。 本論考で紹介するヒューム主義的思考法とは、簡単にいってしまえば、通常は当たり前とされるような関係(いわゆる「分かっている」)を分析し、それが必然的なものではないこと(しかし、同時にそれが不可欠な形で採用されてしまっていること)を論じる手法である。そうした手法を通じて、我々が通常当たり前のように用いている「私」「われわれ」の概念を分析しながら、ヒューム主義というものが奥深く、かつ非常に哲学的な態度であることを論
著者
岡本 東三
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.276, pp.1-36, 2014-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第276集 『型式論の実践的研究II』柳澤 清一 編"Pratical Study of Typology II", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.276人生には、決して渡っては為らぬ川もあれば、時には渡らなければ為らない川もある。学問とて同じである。しかし、渡ることのできない川はないのだ。西部押型紋文化圏と東部押型紋文化圏との間には、大きな川が横たわっている。しかし、川向こうも同じ縄紋人の社会だ。同じ彫刻棒を原体にもった押型紋土器の世界が展開している。土器作りの作法は、カタチの流儀、文様の流儀、胎土の流儀の三つの要素から成り立っている。認定できる型式は、この三要素によって規定されるといっても過言ではない。西部押型紋文化圏も東部押型紋文化圏も、押型紋土器は平縁・尖底が基本であり、施紋法も共通する。土地柄が現れるのは、彫刻原体や器形の好みと地元の粘土や混ぜ物の違いである。当然、人びとは行き交い、文物も交流する。事実、東部押型紋文化圏の前半期には、西部ネガティヴ押型紋に関連する立野式も存在する。西部押型紋文化圏の後半期には、押型紋文化を表象するトロトロ石器が九州島にまで広く分布し、九州島の平栫式も出現する。また、押型紋土器終焉後には、早期の条痕紋土器・関東地方の鵜ヶ島台式もみられる。東日本同様、西日本にも条痕紋土器の世界が広がっていく。川向こうの土器は常に客体的であるが、西部押型紋文化圏だけが孤高を保っていた訳ではない。いずれの時期も同じように、開かれた縄紋社会が展開しているのである。これが縄紋社会の秩序というものであろう。前にも述べたことがあるが、「ルビンの壺」という有名な図形がある[第1図1]。白抜きの部分をみれば、優勝カップのように見え、黒抜きをみれば向き合った2人の顔が見えてくる。「図」と
著者
忽那 敬三
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-13, 2016-03

もともとは社会現象をめぐる問題としてのみ剔抉されていた物象化の議論を、自然科学的認識の場面にまで拡張したのは廣松渉であった。廣松は、相対性理論や量子力学といった現代物理学が近代の自然科学と対峙するなかで提唱することになった自然科学理論の根底に哲学的な反省を加えることによって、「能知-所知的=所知-能知的な被媒介的存在形象」が近代の自然科学においては物性化的に錯視されている次第を明らかにすると同時に、また自然科学的営為一般に通底する四肢的な構造連関態を開示する手掛かりが現代物理学において提供されていることをも明らかにしている。しかし現代物理学の意義を強調しすぎれば、現代物理学そのものも歴史的・社会的に相対的であることを忘却する危険性があること、さらにまた自然認識のモデルを自然科学的認識だけに限定してしまえば観照的な自然認識という場面が等閑視される危険性があること、これらを筆者としては指摘しつつも、しかしこれらの問題は廣松物象化論のなかで原理的に解決可能であることを論じた。
著者
犬塚 康博
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.18, pp.15-25, 2009-03

新京動植物園は、満洲国の首都新京特別市にあった。上野動物園園長古賀忠道の指導のもと1938年に着工され、仙台動物園園長を辞した中俣充志が園長に就いた。広大な敷地に設けられた同園は、動物園と植物園の総合という分類学展示から生態学展示への転換、動物展示における無柵放養式の全面的採用、動物の北方馴化、教育と研究の主導と娯楽の後退、産業への応用など、斬新なテーマを多くもりこんで計画された。指導に際し古賀が「あまり日本の動物園のまねはしないで下さい」と主張したのに即せば、同園は〈日本ならざる未来〉であったと言える。無柵放養式と北方馴化はドイツのハーゲンベック動物園をモデルとしており、狭義には〈極東のハーゲンベック〉を目指したと言うこともできるだろう。同園は完成することなく1945年に終焉するが、北方馴化のテーマは北海道の動物園へ、無柵放養式のテーマは多摩動物公園での本格的採用へと、それぞれ継続した。
著者
川口 嘉奈子 カワグチ カナコ KAWAGUCHI Kanako
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.203, pp.33-43, 2011-02

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第203集『哲学的自然主義の諸相の展開』田島正樹 編"Recent developments of the philosophical naturalism" Report on Research Project No.203
著者
菅野 憲司
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.19, pp.308-314, 2009-09

[要旨] 合併銀行名に関して、昔、東京銀行を三菱銀行が「吸収」して東京三菱銀行に、今、さくら銀行(太陽神戸三井銀行)と若干より規模が大きい住友銀行とで三井住友銀行に、これが通例であり、これに対して、規模が大きい関東銀行と小さいつくば銀行が合併して関東つくば銀行になったことは異例であり、本報告では、合併銀行名の意味論に関して考察を進める。
著者
松田 光太郎
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.25, pp.91-97, 2012-09

本稿は今村啓爾編『異系統土器の出会い』の書評である。土器研究の第一線で活躍している8人の共同研究者の研究論文(事例・第2~9章)と研究の中心者であり編者でもある今村氏の総括的論文(第1章)からなっている。土器には系統があり、土器が移動することで異なった系統の土器が出会う。第1章の総括的論文では、本書の目的が述べられると共に、以下の研究論文(事例)の内容を抽出・分析し、移動の類型化が試みられている。研究論文では第3~5章は縄文時代中期・後期、第1・6・7章は弥生時代から古墳時代前期、第8章は北海道のオホーツク・擦文を対象とした土器の型式学的研究が展開され、遠距離間を中心とした土器の動き・影響関係、さらにはその背後にある人の動きに対する考察が述べられている。また第9章は土器の土である胎土の分析研究が掲載されている。本稿ではこうした本書の内容をまとめ、その成果や課題について述べる。
著者
小池 哲司 倉阪 秀史 馬上 丈司
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.31, pp.124-143, 2015-09

2014年に施行された農山漁村再生可能エネルギー法は、再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度を背景として、農山漁村における再生可能エネルギーの促進と農山漁村の活性化を目的とした法律である。本法は、自治体の基本計画や協議会での議論によって農林漁業に資する再生可能エネルギーの普及を目指すものであり、市町村や農林漁業者が主体となって実施されていくものとして2012年2 月には野田内閣から閣法として提出されていたが、衆議院解散や政権交代によって審議入りが大幅に遅れ実際に施行されたのは2014年の5月と、最初の提出から2年3ヶ月も経過した後となってしまった。一方でその間には、2012年に固定価格買取制度が開始し、我が国においては特に地域外資本による太陽光発電が爆発的に増加した。本論文は農山漁村再生可能エネルギー法の成立過程およびその制度の内容を踏まえたうえで、その意義や課題について考察するものである。
著者
高橋 孝次
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.32, pp.13-28, 2016-03

〈文壇〉からの孤立というイメージによって強く価値づけられてきた稲垣足穂だが、大正末から昭和初期にかけては、〈文壇〉という文学場において、「新時代」を代表する作家として登記された存在だった。本稿では作家自身の証言に依拠するのみでほとんど検証されてこなかった〈文壇〉時代の稲垣足穂の姿を当時の時評や合評、新たに発見された資料、同時代言説などから再構築することを目的とする。滝田樗陰と「中央公論」、佐藤春夫との破門問題、中村武羅夫と「新潮」、新感覚派と「文芸時代」といった稲垣足穂と〈文壇〉を繋ぐ人々との関わりを再検証し、当時の足穂がいかにして〈文壇〉での位置を獲得していったかを裏付ける。加えて石野重道と猪原太郎という二人の友人をめぐる「オリジナリティ」の問題を採り上げ、足穂の送った二つの抗議文と、それに対する〈文壇〉の反応から足穂の「新しさ」がどのように認知、受容され、消費されていったのかを明らかにする。
著者
鳥居 深雪 杉田 克生
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.160, pp.124-133, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第160集『発達障害児における脳機能解析』杉田克生 編"Analysis of Brain Function in Children with Developmental Disorders" Report on Research Projects No.160学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害等の発達障害の一群は、状態像が多様である。DSM-Ⅳに基づく診断名が、必ずしも子どもの状態を的確に示していない。そこで、認知機能の視点から子どもたちの困難さを検討した。実行機能(executive functions)は、意志決定や抽象的思考、合目的的な活動を円滑に進めるためのさまざまな高次機能を包括的にとらえる概念である。LD、ADHD、高機能広汎性発達障害等では、実行機能に障害が認められることが指摘されている。LD、ADHD、高機能広汎性発達障害等の診断を受けた4人の男児(小学校4~5年生)について、実行機能の構成要素の一つであるワーキングメモリの状態を分析した結果、不注意の症状があると、ワーキングメモリの状態は安定しないこと、読字障害の症状があると有意味と無意味でワーキングメモリに差が出ることが判明した。
著者
ラッタナブリー ナンティヤー
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.278, pp.81-86, 2014-02-28

本研究はドラマ内でみられた申し出表現の使用について考察する.具体的にはドラマ中で使用された「~てあげる」という申し出表現を中心に考察していく.ここでいう「申し出」は,川口他(2002)で定義されている,「『申し出』は『自分』が『相手』の『利益』のために『行動』しようという意図を示して『相手』にその『行動』を『決定』する意向があるかど うかを尋ねるものである」を用いることとする.「~てあげる」は,相手のために何かをしてあげるような申し出場面では,「○○してあげる」という表現より相手が恩恵を感じないように,例えば「○○します」あるいは「○○しましょう」「○○しましょうか」といった表現を使用したほうが適切であるといわれることが多い.また,日本語教育において,相手と自分の立場を考慮しながら「~てあげる」表現の使用には注意するよう教わった日本語学習者である筆者は,コミュニケーションに誤解が生じないよう「~てあげる」を使用する際には細心の注意を払うようにしている.このようにコミュニケーションにおいて使い方に注意が必要であると思われる「~てあげる」表現を用いた申し出表現はどのように使用できるかについて疑問を持ったため,本研究では二つの日本ドラマに注目して考察することにした.千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第278集 『接触場面における言語使用と言語態度』接触場面の言語管理研究 vol.11 村岡 英裕 編"LANGUAGE USE AND LANGUAGE ATTITUDE IN CONTACT SITUATIONS : LANGUAGE MANAGEMENT IN CONTACT SITUATIONS VOL.11", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.278This study examines the usage of 'expression of offer' in Japanese language with particular reference to two Japanese dramas which are 'KOIZORA' and 'NOBUTA WOPURODYU-SU'. In these dramas the expression of offer particularly the usage of '- te ageru' has been focused. The main characteristics of these dramas are that they have dialogues which are close to real life and thus the characters appear to be convincing. What sort of a relationship does the speaker share with the listener; it has been clearly expressed through the dialogues. Both these dramas have dialogues between people in close relationships such as friends, family, married couple. Further, it has been noticed that the expression '- te ageru' has been frequently used in both the dramas. '- te ageru' is an expression of offer where the speaker offers to do a favor to the listener even without being asked to do so. Further in order to use '- te ageru' appropriately, one of the factors to be considered is the relationship between the two people. However, usually in Japanese language when a speaker does a favor to the listener or offers to do so, he/she is expected to use humble forms such as '- shimasu','- shimasyou', '- shimasyou ka' instead of using '- te ageru' so that the listener or the beneficiary may not feel indebted. But on the basis of this study, taking into consideration the dialogues used in the above-mentioned dramas, it is concluded that in close relationships suc has relations between friends, family or in other close relations the usage of '- te ageru' is not inappropriate.
著者
清水 建
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.232, pp.113-132, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第232集『帝国・人種・ジェンダーに関する比較研究』栗田禎子 編"Comparative Studies on Empire, Race and Gender" Report on Research Projects No.232
著者
小池 哲司 倉阪 秀史 馬上 丈司 倉阪 秀史 クラサカ ヒデフミ KURASAKA Hidefumi 馬上 丈司 マガミ タケシ MAGAMI Takeshi
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.31, pp.124-143, 2015-09

2014年に施行された農山漁村再生可能エネルギー法は、再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度を背景として、農山漁村における再生可能エネルギーの促進と農山漁村の活性化を目的とした法律である。本法は、自治体の基本計画や協議会での議論によって農林漁業に資する再生可能エネルギーの普及を目指すものであり、市町村や農林漁業者が主体となって実施されていくものとして2012年2 月には野田内閣から閣法として提出されていたが、衆議院解散や政権交代によって審議入りが大幅に遅れ実際に施行されたのは2014年の5月と、最初の提出から2年3ヶ月も経過した後となってしまった。一方でその間には、2012年に固定価格買取制度が開始し、我が国においては特に地域外資本による太陽光発電が爆発的に増加した。本論文は農山漁村再生可能エネルギー法の成立過程およびその制度の内容を踏まえたうえで、その意義や課題について考察するものである。
著者
光延 忠彦 ミツノブ タダヒコ MITSUNOBU Tadahiko
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-16, 2007-03

1990 年代の都知事選挙においては、95 年に青島候補が、また99 年には石原候補が勝利して東京都政を担ったが、両者はともに政党から距離を置く候補の点では共通しながらも、青島都政は一期で退場したのに対し、石原都政は二期目を続行中である。興味深いことに、こうした差異の説明では、ジャーナリズムに見られる政治家のリーダーシップ論が典型的である。しかしながら、ここでの議論では政治家個人の資質に関わるものが中心で、分析を通じて何らかの理論的課題が提出されるという点では必ずしも十分ではない。そこで本稿は、青島都政では挫折した政治的リーダーシップが、なぜ石原都政では達成し得たのか、この点に一定の解答を付すべく知事と議会の関係から接近し、政治的リーダーシップを制度的要因から考える。
著者
ボナシチ エドナ 福田 友子 前田 町子 石田 沙希 マエダ マチコ MAEDA Machiko 石田 沙希 イシダ サキ ISHIDA Saki
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.32, pp.191-208, 2016-03

本稿は、Edna Bonacich, 1973, 'A Theory of Middleman Minorities,'"AmericanSociological Review" 38: 583-93. の和文翻訳(全訳)である。著者のエドナ・ボナシチ(1940- )は、現在、カリフォルニア大学リバーサイド校の名誉教授である。「分断的労働市場論」(1972)が有名であるが、この「ミドルマン・マイノリティ理論」も移民研究に大きな影響を及ぼした。とりわけエスニック・ビジネス研究においては、基本的論文として知られており、日本では日系アメリカ人の研究でたびたび引用・参照されてきた。本論文の主要な論点については多くの批判も出されたが、それはこの論文が移民研究において果たした役割の大きさを裏付けるものでもある。