著者
福原 百合 藤野 成美 脇崎 裕子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.36-49, 2013-10-31

本研究の目的は,精神科病棟看護の経験を持つ精神科訪問看護師を対象にして,精神科長期入院患者の退院促進および地域生活継続のための看護実践上の課題について明らかにすることである.長期入院患者の看護経験を含めて精神科病棟勤務歴が3年以上あり,さらに精神科訪問看護経験を持つ看護師とした.対象者に対して半構成的面接を行い,面接内容は質的帰納的に分析した.結果は,精神科訪問看護師が抱く精神科長期入院患者の退院促進における看護実践上の課題として【管理体制からの脱却】【患者の将来を見据えた退院支援の在り方】であった.精神科長期入院患者を地域で支援する際に精神科訪問看護師が直面した課題として示されたのは,【倫理的配慮に基づいた訪問看護実践の難しさ】【利用者周囲との関係調整の役割】【地域で生活する精神科長期入院患者に対する固定観念】であった.看護師が自分自身の価値観を優先するのではなく,患者個人がどのような人生を生きたいのか自分自身で選択し,決定していく姿勢を支持することの重要性が示唆された.
著者
岡村 直利
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新しい数値計算技術であるGPGPU技術が素粒子現象論、特にLHC実験に関係する研究に必要な生成散乱断面積を計算するシステムの高速化に応用可能か検証することをめざし、標準模型に含まれる全粒子を含んだ生成散乱断面積を、GPU上で計算するためのサブルーチン集HEGET(HELAS Evaluation with GPU Enhanced Technology)を作成した。HEGETをGPU上でモンテカルロ積分を行うプログラムと合わせて使うことで、従来のシステムと同精度のまま、プログラムの開始から終了までの時間を、多数のjetを含む場合を除いて、遅くても約10倍、最大で100倍程度の高速化を実現した。
著者
齋藤 隆之
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.13-27, 2007

目的:社会福祉におけるニーズとは,要援護者の社会生活上望ましい状態と現状との乖離状態に対し,それを充足させるため必要とされるものと捉えられる。本研究は乖離状態にある脳性マヒ者の性生活に対し,当事者サイドから実態を明らかにすると共に,そこに存在するニーズを導き出すことで,通常の性生活を送るに困難な状況を解決・改善する一つの契機とすると共に,当然あるべき生活の一側面として位置づけられることを目的とする。方法:当事者への非構造化面接手法によるインタビュー調査を通し「個人・環境状況→社会生活ニーズ→サービスニーズ」という手順を踏み,具体的社会資源の利用要求であるサービスニーズを明らかにした。結果:明らかになった性生活ニーズは社会資源の分類枠組みに分類してみると,それが可能であった。つまり,性生活は生活の一部に位置づけられるといえる。一方で,既存の支援の枠組みからは抜け落ちている現状が浮き彫りとなった。
著者
保母 恵 谷山 牧 山下 留理子 鳥本 靖子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

地域包括支援センターにおける総合相談支援は、すべての活動の出発点となる最も重要な業務の一つである。保健・福祉の専門職が、専門性にかかわらず高齢者のあらゆる相談に応じ、必要な支援につなげるワンストップサービスを担っている。相談件数は増加の一途をたどっており、相談内容は多様化、複雑化しており、保健医療の専門知識だけでなく、幅広い知識と、支援スキルが求められる。しかしながら、地域包括支援センター保健師等を対象とした研修は少なく、多忙な業務の中研修を受ける機会も乏しく、力量不足を感じながら相談支援業務を行っていることが懸念される。そこで本研究では、地域包括支援センターで保健師等が必要とする個別支援スキルを明らかにし、必要なスキル習得のための教育プログラムを作成し、Web学習可能な教材を開発することを目的としている。方法として、教育プログラムを作成するにあたり、3年以上地域包括支援センターで経験ある保健師にインタビュー調査し、相談支援業務で用いているスキルを抽出し、その後、全国を対象に質問紙調査を行う。令和3年度は、これまで聴取できたインタビューデータを分析し、質問紙の作成を試みたが、追加のインタビュー調査が必要と判断され、調査協力者を再選定した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による活動自粛等の影響により、協力者の確保に難航した。そのため、調査地域を広げる手続きを行い、新たな調査協力者を確保し、追加の調査を開始した。
著者
塚本 敏也
出版者
国際医療福祉大学
巻号頁・発行日
2018-03-07

平成29年度
著者
谷山 牧 若林 和枝 保母 恵 渡部 瑞穂 岩上 さやか 藤田 千春
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

現在、日本では生活保護受給者(以後, 受給者)に対して福祉から就労に向けての支援が行われているが、受給者のうち就労可能と判断され支援を受けても,実際に就労し生活保護から外れるものはごくわずかである. また, 医師により就労可能との判断を得たものであっても, 身体的, 精神的, 社会的健康の準備状態が整っていないものも多い. 就労支援の内容は自治体によって異なり, 受給者の心身の準備段階や個別性に配慮した支援が十分に行われているとは言い難い状況である. 本研究の目的は, 生活保護受給者の就労に向けた心身の準備段階のアセスメントとその段階に応じた就労支援プログラムの作成と評価を行うものである.
著者
本多 勇
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-23, 1998

「生活」は、言うまでもなく社会福祉の領域において重要かつ基本的なキーワードである。しかし、「生活」という概念は広範であり捉えにくい。「生活」概念についてはさまざまな学問領域から研究がされてきた。第2次世界大戦中や戦後は、おもに経済学において「生活」研究が展開された。高度成長期の時期には、おもに社会学において「生活」研究が展開された。他にも、家政学や法学など幅広い領域から「生活」研究が展開されている。本稿においては、5つの学問的領域における「生活」研究の成果を、代表的論者の議論を中心に概観している。すなわち、(1)経済学的・社会政策学的「生活」研究、(2)社会学的「生活」研究、(3)住居学的「生活」研究、(4)生活学的「生活」研究、(5)社会福祉学的「生活」研究である。それぞれの「生活」研究の論点や視座を検討したのち、「生活」を捉える枠組みとして、「生活」を「マクロ的視点の生活/客体的生活」と「ミクロ的視点の生活/主体的生活」として把握する議論を試論的に提示した。
著者
森田耕喜
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 = Bulletin of International University of Health and Welfare (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-42, 1996-08-31

死についての哲学的洞察は、哲学がこれまでどのように死を問うてきたかという哲学史的問題へと我々を向かわせる。死とは何かという問いが、古来、哲学者達にとって根源的であり続けてきたのは、人間が本質的に死という未来によって限定された存在であるからである。ヘーゲル哲学における死の概念の考察が本稿の目的であるが、最初に死の概念について歴史的に概観し、次にヘーゲルの初期論稿と『精神現象学』における存在概念として特徴づけることによって、ヘーゲル哲学において生命と死の概念がもつ意味を考察する。初期論稿において生命は世界の存在概念として特徴づけられ、その存在性格が愛による運命との和解という初期思想の根本概念を規定している。「意識の経験の学」としての『精神現象学』に至って、生命は自己意識として捉えられ、生命は精神の生命となる。その際、死は生命の終わりでもなく、生命の対立概論でもなく、生命に内包され再生と新たな生命創造の契機であることが明らかになる。ヘーゲル哲学を含め近代西欧哲学はデカルトにより発見された「我思う」の自我、即ち、意識の哲学であるが、生命と死の概念についても、それが精神としての生命であり、意識の死であることが結論づけられる。Diese vorliegende Arbeit ist ein Versuch, den Begriff des Todes in der Hegelschen Philosophie aufzuklären. Das Problem des Todes oder die Frage nach dem Tod war immer wieder das bedeutendeste Problem für alle Philosohen, weil das Sein des Menschen wesentlich vom Tode beschränkt ist. Wollen wir zeigen, warum es sinnvoll ist, philosophische Betrachtungen über Tod anzustellen, so müssen wir zunächst erklären, wie Philosophie bis heute nach dem Tode gefragt hat.IN dieser Arbeit zuerst verblicken wir historisch und philosophisch den Befriff des Todes. Veispiel, da die Seele unsterblich und der Tod die Trennung von Leib und Seele sei. Für Decartes bedeutet der Tod des Menschen nur das Ende der automatischen Maschine.Dann wollen wir den Begriff des Lebens und Todes in Hegels Philosophie in Betracht ziehan. In den Hegels Theologischen Jugendschriften bezeichnet das Leben das Wirkliche d.h. die Weise des Sein. Auch in Phänomenologie des Geistes wird das Leben als Seinsbegriff klar.Seit Decartes und Kant könnten wir sagen, da Subjekt der neuzeitlichen Philosophie in anderen Worten, Vermittler Bewußtsein ist. SO in diesem Sinne ist der Tod des neuzeitlichen Menschen der Tod des Bewußtseins.
著者
斎藤 昭彦 丸山 仁司 新井 正一 橋本 光康 金場 敏憲 岩谷 力
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-43, 1998-12-25

この研究の目的は,MR画像から1)生体の大腿四頭筋全体あるいは個々の筋の各高位における筋断面積および筋容積を求め,臨床応用のための基礎データを提供すること,2)最大筋断面積や筋容積と,等運動性筋トルクとの関係性を検討し,最大断面積,筋容積といった筋形態学的情報から等運動性筋トルクの推定の可能性を探求することであった.健常大学生20名のMR画像から右大腿四頭筋の筋断面積および筋容積を求めた結果,大腿四頭筋の最大筋断面積は43±12.7cm^2,筋容積は1055±353cm^3であり,最大筋断面積と筋容積との間には相関係数0.981の高い相関が認められた.また,最大筋断面積,筋容積と,等運動性筋トルクとの間にも高い相関が認められ,MR画像からの形態学的情報である大腿四頭筋の最大筋断面積および筋容積から等運動性筋トルクの推定が可能であった.
著者
谷山 牧 山下 留理子 保母 恵 藤田 千春
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

比較的若い世代の生活保護受給者の就労意欲に影響を与える健康特性を検討した。当事者インタビューの結果、健康特性として【他者から理解されがたい持続的な苦痛】【精神的防御力の低さ】【社会的適応力の低さ】【自己流の健康管理】があり、これらはトラウマティックストレスにより引き起こされている可能性が考えられた。このうち、【精神的防御力の低さ】【社会的適応力の低さ】の改善を目指し、トラウマ・インフォームド・アプローチを基盤とした「ストレス対処講座」を作成し、評価を行った。参加後、自覚的健康度や自尊感情には有意な変化はなかったものの、不安・不確実感の有意な軽減が認められ、ストレス反応の改善傾向が示された。
著者
森田 耕喜
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 = Bulletin of International University of Health and Welfare (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
no.2, pp.21-30, 1997-08-31

近代の合理主義思想は、存在のロゴスともいうべき神の理法がこの世界を貫徹し、神が創造したこの世界と人間とは神の一部を共有しているから、人間理性は世界の理性的法則を認識可能となるよう保証されているというものである。こうした人間の合理主義的理性は、近世的な自然科学思想や技術的発展に支えられているように見えるが、17世紀以来の思想家たちが腐心してきたのは神の存在と霊魂の不死性を証明することであった。デカルトの二元論は心身関係に決定的なものとなったが、その後の哲学思想がこの問題とどのように向き合ったかを検討することで、死の概念について考察する。カント哲学において、思弁的理性がその限界を超えて実体や霊魂の不死性について論証することは越権行為であり、不可能であるとされる。『純粋理性批判』において、「理論理性」の問題は「実践理性」の問題へと、即ち、人間の「自由」と「信仰」の領域へと移行されるのである。Nach dem rationalistiche Gedanken in der Neuzeit ist die Welt durch die Vorsehbnung als Logos des Seins geherrischt und weil Gott diese Welt und den Menschen erschaffen hat, besitzen beide geheinsam ein Teil der güttlichn Vernunft. So kann die menschliche Vernunft das vernünftliche Gesetz der Welt erkennen. Es scheint, daβ diese rationalistische menschliche Vernunft sich auf den naturwissenshaftlichen Gedanken und die technische Entwicklung stützt, aber quälen sich viele Denker seit 17 jahrhundert mit dem Dasein Gottes und der Unsterblichkeit der Seele. Decartes Dualismus spielt eine groβ Roll bei der Verhältnis zwischen Leib und Seele. Durch die Untersuchung der philosophische Gedanken danach möchten wir den Begriff des Todes in der Kantischen Philosophie.
著者
松本 哲哉
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、消化管からのバクテリアル・トランスロケーションの過程でどのようにプロバイオティクスが消化管粘膜免疫に作用し、さらに全身感染に発展させる要因について検討することを目的としている。近年、癌化学療法の進歩や臓器移植の増加に伴い、免疫不全患者における感染症の制御は重要な課題となっている。私達のこれまでの研究では、一部のプロバイオティクス株はむしろ全身感染を増悪させ、その病態に粘膜免疫が関与していることが示唆された。そのため、消化管粘膜免疫の活性化が負の方向に感染を導く可能性を含めて、その機序を解明することを目的としている。
著者
小田部 夏子 原田 浩司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

書きの困難さの背景には、運動覚性記憶能力や文字の中にまとまりを見つける能力に問題があるのではないかと考え、それを確かめること、さらに運動覚性記憶に問題がある場合は運動感覚に問題がないかを確認することを目的とした。運動覚性記憶は運動覚性書字再生、音読課題で測り、文字の中にまとまりを見つける能力はまとまりを見つける課題を作成し、読み書き困難児と定形発達児に実施し比較した。運動感覚は手の関節位置覚を再現法にて評価し、先行研究で得られた値と比較した。その結果、読み書き困難児に運動覚性記憶の形成に問題がある者が多く運動感覚が不良であること、まとまりを見つける能力が書きに影響していることが示唆された。
著者
道木 恭子 古谷 健一 牛山 武久 永松 秀樹 堀 達之
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-6, 2005

女性脊髄障害者81名を対象として産婦人科的問題に関する後方視的調査を実施した。結果、一般では減少傾向にある「膣感染症」が61名(75%)と最も多く、脊髄障害者において膣感染症が多いことから、膣洗浄による治療効果について検討した。洗浄は10%ポピドンヨード50倍希釈液を用い、2週間に1度の間隔で実施した。その結果5例中4例において、膣分泌物中の細菌の減少傾向が認められ、外陰部の発赤、びらん、悪臭などの自覚症状も軽減した。本研究から、膣感染症に対する洗浄の有効性および女性脊髄障害者の健康問題に関する医療者の理解と当事者に対する知識の普及の必要性が示唆された。
著者
雄鹿 賢哉
出版者
国際医療福祉大学
巻号頁・発行日
2017-03-08

平成28年度