著者
松原 陽一 苅込 卓也 生田 稔 堀 廣孝 石川 枝津子 原田 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.297-302, 1996-09-15
被引用文献数
2 7

リンゴ苗の育成におけるarbuscular菌根(AM)菌[<I>GtσmusetZtnicαtum</I>(GE)および<I>GigasPoramargaritα</I>(GM)]の利用について検討するため,リンゴ(iN4aluspttmitaMill,var.dom.esticaSchneid.)の8品種('旭','祝,紅玉','ゴールデンデリシャス','スターキングデリシャス','ふじ','陸奥','幽レッドゴールド')およびミツバカイドウ(MαttcssieboldiiRehd.)の実生の生長に及ぼすAM菌接種の影響について調査した.<BR>接種8週間後,AM菌の感染は全ての品種•菌種の組合せにおいてみられた.リンゴの9品種における感染部位率(1個体の根系における感染部位の割合)は,GE接種区では31.7%('ゴールデンデリシャス')-50.5%('紅玉')に達し,GM接種区では24.0%(ミツバカイドウ)-50.7%('スターキングデリシャス')となった.GE感染個体では,草丈,地上部および根の乾物重は,全ての品種において無接種個体のそれを大きく上回った.GE感染個体では,ゴールデンデリシャス'およびミツバカイドウを除く他のものにおいて,それらの値が無接種個体を大きく上回った.両菌種において,共生関係成立による生長促進効果は'旭で最も大きく現れた.感染植物体の地上部および根におけるリン濃度は,菌種に関わらず,無接種個体のそれより顕著に高かった,この場合,その差は地上部より根において大きかった.<BR>このように,AM菌(GEおよびGM)の感染および共生関係成立による植物体生長促進効果が数種リンゴの実生において認められたことから,リンゴ苗の育成過程において,AM菌接種による健苗の育成が期待される.
著者
中村 俊一郎 寺西 武夫 青木 美珠代
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.461-467, 1982
被引用文献数
3 8

セルリー種子の発芽促進に対するベンジルアデニン(BA), ジベレリン(GA<sub>3</sub>又はGA<sub>4</sub>)及びポリエチレングリコール(PEG)6000溶液処理の効果を調査した. またホウレンソウ種子ではPEG処理の発芽促進効果とともに, 処理後の乾燥貯蔵の可能性を調査した.<br>1. セルリー種子は20°Cを越えると発芽率が低下した. 発芽促進剤としてはBAが有効で, GA<sub>4</sub>も効果があるが, GA<sub>3</sub>は無効であった.BAとGA<sub>4</sub>とを併用すると最も有効であった.<br>2. セルリー種子はPEG処理によって発芽速度が早まり, 又25及び30°Cでの発芽率が上昇した.<br>3. 処理期間は7日間でも大きな効果が見られたが, 14日間処理すれば効果は更に増大した.<br>4. 処理温度は, 種子ロットによって, 15°Cが好適な場合と, 20°Cが好適な場合とがあった.<br>5. PEG処理中に光線を与えることによって, 処理効果が増大した.<br>6. PEG溶液中にBAを加えることによって処理効果が増大した. しかしGA<sub>4</sub>を加えても効果の増大は見られなかった.<br>7. ホウレンソウ種子もPEG処理によって発芽速度が早まり, 30°Cでは発芽率も増大した.<br>8. ホウレンソウ種子をPEG処理後, 7日ないし14日間貯蔵した時, 発芽率の低下は見られず, 発芽速度の減少も僅少にとどまった.
著者
村上 賢治 木村 学 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.773-778, 1995
被引用文献数
2 2

サトイモ (<I>Colocasia esculenta</I> Schott) 品種'えぐいも'のカルスから単離したプロトプラストの培養および植物体再生技術を開発した.<BR>1. プロトプラスト培養の材料に適した柔らかいカルスは, 黄化茎の切片を30g•liter<SUP>-1</SUP>ショ糖, 2mg•liter<SUP>-1</SUP>,4-D+2mg•liter<SUP>-1</SUP>2ipおよび2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムを添加したMS培地で培養することにより誘導した. このカルスは, 同組成の新しい培地に継代培養すると増殖を続けた.<BR>2. プロトプラストは, カルスを振とう培養して得られた懸濁培養細胞を酵素処理することにより, 容易に単離された. 酵素液の組成は, 1g•liter<SUP>-1</SUP>ペクトリアーゼY-23+5g•liter<SUP>-1</SUP>セルラーゼオノズカRS+5mM MES+5mM CaCl<SUB>2</SUB>•2H<SUB>2</SUB>O+0.5Mマニトールとした.<BR>3. プロトプラストの培養は, 1/2濃度のMS無機塩, Kao and Michayluk (1975) の有機物に, 種々の濃度のNAA, BA, 2ip, 0.1Mグルコースおよび0.3Mマニトールを添加した液体培地で行った. これらのうち2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加した培地でプロトプラストを培養すると多くのコロニーが形成された.<BR>4. プロトプラスト由来のコロニーを0.2mg•liter<SUP>-1</SUP>NAA+2mg•liter<SUP>-1</SUP>BAを添加したMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) に移植すると,コロニーからカルスが形成され, 同組成の培地でさらに継代培養すると苗条が再生した. この苗条を切取り,ホルモン無添加のMS固体培地 (2g•liter<SUP>-1</SUP>ジェランガムで固化) で培養すると発根した.<BR>本研究で開発されたサトイモのプロトプラスト培養技術は, 今後再分化率の向上などを図ることによって,細胞融合や遺伝子導入を利用した新品種育成のための,有効な基礎技術となり得ると考えられた.
著者
伊藤 三郎 松尾 友明 飯伏 雄二 玉利 信人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.107-113, 1987
被引用文献数
1 4

熱帯•亜熱帯性果実の有効利用を目的としている一連の研究の中で, グアバの葉•果実に多く含まれているポリフェノールの消長と特性を検討した.<br>1. ポリフェノールの消長を調べる目的には, Peri とPompei の分別定量法による分析が有用であることが分かった.<br>2. グアバの幼果は100g当たり約600mgの総ポリフェノールを含むが, その約68%は縮合型タンニンが占めていた. また, 果実の生育に伴って急激に減少することが明らかとなった.<br>3. プロアントシアニジン量も果実重の増加とともに顕著に減少した.<br>4. GPC分析により, 高分子ポリフェノールが主に減少することが分かった.<br>5. グアバ葉 (8月3日採取のもの) には, 果実に比べて約10倍量のポリフェノールが含まれていたが, その84%が縮合型タンニンであった.<br>6. HPLCにより, 幼果と成葉の抽出物より (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンを同定した.<br>以上の結果から, グアバの幼果及び葉に含まれるポリフェノールの大部分がフラバン系のポリフェノール, 特に, (+)-カテキンと (+)-ガロカテキンから成る縮合型タンニン (プロアントシアニジン•ヘテロポリマー)であることが推定された.
著者
甲村 浩之 長久 逸 原田 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.51-59, 1994
被引用文献数
6 11

アスパラガス (<I>Asparagus officinalis</I> L.) 優良株の組織からの多芽集塊および多芽集塊からの不定胚形成を利用した大量増殖培養系の確立について検討し, その可能性を実証するとともに基礎的知見を得た.<BR>1.アスパラガスの品種'ヒロシマグリーン' (2n=30) の若茎の茎頂を, アンシミドール10mg•liter<SUP>-1</SUP>およびショ糖30g•liter<SUP>-1</SUP>を添加したMS液体培地を用いて, 回転培養法により培養するとコンパクトな多芽集塊を誘導することができた. この多芽集塊は,1か月ごとの継代培養により増殖を繰り返し2年間維持されており, この間カルス化および染色体数の変化は認められなかった. また, 多芽集塊は, 本実験に用いた他の品種•系統においても同様な方法により容易に誘導することができた.<BR>2.多芽集塊を直径約2mmの大きさに分割して2,4-D 10<SUP>-5</SUP>Mを添加したMS寒天培地に移植すると, 容易にカルスを形成し, 発達した不定胚を含む embryogenic callusも10~20%の率で誘導することができた. これらのembryogenic callusの頂端の部分を分離し, 同じ培地で2週間ごとに継代培養すると, 安定的に不定胚を形成するembryogenic cell lineが得られ, 現在までに約1年間 (24回以上の継代培養) 不定胚形成能力を維持し続けている.<BR>3.多芽集塊は継代培養を行わず3~6か月間同じ培地で回転培養を続けると表面に球状胚と考えられる集塊組織を多数形成し, これらを2,4-D 10<SUP>-5</SUP>Mを添加したMS寒天培地に移植すると, 30%以上の高率で容易にembryogenic caUusを誘導することができた.<BR>4.多芽集塊から不定胚を形成させる培養系において再生した植物体約2000株については, アルビノやわい化などの異常は認められず, 染色体数 (15株観察) の倍化変異も認められなかった.<BR>以上の結果から, アスパラガスの多芽集塊誘導とそれに続く不定胚形成を利用した大量増殖システムは, 育種や栽培などの促進と改善のための有効な手段になると考えられる.
著者
岩田 隆 杉浦 弘隆 白幡 啓一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.224-230, 1982
被引用文献数
5 6 3

エダマメは収穫後の食味•外観の劣化が速いが, 莢を離さずに, 全値物体 (全株) をホリエチレン袋に密封する"葉付ぎ包装"によって品質が保持されることをさきに報告した. 本報はその効果を確認するとともに, 効果の発現に関係する諸要因を検討したものてある.<br>品種は'白山ダダチャマメ'を用い, 全株を0.03mmの低密度ポリエチレン袋に密封し, 20°Cに保持するのを葉付き包装の基本とした. 対照区は莢を有孔ポリエチレン袋に詰めた. 食味変化の目安としては全糖含量及び遊離アミノ酸指標 (ニンヒドリンに反応する80%アルコール抽出物) の変化を用いた.<br>莢の外観は, 対照区が20°C4~5日で変色し, 商品性が失われたのに対し, 0.03mmポリエチレン袋の葉付き包装では1週間以上よく緑色を保持した. 0.04mmでも同様であり, 0.06mmの袋では若干劣ったが対照区よりはるかに勝った. 全体を針孔包装したものは対照区より良好であったが, 密封包装に比べ劣化が速かった.25°Cにおいても葉付き包装の外観保持効果は明らかで, ライナー包装も有効であった.<br>対照区の糖及びアミノ酸は1~2日で急減したが, それらの減少は葉付き密封包装によって顕著に抑制された. また葉付き有孔包装によっても抑制されたが, 密封包装には及ばなかった. 根を切除した株, あるいは莢及び葉を付けた枝の密封は, 全植物体の密封に比べ効果が不確実であった. 葉身を全部切除した株ては著しく効果が減じ, 各葉身の1/2を切除した株ては効果が半減した. しおれた葉の株では, 葉付き包装による成分保持効果が減少した. 葉付き針孔包装もある程度の効果を示したが, 密封包装より劣った.<br>葉付き包装は豆の硬化抑制にもある程度有効であった. 袋内のガス濃度は, O<sub>2</sub>が12%, CO<sub>2</sub>が5%程度であり, 0.06mmの袋でもほぼ同水準であり, 温和なCA条件であった. このため, 莢のみを密封したときにみられるガス障害を回避できるものと思われた.
著者
山本 雅史 奥代 直巳 松本 亮司
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.785-789, 1992
被引用文献数
3 6

カンキツにおけるやくの退化性は,ウンシュウミカンの細胞質を持つ品種を種子親にした場合にのみ出現するとされてきたが,'アンコール'を種子親にし,数品種を花粉親とした交雑実生群においてもやくの退化性を示す実生が出現することが明らかになった.<BR>'アンコール'を種子親に用いた場合,ポンカンを花粉親とするとやく退化性の実生は出現しなかったが,'ミネオラ','マーコット'および'セミノール'を花粉親にした時には,それぞれ61個体中8個体,43個体中10個体および26個体中7個体はやくが退化していた.清見'×'アンコールレの約半数の実生はやくが退化していた.これらの結果から,やく退化性の遺伝子に関して,ポンカンは優性ホモ,'アンコール','ミネオラ','マーコット'および'セミノール'は,ヘテロであると推定できた.また,'ミネオラ'の遺伝子型は分離比から見て他のヘテロ品種とは異なるのではないかと思われた.<BR>謝辞本稿のこ校閲をいただいた大阪府立大学教授河瀬憲次博士に感謝の意を表します.
著者
安木 三郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.52-58, 1984
被引用文献数
1 3

従来, ランの胚あるいは子房培養により幼植物を得るには, 受粉•受精後の胚, あるいはそれを含む子房を無菌培養するという方法が行われてきた. それは, ラン科植物では一般に, 受粉後に胚珠形成が開始されるためと, 受粉後で受精前の胚珠を培養する場合, 試験管内受精させる必要性があるためである. また, 一般にランでは, 受粉から受精まで数ケ月を要する.<br>本実験では, ドリティスを用いて, 受粉後20, 40, 60日目の未発達な胚珠, あるいは胚珠を含む子房をそれぞれ無菌培養し, 幼植物を得ることに成功し, ランの種子繁殖で最も一般的に行われている完熟種子の無菌培養法と比較して, 受粉から幼植物を得るまでの期間が約150日短縮された. また, 受精前に胚珠または子房の無菌培養を開始しても, 受粉していればランの幼植物 (2<i>n</i>) が得られ, 受精が培養中試験管内でも起こり得ることが分かった.<br>子房培養の場合, 受粉後40日目の子房を材料とし,1.0ppm NAAを含む培地を用いることにより安定して多量の幼植物が得られた. 子房は滅菌後両端をナイフで切り取り, 先端 (花弁の付いていた方) を下に向けて培地に置床した. 胚珠培養の場合, 子房を切り開き, 胚珠を取り出して材料とした. 受粉後60日目の胚珠を10ppmNAA, あるいは10ppm BAとココナツ溶液25%を含む培地で培養することにより多くのプロトコーム及び幼植物が得られた. また胚珠培養の場合, 幼植物を多量に得るには, ココナツ溶液 (35%) かショ糖 (2%) が不可欠であることが分かった.<br>本実験により, ドリティスにおいては, 受粉後60~65日に受精が起こるが, それより前の受粉後20, 40, 60日目の子房, あるいは胚珠を培養することにより幼植物が得られることが確認された.
著者
小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.107-113, 1980
被引用文献数
5 9 9

キクの普通株及び無低温株に種々の処理を加えて親株とし, 長日下で育成した苗を摘心後15°C•短日に移して茎の伸長と発らい状態を調べ, ロゼット化つまり生長活性低下の誘因を検討した.<br>数年間にわたって無低温(15°C以上)条件下にあったキクは, 継続して低い生長活性を示し, 15°C•短日に移されると, 一部の例外を除いて, 常にロゼット状になった.<br>冬に低温を受けた普通苗は秋まで高い生長活性を示し, 10~11月になって活性が低下した. 活性の低いキクも20°C以上の温度ではよく伸長し, 25°Cではよく発らいした.<br>夏を無高温 (15°C) で, つぎの冬を無低温 (10°C以上) で経過したキクは, 翌年夏まで高い生長活性を示したが, その冬に低温を受けたものより早く活性が低くなった.<br>冬低温を受けた株に, 春及び初夏に高温を与えても生長活性は低下しなかった. キクはいったん低温を受けて長期間生育してのち, 数か月にわたる比較的長期間の高温を受けると生長活性が低下するものと思われる. その際, 低照度が活性低下に促進的に作用する.
著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982
被引用文献数
5 1

'甲州'ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.<br>1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.<br>2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.<br>3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.<br>4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.<br>5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100m<i>l</i>, 健全果で5.15g/100m<i>l</i>の最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100m<i>l</i>, 健全果0.86g/100m<i>l</i>となった.<br>6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.<br>7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.<br>'甲州'の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, '水っぽい'ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
立花 吉茂
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.409-416, 1976
被引用文献数
2

1. ムクゲの54栄養系の花型を調査し, その外部形態から次の3群•9型に分類した.<br>I. 一重咲群 (25系統)<br>I-a 細弁型 (7系統)<br>I-b 中弁型 (13系統)<br>I-c 広弁型 (5系統)<br>II. 半八重咲群 (20系統)<br>II-a 祇園守型 (ぎおんまもり) (4系統)<br>II-b 花笠型 (はながさ) (7系統)<br>II-c バラ型 (9系統)<br>III. 八重咲群 (9系統)<br>III-a 乱れ咲型 (みだれ) (2系統)<br>III-b 菊咲型 (きく) (3系統)<br>III-c ポンポン咲型 (4系統)<br>2. 一重咲群は, つねに基本数 (5) の花弁の花を持つもの9系統, 5ないし6枚の花弁の花を持つもの12系統, 8ないし11枚の花弁の花を持つもの4系統からなる. 花弁数が, 基本数の2倍に達しても, 同じ大きさの花弁が一列に並ぶため外観上は一重咲である. この群の花の大きさはもつとも変異に富み, 直径7.6cmから13.3cmまで連続した (第1表, 第1,2,3および6図).<br>3. 半八重咲の花は, 内弁が外弁よりも小さいものである. 内弁が小さく, 数の少ないものをII-a (祇園守型), 内弁数の多いものをII-b (花笠型) とした. II-c(バラ型) は, 内弁がやや大きく, 雌ずいの弁化が加わつている系統もあつた. II-aは一重咲同様にねん性があり, II-bはあまり結実を見ず, II-cはまつたく不ねん性で結実しない (第2表, 第4,5図).<br>4. 八重咲群の花は, 外弁と内弁がほぼ同じ大きさのものである. III-a (乱れ咲型) は, 花柱の弁化した花が全体の約1/3を占め, III-b (菊咲型) は, 花弁が小さくて, 多少規則的に配列し, 花柱の弁化した花は全体の1/2~2/3に達した. III-c (ポンポン咲型) は, 小球形で花弁はもつとも小さいが, 花弁数はもつとも多く, 花柱の弁化はすべての花に及んだ. III-c型のいくつかの系統には貫生花が存在し, これらの花は70枚以上の花弁数があつた (第3表, 第7,8図).
著者
Phuong Pham Thi Minh 一色 司郎 田代 洋丞
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.236-242, 2006-05-15
被引用文献数
1

ヴィエトナムのシャロットを遺伝資源として評価するために、北部、中部および南部から集めた系統の遺伝的変異を調べた。これらの系統を佐賀大学のプラスチックハウスで栽培し、形態および生理的形質を調査した。また、RAPD法で全DNAの多型を、PCR-RFLP法で葉緑体およびミトコンドリアDNAの多型を分析した。北部の系統はすべて、葉が開張性で、暗緑色であり、抽苔が遅く、球根形成が早かった。球根の皮の色は、球根形成時には白かったが、収穫後には褐色になった。中部と南部の系統はすべて、葉が半開張性で、若い葉は黄緑色であったが、成葉は暗緑色になり、抽苔が早く、球根形成が遅かった。球根の皮の色は、球根形成の始めにはピンクであったが、成熟すると赤くなった。RAPD分析の結果にもとづいて系統間の遺伝的距離を計算し、デンドログラムを作成した結果、供試した系統は二つのグループに分かれた。一つは北部の系統からなり、他のグループは南部と中部の系統からなっていた。PCR-RFLP分析の結果、供試したすべての系統の葉緑体およびミトコンドリアDNAは、用いた制限酵素すべてで同じバンドパターンを示し、これらの系統は同様な細胞質を持つと考えられた。以上の結果から、ヴィエトナムには遺伝的に異なる二種類(北部型と南部型)のシャロットが存在することが明らかになった。これらが持つ異なる特性は熱帯および亜熱帯のシャロット、タマネギおよびワケギの育種に利用できると考えられる。
著者
桝田 正治 瀧口 武 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.641-648, 1989
被引用文献数
12 12

水耕トマトの5段摘心栽培において摘心後に培養液濃度を高め養液成分の濃度変化および果実収量と品質について調査した. また苗齢の違いと養液成分の濃度変化の関連性についても検討した.<br>1. 定植から摘心までは園試1/2倍濃度で栽培したが, この間のEC値, 硝酸態窒素, カリ, リン濃度は常に低下し, カルシウムとマグネシウム濃度は比較的安定していた. 摘心後に培養液を同じ1/2倍濃度に更新するとカリとリンを除いてどの成分濃度も上昇傾向に変わり,EC値も常に上昇した. カリ濃度の変化は小さかったが,リン濃度の変化は大ぎく培養液補給時にゼロになることもしぼしぼあった. 園試標準濃度ではリンを除いてすべての成分濃度が上昇した. また園試3/2倍濃度と高くすると成分濃度の変化域はさらに大きくなった.<br>2. 異なる苗齢において園試1/2倍濃度の変化を調べたところ, 硝酸態窒素, カルシウムについては70日苗で低下し, 105日苗で安定し, 125日苗で上昇した, カリとリンの濃度はどの苗齢でも低下する傾向にあった. マグネシウム濃度は70日苗で安定していたが, 105日苗と125日苗では上昇した. 成分(n′)と水(w′)の吸収量から算出した値(n′/w′)は硝酸態窒素, カルシウムおよびマグネシウムで苗齢の小さいときには当初の培養液濃度より高く, 苗齢の大きいときは低くなった. リンとカリのn′/w′は苗齢に関係なくほぼ一定で培養液濃度より常に高かった.<br>3. 摘心後に培養液を園試3/2倍濃度(EC2.9)まで高めると, 1/2倍濃度および標準濃度に比べて果実のBrix および滴定酸度が高まった. この場合, 果実収量は若干低下したが, 裂果や尻ぐされ果の発生は少なくなった. 以上の結果より, 摘心後に培養液濃度を高めれば収量に大きな影響を及ぼす事なく果実の品質を高め得るものと推察された.
著者
後藤 明彦 荒木 忠治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.316-324, 1983
被引用文献数
1 10

サンボウカン果実のじょうのう果梗端部す上がり砂じょう及び中央部のゲル化及びす上がり砂じょうの化学組成を調べ, また, 光学顕微鏡による若干の観察を行った.<br>顕微鏡観察によると, 果梗端部す上がり砂じょうの砂じょう膜は著しく肥厚していたが, 中央部す上がり砂じょうの膜の肥厚は, それほど著しくなかった. また,PAS染色により, 砂じょう膜及び内部柔組織の細胞壁多糖類成分は, ゲル化及びす上がり砂じょうで増加していることが示された.<br>パルプ量, アルコール不溶性固形物 (AIS) 含量はす上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 細胞壁多糖類については, ゲル化及びす上がり砂じょうで, 熱水, ヘミセルロース, セルロースの各画分が健全砂じょうより高かったが, シュウ酸塩画分の増加はわずかであった.<br>果梗端部す上がり砂じょうでは, 同部健全砂じょうに比べて, 遊離酸, フラボノイド, カロチノイド, RNAの含量は低く, 結合酸, ビタミンC, 全-N, AIS-N, アミノ-Nのそれは高く, 全糖は変らなかった. 中央部ゲル化砂じょうでは, これらの成分は全て健全砂じょうより低かった. しかし, 同部す上がり砂じょうでは, AIS-N, アミノ-Nはゲル化及び健全砂じょうより高く, また, 全糖, 結合酸, フラボノイド, カノチノイド, ビタミンC及び全-Nはゲル化砂じょうよりは高かったが,健全砂じょうよりは低かった. RNAはゲル化砂じょうとほぼ同じであり, 遊離酸は低かった.<br>無機成分 (粗灰分, Ca, Mg, K, Na) については, いずれも, 果梗端部す上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 中央部ゲル化砂じょうでは, 健全砂じょうよりわずかに低かったが, す上がり砂じょうでは, ゲル化砂じょうに比べてCaが高く, Kが低かった.<br>これらの結果に基づき, サンボウカン果実砂じょうのゲル化及びす上がりの発現過程を考察した.
著者
倉橋 孝夫 松本 敏一 板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.63-67, 2005-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
5 13

収穫初期から終期のカキ&lsquo;西条&rsquo;の果実を用いて, 収穫時期別の軟化発生程度と1-MCPおよびエチレン吸収剤を用いた脱渋中の軟化防止と脱渋後の日持ち性向上効果を検討した. その結果, 無処理区の脱渋完了時の軟化発生は, 収穫初期の10月1日収穫果で78.1%と最も高く, 収穫時期が遅れるのに伴って徐々に低下し, 収穫盛期の10月22日と29日収穫果ではほとんど認められなかったが, 収穫終期の収穫果では50.0%と再び増加した. 脱渋時のドライアイス封入48時間後の袋内エチレン濃度は, 収穫初期の10月1日収穫果が最も高く, 収穫時期が遅くなるにつれて低下した. また, 1-MCP処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の軟化発生は抑えられたが, 収穫終期の抑制効果は低かった. 収穫盛期の日持ち期間は1-MCP処理により無処理区と比較して約6日間延長できた. さらに, エチレン吸収剤処理により, 収穫期前半の脱渋処理解除直後の果実軟化は抑えることができたが, 脱渋後の日持ち期間は延長できなかった.
著者
杉浦 俊彦 黒田 治之 伊藤 大雄 本條 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.380-384, 2001-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

特殊な形状から近赤外分光分析法による糖度測定の実用化が遅れているブドウ果実について, 比重と糖度との相関関係の有無を検討した.供試した果房の比重は, 水を使わずに体積が測定できる音響式体積計を利用して測定した.それぞれの果房の糖度は全果粒を採取して搾汁し, 屈折糖度計で求めた.1. '巨峰'の果房における比重と糖度の関係は収穫年次や産地が異なっても安定し, 同一直線上にのった.2. '巨峰'の比重と糖度の関係は16°Brix程度から23°Brix程度の広い範囲で高い相関係数(r=0.981<SUP>***</SUP>)が得られ, また回帰線の実測値と推定値の誤差(標準誤差)は0.35°Brixと低くかった.3. 'キャンベルアーリー', 'ネオマスカット'および'甲州'における果房の比重と糖度の間にも高い相関が認められた.4. 比重と糖度の間における回帰直線の傾きには品種間で有意な差はみられなかった.5. 以上の結果から, 比重測定によるブドウ果房の非破壊糖度測定の可能性が示唆され, また比重測定に音響式体積計が活用できる可能性が示唆された.
著者
向井 啓雄 高木 敏彦 手島 洋二 鈴木 鐵男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.479-485, 1996-12-15
被引用文献数
5 7

秋季にウンシュウミカン樹に強度と弱度の水ストレス処理(それぞれWS-s区およびWS-m区とする)を行い,果実各部位における糖含量を測定した.<BR>水ストレス処理により果皮と果汁の糖,特に還元糖が増加した.果皮においては特にフルクトースの増加が顕著であった.これらのことは水ストレスの程度が強い方が著しかった.<BR>WS-s区では果汁,果皮ともスクロースの増加の抑制が認められた.11月26日においてWS-s区の果皮の糖含量はWS-m区のそれよりも低い傾向であった.<BR>果梗部の方が果頂部に比べて糖含量は低いが,還元糖の比率が高かった.この傾向は水ストレス処理を行っても変化しなかった.<BR>果実部位やストレスの程度にかかわらず,水ストレス処理によって還元糖の増加が認められた.このことは蓄積部位でのスクロースの分解によるものなのか,あるいは転流段階での分解なのかについては今後の検討課題である.
著者
西沢 隆
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.559-564, 1992
被引用文献数
2

無加温のビニルハウス内で育てた一季成り性イチゴ'ダナー'を, 8月23日, 10月23日および11月23日に, 24°/22°C (昼/夜) •16時間日長のチェンバ内に移して育てた.<BR>1.8月23日に株をチェンバ内に移した場合, 葉柄長は上位葉ほど増加した. これは葉柄長当たりの表皮細胞数 (細胞数) が増加したためであった. しかし,葉柄の平均表皮細胞長 (細胞長) は上位葉ほど減少した.<BR>2.10月23日と11月23日に株をチェンバ内に移した揚合にも, 葉柄長は上位葉ほど増加したが, 8月23日に株を移した場合に比べると短かった.<BR>3.11月23日から3°C•暗黒条件下で42日間低温処理した後にチェンバ内に移した場合, 低温処理しなかった場合に比べてどの葉位でも葉柄長が増加した. この際, チェンバ内に移してから伸長する最初の3葉では,葉柄長の増加は, 主として細胞長が増加したことによるものであった. しかし, その後に伸長した葉では細胞数増加の関与もみられ, それは上位葉にいくにつれて大きくなった.<BR>4.以上の結果から, 栄養生長期から休眠期にかけてイチゴの株を高温•長日条件下で育てると, 展開する葉の葉柄の細胞長と細胞数は, 以下のように変化すると推察される.<BR>(1) 株が栄養生長期にある場合, 高温•長日条件下に移してから展開する葉の葉柄は, 上位葉ほど長くなる. この結果は葉柄の細胞数が増加することによるものである.<BR>(2) 秋には株がしだいに休眠状態になる. これと並行してクラウン内で生長中の葉柄の細胞分裂が短日•低温条件下で大きく抑制される.<BR>(3) 休眠期の株では, 葉が出葉期近くまで生長している場合, 低温処理は主として細胞長を増加させる.しかし, 葉柄が活発な細胞分裂期にある場合, 低温処理は主として細胞数を増加させる.
著者
間苧谷 徹 町田 裕
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-48, 1980
被引用文献数
6 15

本実験は, 夏季の土壌乾燥が, ウンシュウミカンの果実品質に及ぼす影響を検討し, 更に, はち植え幼木の実験で示した既報(14)のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> を, ほ場の樹で再検討した.<br>1. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と1果重(果径), 屈折計示度及び遊離酸含量との間には, 9月7日及び12月6日の採取果とも高い相関関係が認められた. 9月と12月とで, ψ<sub>max</sub> と屈折計示度の直線は -14bar 前後で交差し, ψ<sub>max</sub> が -14bar より低下した樹では, 12月の屈折計示度の方が9月より低下した. これに対して, 9月と12月の遊離酸含量の間には, 平行移動に似た関係が存在した.<br>2. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果実比重との間には, ψ<sub>max</sub> -11bar 前後を屈曲点に2種類の曲線関係が存在した. すなわち, ψ<sub>max</sub> が -11bar 前後までは,ψ<sub>max</sub> の低下に伴い果実比重は小さくなったが, ψ<sub>max</sub> がそれ以下になると, 逆に果実比重は増加していった.<br>3. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果皮の着色程度との関係は余り密接でなく, 両者の間を直線関係とみなして相関係数を求めると, -0.7410であった.<br>4. 果実品質を余り低下させないですむ限界のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> は -7bar 以上であり, ψ<sub>max</sub> をそれ以下にしない水管理が重要である. 出来れば, ψ<sub>max</sub> が-5.5bar 前後でかん水することが望ましい.<br>5. ψ<sub>max</sub> が -5.5bar に低下した後, 3mm/day のかん水で, ψ<sub>max</sub> を -5bar 前後に維持出来た. また, このかん水量で適湿区と近似した品質の果実が生産出来た.
著者
太田 勝巳 細木 高志 松本 献 大宅 政英 伊藤 憲弘 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.753-759, 1997-03-01
被引用文献数
8 15

定植後から収穫終了まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマトについて,完熟果実の裂果発生時刻と果実横径の日変化および植物体内の水分移動との関係を調査した.<BR>1.夏季に'サンチェリー'の完熟果実250果を対象として,1時間ごとに裂果発生の有無を調査した.その結果,裂果は早朝に多く発生し,とくに午前4時~6時には裂果したすべての果実の43%が裂果した.<BR>2.夏季には'サンチェリーエキストラ',秋季には'サンチェリーを供試して,完熟果実横径の日変化をレーザー式変位センサーを用いて測定した.その結果,両品種,両季節とも早朝(午前6時~8時)に果実横径が増加し,午前中には減少し,午後からふたたび増加した.果実横径の増加は裂果発生の直前か裂果発生直後に大きかった.<BR>3.'サンチェリーエキストラ'の植物体内の水分移動量を茎流センサーを用いて測定した結果,茎と葉柄においては昼間水分の流入が多く,夜間水分の流入は少なかった.果柄においては昼間に水分が果実から流出し,夜間から早朝にかけて果実へ流入していた.<BR>以上の結果から,夜間から早朝にかけて果実内に水分が移動することによって果実の膨張が引き起こされ,果皮が内圧に耐えられなくなり,その結果として裂果が発生していると推察される.