著者
北村 利夫 岩田 隆 落合 利理 福島 忠昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.277-285, 1980
被引用文献数
2

リンゴ3品種: 紅玉, 国光, 印度を用いて, 樹上での成熟期間中の呼吸量とエチレン生成量の変化と成熟現象との関係並びに品種間差異を明らかにするために, 成熟期に7日間隔で5~13回収穫し, 呼吸量, エチレン生成量及び組織内エチレン濃度の変化を調べ, これらと各種成熟現象の進展との関係を調べた. 成熟の指標として, 果実重, 可溶性固形物, 滴定酸度, デンプン含量, ペクチン含量及び果肉硬度を測定し, またアミラーゼ及びペクチンメチルエステラーゼ活性の変化も調査した.<br>1. 紅玉と印度は, 樹上での成熟期間中に典型的な呼吸の climacteric rise を示したが, 国光は慣行収穫期までには climacteric rise に至らなかった. 国光でも収穫後20°C貯蔵中には, 明らかな climacteric rise を示し, また慣行収穫期を過ぎて樹上に着生している果実では, 遅くに climacteric rise が認められた.<br>2. 組織内のエチレン濃度は, 紅玉では climacteric rise の開始より2週間前に明らかに増大し, climacteric minimum 時には4ppmに達した. 印度, 国光では climacteric rise 開始のほぼ1ヵ月前より0.3~0.5ppmの範囲で推移し, 印度は呼吸上昇とほぼ同時に増大したが, 国光は climacteric minimum 時こ急増して数ppmに達した.<br>3. エチレン生成は, 紅玉と印度では climacteric rise とほぼ同時に急増したが, 国光では呼吸及び組織内エチレン濃度の増大後も極めてわずかしか増大しなかった.<br>4. 種々の成熟現象の指標の変化と climacteric との関係をみると, 紅玉では成熟現象が急速に進み climacteric minimum 時には可食状態になった. 印度ではデンプンと全ペクチン物質の含量が多く, その分解の速度が遅いので, 呼吸が十分に増大した後に可食状態になった. 国光では成熟現象の進行は緩慢であったが, climacteric の始まるのが大変遅いので, 可食状態になってから約1ヵ月に至って climacteric peak に達した.<br>5. 国光の呼吸量とエチレン生成量は, climacteric の前後を通じ紅玉や印度のそれらと比較して大変少ない. このことと, 国光が他の品種に比べ非常に日持ちのよいことと関係があると思われる.
著者
土井 元章 森田 隆史 武田 恭明 浅平 端
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.795-801, 1991
被引用文献数
1 2

シュッコンカスミソウの生育開花に関する低温要求性の異なる品種, 系統を用い, 冬期の低温に遭遇した後の株において, シュートの種々の生育段階における高温遭遇がロゼットの形成および奇形花の発生に及ぼす影響について検討した.<br>その結果, シュートが栄養生長段階である3月31日から4月10日に昼温30°C (6:00~18:00) 夜温25°Cの高温処理を施すと, 低温要求性の大きい'パーフェクタ', 'ブリストル•フェアリー'20系統では, その後生育, 開花に好適な条件下で栽培してもすべてのシュートがロゼットを形成した. これらの品種, 系統についで低温要求性の大きい'ダイヤモンド', 'ブリストル•フェアリー'03系統においても高温遭遇後は半数のシュートがロゼットを形成した. 一方, 低温要求性の小さい'フラミンゴ', 'レッド•シー', 'ブリストル•フェアリー'08系統では, ロゼットを形成することなく, 開花に至った.<br>花芽形成開始直後に処理した高温は, 開花時の花茎を短くし, 主茎上の下位節での花芽形成を抑制した以外, 形態的な変化をもたらさなかった.<br>頂花における雄ずい形成期である4月30日前後に高温を処理すると, 奇形花が発生した. 奇形花の形態的な観察を行ったところ, 奇形花は, 各小花が雄ずい形成期ごろに高温に遭遇することにより, その後雄ずい原基の細胞分裂活性が長期にわたり維持されるようになり, 雄ずいの花弁化が異常に進み, 花弁数が増加するとともに分裂部を中心に花弁塊が形成される結果, 発生するものと考えられた. また, 高温による奇形花の発生は, 低温要求性の大きい品種, 系統ほど著しい傾向にあった.<br>以上の結果より, 低温遭遇後に高温に遭遇すると, 高温が低温の効果を打ち消し, 生理的にロゼット化を誘導する結果, 分裂組織における生育がより栄養生長的となり, 形態的にロゼットや奇形花を形成するようになることが考察された.
著者
李 正吉 岩田 正利
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.237-243, 1982
被引用文献数
5

ナス'黒光新2号'の果実を4°Cに貯蔵し, ピッティング, 褐変などの低温障害を発生させ, その過程における果皮部, 果肉部の組織形態的変化を13°C区を対照として比較した. さらに褐変発生とフェノール性物質ならびにポリフェノール•オキシグーゼとの関係を検討した.<br>1. ピッティング発生前に, 表皮下3~10層目の一部の柔細胞ではすでに原形質分離を起こしていた. 発生の初期段階では, まず表皮下約8~10層目の2~3層の, 原形質分離を起こしている柔細胞が扁平化した. ピッティング程度が進むに伴い, 上記の扁平化細胞は褐変すると共に表皮方向ならびに表皮と平行方向に増加した. 最終段階では表皮細胞まで原形質分離, 扁平化おらびに褐変を生じ, さらに表皮下15~20層の柔細胞にまで及んだ. また, 褐変した細胞内には黄褐色の粒状体が認められたが, 特に表皮付近の柔細胞に多かった.<br>2. 果皮部がピッティングを生じないで褐変する場合にも, 組織形態的変化はピッティング発生の場合とほとんど同様で, 細胞が扁平化しないだけが異なった.<br>3. 果肉部の柔細胞では褐変前に核が一時的に膨脹したが, その後褐変すると, 柔細胞の原形質分離と共に縮小した.<br>4. ナス果実中のセなフェノール性物質はクロロゲン酸と思われ, 維管束組織, 種子中に多く存在し, 果皮部にはアントシアンのほかに, クロロゲン酸以外のフェノール性物質の存在が推定された. また, ポリフェノール•オキシターゼ活性も果皮部, 果肉部, 維管束組織, 種子中に見出された.<br>5. 低温貯蔵中に, 褐変が生ずるとフェノール性物質検出試薬に対する各組織の呈色反応は不明瞭になったが, ポリフェノール•オキシダーゼ活性は幾分認められた.
著者
高木 敏彦 向井 啓雄 池田 竜司 鈴木 鐵男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.733-738, 1994
被引用文献数
4 11

寒害によって生じたビワの種子枯死果の肥大発育と収穫果の品質に及ぼすジベレリンならびにホルクロルフェニュロンの散布処理の影響について調査し, 無核果生産の可能性について考察した.<BR>1.GAとKTの併用処理によって, 種子枯死果の果実肥大は有核果に相当する程度まで促進された. また, その果形は細長く, 果肉の厚い果実であった.<BR>2.寒害遭遇直後の処理による肥大効果は著しく,時間をおいて処理した場合には, 処理による効果が小となった. また, 年内に寒害に遭遇し, 種子の枯死した果実にKTの併用処理を行うと肥大効果はより大であった.<BR>3.寒害遭遇直後の処理果では, 着色の促進, 糖含量低下の傾向が見られ, とくに肥大の著しかったGAとKTの併用処理で果汁のBrixが著しく低下した.
著者
石井 孝昭 門屋 一臣
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.529-535, 1994
被引用文献数
10 97

炭施用がカンキツの樹体生長およびVA菌根形成に及ぼす影響を調査した. イネもみがら, ベイツガ樹皮あるいはカンキツジュースかすから作った炭で処理した土壌を用いて, ルートボックスにウンシュウミカン(カラタチ台) 樹を移植し, これに<I>Glomus fasciculatum</I>の胞子を接種した. その結果, ボックスのガラス面に観察される根の伸長は, いずれの炭施用区においても対照 (炭無施用) 区より旺盛であった. 全生体重,地下部重および新梢重も炭施用区で増大した. VA菌根形成は対照区よりも炭施用区で良好であり, 特にイネもみがら炭ではその感染率が41.5%と著しく高く,また葉内のリン含量も増加した. 一方, 宮内イヨカン園における炭 (イネもみがら) 施用区, バヒアグラス草生区, 放任区および慣行裸地 (除草剤年3回使用)区のVA菌根形成を比較調査したところ, VA菌根菌の感染率は炭施用区 (52.0%), バヒアグラス草生区(16.9%), 放任区 (7.3%), 慣行裸地区 (3.6%) の順であった.
著者
斎藤 清
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.331-337, 1977
被引用文献数
3

(1) 花きにおける新変異形質作出のための育種的手法として放射線照射が効果的に採用されており, 従来よく知られた種類としては栄養繁殖を常とする宿根草や球根のいくつかを挙げることができる. 一方, 種子繁殖を常とする1年草では, 照射処理によって偶発した変異の遺伝性や後代における発現状況を確認する必要があるので, 前者ほどに適切な例は稀となっている. 本実験はこの後者の場合として, ガンマー圃場内に栽植された緩照射株に生産された種子の実生を通してえられたウォールフラワーの半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統における変異性を明らかにしその利用度を考慮したものである.<br>(2) ウォールフラワーにあらわれた微八重ないし半八重咲花は本来の4枚花弁に1~数枚のさじ型奇形の過〓が不規則に加わるもので, その程度の強まるにつれて雄•雌ずいの退化もおこり, しだいに不ねんになってくる. 自然結実種子によるγ<sub>3</sub>世代では大多数の株が微八重ないし半八重咲花をつけ, この形質が単純な劣性であることを思わせた. しかし, 従前から存在している自然発生の半八重咲市販品種に比べると, この新系統は花序が小さく小花が密集し葉幅もやや狭いので実用的価値は低いようである.<br>(3) モス=バーベナにあらわれた白色花系統はγ<sub>2</sub>,γ<sub>3</sub>世代の実生ですべて白色花となり, この形質は有色に対して単純な劣性であると思われる. 原品種に比べて小花がわずかに小さく葉縁にいくらか円味をもつ程度の差はあるが, 草勢はほとんど変わることなく, 花壇用の白色材料として利用されえよう. 文献によれば変種 albaの存在が知られており, その成立もおそらく以前にあらわれた花色喪失の偶発的な自然突然変異によったものであろう.
著者
鈴木 誠一 堀 裕
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.643-650, 1991
被引用文献数
3

1. センニンソウの栄養生長は自然日長下では昼/夜温24。/19°C, ないし30°/25°Cで良好であり, 17°/12°Cではほう芽•伸長が著しく遅れ, 発らい•開花しなかった.<BR>2. 適温下で生育させた場合, 5,6月の間の約1か月間を8時間日長に保つことによって新梢先端が褐変•枯死した. 花芽分化 (とそれに続く発らい•開花) は自然日長 (終始14時間以上で推移) および16時間日長によって誘起されたが, 8時間および12時間の日長では誘起されなかった. このような長日による花芽分化の誘起には, ほう芽後約1か月を経た6月以降, 約1か月間の処理が必要と認められた.<BR>3. 16時間日長を6月末で打ち切って8時間日長に戻した区は, 7月末に戻した区に比べて発らい•開花が明らかに遅れた. したがって, 分化後の花芽•花房の発達は16時間日長によって抑制されるものと考えられた.<BR>4. 自然日長下, GA<SUB>3</SUB>100および1,000ppm処理は,無処理に比べて, 概して栄養生長と発らい•開花を早めたが, 特に8回散布区で花数を著しく減少させた.8回散布区では雄しべが退化し, 雌ずいを欠いた不完全花が多数見られた. また, 正常花, 不完全花を問わず,雄しべの弁化に伴う多がく片花がみられた.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-77, 2001
参考文献数
14

イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 結果枝内の第7節以下のすべての果実を横径が約4mmに達した結果期に摘果して, 第8節と第13節の果実の形質と糖集積に及ぼす影響を調査した.1. 第8節と第13節の果実が結果から成熟までに要した日数は73&acd;74日で, 摘果区と無処理区との間に差はなかった.結果後の果実肥大において, 第8節の果実では摘果処理の影響が小さかったが, 第13節では果径が肥大初期から大きくなる傾向が認められた.2. 無処理区の収穫果実は, 第8節と第13節の果実は第3節の果実に比べ横径と果実重が著しく小さく, 肥大が劣った.第8節, 第13節の果実は, 第3節に比べて果皮色のE値が高く着色が劣り, 小果, 果托の糖度も低かった.果実の硬度は, 節位間に差がみられなかった.3. 摘果区では, 第13節の収穫果実の横径と果実重が無処理区より大きくなり, 果肉内では小果よりも果托の重量が増加した.果皮色のE値は, 第8節では摘果区が無処理区より低くなって着色が優れ, 第13節でも摘果区が低下傾向となった.果実の硬度は, 第8節, 第13節の両節位とも処理区間に差がなかった.4. 摘果区では, 第8節, 第13節の小果および果托で無処理区に比べ単位重量当たりの果糖, ブドウ糖含量が増加した.また, 部位ごとの重量から換算した糖の総量も無処理区より多くなり, 特に, 重量増加が顕著であった第13節の果托で糖の集積が促進された.
著者
宮崎 正則 国里 進三
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.204-210, 1975
被引用文献数
1

トマト果実のNO<sub>3</sub>-N含量は品種間差異が大きく, NO<sub>3</sub>-N蓄積に関し品種特性があるように考えられたので, これらについて二, 三の検討を試みた.<br>1. 供試16品種は果実のNO<sub>3</sub>-N含量が収穫の全期間をとおして常に5~10ppm以上の硝酸塩高蓄積性品種群 (「ファイアボール」, 「アマチュア」, 「コールドセット」), 収穫の全期間をとおして常に5ppm以下の低蓄積性品種群 (「のぞみ1号」, 「VF 36」, 「ES 24」, 「テクスト2」, 「T 613-2」, 「アナフ」,「ブレームスソリッドレッド」) および収穫の一時期のみ5~10ppm程度蓄積し, 他の時期には3ppm以下に低下する品種群 (「チコ」, 「ハインツ1370」, 「ハインツ1409」,「くりこま」, 「エポック」, 「大豊」) の三つの品種群に分類された.<br>2. 硝酸塩高蓄積性品種の果実のNO<sub>3</sub>-N含量は催色期に高く, その後の成熟過程でほとんど低下せず完熟するにいたつたが, 低蓄積性品種および一時期のみ蓄積する品種は催色期以降の成熟過程でその含量は低下した. 同一品種 (一時期のみ蓄積する品種) を遮光下で栽培すると催色期頃の果実のNO<sub>3</sub>-N含量は高く, その後の成熟過程でその含量はほとんど低下せず, 完熟果のNO<sub>3</sub>-Nは高含量であり, 一方遮光しない条件下のトマトのNO<sub>3</sub>-N含量は催色期において低く, その後の成熟過程で低下した.<br>3. 硝酸塩低蓄積性品種は高蓄積性品種に比べて草勢が強く, また摘葉株の果実のNO<sub>3</sub>-N含量は無処理株に比べて収穫初期において高い傾向にあった.<br>4. 硝酸塩低蓄積性品種は高蓄積性品種に比べて果実の全-N, 遊離アミノ酸, 還元糖およびCa含量が高く, 有機酸およびK含量が低い傾向にあった. また催色期以降の過程における果実の硝酸還元力が大きく, 追熟中においても果実のNO<sub>3</sub>-N含量が低下しやすい傾向にあつた.<br>5. NO<sub>3</sub>-N高濃度培地および遮光条件下においては, 硝酸塩高蓄積性品種の果実のNO<sub>3</sub>-N含量は著しく高いのに対し, 低蓄積性品種の含量は高くはなかった.
著者
野田 勝二 奥田 均 木原 武士 岩垣 功 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.78-82, 2001-01-15
被引用文献数
3 11 5

極早生ウンシュウ'山川早生'を7品種の台木に接ぎ, 1994年(5年生)&acd;1998年(9年生)に生育および果実品質を調査した.樹の生育は, シイクヮシャー, ラングプァーライム, 'シトロメロ'およびボルカメリアナが'ヒリュウ', 'ルビドー'およびカラタチに比べ優れていた.収量はカラタチ系台木で少なく'シトロメロ'台が最も多かった.果汁の糖度はヒリュウ台が'シトロメロ'以外の強勢台木より高かった.酸度はシイクヮシャー台がボルカメリアナ台より高かった.カラタチ系は果実品質が優れていたが, 樹勢が弱く収量も劣っていた.解体調査の結果, 地上部, 地下部および全体重は'シトロメロ', カラタチ, 'ヒリュウ'の順に大きかった.樹勢の強い'シトロメロ'では樹勢の弱いヒリュウと比べ地上部への乾物の分配率が高く, T-R率も高かった.以上の結果から, 'シトロメロ'はウンシュウミカンの極早生系統において, カラタチ台に代わる強勢台木として利用できることが分かった.
著者
藤目 幸擴 斎藤 良光 中山 恭伸
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.70-77, 1988
被引用文献数
3 3

ブロッコリーの早晩生の異なる13品種を用い, 生育温度 (17°C~23°C) と日長条件 (8時間日長と16時間日長)を組合せ, 花らい形成に対する低温と長日の相乗作用における品種間差異について調査した.<br>1. 極早生の'極早生緑'と'グリーンコメット'は短日条件下で花らいを形成しない温度でも, 長日条件下では花らいを形成した. 早生の'シャスター', '緑洋'と'里緑', 中生の'緑山'も, 短日条件下で花らいが形成されない温度であっても, 長日条件下では花らいを形成した.<br>2. 同じ生育温度の両日長条件下で花らいが形成された場合, 極早生の'極早生緑'と'ダークホース', 早生の'早生緑', 'シャスター'と'緑洋', 中生の'スリーセブン'は, 長日区の方が短日区より1週間早く花らいを形成した.<br>3. 同じ生育温度の両日長条件下で花らいが形成された場合, 早生の'早生緑'と'シャスター', 中生の'緑嶺'と'スリーセブン'は, 長日条件下の方が短日条件下より少ない葉数で花らいを形成した.<br>4. 以上の結果から, 供試した13品種中の10品種について, 花らい形成に及ぼす低温と長日の相乗作用が認められ, 長日条件下では花らい形成の上限温度の高くなることが認められた. 更に, ブロッコリーの花らい形成に対する低温と長日の相乗作用において, 低温が主要因であり, 長日条件は副次要因であると判断される.
著者
石原 義啓 大川 清 兵藤 宏
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.141-147, 1991
被引用文献数
3 5

スイートピー (Lathyrus odoratus L.) は切り花の花持ちが悪く, 花弁が軟弱で損傷しやすいため, 長時間の輸送が困難であることが大きな問題となっているが,切り花の花持ちや花弁の損傷による品質の劣化は, 出荷前にエチレンの作用阻害剤であるチオ硫酸銀 (silver thiosulfate, STS) を処理することにより著しく改善されることが報告されている (8,9). このことから, スイートピーの切り花の老化におけるエチレンの関与が考えられ, Morら (8) によって, その関与の概要が明らかにされた.<BR>そこで, スイートピーの切り花の老化におけるエチレンの関与をより詳細に明らかにする目的で, 自家採種した冬咲き系スイートピーの品種'ダイアナ'の切り花の老化に伴うエチレン生成と呼吸, 小花の各器官のエチレン生成と1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid (ACC), N- (malonyl) ACC (MACC) の含量を測定した. また, 1司時に切り花のエチレン生成, 呼吸,花持ちに及ぼす気温およびSTSの影響も調査した.
著者
中島 武彦
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.813-820, 1993
被引用文献数
1

冬季寡日照を想定し, メタルハライド灯を10または12時間日長, 10 (高曇り) ~20klx (薄曇り) とした人工照明下において, レタス幼苗の生育に及ぼす影響を調査した. 処理としては白熱球を補光源とする1~3klxの間欠照射区と連続照射区を加えた, また,間欠と連続の照射処理は明期のみに行った.<BR>主光源10klxに2klxの補光を行った場合, 間欠補光6分区 (24分間消灯後に6分間点灯) は乾物生産が最も高く, 無補光区の約2.4倍, 連続補光区の約1.6倍に達した. また, 主光源20klxに2klxで補光した場合も間欠補光6分区と1分区 (4分間消灯後に1分間点灯) は無補光区や連続補光区より生育が増進した.しかし, 6秒区 (24秒間消灯後に6秒間点灯) は1分区や6分区よりも生育増進効果が小さかった.<BR>補光源が点灯すると葉温は急上昇し, 光合成が活発になった. また, 補光源が消灯すると葉温は急落したが, 光合成速度はその後2,3分間は無補光区や連続補光区より高い値を維持し, その後は急速に無補光時のレベルまで低下した.<BR>無補光区の葉伸長は葉の含水率の低下によって明期後半に減退したが, 間欠補光下では水分補給と光合成促進の繰り返しによって明期後半も旺盛であった.<BR>以上のことから, 寡日照下のレタス苗生産において間欠補光方式 (6分区) は葉面積の拡大とそれに伴なう乾物生産の増大に著効のあることがわかった.<BR>謝辞本稿の御校閲をいただいた当場の木下隆雄生理生態部長 (現•農業研究センター) に感謝の意を表します.
著者
半田 高 大垣 智昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.145-154, 1985
被引用文献数
4 14

日本原生のものを含めたカンキツ属35, キンカン属5種•品種について, その42形質を調査し, 大型計算機を用いた多変量解析を行った. 多変量解析は, Qモードクラスター分析法, 主成分分析法併用クラスター分析法,非線形マッピング法及び数量化理論第3類の計4法について各計算条件を決定した後に行った.<br>非線形マッピング法では良い結果は得られなかった.また, 数量化理論第3類による分析が最も良い結果を示し, クラスター分析2法も条件を決定したことにより良い結果が得られた.<br>シトロン, マンダリン及びブンタンは, カンキツ属の中で比較的初期に分化したと考えられる. グレープフルーッとハッサクは, 極めてブンタンに近い形態であった. マンダリン類は, 形態的な幅広い変異性を示した. さらに, ナツダイダイ, キクダイダイ, イヨ, ヒュウガナツ及びカブスは, スイートオレンジに近い傾向を示した. ヒメレモンは, レモンやラフレモンとは遠い位置になった. ベルガモットは, ライムよりもサワーオレンジやシトロン, ブンタンに近かった. シキキツは, 明らかにマンダリンとキンカンの中間に位置した. マメキンカンは他のキンカンとはかなり違った形質であった.
著者
溝添 素子 稲垣 昇 岡野 光生 金地 通生 前川 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.625-633, 1992
被引用文献数
1

ストックの本葉および胚軸からのカルスおよび器官形成(シュート形成)に及ぼす供試植物の栽培条件(光条件•施肥条件)ならびに培地中の窒素組成の影響について検討した.<BR>1.葉片培養:(1)光および施肥条件の影響;'銀潮'では遮光処理(75%遮光)によリシュート形成が促進された.また遮光の効果は1/2倍水耕液を施用した区で顕著であった.一方,'雪まつり'では1/4および1/2倍液施用区とも遮光処理によってシュート形成は抑制された.(2)培地の窒素組成の影響;'銀潮'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素無添加区(硝酸態窒素のみ)において高いシュート形成率を示し,NH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+/NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>比を高めるとシュート形成が抑制される傾向を示した.<BR>2.下胚軸培養:(1)光および施肥条件の影響;'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,遮光処理によってシュート形成が抑制された.また,外植体当たりのシュート数も遮光処理によって減少した.(2)培地の窒素組成の影響は,'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素の添加が,シュート形成率および外植体当たりのシュート数を高める傾向を示した.'リトルゼムイエロー'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:10の培地で,また'雪まつり'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:2の培地でそれぞれ85%と最も高い形成率を示した.<BR>3.形成されたシュートは,大部分が水浸状を呈していた.水浸状の葉は,水分を含んで肥大し,その組織では細胞間隙が大きく,維管束や棚状組織の発達が不十分であった.また気孔の分布が一様ではなく,その数も正常葉と比較して少なく,孔辺細胞が表皮細胞より陥没しているものや隆起しているものなどが観察された.
著者
山本 隆儀 須貝 恵美 仁井田 貴之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.787-799, 1996-03-15
被引用文献数
3 2

裂果感受性の異なるリンゴ15品種およびオウトウ8品種を用いて, 果実の最終果径 (横径と縦径) に対する果径の日平均変化率などの果実肥大特性を調査し,これらと可視亀裂量による裂果感受性との間の関係を調査した. さらに果実肥大特性と収穫期の果皮の物理性および肉眼では確認することのできない微細亀裂量との間の関係についても調査した.<BR>1.リンゴでは開花後約1ヵ月の横径の平均日変化率と裂果感受性の4指標 (CI, MDR, MDLおよびMDR+MDL) との間に正の有意な相関が認められた.また, 横径と縦径の変化率の差としての横方向への肥大の歪みの程度, あるいは肥大の非円滑性の程度と裂果感受性との間にも正の有意な相関が認められた.<BR>2.オウトウでは縦状の平均亀裂密度と横方向の果径の変化率, あるいは横方向への歪みの程度との間に高い正の有意な相関が認められた.<BR>3.リンゴでは横方向の果径の変化率, 横方向の歪みの程度および肥大の非円滑性の程度と収穫期の果皮の強度との間に負の相関が認められた. また, リンゴとオウトウの両者において, これらと果皮の縦方向の伸び長との問に正の相関が認められた.<BR>4.両樹種で上記の肥大の歪みや円滑でない肥大は微細亀裂量を増大させた.
著者
林 公彦 牛島 孝策 千々和 浩幸 姫野 周二
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.346-353, 2004-07-15
被引用文献数
1 7

高木性であるカキの作業性を改善し、低樹高栽培を可能にするための手段として、カキの平棚仕立て栽培を検討した。高さ3.5mで栽培している慣行の立木仕立ての'松本早生富有'を供試して、樹高を高さ1.5-1.6mの亜主枝まで一挙に切り下げ、樹形を改造して高さ1.8mの平棚仕立てへ移行して新梢の発育、収量性、果実品質について慣行の立木仕立てと比較した。平棚では樹形改造1年後の樹冠の拡大率が高かった。樹形改造当年はせん定後の結果母枝数を立木より約20%多く残す弱せん定を行うことで、樹冠占有面積当たり新梢数は平棚で多かったが、1結果母枝当たり新梢発生数および平均新梢長には平棚と立木で差がなかった。平棚では収量が立木よりも多く、樹冠占有面積1m2当たり着果数は10果以上、収量は3kg以上を毎年確保した。結果母枝1本当たり着花数は4年間で平棚が多く、生理落果率は3年間で平棚が立木より少なかった。果実重は平棚で立木より有意に大きかった。果実重が260gを越える2Lおよび3L階級が平棚では全果実の61.2%を占め、立木より明らかに大玉果実が多く分布した。果実肥大第I期後半の満開後40日から70日の間は平棚も立木も果実肥大に差は認められなかったが、第II期に入った満開後80日以降は平棚の果実肥大が良好で、第III期の収穫期に至るまで平棚の果実肥大が優れた。果実の着色は平棚で立木より早く開始し、収穫基準のカラーチャート色標値5には平棚が立木より約3日早く到達した。
著者
水谷 房雄 廣田 龍司 天野 勝司 日野 昭 門屋 一臣
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.863-867, 1991
被引用文献数
5

発育中の日本スモモにおける青酸配糖体の含量とβ-シアノアラニン合成酵素活性の変化を調査した. 発育初期の果肉では低レベルのプルナシンが検出されたが(0.6mg/g dw), 発育とともに検出されなくなった. 同様にβ-シアノアラニン合成酵素活性も最も早い採取日に0.3μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hrであったが, 果実の発育とともに活性は次第に減少した. しかしながら, 成熟期の果肉ではわずかながら活性の上昇が見られた. いっぽう, 種子では生育期間を通じて全青酸配糖体(プルナシン+アミグダリン)含量は75~100mg/g dwと高かった. 幼果の種子にはプルナシンだけが存在し,含量は種子の発育とともに減少し, 7月初旬には検出されなくなった. いっぽう, アミグダリンは6月初旬頃から現れ, 含量はその後急激に増加して7月下旬に最大値に達した(100mg/g dw). プルナシン含量の減少に伴ってアミグダリン含量が増加することは, 前者から後者への転換が行われていることを示すものである. 種子は果肉に比べてβ-シアノアラニン合成酵素活性は高い値を示した. 種子中の活性は発育初期ではほぼ一定の値(5.6~7.6μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hr)で推移したが, さらにアミグダリン含量の増加に伴って高まり, 最大100μmolH<sub>2</sub>S/g fw/hrに達した.
著者
岩崎 一男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.395-398, 1980
被引用文献数
7 16

ブドウ'マスカット•オブ•アレキサンドリア'の1芽挿しを用い, りん片除去, 石灰窒素上澄液, 100ppm GA<sub>3</sub> および500, 1,000ppmエセホン各処理が, 芽の休眠打破に及ぼす影響を調査した. その結果, りん片除去は休眠期間中のいずれの時期においても休眠打破効果が著しく大であった. 石灰窒素処理は休眠の深い11月に打破効果が大であり, りん片除去と変わらない発芽率を示した. エセホン処理は打破効果がみられず, GA<sub>3</sub>は休眠を著しく延長した.<br>11月中旬に, ガラス室栽植の3年生マスカット•オブ•アレキサンドリアの芽に対し, リン片除去および石灰窒素上澄液処理を行った結果, 翌年3月における発芽は両処理区ともに無処理区より良好であった.
著者
モハメド アリ 松添 直隆 大久保 敬 藤枝 國光
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.921-926, 1992
被引用文献数
1 24

ナスとその近縁野生種,種間雑種および複二倍体のネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)に対する抵抗性を,実生苗および非抵抗性ナスを穂木とした接ぎ木植物に接種して評価した.Solanum khasianum, S.torvumおよびS. toxicariumでは強度の抵抗性が観察された.S. sisymbriifoliumではセンチュウの侵入で根に小さな膨らみを生じたが,センチュウは成熟せず,卵形成には至らなかった.これらを台木とした接ぎ木植物は穂木(非抵抗性ナス)の影響を受けず,同様な抵抗性を示した.一方,ナス,S. integrifolium,両者の種間雑種とその複二倍体,およびS. indicumには抵抗性が認められず,またS. mammosumとS. surattenseはネコブセンチュウに特に弱いことが確かめられた.*現在:鹿児島大学農学部890鹿児島市郡元